世界の動きを英語で追う

世界と日本の最新のできごとを、英語のキーワードを軸にして取り上げます。

クリントン、パキスタンで舌戦  Barbs and Jabs

2009-10-31 | グローバル政治
2009年10月31日(土)

クリントン国務長官は、28日から、アルカイダとの戦いの前線にある同盟国パキスタンを訪問している。「アルカイダとの戦いの主戦場はパキスタンである」とするオバマ大統領の政策に従って、同国政府を励まし、高まる反米感情を緩和することが目的であったが、彼女自身が、阿修羅の形相で感情を激発する場面が少なからずあった。

この様子を、The New York Timesは、’Clinton Suffers Barbs and Returns Jabs in Pakistan’(パキスタンでクリントン長官は、丁々発止の舌戦を繰り広げた)との見出しで伝えている。

「アルカイダとの戦いに米国は全力を挙げているのに、友邦パキスタンは、やるべきことをやっていない。 アルカイダ指導者がパキスタン国内に潜伏していないとするパキスタン政府の発言は信じていない」と手厳しく批判した。

そして反米論調が支配するメディアの記者会見では、お互いに歯に衣を着せない激越なやり取りとなることが度重なった。しかし、論戦は、The New York Timesの判定によれば、五分五分(a draw)に終わったようである。

現地大使館の制止があったにもかかわらず、クリントン長官が現地であえてここまでメディアに露出したのも、パキスタンの新聞・テレビが反米報道を行い、民衆に米国への憤激を植え付けるような報道が過熱しているため、これに対峙して沈静化を図ろうとしたのである。

特に、最近の「米国の対パキスタン援助は、主権侵害(infringe on Pakistan’s sovereignty)である」との見方には、強く反論を試みた。そして今までパキスタンのメディアと直接の接触をしてこなかったことを反省して、直ちにこれを正したいと発言した。

この正面切った対応はおおむね成功したと捉えられている。「クリントンは、新しい友人を増やすことはできなかったが、少なくとも新しい敵は作らなかった」との反応が支配的であると現地の意見が紹介されている。

米国経済成長5期ぶりに反転上昇 US Economy starts to grow

2009-10-30 | グローバル経済
2009年10月30日(金)

米国商務省の発表によると第3四半期の経済成長は、年率で3.5%となり、大恐慌以来と言われてきた今回の景気後退からの脱却の大きな節目になるとの期待から株式市場も、商品市場も急反発した。

5四半期ぶりの反転上昇であるが、まだまだ本格的に経済が回復したと宣言するには懐疑的な見方も根強い。それは第3四半期の数字には、二つの重要な巨額の政府助成策の結果が含まれているからだ。

8月に行われた手持ちの車を売却して新車を買い換えると$4,500(40万円) が政府から支給される‘cash for clunkers’(「ポンコツ車をキャッシュに」キャンペーン)と、新築住宅を購入すると$8,000(70万円)の税金還付がその二つである。

これらの措置の、消費押し上げ効果が大きかった。消費支出は3.4%伸びたが、GDPの伸び3.4%のうち約2.3%分はこの消費の伸びよって説明されるとのことである。

新車買い替え助成はすでに終了しているし、住宅購入助成は、11月末に期限切れとなる。10月―12月の四半期のGDPの動きが長期的な経済回復なのかを見極めるためには極めて重要である。そして26年振りといわれる10%に届きそうな失業率に改善の兆しがみられるかどうかこそが、本格的景気回復の判断基準である。

ちなみに今朝のBBC放送は、このニュースとともに,各国の経済回復状況を解説したが、そこではまったく日本経済に触れることはなかった。


オバマ訪中時「温暖化ガス排出合意はない」 Carbon Omission

2009-10-29 | 環境・エネルギー・食糧
2009年10月29日(木)

来月に予定されているオバマ大統領の訪中時に、米中両国が、温暖化ガス削減に関して画期的な合意(a landmark agreement)に達する見込みはなくなったことを、米国の予備交渉団の責任者が上海で明らかにした。

Financial Timesの記事の見出しは、“carbon emissions”(二酸化炭素排出)をもじって、“carbon omission”(二酸化炭素問題除外)としている。

世界の二酸化炭素排出量の半分以上を排出する両国が、削減に関する合意に達することができず、「今後の相互理解と協力の深化」だけをオバマ訪中時の「成果」にすることにしたことは、12月にコペンハーゲンで開催される気候変動枠組条約の第15回締約国会議(COP15)の帰趨に大きな影響を与える。

もともと、中国は自国の経済成長を阻害する排出削減を、先進国並みに課されることは不公平であると、かねがね主張してきた。

一方米国は、オバマ大統領が、気候変動枠組み条約への復帰を決め、「温室効果ガス排出量を2005年比で20年までに17%削減し、50年までに83%削減する。そのために、企業に対し二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの排出枠を設定し、削減により余剰となった枠を売買できる「キャップ・アンド・トレード」と呼ばれる排出量取引制度の導入を図る」との公約を発表している。

現在この公約に添う形での法案が今春以来、米国議会の審議にかけられているが、コペンハーゲン会議までに何らかの法案が可決される可能性はほとんどない。こうした事情を抱える両国であるので、簡単には二国間合意を短期間にまとめられるはずはないのも当然といえる。

Financial Timesは、「EU諸国では、これでコペンハーゲンでは、米中両国が組んで、他国に合意を強引に押し付ける事態はなくなった」と喜んでいるのかもしれないと論評している。温暖化ガス削減交渉は、全地球的問題への真摯な取り組みであると同時に、高度に政治的なゲームでもある。


米国政府の救済対象企業のサラリー制限 Public outrage

2009-10-28 | 米国・EU動向
2009年10月28日(水)

先週、米国政府からの救済措置(TARP: Troubled Assets Relief Program)を受け、まだその負債を返済していない金融・自動車メーカー7社の幹部25名のサラリーを平均90%カットするという厳しい処置を発表したばかりの、報酬制限監督官Kenneth Feinberg氏は、各社における次のレベルの75名、合計525名のサラリーも規制する方針を発表した。

対象の7社とは、AIG, Citigroup, Bank of America, General Motors, Chrysler, GMAC、Chrysler Financial.である。Goldman Sachs, Morgan Stanley、JPMorgan, Chaseはすでに政府に対する負債を完済しており今回の規制の対象からはずされているので、自由に報酬を決められる。

この75名のサラリーに関しては、金額上限などは設定せず、トップの25名ほどの厳格な制限は加えられない模様である。基本方針としては:
1)報酬の現金部分を極力削る

2)サラリーの一部(salaried stock)を自社株で支給するが、換金は、4年間はできないものとする

3)ボーナスは、3年以上の保有を義務付けた自社株式の形で支給するが、ただし会社が、TARPを完済するまでは換金できないものとする。

同氏は、この措置は、「高給取り」に対する「大衆の怒り」(public outrage)に答えたものではない、と強調している。そして「これを報復や懲罰(retribution、vindictiveness、punitiveness)を求める大衆への迎合だと批判するなら、政策を決めた議会の方を向いて言ってほしい。私は、白馬に乗ってここに攻め込んできた騎士ではない(I’m not riding into this on a white charger.)」と立場を説明した。

これで、政府救済を受けている企業7社の幹部合計、700名はサラリーを制限され、ボーナスは自社株でもらうが、救済資金の完済までは売却できないものとされる。
これには、各社の幹部に、TARPを完済して「自由」を得るために収益回復に全力を尽くさせようという狙いがある。



管理職報酬 Highest-Paying White-Collar Jobs in US  

2009-10-27 | 米国・EU動向
2009年10月27日(火)

雑誌Forbsのネット記事を引用してABC放送が、米国のホワイトカラー上級管理職の年俸の現況を報じている。調査会社Compdataが全米約 5,000 社を調査した結果に基づく報告である。

経営幹部として最上級はC-Classと呼ばれる、CEO・CFO・COO・CIO・CTOのタイトルをもつ人たちであるが、今回の調査対象はそのすぐ下の上級幹部が対象となっている。2009年の彼らの年俸は、平均で$97,500(約9百万円)である。これは2008年と比較すると1.2%減となっている。

調査の対象となった26職種の中でもっとも高給を取るのは、銀行マンの中で、企業への貸し出し(commercial lending)を担当する部長クラスである。5年連続でトップとなったこの職種の人たちのその平均年俸は、$128,600(約1200万円)である。

過去5年間で、もっとも大きな年俸カットを受けたのは、住宅ローン(mortgage lending)の部長で、その幅は11.8%であり、過去1年だけでも5.9%ダウンとなっている。逆に過去5年で最大の年俸増収となっているのは、「財務部長」(Finance Director)であり、その上昇幅は、35%にたっしており、ランキングも9位から5位に躍進した。

不況化で、レイオフの矢面に立たされて苦労した「人事部長」(Human Resources Manager)や、予算削減(bloodletting)のあおりを受けてやりくり苦労した「広報部長」はいずれも、最下位近くを低迷しており、その年俸は700万円相当のレベルにしか達していない。

米国の上級管理職の給与水準はこの程度のものであることがわかり、興味深い。また、上に述べたC-Classと上級管理職の報酬の間には、実に1桁の差がつくということである。さらに言えば、大手証券・銀行のCEOとは2桁の差があるということでもある。

バクダッド連続爆破テロ U.S. security contractors

2009-10-26 | グローバル政治
2009年10月26日(月)

厳重に警備されているはずの首都バグダッドの官庁街で2台の車に搭載された爆弾が爆発し、すでに報告されている死者だけで136人、負傷者は600人近いという大惨事が起こった。

場所は、法務省とバグダッド市庁舎の近くの駐車場であり、去る8月に約100名の犠牲者を出した、財務省・外務省爆破現場から数百メーターしか離れていない。最高度に警備されていた政府中枢地区への侵入を許しただけに衝撃は大きい。

1月の総選挙を前に、マリキ(Maliki)大統領の率いるイスラム教シーア派政権の統治能力を根底から揺さぶろうとするイスラム教スンニ派からの攻撃であるとの見方が専らである。

ちなみに、先週イランでは、シーア派の現政権の将軍6名が自爆テロにより暗殺されたが、パキスタン国内に本拠を置くスンニ派過激派「Jundallah」が犯行声明を出している。

2006から2007年にかけてのバグダッドの治安悪化が、イラク全土の治安安定化と合わせて大きく改善し、これがオバマ大統領の2010年までの米軍撤退の決定の根拠となっていた。

オバマ政権にとって、イラクの治安悪化は、アフガニスタン・パキスタンにおけるタリバン勢力との戦闘の膠着とともに、非常に大きな軍事上・外交上の問題となって浮上している。このままでは、米軍を中心とした同盟軍は、イラク・アフガニスタン・パキスタンという3国にまたがった戦争を同時遂行しなければなくなることは必定である。

ところで、The New York Timesの現地特派員が、負傷者の中にアメリカ人警備員がいること、また現場で彼らが救助活動をしていることに対して米国大使館員にその所属を問いただしたところ、「誰に雇われているか詳細はいえない」と答えたことを報道している。

米軍の装備や食料・弾薬を輸送し、ガードマンとして(実態は傭兵に近い)警備に当たっているのは、米国の警備保障企業(U.S. security contractors)であるという事実を読者に注意喚起していることが注目される。



鳩山首相、対米配慮に苦労 Foundation of Japanese Security

2009-10-25 | 世界から見た日本
2009年10月25日(日)

「ASEANプラス3」会議のためタイを訪問中の鳩山首相は、対米関係配慮のための調整に忙しい。ひとつは「普天間基地移転」問題、いまひとつは「東アジア共同体」構想のいずれもが米国との「調整」でギクシャクしているからだ。

普天間基地の移転問題では、米国側は過去の長期の交渉によって合意された内容どおり実行を迫り、「沖合への移動が妥協の限界であり、県外への移設は論外」との立場を崩さないことを、Gates国防長官が、先週の「オバマ大統領来日前の露払い」会談の中でも明らかにしている。

鳩山首相が、「基地問題の結論急がず」としたことを、ロイター(Reuters)は、”Japan will not rush U.S. base decision’との見出しで、現地から報道した。

そして岡田外相が、「県外移設もありうる」としたことに対して、首相が「結論は私が出す」と釘を刺したことを、’I am the one to make a final decision’と表現し、閣内不統一であることを報道した。

また、AEAN首脳からはおおむね賛意を得た「東アジア共同体構想」(EAC: the East Asia Community)を「米国抜き」で推進することに関しては米国側から強い反対が示され、さらには米国が入った同様組織であるAPECとの区別の問題が生じてしまった。

Reutersは、このあたりの事情を直截に、’ Mr. Hatoyama failed to dispel confusion over the proposed role of the US in the EAC’(東アジア共同体構想での米国の役割に関する混乱の払拭に失敗)と、米国との事前調整不足を伝えた。

オバマ大統領の来日を前にした首相は、こうしたすれ違いが起こっていることに関して、「米国との関係は日本の安全保障の基軸である。日本は米国と緊密に相談していく」(the relationship with Washington is the “foundation” of Japanese security, and that Tokyo will consult closely with the Americans.)と、日本政府の立場に関する、いわば「証文」を差し出さざるを得なかったのである。

かくして、米国は当然のごとく東アジア共同体EACにも入ってくることも、無視することも可能となった。オバマ大統領は来月、訪日後APECの総会に出席するためにSingaporeを訪問する。このときにEACへの対応について結論が出る。




オバマ、アフガン政策批判に苦しい防戦 the War of Necessity

2009-10-24 | 米国・EU動向
2009年10月24日(土)

アフガニスタン情勢が、大統領選挙のやり直しという予想外の事態の進展を見たことで、先延ばししてきた米軍増派の決定がさらにできなくなっている。

旧ブッシュ政権の軍事政策の中枢部を担ってきた「ネオコン」(Neo-con)グループからの、オバマ大統領の政策遂行責任を問う声が厳しくなってきた。その先頭を切るのが、チェイニー(Cheney)前副大統領である。

一方、オバマ陣営も反論のボルテージをあげている。オバマ擁護派は、「アフガン政策を誤ったのはブッシュ大統領であり、7年間にわたり無為無策であったことの結末の後始末をしているのがオバマ大統領である」と語気を強めている。

それに対しCheney氏が、「オバマ大統領は、Stanley McChrystal現地司令官の40,000人増派要請に答えていないではないか」と攻撃する。

対するオバマ派は、「30,000人の増派要請を7ヶ月もたなざらしにしたのが、Bush大統領と、Cheney副大統領だったではないか」と応酬する。

ネオコンは、「ブッシュがイラクに集中するという作戦を取ったのは正しかった。オバマは、選挙戦中はアフガニスタンに対する攻撃は不可欠だ(the war of necessity)といいながら、いまや迷いに迷っている大統領だ。まさにハムレット状態になっている」と批判する。

そしてCheney氏は、「オバマ大統領はアフガン問題で決断することを恐れている。そのために前線の軍は危険な状態に置かれている。逃げはいい加減にやめよ(Stop Dithering)」と、手厳しく批判した。

ホワイトハウスは、これに対して強烈に反撃した。報道官が記者会見して、「Cheney前副大統領からは異なこと(curious comment)を承る。7年も放置した人が何をいまさらの発言である。増派要請を8ヶ月も机の上にたなざらしにしたのは誰だったのか。そしてそれをやっと実現させたのは、オバマ大統領なのだ。8年間の責任を棚に上げておいて、何をいまさら片腹いたいことだ」

オバマ対チェイニーの口を極めた批判合戦は、5月のグアンタナモテロリスト収容所閉鎖や、拷問写真の公開をめぐって起こった論争以来続いている。そしてホワイトハウスはメディアによる批判にも神経質になっている。

先般ケネス・ファインバーグ大統領特別顧問に主要テレビ局6社の代表がインタビューする予定となったが、ホワイトハウス側が突然、日ごろから反オバマの論陣を張るFOX TV記者を入れないと反対したのである。残る5社が一致して抗議し、結局FOX TV記者も入ることになったが、これはホワイトハウス側が大人気ない挙に出たといわねばならない。

アフガニスタンの大統領選挙決戦投票は、事態をさらに泥沼化させる恐れが大である。オバマ大統領は、あまりにも明快にアフガニスタン侵攻を宣言したため自縄自縛に陥っているように見える。


ノキア、アップルに特許宣戦布告 Free Ride on Nokia’s Back

2009-10-23 | IT・科学技術
2009年10月23日(金)

Nokiaは、AppleがNokiaの10件の特許を侵害し、2007年以来3000万台のiPhoneを出荷したとして、米国Delaware州の連邦地方裁判所に訴訟を提起した。

Nokiaはスマートフォンの出荷では依然として首位は保っているが、iPhoneとBlackberryに追い上げられて売上が急落している。ちなみにNokiaは日本市場からは、2008年12月に撤退している。

この提訴のタイミングは、今年第3四半期決算で大きく明暗を分けた決算発表の直後であることが注目される。Appleは、売上は昨年同期比で25%増、純利益は実に47%増の約1600億円を記録した。一方Nokiaは、売上は昨年同期比で30%減となり、1996年の上場以来初の赤字760億円となった。

Nokiaの法務・知的財産権のトップは、「AppleはNokiaの技術開発力の背中にただ乗りをしている」(“a free ride on the back of Nokia’s innovation”.)と提訴理由を述べ、Appleが侵害をしているのは、「第3世代携帯電話の製造にかかわる基本特許であり、ワイアレスデータ伝送、通話伝送コード化、セキュリティ、暗号化に関する技術を含む」としている。

一方、Appleも、スマートフォン分野では、すでに同様技術で競合にさらされている。たとえばPalm社が発表したモデルPreなどがそれに当たる。Appleは、これらに対して知的財産権侵害で提訴を検討しているとして、追随者が出ることに釘を刺し始めている。スマートフォン業界はこれから数年法的な争いの場ともなること必定である。

オバマ、金融界の報酬制限を決意 No Broad-based Caps

2009-10-22 | グローバル経済
2009年10月22日(木)

オバマ大統領は、国民の中に広がる大企業とりわけ金融界のCEOをはじめとする経営幹部が莫大な報酬を取っていることに反発している声に答えて、政府の資金・金融・保証などによって救済を受けている会社に限って、報酬をカットすることを決意した。

検討作業は、財務省特別官にオバマ大統領によって選任されたKenneth R. Feinberg氏によって行われ、その報告書はまだ公表されていないが、骨格がThe New York Timesなどのメディアに流れ、また同氏自身の講演で一部が明らかになってきた。

ABC放送によると、政府支援を受け、まだ政府に対する負債を返済していない7社の幹部25名のサラリーを平均90%カットするというもの。ボーナス・年金などの他の形での報酬も入れた合計で計算すると平均50%のカットになるという。

対象の7社とは、AIG, Citigroup, Bank of America, General Motors, Chrysler, GMAC and Chrysler Financial.である。Goldman Sachs, Morgan Stanley、JPMorgan, Chaseはすでに政府に対する負債を完済しており今回の規制の対象からはずされているので、自由に報酬を決められる。

一方、政府が私企業の幹部の報酬に上限を設定するのは行き過ぎで、資本主義の根本に反するとの根強い反対にも配慮して、オバマ政権は、「広範な企業役員報酬制限」(broad-based caps on executive pay)を課す意図はないと言明している。

救済を受けたところは、必死になって政府からの支援貸し出しを一刻も早く返済しようとする理由はここにある。


普天間基地と洋上給油 US seeks clarity on Japan alliance

2009-10-21 | 世界から見た日本
2009年10月21日(水)

Gates国防長官が、11月のオバマ大統領の初来日の露払いとして(laying the ground)が来日しているが、その目的は、「日本の同盟関係に関する真意の確認」(US seeks clarity on Japan alliance)であるとFinancial Timesが報じている。

米国との関係をより対等なものにする(to put the alliance on a more equal footing)とする民主党は、普天間基地の移転の見直しと、アフガニスタンのタリバン掃討作戦に対する後方支援としての洋上給油の中止を決めている。

一方、Gates長官は、あくまでも歴代日本政府がこれまで行ってきた約束を守るように求める方針である。

「すでに合意された内容に対してもはや代案などありえない」と、日本に来る飛行機の上で記者団に語っている。さらに同長官は、「現在の合意は長い年月をかけて作り上げたものである。(現段階での)代案は、日米間の外交関係から受け入れられないものであり、軍事作戦上も有効なものでありえない(politically untenable or operationally unworkable)」と言い切っている。

そして、「われわれの方として少しは移転先に変更の余地(some flexibility)があるかもしれないと言ってはいるが、それは日本政府と沖縄県の間で調整できる範囲のものという意味だ」と強い調子で、会談に臨む態度を表明している。

今回の事前調整が不調の場合、結論はオバマ・鳩山会談に委ねられるが、日米双方にとって大きな課題であり、その帰趨は今後の日米関係に大きな影響を及ぼすことになる。


オバマに難問、アフガン大統領再選挙へ A Recipe for Disaster

2009-10-20 | グローバル政治
2009年10月20日(火)

国連の承認の下で、調査活動を行ってきた大統領選挙苦情委員会が、「210ヶ所の投票所における票が無効である」との分析結果を公表した。

この結果、現職のHamid Karzai大統領の得票は48%と過半数を割り込み、対抗馬のAbdullah Abdullah前外務大臣の得票率が32%と確定したことから、両者による決選投票(a run-off)が必要な事態となった。

この報告を受けたKarzai大統領は、決選投票への参加意思を確認するとともに、「代案(alternatives)も考慮の余地あり」との見解を表明した。一方Abdullah Abdullah氏も、「決選投票への参加意思はあるが、現実も直視する必要がある」と、治安問題と冬の到来が再選挙の障害になることをあげた。そして、「代案への門戸は開かれている(the door is open)」と語った。

代案(alternatives)の内容を両者とも明確にしないが、連立ないし、Abdullah Abdullah氏の入閣のことを指している。しかし、Abdullah Abdullah氏は、「閣僚ポストをひとつや二つもらうために立候補したわけではない。支持者の意見を聞いてみるまでは、明確なことはいえない("I think, before getting too specific, I need to get a mandate from my supporters.")と確答を避けた。

一方、駐米アフガニスタン大使は、「再選挙は11月1日しかない。これ以上遅れると、冬に入り選挙投票は事実上不可能になるので、その場合選挙は来年春まで延期となる」と語った。「しかし、そのような事態は、アフガニスタンの政局と対米関係にとって、まさに大混乱のレシピ(a "recipe for disaster")となる」と語った。

この事態を受けて、Hillary Clinton米国務長官は、「数日中に憲法に則った解決策のニュースが聞けると期待している」とコメントしたが、John Kerry上院外交関係委員長は、「選挙結果が確定するまでは、米軍の増派の決定は下せない。合法政府が統治する国でなければ、軍事支援することはできない」と言明した。

オバマ大統領のアフガニスタン政策に障害がまたひとつ増えた。




イラン、司令官級6名自爆テロで殺害さる Radical Sunnis

2009-10-19 | グローバル政治
2009年10月19日(月)

Financial Timesは日曜日、革命防衛隊(Revolutionary Guard)の副司令官を含む6名の幹部と、その他29名が、自爆テロの犠牲となったことを報じている。

このイラン革命政府に対する公然たる攻撃は、ここ20年来で最大規模となり、将官級の犠牲者数から見た規模においては、イラン・イラク戦争以来のものとなる。現在、6月の大統領選挙後の国内騒乱と、核問題での欧米との対立で難しい立場にあるイランであるが、その国内の複雑な対立関係を図らずも世界に露呈した。

今回の自爆テロは、パキスタンとアフガニスタンと国境を接する南東部シスタンーバルチスタン県で発生したが、パキスタン国内に本拠を置くスンニ派過激派「Jundallah」が犯行声明を出した。

イラン政府中枢は、イスラム教シーア派が占めているが、一方対立するスンニ派は、パキスタンやアフガニスタンを本拠とするアルカイダから支援を受けて、「バルチスタン分離運動」と結びついて反政府運動を展開してきた。

このバルチスタンと一般に呼ばれるこの地域の、1400kmに及ぶアフガニスタンとパキスタンとの国境では、スンニ派の過激派とアルカイダが結びついた反政府グループが自由に行き来し、麻薬取引のルートとなっているのが現実である。

そして、イランの7000万人の人口のうち、ペルシャ人は半数であり、のこりはバルチ人、クルド人、アゼル人、トルコ人などから構成されており、人種間対立はいつも火種となる可能性がある。

とりわけバルチスタン分離派は、クルディスタンと呼ばれるクルド人地区の分離運動を支援して、イランの内部崩壊を策動している。このため革命防衛隊のエリート司令官が派遣されて治安維持に当たってきたのであるが、今回の事件は、シーア派政府にとって大きな打撃である。

アフマディーネジャード大統領は、早速声明を出し、この事件は、米英と名指しこそしないが、その諜報機関の関与を強く非難し(accused unspecified foreigners of complicity)、パキスタンに対しては、犯人の捜査と引渡しを要求した。米国国務省は、これに対して「無関係」と直ちに応酬した。

中国、重慶特別市の警察とマフィア大粛清 Capital of Graft

2009-10-18 | 中国・ロシア・インド・ブラジル動向
2009年10月18日(日)

今年、中華人民共和国建国60周年を祝ったばかりの中国は、「発展」の影に付きまとうもうひとつの顔である「腐敗(corruption)」への戦いを開始した。

最近の経済発展とともに息を吹き返した中国マフィアは、地方政治家と警察当局の「保護」を受けて、その跳梁跋扈が目に余り、多くの都市が無法地帯と化している。警察とマフィアの癒着は、”The police and the mafia were buddies”(警察とマフィアはお友達同士)と市民が嘆き、その犯罪を訴えても取り上げられず、報復を恐れる市民は証言ができないというところまで悪化しているのである。

こうした状況に危機感を抱いた共産党中央部と政府中枢は、2007年の第17回共産党大会以来、高級幹部の汚職摘発を行ってきたが、いよいよ地方都市に巣食うマフィアに本格的に手を付け始めた。

そのトップを切って、揚子江上流の世界一の大都市重慶特別市が、今年6月以来同市共産党書記長Bo Xilai(薄チ来)氏の指導の下本格的な粛清に乗り出したことを、英国Telegraph紙が報じている。同紙は、この愚者の楽園都市(Gotham)は、まさにCapital of Graft(汚職の首都)であると断じている。

共産党中央の指示を受けた同氏による粛清は単にマフィアの逮捕にとどまらず、重慶特別市の政府内、警察幹部、警官の粛清に及ぶ広範なものである。当初3,000名の警官によって始められたこの大キャンペーンには現在、25000人の捜査官が動員されており、すでに約5,000名に上るマフィアの逮捕者が出ているのみならず、重慶市警視副総監や、司法長官までが逮捕されている。そして市警察の警察官の5分の1が摘発されるという事態になった。

この「アンタッチャブル捜査」の先頭に立った薄書記長は、現在共産党中央委員会政治局員17人中の、第16順位に列されているが、2012年の党大会では、さらに党中枢部に昇進することが確実視されていて、卓抜した実行力を持った人材と評価が高い。

「重慶の売春・違法賭博・麻薬密売の本拠地は、警察署にある」と市民が嘆く事態は、このキャンペーンで改善を見たことは確かであるが、永続的なものになるかどうか、そしてもっと重要なことは、中国全土にはびこった、腐敗構造を根絶できるかがこれからの大問題である。

中国の言語学者として欧米での評価の高い林語堂が、1935年に著した「中国=文化と思想」(講談社学術文庫)の一節、『中国文法におけるもっとも一般的な動詞活用は、動詞「賄賂を取る」の活用である。すなわち、「私は賄賂を取る。あなたは賄賂を取る。彼は賄賂を取る。(中略)」であり、この動詞「賄賂を取る」は規則動詞である』からの脱却こそが、中国の本当の近代化なのである。


ゴールドマンサックス快調、シティ不調の理由 US Divide

2009-10-16 | 米国・EU動向
2009年10月16日(金)

米国の金融機関の第3四半期の決算が続々と発表されているが、昨日のJPMorgan Chaseの好決算に続いて、Goldman Sachsが昨年同期比で4倍の収益を記録した。一方、Citiは引き続き赤字決算となった。

この状況をFinancial Timesは、「ウォールストリート、メインストリートと明暗分ける」(Wall Street recovering faster than Main Street)と表現し、「米国の分水嶺」(US Divide)と呼んでいる。

Main Streetとは、本来米国では街の中央の商店街をさす。(英国ではHigh Street) すなわち機関投資家向けの業務、大企業融資、M&Aを専門とする街Wall Streetに対して、Main Streetは、中小企業向けや、庶民の住宅ローンなどを中心とする消費者向け金融機関の代名詞としても使われる。

政府の救済資金の注入を受けた米国金融界の中でも、機関投資家や富裕層を対象とする債券の発行の引き受けや仲介取引を行うInvest Banking(投資銀行)は、Lehmanショック以来1年で回復を遂げた。

一方カードローンや、サブプライムなどの住宅金融部門を主力とするCitiの苦闘は続いている。サブプライムローンの条件緩和策を政府から命じられたあとも、個人の破産による住宅の差し押さえ(foreclosure)は記録的な数に達していて、収まる気配を見せていない。失業率が10%に近いところまで達していることが原因であるが、FRB(連邦準備制度)の予測でも来年末でも9%台となっていることが明らかになった。

政府の圧力を跳ね返して、投資銀行としての純血を守り、消費者金融から遠ざかったGoldmanの勝利であり、政府に3分の1の株式を握られて、身動き不自由なCitiの敗北とも評されている。

一方では、金融界最高幹部へのボーナス総額が昨年よりも増えて、約140 億円に達すると報じられている「会社を儲けさせた人が高額報酬で報われるのは社会の基本原理」とする米国資本主義の下では、政府救済という事実とは関係なく今期も、高額ボーナスが支給されることに変化は無い。