中韓関係いよいよ終焉 中国、訪韓も規制か 観光業は打撃 関係見直し必至
産経新聞 12/29(木) 14:29配信
中韓関係いよいよ終焉 中国、訪韓も規制か 観光業は打撃 関係見直し必至
外国人も多く訪れる韓国最大の繁華街・明洞=ソウル(川口良介撮影)(写真:産経新聞)
最新鋭迎撃システム「高高度ミサイル防衛システム(THAAD)」配備問題でひびが入った中韓関係がいよいよ終焉(しゆうえん)を迎えつつある。韓流の締め出しを本格化させている中国が、今度は自国民の訪韓も規制をかけるかのような素振りを見せている。韓国を訪れる外国人観光客のうち、中国人観光客はほぼ半数を占める。誘致に本腰を入れるライバル日本に中国人観光客を奪われている中で、渡航制限などが設けられると観光業への打撃は計り知れない。
中国が韓国に対し「報復強化宣告」ともとれる姿勢を見せたのは、12月15日に北京で行われた「2016韓国観光の年」の閉幕式だった。
聯合ニュースによると、閉幕式には両国の観光担当トップが顔をそろえた。式典では、韓国訪中団を迎えた中国国家観光客の李金早局長が、韓国語で「ありがとうございます」「おめでとうございます」と述べるなど和やかな雰囲気を醸した。李局長は「両国の観光分野の協力は両国関係の重要な利得になる」とも語り、韓国の趙允旋・文化体育観光部長らと夕食もともにしたという。
だが、この友好的なムードも、李局長が「最近の両国関係はTHAAD配備のために新たな局面と挑戦に直面しており、両国の観光業界と観光客が大きな関心を示している」と発言すると一変。聯合ニュースは、THAAD問題が解決されなければ、来年は両国の観光協力が順調にいかないことをほのめかした、と伝えた。
さらに、李局長は「両国が関連問題について適切な方法をともに模索し、両国間の観光協力に向け必要な条件を整えるよう願う」と強調。「適切な方法」とはまぎれもなく、中国が反対してきたTHAAD配備をとりやめることで、これが中国が韓国に観光協力するための条件だとはっきり突き付けた格好だ。
「韓国観光の年」は、15年に韓国で感染が拡大した中東呼吸器症候群(MERS、マーズ)コロナウイルスの影響などで減少した中国人の客足を取り戻すためのものだった。この年、韓国に向かった中国人観光客は前年比2.3%減の598万人。これに対し、日本に向かったのは約2.1倍の499万人と過去最高を記録した。最近の過去5年でみても伸び率は日本が韓国を上回っており、韓国メディアは「韓日逆転」と報じる。
中国がそっぽを向くと韓国経済にはその影響がすぐに及ぶ。韓国銀行(中央銀行)がまとめた国際収支統計によると、中国人観光客が激減した15年の観光収支はマイナス。それも8年ぶりの大幅赤字だった。
このため日本には負けまいと韓国は、観光目的の中国人観光客の査証(ビザ)発給要件を大幅に緩和するなど、「韓国観光の年」でてこ入れを図り、誘致に注力。この結果、今年1~11月までに韓国を訪れた中国人観光客は754万人に上り、目標に掲げた「800万人誘致」にあと一歩のところまでこぎ着けた。
こうした実績を踏まえると、北京でこのほど行われた中韓観光当局トップによる閉幕式は、本来なら韓国が多大なる謝辞を述べ、それに気分を良くした中国が手厚くもてなすというアツアツぶりを見せつける場だったはずだ。THAAD問題が後味の悪い展開に変えたのは明らか。中国の動き次第では、韓国が掲げた誘致目標は寸前のところで達成できない可能性さえも浮上する。
硬化する中国に対し、韓国は焦りの色を隠せないようで、中国からの訪韓観光客の減少傾向に関し韓国観光業界の懸念を伝え、中国観光局の協力を求めて必死に食い下がったとみられる。趙氏は「韓国への招待は続く」と話したが、もちろん、中国がこれを受け入れたかどうかは定かでない。
韓国当局が中国人観光客の呼び込みに腐心する一方、韓国南部の平和な島といわれる済州島では異変が起きている。外国人がビザなしで入国できるこの島では外国人の上陸拒否が急増しているという。ノービザ制度を02年に導入したが、ビザなしの入国者の99%を中国人が占める。上陸拒否の割合は14年まで1%にも満たなかったが、15年に1.2%、今年も足元では1.3%と上昇している。
島では今夏、中国人観光客による殺人事件が発生するなど、中国人による犯罪が急増している。済州地方警察庁によると、管内で夏場までに罪を犯した外国人のち、7割は中国人。250件近かった。数年前まで数十件だったことから、多発する犯罪におびえる島民らは不安を訴えているという。
韓国メディアは、「癒しを求めて島に来たのに、中国に来たと思うほど騒がしかった」といったインターネット上の書き込みを紹介する形で島の現状を伝える。済州島としてもビザを復活させるなど入国を厳しくしたいところだが、中国人を相手に商売が成り立っているところも多いようで、犯罪撲滅に向けた取り組みは一向に進まない。
中国、米国の世界2大国と適度な距離感を保ちながら自国を有利に導く「バランス外交」を看板にしてきた韓国。THAAD配備の決定以降、狂いが生じ、そこに政治の混乱も重なる。外交問題に左右されやすい観光業が立ちゆかなくなるのは想像に難くない。今後、THAAD配備が現実化するとき、韓国は観光業だけでなく、自国の産業を守るためにも、対中関係で重大な決断を下す局面を迎えることになりそうだ。(経済本部 佐藤克史)
産経新聞 12/29(木) 14:29配信
中韓関係いよいよ終焉 中国、訪韓も規制か 観光業は打撃 関係見直し必至
外国人も多く訪れる韓国最大の繁華街・明洞=ソウル(川口良介撮影)(写真:産経新聞)
最新鋭迎撃システム「高高度ミサイル防衛システム(THAAD)」配備問題でひびが入った中韓関係がいよいよ終焉(しゆうえん)を迎えつつある。韓流の締め出しを本格化させている中国が、今度は自国民の訪韓も規制をかけるかのような素振りを見せている。韓国を訪れる外国人観光客のうち、中国人観光客はほぼ半数を占める。誘致に本腰を入れるライバル日本に中国人観光客を奪われている中で、渡航制限などが設けられると観光業への打撃は計り知れない。
中国が韓国に対し「報復強化宣告」ともとれる姿勢を見せたのは、12月15日に北京で行われた「2016韓国観光の年」の閉幕式だった。
聯合ニュースによると、閉幕式には両国の観光担当トップが顔をそろえた。式典では、韓国訪中団を迎えた中国国家観光客の李金早局長が、韓国語で「ありがとうございます」「おめでとうございます」と述べるなど和やかな雰囲気を醸した。李局長は「両国の観光分野の協力は両国関係の重要な利得になる」とも語り、韓国の趙允旋・文化体育観光部長らと夕食もともにしたという。
だが、この友好的なムードも、李局長が「最近の両国関係はTHAAD配備のために新たな局面と挑戦に直面しており、両国の観光業界と観光客が大きな関心を示している」と発言すると一変。聯合ニュースは、THAAD問題が解決されなければ、来年は両国の観光協力が順調にいかないことをほのめかした、と伝えた。
さらに、李局長は「両国が関連問題について適切な方法をともに模索し、両国間の観光協力に向け必要な条件を整えるよう願う」と強調。「適切な方法」とはまぎれもなく、中国が反対してきたTHAAD配備をとりやめることで、これが中国が韓国に観光協力するための条件だとはっきり突き付けた格好だ。
「韓国観光の年」は、15年に韓国で感染が拡大した中東呼吸器症候群(MERS、マーズ)コロナウイルスの影響などで減少した中国人の客足を取り戻すためのものだった。この年、韓国に向かった中国人観光客は前年比2.3%減の598万人。これに対し、日本に向かったのは約2.1倍の499万人と過去最高を記録した。最近の過去5年でみても伸び率は日本が韓国を上回っており、韓国メディアは「韓日逆転」と報じる。
中国がそっぽを向くと韓国経済にはその影響がすぐに及ぶ。韓国銀行(中央銀行)がまとめた国際収支統計によると、中国人観光客が激減した15年の観光収支はマイナス。それも8年ぶりの大幅赤字だった。
このため日本には負けまいと韓国は、観光目的の中国人観光客の査証(ビザ)発給要件を大幅に緩和するなど、「韓国観光の年」でてこ入れを図り、誘致に注力。この結果、今年1~11月までに韓国を訪れた中国人観光客は754万人に上り、目標に掲げた「800万人誘致」にあと一歩のところまでこぎ着けた。
こうした実績を踏まえると、北京でこのほど行われた中韓観光当局トップによる閉幕式は、本来なら韓国が多大なる謝辞を述べ、それに気分を良くした中国が手厚くもてなすというアツアツぶりを見せつける場だったはずだ。THAAD問題が後味の悪い展開に変えたのは明らか。中国の動き次第では、韓国が掲げた誘致目標は寸前のところで達成できない可能性さえも浮上する。
硬化する中国に対し、韓国は焦りの色を隠せないようで、中国からの訪韓観光客の減少傾向に関し韓国観光業界の懸念を伝え、中国観光局の協力を求めて必死に食い下がったとみられる。趙氏は「韓国への招待は続く」と話したが、もちろん、中国がこれを受け入れたかどうかは定かでない。
韓国当局が中国人観光客の呼び込みに腐心する一方、韓国南部の平和な島といわれる済州島では異変が起きている。外国人がビザなしで入国できるこの島では外国人の上陸拒否が急増しているという。ノービザ制度を02年に導入したが、ビザなしの入国者の99%を中国人が占める。上陸拒否の割合は14年まで1%にも満たなかったが、15年に1.2%、今年も足元では1.3%と上昇している。
島では今夏、中国人観光客による殺人事件が発生するなど、中国人による犯罪が急増している。済州地方警察庁によると、管内で夏場までに罪を犯した外国人のち、7割は中国人。250件近かった。数年前まで数十件だったことから、多発する犯罪におびえる島民らは不安を訴えているという。
韓国メディアは、「癒しを求めて島に来たのに、中国に来たと思うほど騒がしかった」といったインターネット上の書き込みを紹介する形で島の現状を伝える。済州島としてもビザを復活させるなど入国を厳しくしたいところだが、中国人を相手に商売が成り立っているところも多いようで、犯罪撲滅に向けた取り組みは一向に進まない。
中国、米国の世界2大国と適度な距離感を保ちながら自国を有利に導く「バランス外交」を看板にしてきた韓国。THAAD配備の決定以降、狂いが生じ、そこに政治の混乱も重なる。外交問題に左右されやすい観光業が立ちゆかなくなるのは想像に難くない。今後、THAAD配備が現実化するとき、韓国は観光業だけでなく、自国の産業を守るためにも、対中関係で重大な決断を下す局面を迎えることになりそうだ。(経済本部 佐藤克史)
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