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世界の動きを英語で追う

世界と日本の最新のできごとを、英語のキーワードを軸にして取り上げます。

オバマ勝利の意味:待ち受ける難問と試練の数々 "Four more years"

2012-11-10 | 2012年、四大大統領選挙の現状
本日Financial Timesの土曜版は、オバマ勝利の意味について問いかけている。その見出しは"Four more years"。二期目4年をこれからどう対処していくのか、との問いかけでもある。

今回の選挙はオバマにとっても大変苦しいものであった。普段は「氷のように冷静」"ice-cool"と呼ばれてきたオバマも、選挙戦最終日夜に至ってアイオワ州出の演説会場で、また勝利宣言の後シカゴで若者からなる選挙運動員を前にして、見せたことのない涙を見せた。これは異例中の異例であり、同氏がいかに選挙戦で悪戦苦闘したかを物語っている。

普通ならば、敗北を喫するような悪い経済情勢を背景に、再選を果たした大統領が、真に偉大な大統領として歴史の記録に残るかいなかは、今米国が直面している、きわめて深刻な国家財政危機と、社会問題を乗り切れるかどうかにかかっている。

国内のこの手におえない状況となった国家予算編成の危機、目減りを続ける中間層の個人所得、加えて、国外ではのし上がってくる中国、中東の新たな不安定要因、なかんずくイランの核武装問題が、次なる戦争へと米国を追い込んでいく可能性を否定できない。株式市場は、投げ売りで絶望感を示している

この「財政のそそり立つ崖っぷち正念場」"The Fiscal Cliff"を、オバマも踏み外す可能性が大であるが、オバマには、転落しても数日の単位で、政治的解決に向かわせる力はあるだろう、とFT紙は論評している。





フランス大統領選、サルコジ大統領、社会党オランド氏に後塵

2012-01-08 | 2012年、四大大統領選挙の現状

2012.1.7

The Financial Times土曜版が、フランスの大統領選の動静を伝えている。

その見出しは、”Sarkozi and Hollande lock horns”(サルコジとオランド角遂)となっているように、大統領選緒戦となる最初の選挙はまだ3か月先であるというのに、すでに二人の間の対立は激しい。

世論調査結果は今のところ社会党のオランド氏が常にサルコジ氏をリードしているが、普段は冷静なことで知られるオランド氏の舌鋒は鋭い。同氏はサルコジ大統領を公開書簡でその失政を次のように論難した。

“The country under Mr Sarkozy had been “humbled, weakened, damaged and degraded”(サルコジ大統領のもとで、フランスは屈辱をなめ、弱体化し、傷つき、そして格落ちしてしまった)。degradedという表現は、格付け機関がフランスの信用度を、近く最高位のAAAから「格下げ」しようとしていることを指している。

今のところ、サルコジ大統領に挑戦している候補の中で有力なのは、社会党のオランド氏と、反ユーロ、EU離脱を主張する国民戦線(national Front)の、マリーヌ・ル・ペン女史、中道右派の民主化運動(Democratic Movement)のフランソワ・バイロウ氏の合計3人である。

フランスも公的債務の膨張が重大な問題であることに他のEU諸国と変わりがない。その上に既報のごとく原子力政策で社会党と緑の党連合から深刻な挑戦を受けている。そのような中で、サルコジ大統領はどんな巻き返し策を打ち出してくるかが注目される。

米国大統領選を理解するために

2012-01-05 | 2012年、四大大統領選挙の現状
2012. 1. 5.

共和党のアイオワ州党員大会結果が出たことを昨日報じたが、米国大統領選挙を、ひいては米国の政治を正しく
理解するためにには、献金活動の実態を理解し、さらには:

1)民主党と共和党の各々が主張する「自由」の概念には天と地ほどの差があることを理解すること
2)人種的な差異の問題、特にユダヤ人の隠然たる支配力を理解すること
3)宗教的・道徳的価値観を無視して、経済的合理性のみを追求すると大統領にはなれないことを理解すること

が、重要である。

各々について、読みやすい参考書を紹介しておこう:

1)マイケル・サンデル 「公共哲学」(ちくま学芸文庫)
2)土井敏邦 「アメリカのユダヤ人」(岩波新書)
3)飯山雅史 「アメリカの宗教右派」(中公新書)




米大統領選、アイオワ州共和党党員大会の超接戦で、候補者選びの行方は混沌

2012-01-04 | 2012年、四大大統領選挙の現状
2012.1.4

11月の大統領選挙の候補者になるには党の候補者選びのプロセスを長期戦で勝ち抜く必要があるが、その長い道のりの第一歩が、アイオワ州の共和党党員大会で踏み出された。

その結果を“The Financial Timesは、"Romney ekes out Iowa caucus victory"(ロムニー、アイオワ党員大会選挙で辛勝)と報じている。

各候補者の得票と得票率は、次の通りであるが、前マサチューセッツ州知事Romney氏が前ペンシルバニア州上院議員のSantorum氏にわずか8票差で勝利を収めた。

Mitt Romney    30,015 (25%)
Rick Santorum    30,007 (25%)
Ron Paul    26,219 (21%)
Newt Gingrich    16,251 (13%)
Rick Perry    12,604 (10%)
Michele Bachmann    6,073 (5%)

Tea Partyなど保守主義者と地方のキリスト教団体の支持を受けるSantorum氏が踏ん張り、共和党には珍しい自由主義者(Libertarian)Perry氏が事実上の撤退を発表するに至ったことは、共和党のオバマ大統領と政策論争で、共和党はさらに保守主義傾向を強めていくことになると観測される。

一方、共和党の有力候補と目されていたGingrich氏が、選挙前の個人攻撃広告の影響を受けていわば「惨敗」という結果に終わったのは、同氏にとって屈辱であり、広告を出した人たちとつながっている、Romney氏を"liar"とまで言い切って反撃を開始した。

これから共和党の党員大会ないしは、予備選挙が11州で行われ、党員集会が集中する3月6日の"Super Tuesday"で前半戦での候補者絞り込みが完了する。誰がそれまで生き延びているか。

一方民主党内で対立候補が事実上いないObama大統領も、世論調査による支持率は芳しくなく共和党の内部での戦いを洞ヶ峠を決め込むだけの余裕はない。

日本のように、「政局」と呼ばれるコップの中の嵐で首相が選ばれ短期で放り出される仕組みとは全く異なる民主政治のやり方が、各国の大統領選挙である。じっくりと米・仏・韓・露の大統領選挙を観戦すれば、世界はどう動いているのかが良くわかる。





ロシア大統領選: プーチン首相の大統領選出に「黄信号」

2012-01-03 | 2012年、四大大統領選挙の現状
2012.1.2


31日付けのモスクワ発のロイター電は、「ロシア政府は抗議デモ参加者60人を逮捕」と報じ、それをFinancial Timesが転載している。

12月4日の議会選挙後、選挙の不正操作に怒りの声を上げるデモがロシアで相次いでいるが、厳寒のモスクワ市内各所で発生したこの日のデモは、反プーチン勢力の声が沈静化していないことを如実に物語っている。

そして、このデモは、来る3月の大統領選での、「プーチンの大統領返り咲き」、ないし「メドベージェフ現大統領との政権たらいまわし」に対する民意の離反であり、「プーチン帝国の腐敗構造」への明確な「ニエット」である。

さて、プーチンの新年あいさつなるものを見てみよう。

「2011年も押し詰まったが、危機はここかしこで起こっている。集会や選挙も行われているが、こうした事態に対して、国民に対して何を願っておられるか?」との国営メディア「Voice of Russia」 のインタビューには次のように答えている。

「まさに世界経済はおっしゃるように安定化していない。そうした中、ある意味、ロシア国内には種々の心配の種があるにはあるが、「安定した島」のようなもの。

すなわち世界が苦しむ経済危機からは、すでに我が国は脱したといえる。わが経済には勢いが付き、来年こそ良い年になると確信している。

今、混乱状態にあるので、こういう時には政治家は選挙民の心理を操ろうとするのだ。すべてが、大変動のさなかで荒れているが、これは民主化したことの避けがたい代償である(the inevitable cost of democracy)。特に異常なことは何もない。(There’s nothing unusual here)」と言い切っている。

抗議行動はこの年末放送の直後に起こった。

このプーチンの不敵とも取れる発言は、選挙を力でねじふせる自信の表れなのかもしれない。しかしもう一度、選挙の不正操作や、力での弾圧、金銭による買収があからさまにおこなわれたら、今度は国際世論が許さぬ事態となるであろう。

仏大統領選挙、争点は原子力の是非。社会党と緑の党の共闘体制でサルコジは窮地に。

2011-12-31 | 2012年、四大大統領選挙の現状
2011.12.31

フランスでは、ここ何十年にわたって「原子力発電はエネルギー政策の中核」とする世論が支配的であり、その結果58基の原発が、フランスの発電量の3/4を発電するという原子力大国を形成してきた。

しかし、この盤石とみられてきたコンセンサスを根底から揺さぶった(unified support for nuclear power is crumbling)のが福島の事故であるとBusinessWeekが論評している。

大統領選挙を控えて野党社会党と緑の党の間で反原発を軸に共闘関係が成立し、11月15日に至って、両党は共同声明を発表し、「2025年までに24基の原発を廃棄する」と宣言したのである。

さらに、社会党が大統領選に勝利したら、運開後33年経過しているドイツ・スイス国境近くに立地するFessenheim原子力発電所を閉鎖すると発表した。

社会党党首のFrançois Hollande氏は、「まさに石油で動く輸送機関と原発に依存する発電からの決別の時は来た」(“about moving progressively away from all-oil for transport and all-nuclear for electricity,”)と左翼系有力紙Le Mondeに寄稿し、反原発ののろしに点火した。

これに対してNicolas Sarkozy大統領は、「そんなことをすれば、何十万人の失業者、電気料金の引き上げ、重工業の空洞化が起こる。ろうそくの時代に逆戻りすることを許すことはできない。進歩に恐怖し、進歩から逃避した中世を再現させるのか」とかみついて反撃に出たのである。

しかし、従来は原発に賛成していた労働組合や、原発推進に熱心であった議員が多数いた社会党が反対に回り、そして社会党・緑の党連立体制が現出した今、世論も、「原発反対」が優勢になっている。

Nicolas Sarkozy大統領は経済政策でも人気を失っているさなか、原発政策でも世論を敵に回すと、社会・緑連立勢力を抑え込むことは、ますます難しくなる。年明けにフランス政府の政策の方向性を示せねば、国民の信頼を一挙に失う危険性が高い。

韓国大統領選挙:北朝鮮新政権の韓国大統領選挙への影響力行使開始

2011-12-31 | 2012年、四大大統領選挙の現状
2011.12.31

北朝鮮の政権の世襲交代は、当然のことながら韓国の政局に大きな影響を与えている。

特に大統領の任期が2013年2月24日までとなっており、今年行われる大統領選挙において、Lee Myung-bak現大統領が再選されるか否かにも重要な意味を持ってくる。

北朝鮮労働党は故Kim Jong Il(金正日)労働党総書記の後継者Kim Jong Eun(金正恩)氏を人民軍最高司令官に推戴した。国防委員長、党総書記のポストにも順次就任する見通しであるという。

このニュースの直後に出された国防委員会(National Defense Commission)の声明文は、「弔問団訪朝」を制限した韓国政府に対して、"We will surely force the group of traitors to pay for its hideous crimes committed at the time of great national misfortune," (この大きな国難に際して、残忍極まりない犯罪行為に走った国賊どもにその代償を必ず支払わせる)と激越な調子である。

そして、「逆賊Lee Myung-bak一味は永遠に相手にしない」(North Korea would shun Mr. Lee's government "forever,")という表現が使われていて、Kim Jong Eun氏が、両国関係の緊張緩和策をとるのではないかとの期待は完全に粉砕されたというのが海外メディアの分析である。

これらの激越な言葉の下敷きには前政権の「太陽政策」"Sunshine Policy"を白紙還元し、経済支援を打ち切ったLee Myung-bak現大統領に対する北朝鮮側の積年の鬱憤もあることは間違いがないとも指摘されている。

忘れてならないのは、北朝鮮側の声明には必ず重要なメッセージが、常にそのレトリックの裏側にこめられていることである。すなわち、激越なレトリックに目を奪われて本質を見失ってはならないのである。

若い後継者の権力確立を急ぐ中、新たな軍事行動の兆候があるのか否か、韓国大統領選挙に影響力をどのような形で行使しようとしているのか、米中政府は必死に情報収集と、分析を行っているであろう。

日本政府にその能力はあるのだろうか。

米国大統領選挙: 大統領権限の超法規的拡大、是か非か

2011-12-30 | 2012年、四大大統領選挙の現状
2011.12.30

29日付けのThe New York Timesが、共和党大統領候補への出馬を表明したNewt Gingrich, John M. Huntsman, Ron Paul, Rick Perry, Mitt Romneyの6氏に大統領の超法規的権限開戦決定権、「国家の敵」容疑者の殺害(target killing)指令権を認めるか否かのアンケートを行い、その調査結果を発表している。

Texas州出身の議員であり、自由主義者(libertarian)であるRon Paulを除いて全員が、非常事態における大統領権限の拡大(expansive)を容認すると回答している。

すなわち、こうした「緊急行動が国家利益にかなう」と判断される事態においては、大統領は最高裁判所の司法判断に優先して、軍事行動を指揮したり、テロや国家反逆の容疑者の殺害を指示できると主張していることは注目される。

Gingrich氏に至っては、大統領の行政権(executive power)の拡大を主張し、最高裁の判断を合法的に無視してよい( presidents may lawfully ignore Supreme Court rulings) と言ってはばからない。

大統領権限の超法規的拡大は、George W. Bushが、911以降の中東における軍事行動や、テロ容疑者の逮捕・拘束・尋問を行うに際して取ってきたのであるが、前回選挙中こうした大統領の行動に疑問を呈していたObama大統領も就任以降は、実質的にその政策を継続している( overruling Justice Department and Pentagon lawyers )。ビンラディン殺害や、リビア攻撃・カダフィ殺害などの軍事行動はこのオバマ大統領の翻意に基づくものである。

米国の三権分立原則と、非常時の大統領権限強化の矛盾は米国の憲法論議にとっては極めて重要であるが、911以降は「愛国」と「ならず者国家(rogue countries)」撲滅論をベースにする感情論が優勢である。

サンデル教授のご意見を聞きたいところである。