新型コロナウイルスと他の疾患の患者急増という事態が医療現場に迫っている。新型コロナの入院患者を受け入れている岐阜市内の総合病院の院長は「寒くなって循環器系など非コロナの急患が増えつつある。感染者がこのペースで増えれば、コロナで救えなくなる命が出てくる」と警鐘を鳴らす。

 この病院では、集中治療室(ICU)と高度治療室(HCU)計26床のうちの8床を新型コロナの重症患者向けに充てている。HCUではウイルスが外に漏れない陰圧室となっている2床を使用しているが、そこへの出入りするために医療従事者が防護服を着脱したり、感染者との接触を減らすためのゾーニングなどで、隣接する2床が休止状態とされている。今後、増えるであろう循環器疾患の重症患者を受け入れられる病床が、二つ削減されているのに等しい。

 さらに、1日の外来患者者数が5月に700〜800人だったのに対し、最近は1千〜1100人に伸びてきた。「1波ではコロナ怖さの他の患者の受診控えがあったが、すでに普通に戻った」と院長。普段通りの医療業務に、新型コロナに関連した業務が純粋に上乗せになっている状況だ。

 一方、コロナとの同時流行が懸念されたインフルエンザの流行が、今のところ起きていない。県感染症情報センターの集計では、定点医療機関からの12月第1週の報告数は1件。昨年の455件、2018年の126件を大きく下回る。ただ、院長は「インフルエンザの本格流行は年末年始。海外では同時罹患(りかん)の報告もある」と警戒感を強める。

 先行きの見えない感染拡大。総合病院でコロナ患者を介助する女性看護師は語り掛けるように言った。「もしあなたが病気にかかったとき、安心して受診したくないですか。そのためには今、あなたがコロナにかからないことが何より大切だと気付いてもらいたい」