世界の動きを英語で追う

世界と日本の最新のできごとを、英語のキーワードを軸にして取り上げます。

「2019年、中国を襲う水不足と飢饉」 Dry China

2009-12-31 | 中国・ロシア・インド・ブラジル動向
2009年12月31日(木)

Financial Timesは年末のLEX欄で、「2019年に、2010年代を振り返る」という未来予測のシリーズを載せている。すでに世界的な水不足が現実化しているなか、「中国はこれから10年の間に水不足で壊滅的打撃を受けるだろう」というシナリオが示されている。

その見出しの言葉は”Dry China”で、2009年末に過去10年を振り返って、「中国帝国」が水で滅び、そのとき中国の最高指導者に上り詰めている「習近平主席」が周辺国に食料援助を乞うことになるという話を語る:

『2010年の初めのことを思い出す。この重大な問題の予兆はすでにあったのだ。気づくべきだった。「マカオのカジノのアイスバケットに氷がなくて空っぽだったこと」や、「内モンゴルの新築の家のトイレに水が流せなかったこと」ことがすべて今日の災いの始まりだったのだ』

『2015年に中国は、からからに乾ききった。2009年から2012年まで、中国政府は景気浮揚のために金融を極限まで緩和し、信用を膨張させた。その結果、巨額の資金が投資に回り、闇雲に建設された工場で工業用水が大量に消費された』

『中国は世界人口の20%を占めるのに、水資源は6%に満たなかった。水を大量に、がぶ飲みする(water-guzzling)セメント・鉄鋼工場に操業停止を命じてみたものの、本気で取り締まりは行われなかった。なぜなら失業者を大量に生み出すような政策を、出世第一の地方政府官僚が本気でやるはずがないからだ』

『その後4年経って、危機は破滅的な状況へと進行した。内陸部では作物は壊滅し、飢饉が襲い、土地は打ち捨てられる事態となった。一方で水の豊富な沿海部でさえ給水制限が行われる事態となった』

『この事態は、2010年にきちんと対策を打っていれば回避可能であったのだ。10年前には中国はすべてがそろっていたのだ。栄養の行き届いた労働者に潤沢な通貨供給。中国は世界のひのき舞台を闊歩し始めていた。そんな中2010年に、人民元が大幅に切り上げられて、価値のあがった元を使った中国企業によるM&Aが世界中を怒涛の勢いで席巻した』

『しかし2009年には見逃されていた重大な事実があった。水の大切さである。灌漑プロジェクトに使われた資金は、銀行貸し出しの合計の1/1000にすぎなかったのだ。水利灌漑・用水プロジェクトは政治目的化してしまい、国家の計として真剣に取り組まれなかった。その傍らで工場は廃水を垂れ流していた』

『2019年末のいまや、中国はかつての強国のおごり高ぶった面影はない。「習近平国家主席」は、周囲の貧しい国に食料援助を請うことを考え始めている。これぞまさしくおごる平家ひさしからずのたとえ(a measure of how far the mighty have fallen)の好例である』

水資源の枯渇問題は、二酸化炭素による地球温暖化問題と表裏一体をなす全人類的課題である。人口問題と食糧問題も水問題から切り離せない。化石燃料の枯渇も時間の問題となってきている。この5つの問題こそ、「今そこにある危機」として意識されねばならない。LEXの白昼夢は、まさに現代の寓話である。


航空機テロ情報CIAが握りつぶし Bureaucratic Fingerpointing

2009-12-30 | 米国・EU動向
2009年12月30日(水)

CNNは、信頼できる消息筋の話として、クリスマスにアムステルダム発デトロイト行きのNorthwest Airlinesの爆破を図った犯人情報は、CIA本部には届いてはいたが必要な政府機関には回付されなかったと伝えている。

「息子が過激な宗教観からテロに走る恐れが高い」との父親からの訴えを受けたナイジェリアの米国大使館のCIA係官は報告書を作成してバージニア州Langleyにある本部に送付したが、机の上に何ヶ月も放置されたままになっていたと暴露されたのである。

政府関係者は、この種の情報は関係機関にも伝達し、共同で対策を立てるのが決まりであり、「今回の事態は、関係者一人ひとりの失態、組織・警備体制の問題、検査技術の不備によって事件を未然防止ができなかったということだ」(What we have here is a situation in which the failings were individual, organizational, systemic and technological)と述べている。

CIAの関係者には、「犯人の名前などは、関係官庁には送ってあった」というものも現れており、官庁同士の責任のなすりあい(The bureaucratic fingerpointing)が始まった。しかし、50万人にも達する、「不審者」リストに入れただけで、「搭乗拒否」(no-fly)リストにいれるなどの特別な処置はまったく取られなかったのは明らかである。

一方、英国の諜報機関は、犯人Umar Farouk AbdulMutallabの動きを把握しており、同人からの英国入国ビザを拒否していた。この英米の対応の差は大きく、米国が911事件以降巨額の費用を注ぎ込んできた警備体制が機能しなかったことは、オバマ政権にとって大きな衝撃である。



オバマ政権、航空機テロで失態 Our system did not work

2009-12-29 | 米国・EU動向
2009年12月29日(火)

クリスマスを狙った米国航空機爆破の企てに対して、アルカイダは、「イエメンにおける米軍の攻撃に対する報復であった」とし、「厳しい警備体制をくぐって爆弾を機内に持ち込めたのは勝利」との挑戦的な声明を発したことを、The New York Timesが伝えている。

いかにして犯人が検査をすり抜けることができたのかという疑問が生じるが、週末の段階で、Janet Napolitano国土安全省長官を含む政府高官は「警備体制は機能していた(“the system worked”)」と言明していた。

一方、先週木曜日から10日間の休暇をハワイで過ごしていたオバマ大統領は、事件後3日にわたり公の席に出てこの事件について語ることはなく、休暇に随行した係官を通して、「政府部内で協議中」とのみ発表してきた。

しかし、大統領がハワイの日光を浴び、サーフィンに興じる映像は、空港で長蛇の列を作って検査を待つ乗客の映像とは相容れないイメージを国民の前に晒した。次第に事態が明らかになった日曜日にいたって、Janet Napolitano国土安全省長官は前言を訂正し、「警備体制は機能しなかった。大変不満な事態である。広範な調査を行っている」と述べた。

そして、オバマ大統領は、この長官のコメントの数時間後にいたって初めて今回の事件に対する政府の対応に対する非難を沈静化させるため、「事件に関与したものをすべて探し出し、責任を追及するまで、政府は休むことはない(“We will not rest”)」と述べた。

犯人として拘束されているのは、23歳のナイジェリア人で、「直前にイエメンで爆弾をアルカイダから渡され訓練を受けた」と尋問に答えている。そしてナイジェリア政府の元高官で、銀行の幹部として知名人でもあるその父親は、「息子が過激な宗教観に染まり、行方不明になっている」と今年の11月19日にアメリカ大使館を訪問し告げていたのだ。

しかし、当人の来年6月まで有効なビザは、取り消されることはなかった。大使館の担当は「次のビザ更改の際は、全面的に調査要あり」と記入した報告をワシントンに送っていたが、彼の名前は、55万人のテロ組織とのつながりが疑われる人物リストの中に入れられただけで、「飛行禁止the no-fly list」措置は取られなかった。

14,000人の要厳重注意リストにも、4,000人の飛行禁止措置人物リストにも加えられなかったことについて、「一度くらい親族が通報したぐらいではこのリストに入れることはない」との政府関係者のコメントが伝えられている。

このため彼が、米国行きの切符をキャッシュで購入した際にも、チェックにはかからなかった。テロ関連情報は、関係機関にはすべて送られているが、それを総合的に分析し、対応する能力は米国政府でさえ持っていないことを証明した事件であった。


韓国、砂漠産油国UAEから大型原発受注 Washington’s Model

2009-12-28 | 環境・エネルギー・食糧
2009年12月28日(月)

韓国電力・現代・三星・斗山重工業が組んだコンソーシアムが、アラブ首長国連合(UAE)のなかの一国アブダビ政府から、総出力560万kWの原子力発電所の設計・建設・操業指導を含む請負契約を204億ドルで受注した。

アブダビ政府は、単機容量140万kWという世界最大の原子力発電所4基を建設する計画であり、最初の1基は2017年から発電を始め、残りの3基は2020までに発電を開始する。

今回の原発建設契約は、次の3点で、世界の大きな変化を象徴している。

第一は、石油・ガスが現在は潤沢であるアブダビが、資源枯渇を見通した上で、原子力を導入することとしたこと。アブダビは現在年率9%の経済成長を続けている。世界第5位の産油国であり、第3位のガス埋蔵量があるにもかかわらず、すでに国内の石油精製や発電用の燃料はネットベースで輸入国に転じている。2020年には、4000万kWの電力を必要とすると予測されている。こうした、石油・ガスの枯渇の予感が,アブダビに原発導入を急がせている。

第二は、原発建設はするが、燃料のウラン濃縮と、使用済み燃料の再処理を一切行わないことを宣言していること。これはあくまでも核爆弾保有する権利を留保しようと、濃縮・再処理施設の自国内建設にこだわり、米国の圧力に抵抗するイランとは対照的である。米国政府は、UAEを「中東のモデル」として今後も産油国に広めていく方針と見られる。

第三は、韓国の原子力産業が、日米、仏の企業グループとの競合に競り勝ち、高度の技術力を要する原発の2兆円のフルターンキー契約を手に入れたこと。サルコジ大統領が自ら売り込んできたAreva連合と、GE・日立の日米連合を退けたことの韓国経済にとっての意義は大きい。

世界は、エネルギーの脱炭素化に大きく舵を切ろうとしている。大容量の発電は原子力を基軸とし、太陽光と風力発電は気候条件の良いところで大規模集積を図る方向が見え始めている。


鳩山政権支持率急落 A Leader out of touch

2009-12-26 | 世界から見た日本
2009年12月26日(土)

本日のThe New York Timesは、鳩山民主党政権が打ち出した「1兆ドル」予算案に対して、その巨額赤字を支える国の債務膨張に投資家の不安(investor jitters)が募っていると報じている。

そして、鳩山政権は、自民党政権が公共事業に巨額の国家予算を注入してきたことに対して(at the expense of public works projects)、予算を福祉と教育に重点を置いた家計支援に振り向け、その消費拡大による経済再建を目指しているとし、「私は、コンクリートより人を重視する原則に固執したい」との首相の言を紹介している:“I have adhered to the principle that people matter more than concrete.”

しかし、総選挙における圧倒的な勝利で自民党単独政権の時代に決定的なとどめをさした民主党でありながら、鳩山首相は、米軍基地移転交渉と、自らの政治献金疑惑の扱いを誤ったために、政治運営への集中力を失った(distracted)と断定的に論評している。

こうした状況で、首相が公約実現するためにもう少し時間を貸そうという世論がまだ大勢を占めているが、支持率(his approval rating)は選挙直後の71%から50%を割り込むところまで急落している。とくに政治資金問題(The campaign financing scandal)が、二人の秘書の起訴という事態となっているにも拘わらず、首相自身は巨額の資金が長年にわたり母親から拠出されてきたことを「まったく知らなかった」との釈明で済ませていることの悪影響が急速に出ている。

この問題への対応が、失業とデフレに苦しむ庶民の感覚からずれた鳩山首相というリーダー像(a leader out of touch with the economic plight of average Japanese at a time of high unemployment and persistent deflation)をますます色濃くさせており、急落する支持率は、来年の参議院選挙における民主党の立場を危うくしかねない(a potentially precarious position)と論評して記事を結んでいる。


オバマ健保改革法案上院可決  Obama's New Hurdles in 2010

2009-12-25 | 米国・EU動向
2009年12月25日(金)

オバマ大統領が選挙公約の最大の眼目として政治生命を掛けている健康保険改革法案が、クリスマスイブに上院で可決された。

民主党が絶対多数を確保している下院ではすでに先月可決されているが、上院での審議は難渋を極めた。24日間にわたるその審議の裏側で、民主党と共和党の間のみならず、民主党議員団の間での調整作業に時間を要し、ようやく投票にこぎつけたものである。

大統領は「歴史的な評決」(a historic vote)と歓迎の意を表明して、「この法案は、1930年代の社会保障法the Social Security Actや、1960年代の医療保険制度導入Medicare以来の重要な社会政策法となる」と記者会見で語り、「この法案による健保制度を導入すれば、これから10年にわたって最大の支出削減計画となる」と賞賛した。

このあと大統領は、休暇先のハワイに一家そろって旅立った。しかし、年明けには、難航が予想される上下両院案の調整作業による一本化と、一本化された法案の両院における投票が待っている。

上院の定数100に対して、票決結果は60:39で、棄権1であった。共和党による審議妨害(filibustering)を阻止できるぎりぎりの票数が60(super majority)であるからまさに薄氷を踏む思いの結末であった。共和党は、老齢議員が欠席による棄権をしたことを除いて、全員が党議(the party- line)を守って反対に回った。一方、60票の多数を確保するために、民主党の58票に加えて、独立系議員2名を必死に説得できたことが民主党案の成立につながった。

このように、両党合意(bipartisan)の上での法案形成をあくまでも望んだ大統領の意図は実現できなかった。そして共和党議員のほとんどは、「将来の世代に莫大なツケを回すもの」として絶対阻止を表明して闘志を新たにしている。

また、60票の確保のために譲歩を繰り返した結果、下院案から、公的保険(a public option)などの点で大きく乖離してしまった上院案には反対を唱える民主党議員も多く、年明けの展開は予断を許さない。




鳩山首相の英語力 Mr. Hatoyama’s understanding was wrong

2009-12-24 | 世界から見た日本
2009年12月24日(木)

クリントン国務長官が、今週月曜日駐ワシントンの藤崎日本大使を、国務省に呼んだ。これを大使自身は、「招待された」(invited)と表現しているが、新聞報道の大方は、召喚した(summoned)と報じている。各国の外務大臣が、突然一国の大使を外務省に来ることを求めるのは、通常「抗議の表明」であることは外交の常識である。

クリントン国務長官は、その会談で、「普天間基地の辺野古への移転を決めた2006年の合意の早期実施を強く迫った」と報じられているが、国務省報道官は、「多岐にわたる二国間の問題(bilateral issues)を話し合った」とだけ話し、詳細は明らかにしなかった。しかし、「issues」という尋常ならざる言葉を使ったのである。

鳩山首相は、先週COP15会議で隣席に座っていた同長官と話したあと、「日本の立場に理解を得た」との趣旨の発言を行い、「決断は来年5月。移転先については未定」との立場を明らかにし、それに基づく閣僚発言も米国政府を痛く刺激してきた。

Japan Timesの論説は、「鳩山首相がクリントン長官の理解を得たというのは誤りであった」と断定している。’It is clear that Prime Minister Yukio Hatoyama's understanding following his conversation with Ms. Clinton last week in Copenhagen — that he believed she basically understood the circumstances he explained to her — was wrong.’

「オバマ大統領にTrust meといったら、I trust youといってくれました」という趣旨の鳩山発言が、オバマ大統領の鳩山首相への不信を生み出したことと合わせ、「日本語感覚で英語を使う」ことの危険を警告する出来事が続いている。

米国健保改革法は越年 Public Option and Abortion Funding

2009-12-23 | 米国・EU動向
2009年12月23日(水)

オバマ大統領の選挙公約であり政権の重要課題である健康保険制度の改革法案が、さまざまな駆け引きと取引の末に上院採決につながる一里塚を通過した。

共和党議員の一人が最後の最後になって賛成に回って「審議打ち切り動議」が可決され、クリスマスイブの最終投票に掛けられることとなったのである。このためオバマ大統領は、年末のハワイ休暇への出発を遅らせ、投票結果を見守ることとした。

上院で可決されても法案の成立のためには、すでに可決されている下院案との調整のために、両院の議長が取り仕切る調整会議(conference committee)に掛けられる。そこで法案は一本化され、再び両院で単純多数決の投票に掛けられることになっている。

両院の法案の見かけは似ているが、重要な争点で大きく異なっている。そのため問題は上院案と下院案の間の相違の一本化が進んだとしても、その内容が議員個人の主張とかけ離れた場合反対に回る公算が高いのである。すでにそう宣言している議員もいて、特に民主党と共和党の勢力が伯仲する上院での再投票結果は予断を許さない。

争点は、「政府管掌健康保険」(public option)の導入の可否、「堕胎を健保対象にするか否か」(abortion funding)の二つに集約されている。そして、所要費用については、上院案は8710億ドル(約87兆円)、下院案は1兆ドル(約100兆円)となっている。

NewsWeek誌電子版は、「何ヶ月もの紆余曲折があったが、本当の駆け引きはこれから始まる(Despite months of going back and forth, the real bargaining has yet to begin.)」と結んでいる。

イラン大統領、核疑惑を独占会見で全面否定 A Smoking Gun

2009-12-22 | グローバル政治
2009年12月22日(火)

米ABC放送のアンカーウーマンDiane Sawyerが、コペンハーゲンのCOP15に出席したイランのアフマディネジャド大統領と単独会見することに成功した。その結果は月曜日夜TVで流されたが、彼女の攻撃的インタビューに、中近東人特有のはぐらかし語法を持って応じる様は、まさにドラマというべきものとなった。

同大統領は、米国はじめ西側諸国が、「イランは核兵器開発の意図を捨て、核関連施設の国際査察に応じよ」と要求し、応じなければ制裁措置を取ると脅迫していると強く非難した:「いいですか、わが敬愛するご婦人よ、彼らは交渉しようというすそばから、制裁するぞと脅す。鞭を振り上げながら、交渉しようといっているのですぞ。こんなやり方はもう止めるべきだ」

この会見に先立って、イランが核爆弾用にしか使えない核分裂の引き金になる装置を開発しているという米国政府の内部書類が、英国の”The Time”紙にすっぱ抜かれている。

Diane Sawyerがこの問題に言及しながら、手にした書類を差し出すように見せ、「この中性子起爆装置は、動かぬ証拠"smoking gun"だといわれているが、ご覧になりますか」と迫った。

大統領は、書類を振り払うようにして、「そんなものは見たくもありませんな。米国政府が次から次へと捏造して、撒き散らしてくる山とある文書のひとつに過ぎんのだから。イランが核爆弾を開発しているなどというのは、真っ赤なうそだ"fundamentally not true"。この手の非難は、もう毎度のことで、面白くもないジョークにすぎんよ" a repetitive and tasteless joke"」

Diane Sawyerはなおも執拗に、「イランは核開発(weaponize)しているのかどうか、yesかnoか」と聞き、そして「大統領、ここで米国民に向かって核爆弾製造の意図はイランにはない、イランが核爆弾を持つことはないといってください」と迫った。

しかし大統領は、この質問に正面から答えなかった。頭を振りつつ、「イラン流に言えば、おんなじことを何度も言わせるなということじゃ。一度しか言わんのだよ。核爆弾を持つことは欲していないと一度言った。それですべてだ」

大統領は、時にはDiane Sawyerをからかうようにあしらい、逆に彼女に米国政府の行動の妥当性をyesかnoかと問う質問で応酬したが、極めつけは、キリストの教えに及んだくだりである。

「神の言葉を預けられしイエスキリスト("a prophet of God")の生誕の日、クリスマスをお祝いしよう。だがここで聞きたいのだが、アメリカの行動はキリストの教えにかなったものなのかね。キリストがここにいたら、果たしてアフガニスタンやイラクの戦争のことで罰をお下しになるのではないかね。この戦争に反対されるのではないかね。そうに違いあるまい」


コペンハーゲン幻滅夜話 ‘Hopenhagen’ to 'Brokenhagen'

2009-12-21 | 環境・エネルギー・食糧
2009年12月21日(月)

土曜日早朝までかかった気候温暖化ガス排出削減交渉は、強い疲労感を各国代表団に残して散会した。

この事態に、The New York Timesは、「欧州首脳の間に漂う欲求不満」(An Air of Frustration)を大見出しとし、「会場のEuropean Union pavilionは葬儀場と化した」と報じている。

またFinancial Timesは、「欧州企業トップは、確たる削減目標数字が示されなかったために排出削減に要する莫大な投資金額への対処方針が定まらないことに苛立ちを隠さない」と報じている。

一方、CNNの電子版は、「ホーペンハーゲン」(希望の港)に集まった人々は「ブローケンハーゲン」(夢破れた港)で終わるのをみて「コペンハーゲン」(商人の港)を去っていったと言葉遊びで会議の混乱振りを揶揄している。その記事を要約すると:

「2年間の準備と2週間の審議を経て、代表団は手ぶらで(practically empty handed)で帰国したのであるが、オバマ大統領が自画自賛したように、「意味ある(meaningful)成果」であったかどうかは、今後の議論しだいだ。

特にオバマ大統領の演説後の会場からの拍手がまばらであった(a slow hand clap)ことにすべてが象徴されている。各国代表は、握手をして集合写真を撮ったが、決めるべきことを将来合意しようとだけ合意したのだ(agreed to agree)。中国が反対した削減行動に対する国際査察がどうなったかもよくわからないままである。

今回の合意は、米国・中国・インド・ブラジル・南ア・EUの間で行われた必死のポーカーゲームの結果まとまったものだ。これらのメンバーは、混乱のまま終わろうとしている会議を救うために議長国オランダが選んだものである。(日本が入っていない)

グリーンピースの事務局長は、『今回の合意にしかけられた抜け穴は、オバマ大統領の専用機が通り抜けられるほど大きい。今夜のコペンハーゲンは、犯罪都市だ。罪を犯した男女が競って空港から逃げていく』と憤ってもいるしあきれてもいる」

The New York Times、Financial Times、CNNの三つに共通して出てくる言葉を集めると,disorder(混乱)、disorganization(無秩序化)、disarray(混乱)、disappointment(失望)とみごとに、接頭辞dis-がつく語彙集になった。

COP15『先進国の横暴』批判 pulling a document from nowhere

2009-12-20 | 環境・エネルギー・食糧
2009年12月20日(日)

193カ国の参加を得て、またその最終日には110人もの各国最高指導者が出席したコペンハーゲン会議が2週間の長丁場を経て終了した。一夜明けてその会議の成果についての諸国の態度が明確になって来た。

会議は、昨日の本欄で速報した内容を、法的拘束力のない3ページの文書にまとめられているが、表現はあくまでも弱く、「署名各国はコペンハーゲン合意に留意する“take note of the Copenhagen Accord”となっているのみである。

オバマ大統領は、中国の温家宝首相と二度にわたる会談を行って、対中強硬姿勢を世界に示したが、「中国は削減を監視する仕組みを受け入れて、透明性transparencyを担保するべし」と、EUとともに迫ったことも会議が事実上の決裂に終わらせた原因のひとつである。

この問題は、削減目標値で合意した後の技術論として先送りも可能であったはずだが、オバマ大統領は議会対策上、対中強硬姿勢を示す必要があったのだ。

オバマ大統領は、会議の成果を意味のある合意“a meaningful agreement”と自賛し、Ban Ki-moon国連事務総長は、すべてが当初の目標どおりではないが、今後に向かって、「不可欠の出発点」“essential beginning”であると評価した。

ベネズエラとボリビアなどの南米を中心とした発展途上国の一部は、会議途中から強い反対姿勢を示していたが、ベネズエラのチャベス大統領の毒舌は止まらなかった。

「会議は不成功に終わったのは残念である。帝国主義国アメリカに率いられた国々の政治的な意思が不在であったことが原因で失敗したのだ。議長国デンマークと富裕先進諸国は、途上国の利益を無視した合意文書なるものを、どこかから引き出してきて“pulling a document from nowhere”共謀したことは許せない」と非難をデンマークにも向けた。

スーダンが代表を務める途上国77カ国(G77)も、「合意文書の作成過程では先進国と途上国の一部の密室交渉が行われた」と強く批判した。スーダンの代表はさらに「米国主導の今回の合意は、温暖化阻止のための強い意思を示すという意味で最低だ。世界の最貧国にとっては、惨憺たる結果を招くであろう」(the US-backed proposals represented the “lowest level of ambition” and would be devastating for the world’s poor.)と強く非難した。

EUは、今後の取るべきステップの第一歩“the first of “many more steps”と表現しながらも、各国のコミットメントの弱さを嘆き、条約化できなかったことに失望を隠さなかった。特にスエーデン代表は、「2℃以下という目標では温暖化を阻止できない」とし、今回の合意は不完全である”not a perfect agreement”と批判した。

日経新聞は社説で、「日本は合意を取りまとめた28カ国には入ったが、存在感は薄い。コペンハーゲンでの会議は、鳩山外交の非力さを示すものでもあった。日本は25%削減の高い目標を掲げただけで、実現を裏付ける政策がない。」と論評している。

そして報道記事の中での、首相に対する評価:「よかった、よかった」。首相は同日、首相公邸に呼んだ平野長官に「コペンハーゲン合意」を評価する言葉を繰り返した。しかし、首相がしたことといえば「議事進行の要請」程度だ。




COP15は政治決着で結論持ち越しA Meaningful Agreement?

2009-12-19 | 環境・エネルギー・食糧
2009年12月19日(土)

コペンハーゲンで開催されてきた地球温暖化ガス排出制限交渉は、2週間にわたる対立と混乱の末、金曜日の深夜ぎりぎりで政治的な文書で合意に達したが、法的拘束性のある条約とすることは、現行の京都議定書の期限である2012年末まで先送りされた模様である。

現地の金曜日午後11時時点で、米国は、「意味のある協定」(a meaningful agreement) が形成されたと発表しているが、国連とその他主要各国からは、まだ明確な形でその協定に合意したとの声明がだされていない状況である。

以上を総合するに、実質的な削減目標設定には失敗したが、総括的な政治合意という形を取りながら、実質的な詳細は来年以降に持ち越したというべきなのであろう。

オバマ大統領は、「まだ合意内容は不十分だし、これからやるべきことが多い」といながらも自ら今回の合意を「史上初」と評価し、「合意は法的拘束力がないこと」を認めながらも、これから各国が排出削減目標を設定することに期待をかける発言を行っている。

現時点でわかっている合意内容は、具体的な削減の数値目標に代えて、「地球の平均気温の上昇を産業革命以前と比較して、2℃以内に抑えること」を目標とすること、今後3年間に3兆円を途上国の援助に拠出し2020年にはその額を毎年10兆円まで増額することである。

今回最終段階に来て最も大きな障害になったのは、米中の対立であった。米国は削減目標の設定とともにその実効についての検証を、国際的に「透明性」(transparency)のある方法(subjected to a form of international monitoring,)とすべきと強く主張し、中国は、「他国を疑うような制度に断固反対する」と、内政干渉を排する態度を変えなかった。

そして今回のもっとも大きな収穫は、ブッシュ大統領が京都議定書を離脱して世界の潮流にさおをさしてきた米国が、温暖化ガス削減条約の枠組みに積極参加をコミットしたことといえる。その意味で今回オバマ大統領が現地で、温家宝首相と二度にわたり直接折衝を行うなどの努力をしたことは高く評価される。

コペンハーゲン会議は、決裂の危機 China: Deal Breaker?

2009-12-18 | 環境・エネルギー・食糧
2009年12月18日(金)

コペンハーゲンで7日から開催中の気候変動に関する国連の温暖化ガス排出削減交渉は、合意点をまったく見出せず膠着状態に陥っている。

現地入りしたクリントン米国国務長官は、「時間切れの事態になりつつある」と演説の中で状況に触れたが、もっとも大きな障害は水曜日に中国が、米国の「中国は排出量削減に関して透明性を高めるべきだ」との要求を拒絶したことにある。

クリントン国務長官は名指しこそしないものの中国を、「このままの拒絶を続けるならば『交渉の破壊者(deal breaker)』となる」と翻意を促した。さらに同長官は、「時間切れを前に、向こうだこっちだと争っている場合ではない(In the time we have left here, it can no longer be about us versus them.)。問題は世界に共通のものだから」と訴えた。

このような状況でオバマ大統領が現地入りするかどうかまで危ぶまれたが、CNNの報じるところによると、ホワイトハウスは、「大統領は木曜の夜には出発する」と発表したとのことである。オバマ大統領が今回目指しているのは、法的拘束力のある条約ではなく、それに至るための政治的な合意であるとホワイトハウスは言明している。オリンピック招致でコペンハーゲンに飛び、徒手で帰国した同大統領にとって、今回も手ぶらで帰ることになると政治的打撃が大きい。

米国は,途上国の説得のために、先進国全体として2020年までに約100兆円の資金を供与する案の同意した。そして、最終合意に含まれるべき重要要素として、各国個別の明確な行動計画、それを国際的合意の枠組みに組み入れる協定の成立、温暖化の影響を最も受け最もその対策が打てない最貧国への援助、信頼の置ける削減実施プロセス開示基準(standards of transparency that provide credibility to the entire process)を挙げた。

一方、英国のブラウン首相は、極めて哲学的な言葉で、会議の合意を求めている:

先進国には、「環境問題で行動することは、雇用を創造する強力なエンジンとなる」といいたい。途上国には、「最新技術を駆使すれば、二酸化炭素の大量排出がもたらす経済(high-carbon economy)の問題を回避して、高成長(high-growth economy)を実現できる」といいたい。

世界に向かっては、「歴史がわれわれにできうる最大限のことをせよと命じているときに、最小限のことでは済まされない」といいたい。"And to all nations I say: It is not enough for us to do the least we can get away with when history asks that we demand the most of ourselves."




バーナンキ議長「2009年の時の人」に Ben Bernanke is a nerd

2009-12-17 | グローバル経済
2009年12月17日(木)

Timeは、今年の時の人に、米国の中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB: Federal Reserve Board)議長のBen Bernanke氏を選んで、その表紙を飾った。選定の理由について、その電子版の見出しで、「今年最大の話題は、FRBの運営を託されたこの温和な紳士が対策をうたなければもっと悪化したであろう景気のことである」と説明している。

同氏の人となりについての描写が続く。「彼にはあたりを睥睨する威圧感はない。人を引き込む話術もない。「私に注目して」型の自己顕示欲も、「私の言うことを聞け」型のカリスマ性もない。議論の中身には党派性や主義に凝り固まったところがなく、データと最新の学説に依拠した論理性に貫かれている。

わからないことに遭遇したときでも、強弁したり知ったかぶりしたりすることはない。もともとプロフェッサーだけあって、プロフェッショナルな人であるのもうなずけることである。

別の言葉で言えば、ワシントン政界の典型である権力志向ではない。ディナー・パーティを渡り歩く御仁でもない。家で夫人と夕食を食べ、皿洗いをし、ごみを出してから、クロスワードか読書に興じる毎日である。」

そして、かれの人物評は、「Because Ben Bernanke is a nerd.(ベン・バーナンキは、オタク人間なのだ)」という極め付きの言葉で締めくくられている。

同議長は、プリンストン大学の経済学の教授で、1930年代の米国の「大恐慌」の著名な研究者である。恐慌を引き起こしたのは、景気の後退局面で、金融の引き締めに走るという失政にあったとする信念を持つ。

今回米国政府の対策が極めて迅速に巨額の救済資金を、金融界、実業界、消費者ローンの借り手の救済に注入し、前例のないゼロ金利政策をとったのも、同議長の長年の信念と理論に基づくものである。

はげ頭と白いひげと疲れた眼をした男(A bald man with a gray beard and tired eyes)の戦いに、まだまだ終わりは遠い。



日本は米国の圧力を「無視」しているのか Japan ignores US pressure

2009-12-16 | 世界から見た日本
2009年12月16日(水)

鳩山首相は、普天間飛行場を、辺野古のキャンプ・シュワブへ移転するとした計画を修正すると言明し、「沖縄県民の思いに答えるため辺野古ではない地域を模索する」とし、結論を出すに必要な時間は数カ月単位が必要(“My understanding is that several months are likely to be needed.”)との趣旨を記者団に語った。

政府の基本政策閣僚委員会では、「日米で合意した現行計画も排除せず、移設先は与党3党で協議する」方針を確認したが、この発言は、「米側に理解を求めつつ、県外移設を模索したい」との首相の本心を吐露したものである。

この西欧人にはほとんど理解不能の言葉使いの連続を、Financial Timesは、’Japan ignores US pressure over air base’(日本は飛行場移転に関する米国の圧力を無視)との見出しのもと東京特派員の報告を掲載している。

欧米人の理解の結果は、’ignore’(無視する)という一語に集約されているが、これを読めばきっと首相以下は、「無視」などしていないと「誤解」・「誤訳」だと反論するに違いない。

一方、同紙は、国内の反応に関して、野党自民党は、この先送りを、首相の優柔不断とリーダーシップの欠如の表れ(a further sign of Mr Hatoyama’s indecision and lack of leadership)だと断定し、右顧左眄するだけで何も決めないで先送りする首相の政治姿勢(“He is just showing a nice face to everybody and putting things off,”)を非難していると伝えている。

一方、結論が先送りされたことについてもっとも喜んでいる連立与党の福島党首の発言は、 “very glad” that there was no “hasty decision”と報じ、この日米関係の冷却の事態をもっとも心配しているのは、周辺国特に台湾であると報じている。

日本は、第二次世界大戦の終末時に出されたポツダム宣言を、「受諾も拒否もしない」という意味で、「黙殺」という言葉を使った声明を出したのであるが、英訳には無視’ignore’という言葉が使われ、原爆の投下につながったという苦い歴史を持つ。

外交は言葉の戦いである。言葉と論理は相手に伝わってこそ意味を持つ。こうした事態になって首相はオバマ大統領に対して自ら使った”Trust me”という重い言葉を実現する責任がますます生じている。

(注:Financial Timesは、電子版では'neglect'を使い、アジア版の紙面では'resist'を使っている)