世界の動きを英語で追う

世界と日本の最新のできごとを、英語のキーワードを軸にして取り上げます。

中国人漁船船長拘留、日中二国間問題化 Wen Turns Up Heat

2010-09-24 | 世界から見た日本
2010年9月24日(金)

昨日のFinancial Timesのアジア版のトップ記事の見出しは、”Wen turns up heat in row with Japanese”(温家宝首相、日中二国間問題に態度を硬化)であった。

同首相は、中国高官として初めて本件に言及し、菅首相の「冷静に対応すれば解決できる」とした記者会見を無視し、船長の即時釈放を求めるとともに、応じなければ報復措置をとること(threatened retaliation)、そしてその重大な結果についての責任はすべて日本政府にある(solely responsible for the severe damage)との強硬発言を行った。

片や、菅首相は上述のように中国に対して、「冷静な対処」(to deal with the matter calmly)と呼びかけた。さらに同首相はFinancial Timesとの会見で、「両国首脳級では両国の戦略的関係強化の必要性に関し基本認識(basic recognition)では一致している」とし、「今回の紛争は近々解決できるだろう。」(the dispute might be resolved “before too long”.)と語ったとの本日の同紙報道である。

実質的な交渉をしてもいないのに、相手に対し「冷静になれ」と諭すのは国際儀礼上上下関係の隠喩である。また交渉開始以前に「近々解決できる」と示唆することは、交渉が進んでいることないしは、問題を軽く考えているとの婉曲表現となる。

外交の基本を宰相に教える人がいないことは日本の悲劇である。そして日本語を国際語に翻訳するとどんな効果を持つかを分かる人が、日本のトップの周りにいて、発言を指南しなければならないのにそれは一向に改善されない。ポツダム宣言を「黙殺」した結果、2発の原子爆弾が投下された歴史はいまだに学ばれていない。




米国の賃金の男女格差不況で縮小 Gender Pay Gap Smallest

2010-09-19 | 米国・EU動向
2010年9月19日(日)

米国における男女間の賃金格差が、記録的な水準まで縮小していると、US Today 紙が伝えている。主な理由は、女性がニュー・エコノミーの恩恵を受けていることに対して、男性が不況の影響をもろに強く受けているからだと説明している。

2010年の第2四半期における女性の週給の中間値は、男性のそれに比して82.8%となったが、10年前の同期には、その値は76.1%であったとの労働統計局が発表である。

この男女格差の縮小傾向について、USA Todayは、労働市場では大きな地殻変動が起こっているとして、次のような分析を試みている。

「格差が縮小しているのは結構なことだが、理由を考えると手放しで喜べない。従来から、男の職場とされてきた製造業や建設業での男性の失業の増加率が高いことが目立つ。 それとは対照的に女性の進出が目覚ましい官庁や医療関係の職場が安定していることが女性の平均賃金を押し上げているからである。」

女性はすでに労働人口の49.7%を占めるに至っているが、いろいろの角度から見ても、女性の進出度合いは男性のそれを上回っている。

人種: 黒人女性の賃金上昇はこの10年で8.8%であったが、黒人男性のそれは2.2%減少した。

年齢:どの年齢階層でも女性の賃金上昇率は男性のそれを上回っている。
職業別:女性は弁護士や会計士、医師などの高給職への進出が目立つのに対して男性は、従来女性が大部分であった職場、たとえば」銀行の窓口、交換手、司書などの職場に入りつつあるのが大きな特徴となっている。女性が、職業訓練や資格を要する看護師や実験助手などの職場の大半を占めていることに変化はない。一方男性が女性を凌駕しているのはIT関連の職域である。

しかし、男女間格差が、縮小したとはいえ、絶対額では絶対額では、女性は、たとえば35-45歳の階層では週給で200ドルの差が存在している事実は見過ごすことはできない。

そして、USA Today紙も言っているが、「女性の進出が、男性の職域を侵しながら拡大していることは問題である。なぜならゼロサムゲームの勝利者に女性がなっても社会全体からみれば「幸せ」が増大したことにはならないからである。



ソロスが率いるヘッジファンド業界の現状 Absolute Returns

2010-09-14 | グローバル企業
2010年9月14日(月)

世界の金融界に非常に大きな影響を与えながらも、規制当局がその行動の規制に乗り出せないでいるのがヘッジ・ファンドである。もともとは、ほとんどが90年代に始まった、たとえば一口1億円以上という超富裕層の投資を誘致して、大きく相場を張って大きく儲ける私募債であった。それが相場を張る際にリスクを回避するために多種多様なヘッジ商品に投資したり、その種の新しい金融商品を開発してきた。その名前はそうした行動様式に由来している。

Financial Timesは先週末にこのヘッジファンドの現状を報告する記事を掲載しているのでそれに沿って実態を垣間見てみよう。

総数7000社強といわれるヘッジファンドの上位10社の創立以来に稼ぎ出した総額は、1,530億ドル(約15兆円)で、業界の創出した利益の1/3を占めている。双璧をなすGeorge SorosのQuantum Fundと、John PaulsonのPaulson & Paulson Co.の2社の利益は、Walt DisneyとMcDonald’sを合わせたそれよりも大きいという。

ちなみにQuantum Fundは1973年の創立であるがこれまでの累積の利益は320億ドル、1994年創設のPaulson & Paulsonは、264億ドルに達している。

こうしたヘッジファンドの行動様式で、通常のファンドと違うところが2点ある。

一つは集める資金の流入を厳しく制限しているところがまず第1点目。彼らは巨大になり過ぎて自らに対する自律性が失われることを極度に嫌っているのだ。したがって、新参にとってヘッジファンドの投資家になることは難しい。ファンドのファンドが組成されて、間接的なヘッジファンド投資家ができるゆえんがここにある。

もう一つは、「絶対利益原則」(“absolute returns”)である。実績面でもこの点において追随を許さないのはやはりGeorge SorosであるとFinancial Timesは評している。これは、どんな時でもファンドの評価尺度は利益を出すことであり、一部のファンドが、他ファンド平均より損失が少なかったことを持って運用成績が良いとするのとは根本的に異なる。

昨今は、ヘッジファンドと称されるものが7,000社にも達すると、有象無象の感あり、と一部は評している。そしてだんだん大手による業界指導力がなくなっているとFinancial Timesは記事を結んでいる。

米国人は生涯何回転職するか Seven Careers in a Lifetime?

2010-09-06 | グローバル文化
2010年9月6日(月)

米国のLabor Dayの3連休のさなか、先週末のThe Wall Street Journalに「米国人は生涯に7回転職するというのは本当?」という論評記事が出ている。

米労働省が3日発表した8月の雇用統計非農業部門の就業者数は前月比54,000人減となり、3カ月連続で減少し,失業率は前月から0.1ポイント悪化し9.6%になるという厳しい状況の中、米国人はどんな行動パターンで生きているのだろうか。

「米国人は生涯に7回転職する」というのは、米国で暮らすとよく人口に膾炙する言葉(the most widely cited number)で、本当に信じてそう言う人もいるし、少なくとも「それくらい転職するのも当たり前」と思う人も多いのは事実である。一つの会社に40年近くいて「勤め上げる」という日本人も多いが、「他に転職する能力も意欲もなかったのか?」と思われかねないので注意を要する。

ただ労働問題専門家は、この平均7回という数字には統計的裏付けがない(the basis of the number is a mystery)と論評している。事実労働省の労働統計局にも、生涯転職数に関する統計は存在しない。それで、この「7回」はすっかり定着したままになっているのだという。

統計的にはっきりしているのは、若年層労働者の流動性の高さのみである。16歳から19歳の間の4人に1人、20歳から24歳の半数は、現在の雇用者のもとでの勤続年数は1年以下であるという。これには学生アルバイトの転職まで含まれているので数字は誇張されている。

労働専門家たちは、中年以降の転職(a midlife switch)には、職業訓練の必要性や、給与の低下、失職状態の長期化の危険もあるので、「7回の神話」は眉唾だと断じている。ただ転職回数についての印象を強めているのは、一部に存在する「転職魔」(zealous career changers)の存在である。

一方、平均的な労働者の平均勤続年数には労働統計局による統計が存在する。1996年に3.8年、2000年には3.5年、2008年には4.1年となっている。このデータを、40年間働くとするという仮定に当てはめると、10回近い転職が平均という結果も可能である。事実それを裏付ける追跡調査もあるという。

しかしThe Wall Street Journal はなお慎重で、この長期化する景気後退のもとでは、転職回数の統計は大きく歪められるので、本当のところは、「いまだに謎(a mystery)」と結んでいる。