イラン・米国衝突で「ソレイマニ英雄論」を唱えた日本メディアの限界
1/13(月) 8:01配信
現代ビジネス
イラン・米国衝突で「ソレイマニ英雄論」を唱えた日本メディアの限界
写真:現代ビジネス
「イランの公式見解」に偏る不可解
年明け早々、世界中を騒がせた中東における米国とイランの対立は、両国政府が戦争回避の構えを見せたことで、軍事的衝突がエスカレートする事態は避けられた。そんな中、日本の大手新聞やテレビの報道には首をかしげざるを得ないものも少なくなかった。
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「どうして日本のメディアは、そろいもそろってイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官を『英雄』とばかり報じるんですか?」
東京の支局にいる、某米国メディアの外国人特派員は年始、こう言って動揺を隠さなかった。
米国とイランとの対立は、1月3日夜に米国がイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官を殺害したことから始まった。その日から、新聞各紙はソレイマニ氏を「『清貧の軍人』として市民からたたえられる」「国民的英雄」(いずれも朝日新聞、1月3日配信記事より)というトーンで報じた。
共通していたのは、「米国はこのような『英雄』を殺害するという暴挙に出た。これでイランの反米感情には歯止めが効かなくなり、『第三次世界大戦』に突入する」という、イラン政府の声明にもとづく論調だ。こうした報道について、先の特派員がこう疑念を呈する。
「ソレイマニ氏は、確かにイランでは『国民的英雄』とされていたことは間違いありません。ただ、彼らに工作を仕掛けられる側、米国やイラク、シリアの反シーア派勢力などの側から見れば『悪魔』と恐れられていたことも事実です。
ソレイマニ氏についての日本メディアの報道は『カリスマ軍人』や『部下思いの人情派』といった、イラン側からの人物評に偏っていました。しかし彼はヒズボラやフーシ派、ハマスといった、西側諸国ではテロ組織に指定されている勢力や過激派武装勢力の元締めでもあり、トランプ大統領が述べた『テロリストの指導者』という評価は別におかしなものではありません。
たとえ人間的魅力があっても、マフィアのトップを単純に『いい人』とは言えないのと同じです。
普通は、客観的報道を任じるのならば、彼がトップを務める組織がどのような活動をしていたのか、という部分も詳しく報じるべきでしょう。そうした経緯を省いてしまうと、なぜ米国が大きなリスクを抱えてまで彼を殺害しなければならなかったのかがわからない。
革命防衛隊は、イラン政府軍とは別に国内外での防諜・工作活動にあたる最高指導者ハメネイ師直属の武装勢力です。ソレイマニ氏は、イラン国外で親シーア派勢力を支援したり、破壊工作をしかけたりする『外征部隊』のトップでした。
彼はイラン核合意をめぐって米国が経済制裁をかけて以降、米国側へのテロ活動を中東全域で指揮していたとみられます。昨年12月31日に発生したイラク・バクダッドの米国大使館襲撃事件もその一つです。日本ではこうした背景の解説が、どの報道機関でも基本的に浅かったか、遅かった。
総じていえば、日本のメディアは明言こそしないものの『反米』バイアスに支配されていて、コメントを寄せる大学教員など専門家の多くも見方がナイーブだと感じました」
海外での情報収集能力の弱さ
今回、新聞のみならず、NHKなどテレビでも、上記のような似通った論調の報道が目立った。その理由について、海外支局駐在経験のある全国紙記者はこう解説する。
「情けない話ですが、記者クラブメディアの仕事のやり方は、海外でも変わらないとしか言いようがありません。つまり現地にある日本の当局、大使館や外務省などの『お上』からもらった情報が正しく、現地の当局者や住民からの情報は『誤報のリスクがあり、信頼できない』という意識が抜けきらないのです。
今回の報道の内容が『ソレイマニはイランの英雄』というトーンで一致していたのも、駐在記者が日本人官僚から背景レクを受けたのが明らかで、そうでなければ米国側からみた分析も記事に盛り込まれたはずです。
日本のメディアの実態をいえば、海外特派員でも、現地の人脈をしっかり築いて取材するのはワシントンや北京などごく一部の支局を除いて少数です。外務省があれだけ予算と人員を配置しているにもかかわらず、米国のトランプ政権誕生を見抜けなかったのを覚えている方も多いと思いますが、新聞社やテレビ局も構造は全く一緒。日本人の海外駐在は大半が『ハクをつけるための旅行』になってしまっているのです」
一方、イスラエルに特派員として駐在したことのあるベテラン通信社記者は、中東での日本メディアの取材の困難さについてこう振り返る。
「現地当局は基本的に日本に向けて情報発信するモチベーションが低く、取材に応じてくれる機会がなかなかありません。日本国内の中東問題に関する関心も低いため、普段は紙面上の扱いも小さくなる。石油問題に絡むところを日本の商社や大使館、外務省に取材するのが主な仕事になります。
中国、北朝鮮やイランなど、いわゆる自由主義陣営ではない国の支局の場合、現地情勢について体制に批判的な内容を書き続ければ、追放される恐れもある。海外メディアの記者はフリーランスが多くリスクをとる傾向がありますが、日本メディアは多くがサラリーマンですから、会社ごと追放されるリスクを冒してまでは取材できないのです」
「キーマン」を過大評価しすぎる
さらに今回、新聞やテレビなどの大メディアだけでなく、ツイッター上でも「自制の効かないトランプ大統領が衝動的に殺害指示を出した」という説と、「すべて計算尽くで攻撃した」という対照的なふたつの説が多く流れた。
これら二つの説、そしてソレイマニ氏の「英雄視」に共通するのは、「ある特定のキーマンの動向が国際情勢を左右する」という、特定個人に対する過大評価だ。
先ほどの米国メディア特派員のコメントにもあったように、近年イランやその周辺各国では米国に対する攻撃が増えていた経緯があるので、ソレイマニ氏殺害というような露骨な手段でなくとも、いずれ何らかの形で米国は報復攻撃に踏み切ったと考えられる。
一方、トランプ大統領が計算尽くで決断したという見方も実態とは異なる。中東に詳しい防衛省関係者はこう解説する。
「ソレイマニ氏殺害の時点で中東の米国民への退避勧告が出ていなかったことから考えても、米軍など関係部署との総合調整が出来ていなかったのは間違いありません。もともと戦争を嫌うトランプ氏が何も考えずに殺害に踏み切ることは考えにくいですが、ある時点で急に実行を決めたのは確かでしょう。今回のような過激な手段は、中東専門家ならまず賛成しませんから、大統領のワンマンぶりが再確認されたとも言える。
さらに、今回の対立は結果的に大規模な軍事衝突には至りませんでしたが、それはあくまで幸運だった。ソレイマニ殺害という過激な手段を用いれば、彼を慕うイラクの民兵などが勝手に米国民を殺害する可能性も高まります。そうした偶発的リスクに加えて、両政府のコミニュケーションの掛け違いが起これば、より深刻な事態に至っていたかもしれない。
例えば今回、米国はイラクを通じて、駐留米軍基地へのミサイル攻撃の事前通告を受け、イランの『軍事衝突をエスカレートさせたくない』という意図を把握したと説明しています。しかし、イランがウクライナ国際航空機を『人為的ミス』で撃墜したことからもわかる通り、たとえ中央が自制しても、現場を完全に統率できるわけではない。もしこの飛行機にアメリカ人が1人でも乗っていたら、米国はさらなる武力行使に出ざるをえなくなったかもしれません。
ひとくちに『米国とイランの衝突』といっても、国家の意思決定プロセスというのは一枚岩ではありません。外交筋と軍、情報機関が得た情報が矛盾することも珍しくない。現に米軍のミリー統合参謀本部議長は『イランは米軍基地への攻撃で、米兵を殺害する意図があった』と、トランプ大統領とは異なる見解を示しています。『完全に正しい情報』をもとにすべての判断が下せるなら、そもそも戦争など起きないのです」
もう読者の目はごまかせない
今回の米国とイランの対立で明らかになったのは、海外報道における日本メディアの頼りなさはもとより、アクセスできる情報源や分析主体の多様化が爆発的に進んだことだ。
湾岸戦争、イラク戦争の時代なら、中東情勢を知るには新聞やテレビの情報に従うしかなかった。しかし現在では、ツイッターで様々な立場の専門家の発言を直接知ることができ、英字メディアの記事にも簡単にアクセスできるようになった。
旧態依然の「中東の人々は反米」という固定観念に縛られた報道や、ニュースソースを日本の当局に頼り、役人のレクを垂れ流す安易な態度では、もはや読者の目をごまかすことはできないだろう。
松岡 久蔵
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mmc***** | 1日前
TBSの昨日の朝の報道番組で
トランプのせいで飛行機墜落まで発展した
トランプによる米大使館攻撃の主張は嘘
ソレイマニはイランの英雄
トランプは戦争を始める
イラン擁護でトランプ叩きにしか走れない番組とそれをドヤ顔でいう司会や評論家に鳥肌が立った
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may***** | 1日前
昔ソ連のスターリンが死去した時朝日新聞は、スターリンは子供好きの優しい人物と報道していました。 大粛清を行ったのに。。。
また反米 反イスラエル トランプが~ 安部が~で始まり 終わる。
この思考から改善しないとダメだと思います。
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Sabu****** | 1日前
反米であることがインテリであり知的であるとされる、という価値観に凝り固まった学生闘争世代の連中が、今のメディアを牛耳っていますからね。ある意味当然のことです。
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洗練された芋虫 |1日前
当時の学生運動の連中を受け入れる業界が新聞社、テレビ局ぐらいだった。だから、日米安保を決めた岸信介には恨み骨髄だし、その孫の安倍晋三を目の敵にしている。
結局は公共の利益よりも、非常に狭い視野の「私怨」で報道がなされているのが日本のマスコミ。
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gir |1日前
イランのロウハニ大統領は先月来日してたよね。
ウクライナ機撃墜したのはハメネイ師の私兵である革命防衛軍。
ロウハニ大統領は処罰すると言っている。
抗議デモやらせているのは、だれなのかな?
トランプ大統領は、抗議デモを応援している。
自衛隊は今月中東に行って、首相も自衛隊にかこつけて中東に行っている。
シナリオ出来ているよね。
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zzz |1日前
民主主義・自由主義・資本主義を捨てようとしていた自己矛盾だらけの人達。20歳を越えて左巻きを続けていたのは経済音痴だけだ!
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ghk***** |1日前
最近、一部メディアの態度や報道姿勢をみていると、ジャーナリズムを盾に慰安婦問題の様なフェイクニュースを撒き散らしても、反省しない反社とは別の意味での社会悪だと思えてきました。
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fal***** |1日前
日本は、左翼にとって天国のような国。自由に革命運動できるし、半島系組織から活動資金ももらえる。何より、赤旗を振って団結する組織が日本中に点在している。JR、郵政、鉄鋼等の労働系と、教職員組合等の公務員系。左翼系メディアは、固定客がいる限り衰えることは無い。
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d27***** |1日前
お花畑で吠えている左翼バカ。
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※※※ |1日前
アメリカは戦前、戦中とかなりコミンテルンに浸透され、日米開戦、原爆開発、投下など強く進言している。
その反動で国内では徹底した赤狩り、日本では反対に左派を利用した。
更に反日朝鮮人に日本国籍を与え、日本を分断統治しようとした。
メディア、教育界、政界がそのアメリカの戦略の中心だった事は言うまでもない。
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アメリカは害悪そのもの |1日前
貴方のようにアメリカに洗脳され、同盟国(日本を占領)アメリカのやる事は正しいと思い込んで批判を受け入れられない馬鹿が日本に多いのも事実です。アメリカの過去の犯罪歴を見れは世界中から恨まれるのは当然。それがわからないなんて終わってますな。
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phi***** |1日前
北を地上の楽園と言い、日本も北のような政治体制を目指すべきだと言ってた学生闘争時代から心の成長が止まってしまった人たちですからね。反米でさえあれば何でも正義なんです。
彼らは、拉致被害者家族を嘘つき呼ばわりしてたんですよ。自分たちが信じた北朝鮮が拉致なんてするわけがない、あいつらは差別意識があるからそんな嘘を言うんだ、と。北が拉致を認めてからも彼らは謝りもせずに、しれっと拉致被害者家族の心に寄り添ってるかのような演技をします。そのくせ、安保法案の時に「中国や北にリアルな危険はない」と本音を漏らします。
ISが現れた当初すら、彼らは単に反米だからというだけの理由で日本のマスコミはISを素晴らしい連中であるかのように扱ってました。今回の司令官も、彼がどんなに酷い虐殺をしてきたのかを無視して英雄扱い。
日本のマスコミは、自分たちのプライドを守るためなら人命を屁とも思わない、人間のクズです。
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※※※ |1日前
GHQによる洗脳教育
GHQは軍事的に破壊した日本のメンタルをも粉砕するために、戦後左派と外見の似ている反日朝鮮人を利用しようとし、彼らを積極的にメディア、教育界に送り込んだ。
因みに、朝鮮総連の前身組織は、戦後未払いの朝鮮人労働者の賃金を企業に請求し、60数億円回収したが労働者には一切払わず、総連設立資金と日本共産党再興資金に充てたそうだ。
大学教授にも主体思想信奉者がいる。
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Paul Gleason | 1日前
自分たちの思い通りの左傾国家を作る手段として、情報操作に躍起なんでしょうね。
昔々、「風は吹いた」と称して社会党が躍進。民主党が政権を取るなどありました。再度その夢を捨てきれず、左派お得意のプロパガンダ攻勢なんでしょう。
情報過多の今の時代、新聞やテレビコメントで偏った報道は逆効果。
それでも国民を煽れると奢るメディア。
かわいそうですね。
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居るっスて言ったら居留守だって思われた | 1日前
日中記者交換協定なるものが有りましてね・・・その後名称が「日中双方の新聞記者交換に関するメモ」に変えられて現在に至るです
協定が結ばれたのが1964年・・・半世紀以上も前 人に例えればもう還暦間近
この間日本マスコミは中国に鼻面掴まれて好き放題に操られっぱなし
これはソレイマニを英雄にしたい国のご意向を忖度してるだけでしょう
・・・これを限界と呼ぶなら 確かにその通りだと思います
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kig***** | 1日前
最近はSNSが発達してるから、日本のメディアが垂れ流すフェイクを理解しているよ。
だから、新聞もテレビも見なくなる人が増えているんだ。日本のメディアは、余程改革しないとこのまま潰れるだろうね
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hir***** | 1日前
洗脳された愚かなメディアと記者。
信じる?信じないを言う段階で社会を語る資格なし。利害が少なく意図ない複数の人の話し、正誤検証の経験値、時系列的可能性などが大切。
情報源の職業・地位・集団は肩入れして当たり前の疑いも必要だが本質ではない。
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sil***** | 1日前
日本の外務省の情報収集能力も同じようなものでしょう。昔は、総合商社の情報収集能力がすごかったらしいが、今はどうなのかな。
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hs2***** | 1日前
松岡市はわき腹を突いている。記者達の力量を情報革命の効果で知ることが可能になった。同じ事件で多数のメディアの記事を簡単に比較できるからである。文章を読めば筆者の力量とどの位の洞察力を持つかは歴然と判明してしまう。恐ろしい情報競争である。新聞社や通信社でも同様である。特に海外発信記事は顕著にその差が顕出する。中国や韓国や発展途上地域の記事は猶更である。殆ど購入記事、伝聞記事だからで、当該地域に住んで取材している地元には到底対抗出来ない。日本人フリーランス記者の記事を購入してもそこが割れている。そういう時代になったという自覚が記者達に無いことが遺憾である。
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kam***** | 1日前
カタカナの方のゲンダイさんとはひと味もふた味も違う大マスコミへの切り口はさすがです。
両極端な仮設はわかりやすいものの一人の人間にも様々な側面があるのに、人間の最大単位の集合である国家が一側面で語れるわけがない。