読書など徒然に

歴史、宗教、言語などの随筆を読み、そのなかで発見した事を書き留めておく自分流の読書メモ。

武士の内職

2009-07-11 13:21:21 | 歴史

司馬遼太郎、「街道をゆく」から
「武士は商人のまねをするな、むしろ、百姓のまねをせよ」と言う家訓が徳川の譜代大名のいくつかの家に有ったと言う。そうした家訓がない家でも倫理として存在したのだそうだ。下級の武士は江戸初期には既に内職をしなければ食ってはいけない状態になっていた。食えなければ百姓をせよと勧められていた。百姓仕事によって筋肉も忍耐力も養われると考えられたのである。商人のまねをしていてはそうは行かない。そこで商人の真似は一切、禁じられていたのである。それでも止むを居ない場合は職人としての内職は黙認されていた。傘張り、楊枝削り、扇子の骨作りなどの仕事は御家人級には普通に行われていたそうだ。江戸では百姓をしようにも土地が無く、そうした職人の仕事をやる事になった。時代が少し下って、長州の伊藤博文は志士であった頃、自分の女房に下関の黒門と言う場所で小間物屋を開かせていたが、これは自分でも体裁が良くないと思ったのか、彼のどの自伝にも出ていないそうである。