世界の動きを英語で追う

世界と日本の最新のできごとを、英語のキーワードを軸にして取り上げます。

トランプ、オバマの広島訪問と発言に対し"Who cares?" 

2016-05-29 | 米国・EU動向
オバマ大統領の広島が実現して、一つの時代が終わり、一つの時代が始まったといえるが、象徴的なことは、「核廃絶を唱える」米国大統領が献花するその後ろに、武官が核ミサイルの発射ボタンが格納されたアタッシュケースをもって控えていたことである。

さて、共和党大統領候補としてのトランプ氏が、キャンペーン中の演説で、この訪問をカリフォルニアで評して「謝罪しないなら全く構わない」といったと日経新聞朝刊が報じている。発言のテクストは:"It's fine, as long as he doesn't apologize, it's fine. Who cares?"である。

意味としてはこの翻訳は正しい。しかしこの発言のコンテクストと、吐き捨てるような物言いからして、そんな生易しい気持ちで言ったものではない。ぜひYouTubeで演説を聞かれるとよいとおもう。この"Who cares?"はまさに捨て台詞である。オバマなんかが、何をしようとも、なにを言おうとも、広島でどんなご託を並べようとも、原爆投下を謝罪しない限り、構うことはないさ、という気持ちがこもっていて、本心を隠さぬ政治家となれる資質を余すところなく示したといえる。

オバマ大統領を切り捨て、原爆投下を肯定し、米国優位史観を丸出しにしたこのWho cares?こそ、今の米国人の下層階級と中産階級の心に響くものはないといえる。トランプの頭の中には、ジョン・W・ダワーの「忘却のしかた、記憶のしかた」第2章に詳しく述べられている太平洋戦争前、戦中、戦後の米国人の日本人観が、見事に保存されているともいえるだろう。

ヒラリー・クリントン、トランプを「無鉄砲放言居士"a loose cannon"」と酷評

2016-05-05 | 米国・EU動向
ドナルド・トランプが、対立候補二人の撤収宣言により実質上の共和党大統領候補の地位を得て、「これからはヒラリー・クリントンをやり玉に挙げる」とまたまたの怪気炎を上げた。Financial Timesは、クリントンの反撃の言葉を、"Hillary Clinton dismisses Donald Trump as a 'loose cannon."(トランプは、「無鉄砲放言居士の一言」で、片づけた)と報じている。

loose cannonとは’、甲板上で本来結索されていなければならない大砲が、索から外れてしまった状態にあることをたとえに使った言い回しである。その舌禍を恐れぬ放言癖を持った(ないしはそう見せかけている)厄介な男が、周囲の迷惑を顧みず、相手かまわず罵詈雑言の限りを言い放つさまは、いつどこへ弾丸が飛んでいくかわからぬ大砲におとらず危険な存在である。

トランプの対日政策がその「放言通り」実行されると、日米安保条約は片務状態であるから廃棄ないしは双務条約へと改訂、在日米軍基地の撤収ないしは費用の全額負担要求、日本の本格的再軍備と核武装容認ということになる。戦争経済の魅力は、低成長にあえぐ先進国にとって悪魔のささやきである。トランプは、そんな声をも代弁しているかに見える。