「うつですね」誤診で悪化…医師が見落した“国民病”の正体

2020年07月06日 | 病気 余命を考える 死を迎える準備
「うつですね」誤診で悪化…医師が見落した“国民病”の正体

7/2(木) 12:00配信
幻冬舎ゴールドオンライン

ほとんどの医師が関心を払わず、病気ではないといわれることさえある「低血糖」。しかし、低血糖があらゆる不調を引き起こすことをご存知でしょうか。脳、心臓、腸、筋肉…低血糖による症状は全身に現れ、ときには重大な疾患を引き起こす可能性があるのです。※本連載は、千代田国際クリニックの院長である永田勝太郎氏の著書『「血糖値スパイク」が万病をつくる!』(ビジネス社)より一部を抜粋・編集し、医師さえ知らない「低血糖」の危険性を科学的に解説します。
患者数1700万人!?飽食の時代に蔓延する「低血糖」

食事の後に眠くなる人は、「血糖値スパイク」が起きている可能性があります。「血糖値スパイクが危ない。ガン、心筋梗塞、脳梗塞、アルツハイマー、その他の病因をつくる」と言われたら、どう思いますか。

糖尿病でもないのに低血糖の症状を起こす「自発性低血糖」(より正確には「本態性自発性低血糖」)は、あまり聞いたことのない病名だと思います。これはインスリンや血糖降下剤を服用したこともないのに、なぜか血糖値が80mg/dl以下に下がってしまう病態です。主にすい臓の異常や、すい臓に腫瘍ができたりすることがその原因といわれています。

厚労省研究班が2009年に発表した資料によると、その数は全国で推定350人(たった!)とされています。日本の人口1億2000万人から見ると、極めてレアな疾患です。しかし、本当にそうでしょうか。

実は私たちの小さなクリニックだけで、すでに自発性低血糖症の患者さんが900人ほどいます(2020年2月現在)。私たちの推定では、日本全国に1700万人ほどいる計算になります。
病因がわからず困った結果、「心の病」と誤診

低血糖を見抜けず誤診した結果、治せるはずの病気を悪化させている

では、なぜこうした患者さんが自発性低血糖症としてカウントされないかというと、その多くはうつ病や神経症などの精神疾患に誤診されたり、「自律神経失調症」など、適当な病名が見当たらないときに使われる「病名のクズカゴ」に入れられてしまっているのです。

多くの医師は高血糖を示す糖尿病には強い関心を持ちます。しかし、低血糖というと、糖尿病患者さんがインスリンを打ち過ぎたとか、血糖降下剤を飲み過ぎたなどの医療ミスで起こる低血糖(糖尿病性低血糖)にしか興味を示しません。

ですから、自発性低血糖症のような病態はめったに存在しないと思われてきたのです。しかし、私たちのクリニックでの症例からも明らかなように、糖尿病が原因ではない自発性低血糖はよくある疾患です。いわば、だれも気づかない病気、「見えない病気」です。低血圧や、起立性低血圧、甲状腺疾患も同様です。

患者さんは低血糖の症状による苦痛を訴えるのに、医師は病因を絞りきれずに困り果て、精神疾患にしてしまったり、自律神経失調症にしてしまったりします。その結果、向精神薬が処方されて、患者さんの病態はよりいっそう悪化していきます。正しく治療すれば治るものが、治らなくなってしまいます。

現代医療の盲点といっても過言ではない「低血糖」

私が低血糖に関心を持ったのは、ある患者さんがきっかけでした。カンさんは84歳。その年齢とは思えないほどしっかりしています。しかし、どうもこの頃、物忘れが増え、食後に眠くてたまらないことがあるといいます。また、体調が悪い。身体の痛みや疲労感に始まり、頭痛、食欲低下、手の震え、パニック発作、寝汗、悪夢などが続いていました。

身長は150cm、体重42kgの小柄な女性です。やせぎすで、太ったことはありません。夫と二人暮らしで仲のよい夫婦です。カンさんは一生懸命、夫の世話をしています。子どもは二人おり、別に所帯を持っています。大きなストレスはありません。

検査では、年齢の割には血圧が低い。98/78mmHgでした(横になった状態で測定)。さらに、血圧の中身(血行動態)を測定すると、心臓の収縮力(ポンプ機能)が弱いことがわかりました。しかし、心電図やエコー検査では問題がありません。

どうしてなのかと思いながら、心臓のポンプ機能を昂進させるクスリ(強心剤)をいろいろ使ってみました。けれど、ある程度よくなっても、カンさんが満足するほどには改善しません。ますます首をひねりました。単純に高齢のせいかとも思いましたが、それを言うとカンさんは怒ります。彼女に年齢のことを言うのは、禁句です。

カンさんの検査結果をていねいにじっくりと見てみました。すると、正常な人なら80~140mg/dlある血糖値が、なんと68mg/dlと低く、さらに、中性脂肪は正常値50~149mg/dlくらいのところが、彼女は38mg/dlという低値を示していました。

一般的に、血糖値が高ければ「糖尿病」、中性脂肪が高ければ「高脂血症」と診断されて健康上の問題とされますが、低値はあまり省みられることはありません(インスリンを使用している糖尿病患者さんの低血糖発作は除きます)。

カンさんには糖尿病はありません。もちろん、インスリンも使っていません。血糖値や中性脂肪を下げるクスリも使用していません。

「なぜ、カンさんは血糖値や中性脂肪の値がこんなに低いのだろう? ここに気づかなかったことに、何か落とし穴があったのではないだろうか?」と考え、カンさんに糖負荷試験を受けてもらうことにしました。

糖負荷試験とはブドウ糖の入ったサイダーを飲んでもらい、3時間にわたって30分おきに、血糖値とインスリン値を測定する方法です。インスリンとは、血糖値を下げるホルモンです。

その結果、カンさんはとんでもない血糖値反応を示しました。インスリンが健常人の2倍も出ていて、著しい低血糖でした。もしかしてこの低血糖は、カンさんの血圧が低いことと関係があるのではないだろうか。ふと疑問が湧きました。

私と低血糖の出会いはこのようにして始まりました。約7年前、2013年の出来事です。それから私は世界中の低血糖に関する文献を漁り、治療法を模索しました。

低血糖が糖化や酸化と関連することもわかってきました。糖化とは、血糖が生体の細胞を「コゲ」させてしまうことです。酸化とは、身体に入った酸素が活性酸素になり、細胞を「サビ」させてしまうことです。糖化も酸化も、身体をつくるタンパク質やDNAを変性させてしまうことを意味します。

知れば知るほど低血糖の世界は深く広いことがわかってきました。また、私が長年、研究してきた痛みや疲労や低血圧とも深い関係があることが明瞭になってきました。しかも、従来の医学の常識とは大きくかけ離れていることもわかりました。

研究するなかで、安全で確実に効果を発揮する抗糖化剤の発見もできました。特別な食事療法に加え、抗糖化剤の使用、運動療法などを総合的に続けることで、低血糖はコントロールできます。“特別な食事療法”と書きましたが、これは高血糖(糖尿病)や他の疾患の方にもすすめられる“健康創成食事療法”です。

先述のカンさんは、これらの治療に熱心に取り組んだ結果、すっかり元気になり、今も一生懸命、夫の世話を焼いています。まだ当分、お迎えは来そうにありません。

治るはずの病気が治らず、病態が悪化…「誤診」の悲劇

私たちは、低血糖や低血圧を「見えない病気」と呼んでいます。医師も患者さんも、低血糖・低血圧は「病気ではない」と思っているフシがあります。というより、低血糖や低血圧が、うつ病、双極性障害、てんかん、統合失調症、適応障害、認知症に間違われることも少なくありません。こうした患者さんに、向精神薬(抗精神病薬、抗うつ薬、抗不安薬、睡眠薬など)が処方されることも多いのです。そうなると大変です。向精神薬には、さまざまな副作用があります。末梢血管の拡張、血圧の低下、さらに、使い続けると脳が萎縮してしまうことすらあります。

低血糖・低血圧は治る病気です。それには、きちんとした診断がもっとも重要です。心の病と誤診されて向精神薬を処方されては、治療など望めません。

永田 勝太郎
千代田国際クリニック 院長
医学博士



mam***** | 3日前

母が異常な低血圧で、失神を繰り返していたが、どこの医者でも「異常なし」。精神的な病や詐病を疑われ医者からは笑われたり怒鳴られたりもした。数年後呼吸困難で救急搬送され入院し初めて難病と診断された。とはいえ典型的な症状は実はなく、推定のような感じだったがほとんど寝たきりになっていたので、難病認定がどれほどありがたかったか。低血糖低血圧は本当に見過ごされており、原因もわからず亡くなっている人もいるはずだ。

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yoy***** | 3日前

私も低血糖に長年苦しんでいます。
原因は「副腎疲労症」です。

確かに基準値より低いものは見過ごされやすいし、既存の病名の隙間にスポンと落ちてしまう病気が多いと痛感していたので、個人的にはよく書いてくれた!と思う記事でした。

他にも鉄欠乏がうつ病に誤審されたりすることもあるみたいです。

病院に行っても異常なしで困っている方は、通り一遍の血液検査とは違うデータの読み方をする「分子栄養学」を学んでいるドクターを探してみるといいと思います。

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myb***** | 3日前

40年近く経って解明されるとは…。身内は今は廃人の様にしかない状態。統合失調症と診断され、1日何十錠もの薬を飲まされ、人が変わった様に暴れ泣き喚き、穏やかになったと思ったらまた悪魔でも乗移ったかという豹変の繰り返し。毎月お見舞いに行くが、今日は穏やかに面会出来たと思っても、次の面会では途中から豹変して傷ついて帰宅する…。母と共に面会行くが、その母も高齢になりいつどうなるのか。
治りもしない患者に、「これは入院してもらわないと出せない薬」という医者。そうでしょう、見られるのが苦手な人が裸で動き回ったり、そこら中に排便して回ったり…。壮絶過ぎて。国による実験台にされたとしか言いようがないですよ。手に負えない患者になれば医師同士のかばい合いですかね…。それでも生きているんです。早く副作用がない薬は出てこないのですかね。本人はもちろん家族も地獄です。

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hytan | 3日前

まさに私のことかと思いました。自律神経失調症と低血糖のどちらの可能性もあるとは未だに思っていますが、危ういところも医師の判断にかかっているのですね。日本の精神科の投薬には謎に思うところも多々あります。どうか悪化だけはさせないようにご判断くださいませ。

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Mrs. Mermaid | 4日前

毎年の検診で、コレステロール値が低過ぎてC判定です。低脂血症・低コレステロール血症だそうですが、「低い分には問題無い」と言われます。
血圧も低く、上が70代・下が20代と言うことも珍しくありません(低過ぎて大概、二回測られますが)。
そんな私は、目眩耳鳴りはメニエール、動悸・異常発汗・頭痛は早目のプレ更年期、と診断され、薬を処方されますが、まったく楽になりません。
もしかして、低血糖が原因とか???

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mik***** |3日前

血圧が低い人では急に立ち上がったりする事による一過性の脳の虚血で目眩(立ち眩み)が起こり易くなったり、
低下した血圧を上げようとする働ききから交感神経が刺激され、
動悸・異常発汗・頭痛などの症状が出る事もあります。

主治医の先生はプレ更年期の影響で自律神経が乱れて低血圧の症状が出ているのだと判断されたのだと思われますが、治療が奏効しないとの事なので、血圧は維持出来ていますでしょうか?

あと低血糖が気になるのであれば、過去の健康診断の記録などを見て基準値と照らし合わせて、気になるようでしたら主治医の先生に相談してみてはいかがでしょうか?
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qpc***** |3日前

痩せすぎか甲状腺機能亢進症でしょう。
「低血糖」は原因ではなく結果です。
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***1 | 3日前

低血糖に対しては医師は鈍感です。
高血糖を見つけると患者さんに怒鳴るのにね。

低血糖ですが、まだ、未解明の部分が多いです。
この記事だけを読んで、勝手に「私は低血糖」と思い込まないでください。
特に女性の場合は甲状腺機能の問題が起きていることもあるからです。

気になる時はかかりつけ医に相談し、血液検査をしてみましょう。甲状腺機能にフェリチンも追加すると良いけれど、ちょっと検査料はお高め。それでも日本は医療保険が充実しています。何万円もする検査ではありません。数千円程度の窓口負担で済みます。

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ovg***** | 3日前

低血糖で出る症状が鬱にも似ている。朝方気分悪い、嫌な夢見ると言ってた同僚の血糖値をたまたま昼前に測定した。ものすごく低い。自分のは96ぐらい。内科に行ったそうだ。でもはっきりした診断はつかなかったそうだ。なんでも鬱とか自律神経失調症ってつける、精神科ってやばいところだ。聞こえの良い心療内科とかね。

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par***** | 4日前

あるあるですね。最近調子が~気分が上がらなくて~なんて内科で相談しただけでも、軽い鬱ですねって言われて安定剤とか処方された

しかしインスリンが過剰に出ると、より中性脂肪が溜まりやすそうな物なのに、それも低く、低血糖状態でもあると・・・
ちゃんと食べているのか、腸内で吸収分解がなされているのかってのが疑問に思うところですが
そういえば食べるとすぐに全身が発熱して発汗して、どれだけでも食べられるけど太れないって知り合いがいました
こういう体質の人があまり食べないと、こうなったりするのかな

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taimahara | 2日前

この人、痩せてギスギスだとの事ですが、糖質を摂らなすぎではないのですか?

その為、インスリンの出る幕が、あまりないのでは?

もっと糖質をとれば太るし、低糖質も改善されるのではないのでしょうか?

因みに私は、普通に糖質を摂っても、高血糖になるから、糖質制限しています。

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konkonkon | 3日前

低血圧も低血糖も注意深く診ていますがそんなにたくさんいる感じはしません。本物はインスリノーマや副腎不全です。記事に書くより症例集めて学会で報告して欲しい。でないと翌日から自称低血糖、低血圧の患者が増えて現場が困ります。




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