世界の動きを英語で追う

世界と日本の最新のできごとを、英語のキーワードを軸にして取り上げます。

ひたひたとインフレが迫る米国 Prices starting to creep higher

2011-02-06 | グローバル経済
2011年2月5日(土)

本朝ホテルに置かれていたUSA TODAY紙のトップは当然のことながらSuper Bowlの話題であるが、経済面のトップは物価上昇が取り上げられている。いわく「物価じわじわと上昇開始」(Prices starting to creep higher)。そしてその脇見出しは、「企業は、原価上昇吸収の限界に達した」としている。

最近発表の企業決算によると、製造業、小売業の一部では、「2010年に我慢してきた値上げを、今年は行わざるを得ない」としており、原材料の高騰の影響が出始めている。不況を脱しきれずもがいている先進国で価格上昇が起こるのは、中国をはじめとする発展途上国(emerging economies)における消費急増が、食品、エネルギー、金属、綿花などの国際商品の価格を軒並み押し上げているからだ。

米国の消費者物価指数は12月に前年同月比で1.5%上昇したが、卸売物価のうち最終製品価格は4.0%の上昇となった。これは明らかに企業は間に挟まって利益率が圧迫されている現状を如実に映していると同紙は解説している。そして消費は前年比で4.4%拡大していて、値上げのきっかけをつかみやすくしている。

特に建設業では材料とエネルギーコストの吸収限界に達していて、値上げすれば注文が来ずに倒産、値上げしなければ赤字倒産と最も苦しい生き残り競争の局面におかれていると報告している。

一方米国連邦準備制度(FRB)のバーナンキ議長は、回復基調ながらも「景気はまだ深い穴の底にいる」(Economy still in a deep hole)だとして、ゼロ金利政策とそれを支えるための6000億ドルの国債買い戻しを断固実行すると発言している。そして14兆ドルの財政赤字削減に着手しなければ、国債の利子が上昇してしまうと警告を発している。

同議長は、「国債買い戻しによって市場に供給された資金こそ、商品市場に投機資金となって入り込み商品価格上昇の元凶となっているのではないか」と指摘されて、色をなして反論した(bristled at concerns)とのことである。まさに痛いところを図星されたということなのだろう。

中国とインド合計25億人が経済活動の主役に躍り出てくれば、世界経済の動きに対して従来のセオリーが通用しなくなってきたのも当然と言える。そして先進国にその予兆が現れた「不況下のインフレ」に対しては、すでにそれを表す言葉はすでに存在する―stagflationがそれである。

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世界はインフレに向かうか A “Risk-on” Day

2011-02-02 | 世界から見た日本
2011年2月2日(火)

景況を示す指数のひとつに、購買担当者指数(purchasing managers’ indices)がある。製造業の資材購買担当者からの聞き取りによって製造業の活動の強弱を測定しようとする指標である。

この指数が、直近で全世界的に上昇している。この結果エジプトの政情不安を乗り越えて、株式市場やユーロ・ポンドが強含みで推移している。この状況をFinancial Timesは、「リスク選好相場」が戻ってきたと評している(The result is a “risk-on” day for markets, with stocks and the euro higher.)

もちろんエジプト情勢からの不安材料が、市場に充満していることに変わりがない。原油は2008年以来の1バレル100ドルの大台に乗せた。これ以上の棒上げになる懸念は、「スエズ運河封鎖などの事態で供給に支障が生じたら加盟国の増産で対応する」と、OPEC事務局長が言明していることで和らげられている。

しかしエジプト情勢はますます不透明であり、同国に対する格付けは、Standard & Poor'sも、Moody'sを追いかけるように一段階引き下げてBBとし、先行きをnegativeとした。 この不安な事態がエジプト一国の問題だけで収束するのか、他のアラブ、北アフリカ諸国にどう影響するのかによって世界は大きく変わる。それいかんでは、おりからの原材料・食料の価格上昇に火に油を注ぐことになることは間違いない。

バブルがはじけて低成長・デフレの20年に出口が見えず、経済システムに制度疲労を来たした日本にとってインフレはいいことなのかもしれない。少なくとも累積した国債の実質的な棒引きになるという意味では。

世界がインフレ時代に反転し、国債利回りをはじめ高金利時代に入るという予想を織り込んで行動するときなのかも知れない。