第2次安倍晋三内閣の発足から26日で5年。安倍政権が打ち出した経済政策アベノミクスはこの間、「第1の矢」の金融緩和策で円安・株高をもたらし、企業業績や雇用環境を改善してきた。政権が発足した2012年12月に始まった景気拡大は高度経済成長期のいざなぎ景気(57カ月)を超え、戦後2位の長さに達している。だが、国内総生産(GDP)の6割を占める個人消費は依然弱く、デフレ脱却が近づかない。企業が賃上げなどをいかに着実に進めるかがカギとなる。
25日の東京株式市場の日経平均株価の終値は前週末比36円42銭高の2万2939円18銭で、約26年ぶりの高水準を付けた。11日に付けたバブル経済崩壊後の終値の最高値(2万2938円73銭)を上回った。株価は政権発足時の2倍以上。東京外国為替市場でも円相場は113円台と、政権発足時から約30円の円安水準で取引された。
企業業績は輸出産業中心に改善し、16年度の経常利益は75兆円と過去最高水準に。17年7〜9月期の名目GDPは549兆円と過去最高を更新した。ただ個人消費は弱い。10月の消費支出(2人以上世帯)は28万2872円と発足時の32万5492円を大きく下回った。
理由の一つが賃上げの弱さ。みずほ総合研究所の酒井才介主任エコノミストは「企業が慎重だ。長年デフレが続き物価を上げられない中、賃上げしても収益が圧迫されるだけだと恐れている。雇用慣行上、いったん上げた賃金を下げづらいことも大きい」と指摘。柔軟に設定できる賃金体系の導入などが必要だとする。
一方、内閣府が6、7月、18歳以上の国民を対象に行った世論調査では、不安を感じることで最多が「老後の生活設計について」で53.5%だった。多くの市場関係者は、社会保障制度への将来不安が消費を冷やす理由だとする。モノが売れなければ企業は物価を上げられない。日銀の物価上昇目率標「2%」にもなかなかとどかず、政府のデフレ脱却宣言は遠のくことになる。(山口暢彦)
■安倍政権発足後の経済指標の推移
(政権発足時/直近)
・実質GDP
498兆円(2012年10〜12月期)/534兆円(17年7〜9月期)
・名目GDP
493兆円(12年10〜12月期)/549兆円(17年7〜9月期)
・日経平均株価
1万0080円(12年12月25日終値)/2万2939円(17年12月25日終値)
・企業の経常利益
48兆5000億円(12年度)/75兆円(16年度)
・企業の設備投資
71兆8000億円(12年度)/82兆5000億円(16年度)
・有効求人倍率
0.83倍(12年12月)/1.55倍(17年10月)
・完全失業率
4.3%(12年12月)/2.8%(17年10月)
・春闘の賃上げ率
1.72%(12年)/1.98%(17年)
・消費支出(2人以上の世帯)
32万5492円(12年12月)/28万2872円(17年10月)
・消費者物価指数 (総合)
前年同月比0.1%減(12年12月)/0.2%増(17年10月)
・訪日外国人客数
766万8426人(12年1〜11月)/2616万9400人(17年1〜11月推計)
・訪日外国人消費額
1兆1000億円(12年度)/3兆8000億円(16年度)
※内閣府、日本政府観光局(JNTO)などの資料をもとに作成