まほろば自然博物館

つれづれに、瀬戸のまほろばから自然の様子や民俗・歴史や見聞きしたおはなしをしたいと思います。

花曇り 和綴じの本を 積み上げる

2016年03月16日 | お役目ごくろうさまであらっしゃいます。

 さぬき市地方は気圧の谷の影響で東部を中心に雲が広がっていた。気温は4.3度から12.8度、湿度は86%から54%、風は1mから2mの東北東の風が少しばかり。明日の17日は、高気圧に覆われて晴れるらしい。

 

 さて、俵札調査が一段落したと思ったら、今度は記念講演を頼まれた。演題は「塩飽諸島の島四国と両墓制について」で、時間はひとコマ(90分)でということになった。ま、どちらも調査と研究はやっているので、材料は山ほどあるのだけれど・・・。

 

 ということで、またしても、香川県立図書館にやってきた。ま、とりあえず、先週に借りた本を返却しておくのと、塩飽諸島の民俗についての振り返りをやっておきたいと考えて。

 

 「おへんろつかさの会」は、さぬき市の「観光ボランティア団体」なので、香川県東部に居住する会員さんが多い。だから、香川県西部にあたる、しかも、瀬戸内海にある島々のことは知らないだろうから・・・というのが会長さんの考えらしい。そら、そうに違いない。善通寺さんや郷照寺さんにはお参りすることがあっても、塩飽本島(ほんじま)や高見島や佐柳(さなぎ)島まで足を伸ばすことはまずない。

 

 だから、しわく広島に「一番札所・霊山寺」があると言っても、誰も信用しない。88番札所の大窪寺があると言っても本当にはしてくれない。

 

 だから、お墓を二つも作る・・・などということは考えもしないこと。そんな、塩飽諸島のことを話して欲しい・・と会長は言うのである。うむ、お墓のことを話し出したら長くなる。なぜ、人はお墓を作るのか・・・ということまで遡って、古代日本の甕棺(かめかん)や「屈葬(くっそう)」から、古墳時代を話し出すと江戸時代まで届かない。塩飽の「両墓制」だけでも「ひとコマ」でも足りない。

 

 佐柳や高見の埋め墓はどうしても外せないし・・・。「論点整理」をうまくやらないと・・・。

 

 ということで、塩飽諸島の民俗誌を借りて来た。私の目線でない、一般的な目線をまず確認したいものだと考えて。

 

 本は分厚いが、「島四国」と「両墓制」になると、行数はそう多くはない。

 

 それぞれの島々の「葬送行事」を抜粋してもしれているし、島四国も全ての島でやっている行事でもない。

 

 大事なことは、しわく広島のように「おせったい」という行事で定着していることである。形は島四国なんだけれど、形は「おだいしまいり」なんだけれど、「おせったい」がメインになっている点なのである。お接待をする方も「おせったいですから」と言って差し出し、受け取る側も「おせったいの品物」が目的で、信仰が目的ではないことが大切。もちろん、その根底には信仰があって、ほとけさまやおだいしさんにおまいりをするのだけれど、気持ちは「パンにしようか、ラーメンにしようか」と、目は品物を追いかけているのである。

 

 その昔、島に住む人たちはお遍路に出たいと思っても、仕事を休んでまで、高価な費用を積み立てまでお遍路に出ることはできなかった。そこで、年に1度だけ、宇多津の郷照寺(78番札所)さんでお接待をするようになった。お接待をすることで、自分の願いをおへんろさんに託したのだった。それでも、その郷照寺まで出かける人は限られていた。それを見かねた、広島の正福寺の住職だった請川自巌師がこの島にミニ四国を作って、それぞれが島の中でお接待できるようにしたという。それが明治45年の3月21日(旧暦)であった。

 

 塩飽の島々で行われてきた「ミニ四国」という写し霊場も似たようなものであったに違いない。「本四国」さんと言われた四国を一巡することが叶わない人たちは、島を一巡する「ミニお四国」で、それぞれの願いをお大師さまや観音様に託したのであろう。

 

 ということで、今度はあたまを切り替えて、パワーポイントのシート作成に頑張ることになる。

 

 今日の掲示板はこれ。「かけた情けは水に流し 受けた恩は石に刻む」という、町内の善楽寺さんの掲示板にあったことばから。逆に、「受けた恩は水に流し、かけた情けは石に刻む」生き方のほうが多いというもの。「○○○を教えてあげたのに」とか、「△△を世話してやったのに」とか、「□□のとき助けてあげたのに」などと、「してあげたこと」に執着するのは、かけた情けを石に刻むようなもの。私たちは、そんな生き方ばかりをしているように思う。ふと、そんな私に気付くこと、そんな気づきを大切にして、一日を感謝したいものである。

 

じゃぁ、また、明日、会えたらいいね。


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