フリースクールって何? どんなところ?─(1)
こういう事柄に通じている人もいれば、そんな素朴な疑問を持っている人もいるかもしれません。そこで今回、フリースクール活動の一つ、私たちの「ぱいでぃあ」について、そういう率直な疑問に答えてみたいと思います。
なお、これは、不登校になった本人と親御さんが、学校外の学び場・活動の場、将来につながる育ちの場としてフリースクールを探していることを想定して書いています。ご了承ください。
ただし、質問等があれば可能な範囲でお答えします。
Q. フリースクールって、どんなところ?
A. フリースクールは市民が作った、子どもが主人公の自由な校風のスクールです。
主に学校に行きたくても行けない(不登校の)子どもたちや学校に行きたくない(登校拒否の)子どもたち、日本の学校教育で学びたくない(帰国子女の)子どもたちや自分主体の自由な学びや活動をしたい子どもたちなどが通っています。
Q. 学校との違いはなんですか?
A. 「学校」は文部科学省が定めた規則に従って運営されている教育機関で、親の委託を受けて税金で営まれています。ですから、主体は教員であることが多く、ふだん子どもたちはその規則に従って生活することになります。
「フリースクール」は運営する人たちが意見もお金も出し合って、子ども主体の学び場&活動の場を作っています。ですから、子どもの意見を一番大事に考え、子どもたちの自主的な活動や自治活動を尊重しています。
Q. 「フリースクール・ぱいでぃあ」って、どんなところ?
A. 「ぱいでぃあ」は、主に小学生や中学生など公立・私立の義務教育段階の子どもたちが通っているフリースクールです。
「ぱいでぃあ」ではこの時期の育ちや教育が将来を決める一番大事な時期と考えています。もし、この時期の育ちの環境に問題があると、子どもはその歪みを一生背負って生きなければならなくなることもあります。ですから、学校を離れた子どもたちの育ちや学びの環境をとても重視しています。
そこで、「ぱいでぃあ」では、そういう子どもたちが心も体も頭脳も健やかに育ち、やがて社会人として自立して行ける豊かな感覚(コモンセンス)を持てるよう、最大限の努力をしています。
Q. 勉強が不安です。「ぱいでぃあ」ではしっかりやってもらえますか?
A. お任せください。しかし、これは「ぱいでぃあ」のような学びを重視しているフリースクールだから言えることであって、どのフリースクールでも同じということではありません。(中には、「学びの学園」などと謳っていても、実際は養護学校レベルの勉強しかしないというところもあります。フリースクールによって支援する生徒の対象が違うということです。しかし、そこにはそこの持ち味があるのだと思っています)
「ぱいでぃあ」に通う中で気付かれることと思いますが、学校に行っていた時のような「教えられ→覚える」という受身の勉強の姿勢ではなく、「自ら考え→自ら解く」という何事にも主体的能動的な姿勢になっているお子さんを発見することでしょう。朝、「ぱいでぃあ」にやって来ると、誰に命令されることもなく学びのモードに入る子どもたちの姿があります。しかも、そこにはみだりに他人の領分を侵さないという暗黙のルールも働いています。
しかし、これは結果としてそうなるのであって、まずは、居場所&癒しの場として、その子の心身の状態をしっかりと受け止めることが始まりであり、どの子にとっても無理のない心の回復や自立心の向上を図っていきます。
Q. 学校に行かず、「ぱいでぃあ」に勉強を任せていても大丈夫でしょうか?
A. 大事なご質問ですね。きっと「ぱいでぃあ」の卒業生やOBの活躍を見れば安心して頂けるのではないかと思います。「ぱいでぃあ」はそういう意味では多少の実績のあるフリースクールです。
お子さんが「ぱいでぃあ」に来るまでどうであったか、今の状態がどうであるかによって異なりますが、基本的に「大丈夫ですよ」と言えます。今までにもいろいろな子どもたちが「勉強出来るフリースクール」を求めて「ぱいでぃあ」に転校して来ています。
実際の成果は進学・進路のデータ(別表)をご覧ください。学校を離れた子どもたちではあっても、何ら臆することはありません。むしろ「ぱいでぃあ」にやって来て自分のリズムに合わせて伸び伸び生き生きと勉学に取り組んでいる姿があります。公立や私立の有名進学校、専修学校、定時制高校、通信制高校、通信制サポート校など、それぞれの実力と希望に合わせて進学して行きます。また、最近は中学受験で私立中高一貫校へ進学する子どもたちも増えて来ました。また、何名かの特に頑張った子の場合には「ぱいでぃあ」の校長推薦という形で有名進学校へも進学しています。
ただし、「ぱいでぃあ」はあくまでも独立したフリースクールであり、サポート校付属の中等部ではありませんから、サポート校の高等部に進学すればそれで良しとする指導は行いません。中学受験にせよ高校受験にせよ、子どもたちにはその希望と実力に合った進学先を自由に選んで挑戦して欲しいと思っています。そのために「ぱいでぃあ」は可能な限りの教育的支援を惜しまないつもりです。
Q. 卒業生・OBの動向を教えてください。
A. 「フリースクール・ぱいでぃあ」を設立したのは2000年2月、その5年前の1995年から教育雑誌「ニコラ」の活動を開始していますから、計15年ほど学校を離れた子どもたちの教育活動に関わって来たことになりますが、ここでは「ぱいでぃあ」の卒業生・OBに限定してお話したいと思います。
こういう不況の中、今年も有名企業に就職した人や映画制作など夢実現に向けて励む人、自分のセンスを活かして美の世界や数理の世界に進んだ人、教育や福祉の世界で頑張っている人、いま大学生活を謳歌している人など、様々です。もともと学校では満たされない個性豊かな子どもたちだったのです。
そういう卒業生・OBを見て改めて感じることは、夢は持たなければ実現しないこと、夢は持つだけでは実現しないこと、夢は追い求めてこそ意味があること、そして、「ぱいでいあ」を飛び立った子どもたちの多くは夢を成し遂げていく子どもたちであるということです。その熱意に比べればペーパー上の学歴はあまり重要ではないとも言えそうです。
Q.「ぱいでぃあ」には進学保証制度のようなものはありますか。
A. 不登校になると学校に行けないことも心配ですが、「これで人生お終いではないか」「もう先がないのではないか」「ずっと引きこもってしまったらどうしよう」と色々心配になりますね。
でも、大丈夫です。「ぱいでぃあ」には「学習成果・進学保証制度」というのがあります。お子さんが自立し、希望の進路進学に向けて羽ばたいていくようになることを自信を持って保証する制度です。これは進学実績のないフリースクールでは不可能なことです。
そのために、「ぱいでぃあ」では一人ひとりに合った個別対応の自立プログラムを作成し、子ども・親・ぱいでぃあの三位一体の結び付きの中でそれを実践し、自己実現を支援していきます。その結果、ほとんどのお子さんは中学・高校・大学等へ進学したり、社会参加を遂げ、自己実現を成し遂げています。ちなみに、今年も有名大学や進学したり有名企業に就職した人たちがいます。
Q. 「フリースクール・ぱいでぃあ」の学びについて書いた文書があれば、参考までに紹介してください。
A. いろいろありますが、その中で二つほど紹介しておきます。
(もっと詳しくお知りになりたい方は、「いきいきニコラ」か「フリースクール・ぱいでぃあ」のサイトの記事や「行ってみないかこんな『学校』」(ハート出版)などをご覧下さい。なお、教育雑誌「ニコラ」については後日、保存版としてPDFファイルの形で復刻の予定です)
(1)「ぱいでぃあでの学び①」=フリースクールでの学び
(2)「ぱいでぃあでの学び②」=「学力低下」論議について
(3)「Play-Study-Workの結びつき」=教育の営みは「公」(public)の営み
Q. 学校復帰のための働きかけはありますか?
A. 学校に戻りたいか戻りたくないか、戻る気はあるかないか、は基本的に本人が決めることだと思っています。止めもしませんし強制もしません。ただ一般的に、元いた学校やクラスに戻ろうとすることは大変なプレッシャーであろうと思います。
「ぱいでぃあ」に通うようになった子どもはみるみる雰囲気になじみ元気になっていくのが普通です。「ぱいでぃあ」には自分が受け入れられ認められているという思いになれる環境があるからです。ここは私たちスタッフやアシスタントだけでなく、子どもたち全員で作り上げていく空間なのです。
ところが、親御さんや学校の先生は「ぱいでぃあ」でそんなに元気になった子どもの様子をみると、「そんなに元気なら学校に戻ろう!」と働きかけます。で、周りから言われて本人もその気になります(不登校の子は特に周りに気を使うのです)。でも、それは「ぱいでぃあ」にいるから元気なのであって、まだ本当に気丈になったわけではないということが多いのです。
その結果、子どもはまた「できない自分」を体験し、更に深手を負うことにもなります。子どもの行動は親御さんを喜ばせたい一心の行動であって、必ずしも本心から生じたものではないのです。ですから、まずはじっくりとお子さんの本音と付き合い、片言の向こう側から聞こえてくる子どもの本心(声なき声)に耳を傾けることがとても大事です。
Q. 「教育相談」では、どんなことを話しますか?
A. 「ぱいでぃあ」では入学する前に「教育相談」や「体験入学」があります。たいていは「教育相談」で初めて互いを知り合うことになりますが、「どうして学校に行かなくなったのか」「フリースクールに何を求めるか」「ぱいでぃあはどんなフリースクールか」…などを、お子さんの話せる範囲で、また受け止められる範囲で話し合うことになります。
中には、「本人は相談にも行けない」とか「相談に来るのがやっと」、「相談に来ても目を合わせられない」…というように、学校に行けなくなったことでひどく落ち込み、マイナス感情や自己卑下でいっぱいになってやって来る子もいます。ですから、それぞれのお子さんの状況に合ったお話から入り、それぞれの接点を見つけていくことになります。
インターネットの発達した現在、「ぱいでぃあ」に来られる前に、ここがどういうフリースクールであるかを「フリースクール・ぱいでぃあ」や「いきいきニコラ」のサイト等でお調べになった方が多いですね。でも、稀に対象外の方(完全な非行系など)が来られる場合もあります。そういう場合には、その子に相応しい場などを紹介することになります(そういう子の場合、ナイーブ系に劣らず時にはそれ以上に周りの支援が必要なことがあります。放置しておくことはできません。でも、同居は不可能なのです)。
(次回に続く)
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