Kyoko AIHARA's Diary (Writer&Photographer) 相原恭子(作家&写真家)のブログ 

ヨーロッパ紀行、京都花街と着物、ビールとグルメなどをテーマに執筆、撮影、国内・海外での写真展や講演等。今日も良い日!

2010年12月23日(木・祝) 川端康成の京都 友禅作家 田畑喜八さん

2010-12-23 | 文学
京都に親しんでから、改めて、水上勉、谷崎潤一郎、瀬戸内寂聴、川端康成などのの作品を改めて読んだ。

してみると、特に、川端康成の小説に登場する場所にとても共感を持った。
小説には現実の地名で書いていなくても、「ああ、ここだ!」、という情景が次から次へと出て来て、行間の意味というか、作家の奥底にある情景への思い入れが見て取れるような気がする。

その場所は、観光ルートとは程遠かったり、逆に観光客でざわめく通りをほんの少し入っただけの場所だったり、山奥だったり、いわゆる何もない(店も名所旧跡もない)場所だったりするのだが、「そんなところどうやって行かはった?」、「どうして見つけはったん?」と京都の友達に聞かれるような場所だ。

わざわざ探して出かけた場所ではない。
抽象的な表現になるが、中心に居ないで、端へ、奥へ、隅へ行ってみて、そこから中心を眺めたいとか、隠れた場所から本質が見えるのではと思いつくままに出かけたとか、たまたま散歩して行き着いた場所なのだ。

土地、というのは、訪れる時間帯や季節によって様々な様相をみせ、毎回受ける印象が異なるものだから、まさに風景との一期一会だ。
不思議に、小説に出てくる場所が、その季節や時間帯も同じ場合が多い。

「古都」の双子の姉妹が二人で雷雨をしのぐ杉林や、隠れた庵、細い路地・・・。

先月、染色家で「都をどり」の総踊りの衣裳も担当している田畑喜八さんを訪ねた。
京都を離れてみようと早稲田大学を卒業し、<京都の江戸っ子>を自称する田畑さんは、チャキチャキとして、ユニークで、何事にも詳しく、魅力的な人だった。

本論の友禅のお話も終わったので、さあ、失礼しようと立ち上がると、
田畑さんが、川端康成のお話を始めた。
学生の頃、川端康成の鎌倉の邸宅に招かれ、
川端康成も、何度もお父様(人間国宝)を京都に訪ねて、長話しをしていたという。
そして、「私が書きますよ」と小説(「古都」と思われる)の構想をそれとなく語り、
お父様を登場人物にしたいとおっしゃったそうだ。

「あなたが、今、座っているところに、川端先生がいつも座られ、父と話してましたわ」と田畑さんは昔を思い出したようだった。

偶然に、川端先生と同じ場所に座るとは、ありがたく、晴れがましく、おそれおおいことどす。