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COP15『先進国の横暴』批判 pulling a document from nowhere

2009-12-20 | 環境・エネルギー・食糧
2009年12月20日(日)

193カ国の参加を得て、またその最終日には110人もの各国最高指導者が出席したコペンハーゲン会議が2週間の長丁場を経て終了した。一夜明けてその会議の成果についての諸国の態度が明確になって来た。

会議は、昨日の本欄で速報した内容を、法的拘束力のない3ページの文書にまとめられているが、表現はあくまでも弱く、「署名各国はコペンハーゲン合意に留意する“take note of the Copenhagen Accord”となっているのみである。

オバマ大統領は、中国の温家宝首相と二度にわたる会談を行って、対中強硬姿勢を世界に示したが、「中国は削減を監視する仕組みを受け入れて、透明性transparencyを担保するべし」と、EUとともに迫ったことも会議が事実上の決裂に終わらせた原因のひとつである。

この問題は、削減目標値で合意した後の技術論として先送りも可能であったはずだが、オバマ大統領は議会対策上、対中強硬姿勢を示す必要があったのだ。

オバマ大統領は、会議の成果を意味のある合意“a meaningful agreement”と自賛し、Ban Ki-moon国連事務総長は、すべてが当初の目標どおりではないが、今後に向かって、「不可欠の出発点」“essential beginning”であると評価した。

ベネズエラとボリビアなどの南米を中心とした発展途上国の一部は、会議途中から強い反対姿勢を示していたが、ベネズエラのチャベス大統領の毒舌は止まらなかった。

「会議は不成功に終わったのは残念である。帝国主義国アメリカに率いられた国々の政治的な意思が不在であったことが原因で失敗したのだ。議長国デンマークと富裕先進諸国は、途上国の利益を無視した合意文書なるものを、どこかから引き出してきて“pulling a document from nowhere”共謀したことは許せない」と非難をデンマークにも向けた。

スーダンが代表を務める途上国77カ国(G77)も、「合意文書の作成過程では先進国と途上国の一部の密室交渉が行われた」と強く批判した。スーダンの代表はさらに「米国主導の今回の合意は、温暖化阻止のための強い意思を示すという意味で最低だ。世界の最貧国にとっては、惨憺たる結果を招くであろう」(the US-backed proposals represented the “lowest level of ambition” and would be devastating for the world’s poor.)と強く非難した。

EUは、今後の取るべきステップの第一歩“the first of “many more steps”と表現しながらも、各国のコミットメントの弱さを嘆き、条約化できなかったことに失望を隠さなかった。特にスエーデン代表は、「2℃以下という目標では温暖化を阻止できない」とし、今回の合意は不完全である”not a perfect agreement”と批判した。

日経新聞は社説で、「日本は合意を取りまとめた28カ国には入ったが、存在感は薄い。コペンハーゲンでの会議は、鳩山外交の非力さを示すものでもあった。日本は25%削減の高い目標を掲げただけで、実現を裏付ける政策がない。」と論評している。

そして報道記事の中での、首相に対する評価:「よかった、よかった」。首相は同日、首相公邸に呼んだ平野長官に「コペンハーゲン合意」を評価する言葉を繰り返した。しかし、首相がしたことといえば「議事進行の要請」程度だ。