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豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

太陽光励起レーザ工学

2014年11月07日 | デジタル革命渦論

 

 

 

【オールソーラーシステム完結論 29】 


● 太陽光励起レーザー工学

水素ガスは、酸化剤により酸化し水を生成するので、燃料電池の燃料などクリーンな燃焼
であり、化石燃焼の枯渇や、地球温暖化対策からエネルギー・インフラ基盤を、化石燃料
からクリーンなエネルギーへ切換える必要があり盛んに研究開発されている燃料である。
これまで、水素は、水の電気分解反応により生成され、高圧容器に充填された後、各所に
運搬されて使用されているが、運搬重量が大きく、可燃・爆発の危険性があり取り扱いに
注意を要し、長期保存からも充分なものでない。その弱点を克服する方法として『パウダ
ー水素エネルギー工学
』で取り上げた、水素化ホウ素ナトリウムから水素を取り出す方式
を掲載したが、それ以外の既存方法には以下のようなものがある。

 



例えば、苛性ソーダーの電解製造方法から水素を取り出す従来法にもくみ取るべきものが
あるが、多くは地下化石燃料依存型であり、持続可能社会指向型の、いやこの"オールソー
ラーシステムにはなじまないが、水電解法は再生エネ型は出力の不安定の弱点は蓄電シス

テムの整備で解決できるものの「コストが高い」との一点が問題とされる(ここでは、水
電解法の技術課題についてまた別の機会に掲載したい)。そこで、「マグネシウムと太陽
光励起レーザを用いたエネルギー循環システム」の新規考案「特開2007-145686 水素生成
装置、レーザ還元装置、エネルギー変換装置、水素生成方法および発電システム」を取り
上げた(下図参照)。




この提案は、水素生成装置、レーザ還元装置、エネルギー変換装置、水素生成方法と発電
システムに関わるもので、水素生成装置10は、金属元素を保持する反応容器12と、反応容
器に水を供給する貯水槽16と、金属元素と水との反応により生成した水素ガスを回収する
水素取出管14とを含み、回収された水素ガスを貯蔵する水素貯蔵装置26を含むもので、水
素ガスを還元し生成した金属元素の酸化物や水酸化物をレーザ還元し、金属元素を再生す
る。レーザ還元では、太陽光励起レーザを使用することができる。また、レーザ還元の際
に形成する荷電粒子を使用し電流を生成する、エネルギー変換装置と水素発生システム
を使用する発電システムである。

 

この方法は、パウダー水素エネルギーの「水素化ホウ素ナトリウム循環システム」と異な
り、マグ
ネシウムはペレット状あるいは豆粒状であり、エネルギー効率でみると、太陽光
励起レーザは数パーセント(2%とも)言われている。これは、太陽光発電の水電解法と
比べ――太陽光の変換効率を25%として電解効率を80%、それ以外のエネルギーロス
をα%=10としたとき、20α%(=
80×0.25×(1-0.1)α)となる――9分の1と効率
が悪いことになる。因みに、水素化ホウ素ナトリウム循環システムの概念図を下に掲載。

なお、メタホウ酸ナトリウムと水素および還元性金属の反応メタホウ酸ナトリウムを還元
性金属と水素雰囲気下で加熱することで、NaBH4を合成する方法の式、

NaBO2 + 2H2 + 2Mg  → NaBH4 + 2MgO  
△G0(298K) = -342 [kJ/mol-NaBH4]

金属の表面にH- (プロタイド)が生成する金属では特に効率よくNaBH4を合成することがで
きる。この方法でも NaBH4の加水分解により水素を発生した後に回収される、NaBO2を含
む"使用済み燃料"からNaBH4 を再生で
きる。

このように、マグネシウム法は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、アルミニウム、
カルシウム、亜鉛な
どの元素から反応エネルギーを回収すると共に、水素ガスを発生させ
る技術――金属を用いて水を水素に還元する水素生成装置と生成された金属酸化物または
化学物質を、レーザで還元するレーザ還元、エネルギー変換方法、水素生成および発電シ
ステムであるが、従来、含マグネシウム酸化物(酸化マグネシウム、ドロマイト)などの
酸化物資源を約千℃の高温のアーク放電で還元し、水を添加しても水素ガスを得ることが
できるが、環境負荷を増大させる原因となる。

(1)また、水素生成装置およびそのための方法が種々提案されている.特開2003-313001
    号公報では、密閉可能な本体容器内で、水素化物を加水分解させて水素を発生させる
  水素
発生方法で、水素化物と水とを、少なくとも一部が水蒸気透過性を有する撥水性
  水蒸気透過
材により隔離すると共に、この撥水性水蒸気透過材を透過する水分子と水
  素化物と
反応させて水素を発生させる水素発生方法がある(下図参照)。

 
(2)アルミニウムとアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属からなる水素発生用燃料を
  収容する容器と、この容器に収容された水素発生用燃料を加熱溶融して合金化する加
  熱手段と、容器内の水素発生用燃料に水を供給する水供給手段とを備え、水素回収手
  段で発生した水素を回収する水素発生装置である(下図参照)。

(3)また、アルミニウムとアルカリ金属もしくはしくはアルカリ土類金属との合金の水
  素発生用燃料を使用し、容器の内部を冷却する冷却手段を備える水素発生装置とこの
  装置を用いる水素発生方法(特開2002-69558)。

(4)反応金属体を熱源を介して溶融し、溶融反応金属体を容器底部に貯め、溶融反応金
  属体に水を供給し熱化学反応を発生、得られた水素を外部に導出し、酸化金属体を排
  出手段を介して容器外に排出する水素発生方法(特開平8-109001)。

(5)容器内に設けられ水と電熱化学反応する反応金属体とを用い、反応金属体の上部か
  ら水を供給し、反応金属体と水とによる電熱化学反応により水素ガスを発生する水素
  発生方法とその装置(特開平8-59201)。

(6)水素を水から生成させるためにアルミニウム粉末と酸化カルシウム粉末とを含み、
  アルミニウム粉末の配合比が85質量%以下である水素発生材料とこの材料を使用す
  る水素発生方法と装置(特開平7-109102)。



(7)また、特開2004-231466では、水素を水から生成させるためにアルミニウム粉末と
    酸化カルシウム粉末とを含み、アルミニウム粉末の配合比が85質量%以下である水
    素発生材料およびこの材料を使用する水素発生方法と装置。



上記した水素発生装置と水素発生方法は、金属を使用して水を還元する高温状態で水素発
生材料を混合物し、混合物を加熱する電気炉、電気化学反応、または高水素原子含有物質
を使用し水素ガスを生成するが、金属元素は、水素を発生させた後、酸化された金属酸化
物を廃棄すると、際限なく金属元素――例えばアルミニウムを使用する場合、電力消費と
化石燃料の使用などを含めたトータルな環境コストが必ずしも低いものではない。
と、そ
う記載している。実はここのところの大まかな計算値が欲しいところだが、この労力は膨
大になるだろう。

一方、金属元素の酸化および還元は、湿式の電気化学的方法以外に、いずれも高温下で進
行する。この場合、最小の装置コストで金属酸化させ水素を生
成し、同時に処理対象を変
更し、最小の装置構成の変更で金属酸化物を還元し、金属生
成する水素発生装置が提供で
きれば、トータルな環境
コストを逓減できると指摘している。


● 太陽光励起レーザとは

一方、レーザ装置は、主に電気エネルギーを光(ランプ点灯)や放電の形態に変換し、レー
ザ媒体を励起することによりレーザ光を発生している。この手法には、複数段のエネルギ
ー変換過程が含まれており、エネルギー効率が低い(効率は2%?)ことが知られている。
この理由は、もともと品質の良い電気エネルギーを、低効率エネルギー変換を経て光に変
換して利用するためで、この点を改良したものに、半導体レーザ励起の固体レーザが提案
されいるが、光電変換効率は、約50%程度まで得られるようになり、その汎用性も向上
すると考えられる。

そこで、太陽光を使用する太陽光励起レーザがある。太陽光を励起光源として使用すれは、
化石燃料に依存した電気を直接使用した電気-光変換プロセスを使用せず、レーザ発振光
源にでき、レーザ還元装置として、汎用レーザ装置をより容易、かつ低コスト、さらに低
い環境負荷で使用できると考えられる。加えて、風力発電、潮力発電、地熱発電など化石
燃料に依存しない発電方式も実用化されつつある。ピーク発電量では、2千kWhを超え
る電力を提供することが可能で、この電力で発振するレーザを使用しマグネシウムの形で
エネルギーを蓄えることができれば、環境負荷を低減したエネルギーの供給できる。

さらに、レーザ還元を行う場合、金属酸化物などの分解の初期プロセスで、金属イオンが
生成することが見出され、レーザ還元より発生する金属イオンは、局所的なプラズマを形
成し、既存の磁気閉じこめ装置を使用することにより制御可能となり、磁場方向に垂直な
方向に金属イオンと負イオンは互いに逆方向に運動するため、系外に電流として取り出す
ことで、光電変換が可能となる。金属元素を用いて水から水素を製造する場合、酸化物が
副生物として得られ、高いアルカリ性の故に、その処理・廃棄などが困難であった。さら
に、金属元素の酸化物は、高温分解すれば、再度、アルカリ金属またはアルカリ土類金属
に変換でき、再生可能エネルギーを使用し高温環境を生成できれば、環境に対して最も負
荷の少ない方法で水素ガスを生成できる。

また、従来の汎用レーザは、電力を消費し、また電気-光エネルギー変換効率が低く、一
方、太陽光励起レーザは、大学・研究機関などにおける実験的研究がなされるにすぎず、
工業用途に適用することができない。

そこで、特許文献(下図/下)に記載されているようなテーパー状の反射面による集光方
では、太陽光がレーザー媒体の出力端部付近に集中して集光され、レーザー媒体が吸収
る太陽光のエネルギーがその部分だけ大幅に大きくなる結果その出力端部付近でのレー
ザー媒体の歪みが大きくなり破損するおそれがあったが、下図(上)の、太陽光励起レー
ザー装置1のように、太陽光に励起されてレーザー光を出力す
る棒状のレーザー媒質31
と、レーザー媒質の長手方向の軸Xに対してレーザー媒質の側
方に位置し軸Xに対してそ
れぞれ異なる傾斜角を有し太陽光を反射する第1反射面22a
及び第2反射面22bと、
を備え、第1反射面は、レーザー媒質の出力端部側の位置から、レーザー媒質の出力端部
と反対側の端部側の位置へ向かうにれて、軸Xから離れるように、軸Xに対して傾斜する
構造により、太陽光からレーザー光への変換効率及びレーザー媒体の耐久性を向上させる
ことが可能な太陽光励起レーザー発振装置に改良したものである。

下図は、酸化マグネシウムと、一酸化ケイ素または二酸化ケイ素のような非金属酸化物と
の混合物又は化合物に対してレーザを照射することにで、非金属酸化物から酸素を脱離さ
せることで、一酸化ケイ素または二酸化ケイ素のような非金属酸化物から高純度のケイ素
を収集する。

ところで、理論的には、一酸化ケイ素又は二酸化ケイ素などの酸化物に対して、所定条件
下において、レーザなどを用いて沸点以上の温度をかけると、二酸化ケイ素等を構成する
ケイ素と酸素との結合が切断されつつ噴出し、加熱場所から分離することができる。した
がって、半導体材料などに用いることができるケイ素を収集することができ、例えば、二
酸化炭素でも、所定条件下で、レーザなどを用いて沸点以上の温度をかけると、炭素と酸
素との結合が切断されつつ噴出し、加熱場所から分離でき、地球温暖化の一因とも考えら
れている二酸化炭素量が削減できるが、「所定条件」を選定することが困難であり、理論
的にはともかく、現実的に、高純度のケイ素を収集するとか、二酸化炭素量を効果的に削
減させることは非常に困難である。この還元装置は、第1の酸化物(例えば、酸化マグネ
シウム、酸化カリウム又は酸化カルシウム)と第2の酸化物(例えば、二酸化炭素や一酸
化ケイ素)との混合物や化合物に対しレーザを照射することで、第1と第2の酸化物から
酸素を脱理させている。太陽光を含むエネルギー源を利用する固体レーザ、気体レーザ、
あるいは半導体レーザとすることもでき、太陽光や自然エネルギーから生成したレーザの
実現で、化石燃料に由来する電源を使用することなく、地球環境に配慮dした新たな還元
処理ができる。


 

以上、マグネシウムと太陽光励起レーザーを用いたエネルギー循環システム技術を大急ぎ
で俯瞰してみたが、商用化までのハードルはかなり高そうにも見える。今後の動向を注視
したい。
 

 

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