【看取りで後悔しないためにできること】たった一言で家族も医療者も救われる。

2021年02月18日 | 病気 余命を考える 死を迎える準備
【看取りで後悔しないためにできること】たった一言で家族も医療者も救われる。

2/11(木) 6:01配信
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ダイヤモンド・オンライン

写真:ダイヤモンド・オンライン

 16年にわたり医療現場で1000人以上の患者とその家族に関わってきた看護師によって綴られた『後悔しない死の迎え方』は、看護師として患者のさまざまな命の終わりを見つめる中で学んだ、家族など身近な人の死や自分自身の死を意識した時に、それから死の瞬間までを後悔せずに生きるために知っておいてほしいことを伝える一冊です。
今回は、『後悔しない死の迎え方』の著者で看護師の後閑愛実(ごかんめぐみ)さんと、『ホントは看護が苦手だったかげさんの イラスト看護帖~かげ看~』著者かげさんという2人の看護師が、「いのちの終わりの向き合い方」をテーマに対談し、現役看護師のリアルな現場での実話をお伝えします。(この対談は2019年9月に行われたものです)

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● 2人の看護師が語る 「いのちの終わりの向き合い方」

 後閑愛実さん(以下、後閑):患者さんのご家族に、「そろそろ命の終わりが近いです」という話をしたところ、ご家族からは「何回も呼び出されては持ち直して、呼び出されては持ち直して、ということを繰り返したから、『死ぬ死ぬ詐欺』にあったのはこれで7回目です」と言われたことがあります。

 かげさん(以下、かげ):あるあるですよね。

 後閑:余命って、医師は症状やデータ、経験などから言うけど、臨床の統計では3割しか当たらないと言われていますし、当然長いほうに外れるほうがいいけれど、短いほうに外れてしまうこともある。そこに執着するよりは、いいことを期待しながらも悪いことに備えるということが大事だと思うんですよね。

 かげ:救命センターでも、いろんな理由で延命できない、しないという場合に同意を取ったら(DNAR)、個室に移動してご家族に患者さんのそばについていてもらうんですけど、医療者側が考える以上に心臓は動き続けて、そのまま家族が付き添い続ける中、何時間も、ときには1日過ぎてしまうこともあって、「もう間に合わなくていいので帰らせてください」とご家族に言われたりすることもあります。

 後閑:救急に運ばれた患者さんからしたら、それは突然でそれこそ必死ですもんね。家族が近くにいたら、患者さんは頑張るでしょうし、一緒にいたいだろうし。

 私も夜中にご家族を呼んだら、やっぱり丸一日ぐらいもって、ご家族も「疲れてしまったからそろそろ帰ります」となったときに、お孫さんが「ばあちゃん、もう頑張らなくていいよ」と言ったら、その数分後にお亡くなりになったということがありました。聞こえていたのかなって、そのとき思いました。

 かげ:聴覚は最後まで聞こえるって言いますもんね。

 後閑:おばあちゃんはそのお孫さんが大好きで、お孫さんもおばあちゃんが大好きで、毎日お見舞いに来てたんです。だから、おばあちゃんはずっと孫が心配だったんですよ。だけどそのお孫さんが「ばあちゃん、もう頑張らなくていいよ」って言ったから、「わかった、もう私がいなくても大丈夫なのね」って安心したんじゃないかな。

 ところで、かげさんは今、救急にいるんですか?

 かげ:そうです。5年以上看護師をしてるんですが、もともとスタートは外科が中心の病棟で、救命に来たのは数年前です。

 救急へ異動して感じたのは、思っていたのとは違ったということです。自殺の人もいれば、普通にいつも通りに仕事をしていた人が心筋梗塞でそのまま亡くなってしまって、その死をご家族が受け入れられないということもあります。こちらでは死にたかったのに生きていると落ち込んでる人にどう介入するのかを悩み、あちらでは生きたかったのに亡くなってしまった人のご家族にどう声をかけようかと悩んで。

 助かりはしたけれども、もうこれ以上何もできないというときに延命をどうするか、人工呼吸器とか胃ろうとか、そういうときのご家族の意思決定支援など、今までならしなかったなという体験をたくさんしています。自分だったらどうするんだろう、というのをすごく感じます。

 全然答えは出ていませんけど、こういうときはこうすればよかったのかと思ったり、ここにいる患者さんのご家族はこうしたけれど、私はこうしたいなと思ったりすることがあります。

 私のイメージだと救急は、あらゆる疾患、解剖生理、治療、薬といったものをすべて勉強できて、身体のことについて学べるところと思っていました。しかし、思っていたのとは違いましたが、学びは多かったかなって。結果的にはいい経験ができたと思っています。

 後閑:救急にいる知り合いからも自殺者が多いと聞いたことがあり、私も思っていた救急のイメージと違うことに驚きました。その人の幸せだったり、暮らしに直結する助けになったり、その人にとって必要なことは「医療」だけじゃないなと思いました。




どうすれば平穏で「痛くない死」を自宅で迎えられるのか

2/9(火) 11:12配信
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文春オンライン

 医学が進歩した現代では、不治の病が減って、寿命も大きく伸びた。延命治療も可能となり、多くの人が当然のようにその恩恵にあやかろうとしている。しかし延命治療は時として、大きな苦痛を伴うこともある。また「ピンピンコロリがいい」と言ってはみても、そんな理想的な死を迎えられるのは、ごくわずかの運のいい人だけだ。もしあなた自身やあなたが看取ることになる家族に「いい死に方」を求めるなら、しっかりした準備が必要だ。(全2回の1回目/ 後編 を読む)

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◆◆◆
映画で知る「在宅医療」と「平穏死」

在宅医・河田を演じる柄本佑 ©️「痛くない死に方」製作委員会

 死について考えることを「縁起でもない」と感じる人もいるだろう。しかし「死に方」について事前によく考え、家族と話し合っておくことはとても大切なことだ。なぜ大切なのか、そしてどうしたら「痛くない、苦しくない死に方」ができるのかを教えてくれるのが、2月20日に公開になる映画『痛くない死に方』だ。

 この映画は、在宅医療のスペシャリストである医師、長尾和宏氏のノンフィクション書籍『痛い在宅医』、医学実用書『痛くない死に方』を原作とした劇映画で、監督は『TATTOO<刺青>あり』『愛の新世界』『光の雨』などで知られる高橋伴明。主演の柄本佑をはじめ、坂井真紀、余貴美子、大谷直子、宇崎竜童、奥田瑛二など、魅力的なキャストが多数出演している。

 柄本佑は、河田という若い在宅医を演じる。在宅医とは、病院に入院せず(あるいはがん終末期などで退院して)在宅療養することを選んだ患者の家を訪問し、診察・対応する医師だ。河田は高齢の末期がん患者・大貫を担当するのだが、緩和ケアに失敗し、苦しみながらの壮絶な死を迎えさせてしまう。亡くなった大貫の娘は悲しみ、自分が在宅医療を希望したせいだと自らを責め「私が父を殺したのか」とまで言い放つ。その言葉は河田に深く突き刺さる。

 やがて、若い河田は悩み考え、学んで成長していく。この映画は、観客にその姿を見守らせるのと同時に、「人が平穏な死を迎えるにはどうすればいいか」という知識と理解が深まるように作られている。劇映画でありながら、原作の書籍から知識をたっぷり盛り込んだ作品なのだ。

「大病院の専門医」と「在宅医」の違いを知るのが、主人公の転機に

 大貫の娘とのやりとりからモヤモヤした気分を抱えた河田だったが、在宅医の先輩・長野に相談することで、転機が訪れる。長野からは、河田の判断にいくつものミスがあったことを指摘される。「患者が苦しんで亡くなったのは自分のせいなのか」と、ひとたび深い悔恨の念に苛まれ、河田は信念を新たにする。長野の往診現場に立会い「大病院の専門医」と「在宅医」の違いを知り、「在宅医のあるべき姿」を模索するようになっていく。ちなみに、この先輩医師・長野は、柄本佑の義父にあたる奥田瑛二が演じている。

 劇中、河田が在宅医のあるべき姿を学ぶプロセスで、わたしたちの常識がひっくり返されるような知識の数々が示される。例えば「高齢で終末期の患者が何らかの発作を起こしたとき、あわてて救急車を呼ぶとどうなるのか?」そして「薬や点滴の使い過ぎが、どんな結果をもたらすのか?」といったことなどだ。

 いざとなれば、医療について素人の私たちにも、医師や病院から「家族が決めてください」「本人の希望で選んでください」などと、判断を迫られる場面が訪れる。ここで取り乱し、流されるように決断すれば、患者の平穏な死は叶わなくなってしまう。

「とにかく生きていることが最優先」の延命治療に慣れているわれわれが、なぜ「平穏死」を逃してしまうのか。「何を選べば、どのような結果になるのか」が、原作者である長尾医師の長年の経験を元にして劇中で明確に語られる。
「平穏死5つの要件」とは

 この映画には、主要ながん患者が2人登場する。1人目を「痛い死に方」のケース、2人目を「痛くない死に方」のケースとして見ることができる。この2つのケースを比べると、担当医師の対応と家族の判断によって「同じ末期がん患者でこうも違うのか」とびっくりするくらい、死に方に大きな差が出てくるのだ。

 しかし、そもそも「平穏な死」とはどんな死に方なのだろうか。

 多くの人は、まず「体の痛みに苦しまない」ことをイメージするだろう。もちろんそれも大事なことだが、ほかにも「理想的な環境で過ごせているか」「心に不安はないか」なども大切だろう。

 原作者は「平穏死」を以下のように定義している。

 言われてみればなんとなく腑に落ちるものの、この5つの要件を満たす死に方というのは、具体的にはどういう「死」なのだろうか。それをわかりやすく見せてくれるのが、劇中の2人目の末期がん患者だ。

本当の「痛くない死に方」とは

 悔恨の看取りから2年後、信念を新たにした河田医師は成長している。ここで登場する2人目の末期がん患者・本多は、明るくチャーミングなキャラクター。演じるのは宇崎竜童だ。

 本多は「平穏死5つの要件」の3つめにある“楽しみや笑いがある「穏やかな生活」”を自ら求めていて、毎日の暮らしに楽しみを見つけるのがうまい人物だ。イベントを好み、妻を愛し、ユーモラスな川柳を詠む。本多を見ていれば「こうして暮らせばいいのだな」という感覚が沁みてくる。

 しかし、そんな本多にも、やはり死は近づいてくる。

 終末期にはどんな変化が起こり、家族はどう判断すればいいのか。頼れる医師として成長した河田は、どう指示を出すのか。家族にも患者本人にも、一点の曇りもない「痛くない死」というものは存在するのだろうか。そのあたりも、ぜひ劇場で見届けてほしい。

 本作はタイトル通り、どうしたら「痛くない死に方」ができるかを紐解いた、知識溢れる貴重な作品だが、もちろん劇映画としても秀逸だ。高橋伴明監督の手腕とキャストの力によって、最後まで目が離せない、娯楽性の高い感動的な作品に仕上がっている。
ドキュメンタリー映画『けったいな町医者』も公開

 劇映画『痛くない死に方』の原作は、現役で町医者として市民の治療にあたっている長尾和宏医師の書籍だが、その長尾医師自身の在宅医療の現場を収めたドキュメンタリー映画『けったいな町医者』も、2月13日から公開となる。こちらは長尾医師と患者、そして家族のリアルな物語の記録だ。

 こちらの作品の監督は、劇映画『痛くない死に方』で助監督を務めた毛利安孝。多くの患者さんのリアルで貴重な「命の瀬戸際」が映っており、控えめに言っても衝撃的なドキュメンタリー作品だ。ナレーションは柄本佑が担当している。

 奇跡のような患者さんたちの反応、そして「在宅医療はどうあるべきか」を長尾医師が熱く語る場面も見どころ。患者やその家族から深く信頼される長尾医師の人柄や、確固たる信念をしっかり伝えながらも、その「けったいな町医者」ぶりに、つい笑ってしまうシーンも収められている。

 さて、記事後編では長尾医師本人にインタビューを行った。痛くない死に方(=平穏死)をより深く理解してもらうためにも「ドキュメンタリーと、劇映画『痛くない死に方』の両方を観てほしい」という長尾医師から、映画の裏話や在宅医療についてのお話をうかがった。( 後編 に続く)

INFORMATION

『痛くない死に方』映画情報
2021年2月20日よりシネスイッチ銀座ほかにて順次公開
出演:柄本佑、坂井真紀、余貴美子、
大谷直子、宇崎竜童、奥田瑛二 ほか
監督・脚本:高橋伴明
原作・医療監修:長尾和宏
『痛い在宅医』『痛くない死に方』(ともに、ブックマン社)
配給・宣伝:渋谷プロダクション
https://itakunaishinikata.com/  
©️「痛くない死に方」製作委員会

INFORMATION

『けったいな町医者』映画情報
2021年2月13日よりシネスイッチ銀座ほかにて順次公開
主演:長尾和宏
ナレーション:柄本佑
監督・撮影・編集:毛利安孝
配給・宣伝:渋谷プロダクション
https://itakunaishinikata.com/kettainamachiisha/
©️「けったいな町医者」製作委員会

在宅医療のスペシャリスト・長尾和宏医師が語る“平穏死”「死について考えるのは、前向きに生きるということ」 へ続く

市川 はるひ




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