運転免許証の自主返納は原則本人に限られているが、全国の警察本部の6割超にあたる30都道府県警で家族などの代理人でも返納を認めていることが、警察庁などへの取材で分かった。免許返納を巡る環境整備が各地で広がっているが、専門家は高齢者が納得して返納できる仕組みの必要性を指摘している。
自主返納は、各都道府県警の運転免許センターか警察署に本人が出向いて手続きをするのが原則だ。しかし、75歳以上の高齢ドライバーの認知機能検査を強化した改正道路交通法の成立を受けて警察庁は2015年、代理人による返納を認めるなど柔軟な対応を各都道府県警に要請した。
毎日新聞のまとめによると、11月1日現在で代理人が返納できるのは、30都道府県警に上っていた。そのうち今年2月以降に始めたのは6割の18都道府県警を数えた。3月の改正道交法施行を意識して各地の取り組みが加速したとみられる。
代理返納は、入院や施設入所中の高齢者らを想定し、3親等以内の家族や施設管理者など、各都道府県警で定めた代理人が本人署名の委任状を持って免許を返納する。一部では交通機関の割引にも示す運転経歴証明書も同時に申請できる。
大阪市の病院職員の女性(59)は8月、86歳の父の代理人として警察署に免許を返納した。父は4年ほど前に腰を骨折し、症状の悪化で外出には車いすが欠かせなくなり、代理返納を女性に頼んだ。女性は「本人も納得のうえ代理手続きを利用できた」と振り返る。
一方で「本人の意思確認が難しい」(大分県警)など導入に慎重な警察も一定数ある。山形、茨城、京都、高知の各県警では交番や駐在所での自主返納を可能とし、本人が自宅に近い交番などで手続きできるようにした。
NPO法人高齢者安全運転支援研究会(東京)の岩越和紀理事長は「運転を心配する家族を気遣って返納を決める高齢者もいるだろう。(代理返納は)第三者が本人の意思を公平に確かめる慎重さが必要だろう」と指摘した。【青木絵美】
◇運転免許の代理返納が可能な都道府県◇
【北海道】北海道
【東北】青森、秋田、岩手、宮城、山形
【関東】茨城、群馬、栃木、東京、山梨、長野
【中部】福井、石川、愛知
【近畿】滋賀、京都、大阪、兵庫
【中国】島根、岡山、広島、山口
【四国】香川、愛媛、徳島
【九州】佐賀、長崎、宮崎、鹿児島
※11月1日現在、毎日新聞まとめ