日本民族の論理には伝来思想が影響して神仏がある。現生の利益と来生の安寧にある。そして、ことわりとなったのは忠孝の正義である。
そして西洋思想の移入に絶対神と新たな合理の判断を持つようになる。日本哲学は自己の認識を明らかにするが、論理実践が求められるようになる。
封建社会から市民社会に移行する時期を、菊と刀に象徴して義理人情に見る個の負債に分析した日本文化の捉え方は、日本人の文化変容を教える。
ここに論理とことわりは民主と資本に変貌していまだ実践にある。
事は理
理非曲直
論理を見ると日本語はもとより借入した漢語を基にするのでその字義によることであり、翻訳語にロジックを入れることになると、論理とロジックの違いがある。ロゴスによる考え方は日本語になった漢字という文字とは異なると言ってよい。それが論理に及ぼすことはどう違うかということが多くの議論を呼ぶようで、民族の気づくことに議論する人たちは考慮しないので決着がないようである。極論には日本語は論理的でない、日本語に論理はないなどと杓子定規の持ち方をそのままにする。しかし、日本語をよくとらえてみると論理であるよりは倫理であることに気づく。道理、道義、道徳となる。人倫を論理の基盤にすると考えてよい。そこで、ロゴスとなる論理である。はじめに言葉ありというのは神の福音であるが、はじめに漢字ありというのは漢字を文字とする言葉の謂いであるからどちらも変わりがあるようなことではない。しかしまた、日本語ではすでにいわば天与の言葉があったことになる、それは文字なき民族の漢字文明の恩恵のゆえで論理はまずは形音義の捉え方に見ることとなって言葉の論理はすでにそこにあったのである。そこでまたしかし、論理に当てはまるは生命感情をもって人倫となるにいたる。
日本倫理思想史 増補改訂版
佐藤正英
東京大学出版会 2012/04/18
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