国連安全保障理事会は11日夕(日本時間12日朝)、北朝鮮の6回目の核実験を受け、石油輸入に上限を設けるなどした制裁決議を採択した。制裁に慎重な中ロも賛成し、全会一致だった。決議案を主導した米国は当初、石油の全面禁輸を掲げたが、中ロとの妥協のため譲歩を余儀なくされた。

 決議は国連加盟国に対し、ガソリンや軽油などの石油精製品について年間200万バレルの対北朝鮮輸出の上限を設け、原油については過去1年分の輸出量までの輸出を認めた。米国は石油の禁輸で北朝鮮軍の活動に打撃を与えられるとみて、石油を制裁対象に入れることにこだわっていた。だが、中国は北朝鮮社会が不安定になりかねないとして反対。影響を抑えるよう対象を絞り込んだ。

 交渉過程に詳しい米政府当局者によると、北朝鮮は石油精製品を年間450万バレル、原油400万バレルを輸入しており、石油精製品に上限を設けることで輸入量の3割を削減することになるという。また、決議は繊維製品の輸出を禁止。この当局者によると、繊維製品は1年で7億6千万ドル(約800億円)を稼ぐ北朝鮮の主力産業。今回繊維製品を禁輸対象としたことで、北朝鮮の輸出の9割が制裁対象になるという。

 北朝鮮が核や弾道ミサイル開発に充てる外貨稼ぎの手段としていると見られる労働者派遣については、すでに文書で契約を交わしているものをのぞき、労働許可を与えないとした。現行の契約期間が終わると更新できない。北朝鮮は推計9万3千人の労働者を派遣しており、契約がすべて終了すれば5億ドル(約500億円)の影響があるという。

 当初案では金正恩・朝鮮労働党委員長の在外資産凍結や渡航禁止を盛り込んだが、北朝鮮が態度を硬化させる可能性があることなどからとりやめた。すべての加盟国に制裁違反の疑いがある船舶の公海上での臨検も当初盛り込まれていたが、決議では船舶の属する「旗国」の同意が必要と改められた。

 米国は6日、石油の全面禁輸などを含んだ厳しい内容の決議草案を安保理理事国に配布していた。想定される制裁強化策を全て盛り込んだ形だったが、常任理事国として拒否権を持つ中ロの容認を取り付けるための交渉のスタート地点という位置づけだった。米国は国際社会の一致した姿勢を迅速に示すため、採決目標を11日と区切り、ぎりぎりまで話し合いを重ねた。(ニューヨーク=鵜飼啓)