世界の動きを英語で追う

世界と日本の最新のできごとを、英語のキーワードを軸にして取り上げます。

ドバイ発金融危機は、伝染するか Just a Flesh Wound or Not?

2009-11-30 | グローバル経済
2009年11月30日(月)

アラブ首長国連邦中央銀行は、ドバイの不動産開発を中心としたコングロマリットDubai Worldが先週水曜日に発した、600億ドルの債務に対する6ヶ月の返済猶予(a 6-month standstill)要請が、世界の金融・為替市場に与えた衝撃の緩和措置として、「ドバイの銀行の支払い能力維持(a liquidity facility)を支援する措置をとる」と日曜日に発表した。

この措置が、感謝祭連休が明ける月曜日のNY市場をはじめ、先週後半からの下げ一色の世界の株式市場と、ドルの暴落に対してどのような効果を発揮するかが注目される。

今回のアブダビ政府の支援が、ドバイの800億ドルの債務への直接支援ではなく、ドバイからの資本逃避を防止する対銀行支援措置だけにとどまったことから、投資家の疑心暗鬼を沈静させることは難しいかもしれない。

一方、世界の金融界は、ドバイ一国の金融破たんから、経済発展途上国への問題波及への懸念へと関心が移っていると、The New York Timesが伝えている。バブル投資に沸いてきた、アイルランド・ギリシャ・東欧諸国などにこのドバイ金融危機がパニック的に伝播することが心配のタネになっているのだ。

すでに先週のNY市場では、これらの国々にとどまらず新興国の債券は売り一色となり、これらの国々の債権にかける債務保証保険(CDS)の料率は急上昇した。債券取引最大手PimcoのCEOは、「ドバイは、これから各国国債市場の問題、いや危機の始まりになるかも知れない。リーマンショック以降の金融危機が、「かすり傷」(just a flesh wound)に過ぎなかったと考えている人々に対する警鐘だ」とコメントしている。

今週、投資家は、国ごと、銀行ごと、投資対象会社ごとに検証を強化していくであろうが、さしずめアイルランド、ギリシャ、バルト三国、ウクライナ、ルーマニア、ブルガリアが俎上に乗せられると、同紙は予測し、IMFの専門家の、「アイルランドの銀行に対するCDSの急上昇が、その危険の予兆だ」との論評を伝えている。

一方、ブラジル、中国、インドには、その成長力と国内市場の堅調さが買われて、「安全」な投資先として、資金が急激に流入している。しかし、この急激な資金の膨張を適切に制御する機能がまだ備わっていないこれらの国々では、株式市場と不動産市場の過熱がすでに起こっている。一方欧州では、域内の「途上国」のバブル崩壊が起これば、EUは、救済策を講じざるを得なくなるという問題が浮上している。

ドバイ問題は、中東の一問題で収束するか、世界に波及してリーマン危機後の「二番底」をもたらすのか、今週の展開が注目される。


米国年末商戦ネット急伸 Pajama-clad online consumers

2009-11-29 | グローバル経済
2009年11月29日(日)

不況と失業の嵐が吹き荒れる米国でも、感謝祭から始まりクリスマスにいたる年末は、日本と同様に「書き入れ時」であることに変わりはない。

第4木曜日の感謝祭の直後の金曜日は、’Black Friday’と呼ばれているが、これは「通年の黒字(black)」を呼び込む日として小売業がもっとも期待をこめて準備を進めるからである。そして、例年経済動向、特に消費者行動(shoppers’ mindset)のバロメーターとして注目されている。

早速、先週のBlack Fridayの速報値が出たが、全米の商店の売上は、約107億ドル(約1兆円)で、前年比0.5%の微増にとどまった。しかし、消費者が、財布の紐を緩め始めたのも事実であると捉える向きも多いとABC放送は伝えている。

こうした中で、オンラインストアーの売上は急増し、「巣籠もり消費者」(pajama-clad consumers)が、寒風の中長い行列を作る伝統的買い物客を追随する傾向がはっきり見えてきた。

Black Friday当日は、ウェッブへのアクセスが集中して、一部でサイトが見られなくなるほどの盛況であったとも報じられている。数字的には、一人当たりのオンラインショップでの買い上げは、昨年の平均126,04ドルから170.19ドルへと、35%増加。一回あたりの買い上げ点数も、4.6個から、5.4個へと増加した。

現在、全小売売上の中に占めるウェッブの割合は7%まで上昇してきている。



ドバイ信用失墜 Confidence evaporates in the desert heat 

2009-11-28 | グローバル経済
2009年11月28日(土)

「ドバイへの信認は土漠の熱気で蒸発」と、Financial Timesが見出しをつけている。

ドバイに中東のビジネスの本部を移さない企業は、「世の中がわかってない」とまでいわれ、イスラム金融を金科玉条のごとくあがめる金融界のドバイもうでも引きも切らず、東京でのセミナーも繁盛した。高層ビル群と沖合いニュータウン建設ばかりでなく、人口とバランスしない新幹線構想もぶち上げられ、鉄道建設工事受注に沸いた。

2月25日の本欄で、「砂上楼閣ドバイにUAE連邦政府が100億ドルの緊急融資」したことを、すでに「そこにある危機」として取り上げた。しかしその後国際金融界は息を潜めて、「まさか兄貴分のアブダビなどの金持ち首長国が、もともと貧しいながらも背伸びをして金ぴかの金融センターを築きつつあるドバイを見捨てることはあるまい」と目を覆ってきた。

しかし、今週ドバイバブルは、セオリーどおり「いつか来たこの道」をたどることになった。しかしこの期に及んでも「国際金融業界は、「アット驚いた」風を装っている。そして多くの銀行家は、ドバイの債務繰り延べ要請を聞いても、「アブダビは弟が破産するのを座視はしない」「”Abu Dhabi will not see its smaller brother fail”と見ていると、Financial Timesが報じている。

Financial Timesは、今回の衝撃的な流れを時系列で追いかけて、特にブラウン首相が「こけ」にされたことを取り上げて、アラブ人気質を活写している。

先週金曜日:ドバイの王子の一人が、世界経済フォーラムで、ドバイ国際金融センターのトップとドバイ投資株式会社の3人の幹部を、突然、更迭したことを明らかにした。

日曜日・月曜日:国家元首たるドバイ首長が英国を国賓として訪問。女王に謁見し競馬の話しで意気投合。その後ブラウン首相と中東和平と世界の景気後退を打開するため両国が努力することを確認した。さらにブラウン首相と公開の席に現れ、ブラウン首相に、「UAEの景気回復の早さ、それにドバイが取っている慎重な政策と景気後退の悪影響を抑えるための方策は敬服すべきもの」という手放しの賛辞を送ってもらったのである。

水曜日:朝にドバイの公益企業の20億ドルの債券の発行が無事完了。その後ドバイの二つの銀行から50億ドルの融資を受けたことを発表。しかしその2時間後に、問題のDubai Worldの債務繰り延べ要請を突然発表した。直ちに対象債券相場は半値近くに下落し、ドバイ向け5年もの債務保証スワップも大幅に上昇した。

木曜日:世界の株式市場が混乱する中、ドバイ最高財政会議議長は、「市場の懸念についてはよく理解している。Dubai Worldの債務には決然とした行動を取る決心でいる」とそっけないステートメント( a curt statement)を出すのみであった。

ドバイの債券を買う投資家はもういない。





ドバイ、砂漠の夢破綻の悪霊徘徊 Specter of Default by Dubai

2009-11-27 | グローバル経済
2009年11月27日(金)

アメリカ人が感謝祭の詰め物をされた七面鳥(stuffed turkey)をたべている間に、世界の市場はひどいことになった(get stuffed)とFinancial Timesが言葉遊びで論評している。(Americans are having their turkey, but it is the markets that are getting stuffed.)

安全な通貨とみなされた円は大きく買い進まれて14年ぶりの高値圏である86円台に突入。ドルは対ユーロで1.50台にまで下落した。金は、投資家のリスク回避の選好がますます高まって、1オンス当たり1200ドルをうかがうところまで上昇。資金はトリプルAの格付けを持つドイツ国債市場にも流入して、相場を押し上げている。

アジアの株式市場では,円の急騰が嫌気されて、売り(a sell-off)が大勢を占め、日経平均株価は7月17日以来約4カ月ぶりに9400円を割り込んだ。そして東京、上海、香港の下落は欧州株を大きく下げさせることとなった。米国の電子取引市場も、2.2%の下げとなって、金曜日のWall Streetの先行指標となっている。

そんな中、この市場の動きの大きな部分が、中東ドバイの信用不安にあることが判明した。水曜日に、世界の耳目を集めながら巨大な都市開発を進めてきた同国政府公社ドバイワールド(Dubai World)の巨額の債務不履行が確実になったことで、世界の金融システムが新たに動揺するのではないかとの不安心理をかきたてているのだ。

ドバイの対外債務は800億ドル(8兆円)で、そのうちDubai World分は590億ドル(5.9兆円)。ここ数ヶ月ドバイ政府は、「絶対に債務不履行はありえない」と断言してきたのであるが、水曜日に、返済猶予(a creditor standstill)をもとめたことで、世界の金融界に激震が走った。ドバイ債権に対する5年もの債務保証(CDR: credit default swap)は、2.8%であったものが、即日に4.2%に跳ね上り、木曜日には5.5%まで上昇した。

油の出ないアラブの国ドバイが、バブルに乗って世界から資金を集め、沖合いを埋め立てて新奇なデザインの巨大な不動産開発を行い、世界の金融センターを夢見た時代は終わり、新たな銀行家の悪夢が始まる。


オバマ、温暖化ガス削減目標公表 A Game-Changer

2009-11-26 | 環境・エネルギー・食糧
2009年11月26日(木)

オバマ大統領は、12月にコペンハーゲンで開催される温暖化ガス削減のための交渉に自ら参加することを発表し、同時に削減目標を、2005年度比で、2020年に17%, 2050年に83%とすると明らかにした。これをケリー民主党議員は、「国内的にも国際的にも画期的なもの」(a game changer)と賞賛した。

この目標値はすでにオバマ大統領が温暖化ガス削減の目標値として、今年6月に下院にはかり承認されているものと軌を一にするものであるが、その法案の上院での審議は棚上げにされたままになっている。

COP15と称される地球温暖化ガス削減条約に関するコペンハーゲンにおける国連の会議は約2週間の日程で開催される。オバマ大統領は、会議の冒頭の12月9日に出席し、そのあとノーベル平和賞の授賞式に出席のためにオスロに向かう予定である。

このことに関して、会議主催者側では、オバマ大統領の出席を歓迎しつつもそのタイミングについて失望の色を隠していない。なぜならこの会議は紛糾することが通例であり、最終日に近い時点で合意形成が行われるので、そのタイミングでオバマ大統領に来てほしかったというのである。

The New York Timesは、米国が新たな削減条約に調印し、批准できる条件として、先にあげた上院の説得、そして「二酸化炭素排出大国」中国やインドを含む発展途上国の明確な数値目標の受け入れをあげている。

中国は先手を打って昨日公式に「現在行っている排出削減努力で十分でそれ以上のことはコミットする必要がない」との趣旨の発表を行った。一方、国賓として今週ホワイトハウスに招かれたインドのシン首相に対して、オバマ大統領は、対インド外交配慮から温暖化ガス問題で強い態度で臨まなかった。

さらに、上院共和党は、「数値目標の受け入れは米国経済を弱体化させるもの」として絶対阻止の構えである。温暖化ガス削減条約反対の急先鋒であるJames Inhofe議員は、すでに強烈な反対の火蓋を切った。

「オバマ大統領の今回の数値発表は、国際条約には結びつかないし、それにまだ実質的に始まってもいない上院審議を通過できると考えるのは早とちりもはなはだしい(foolishly prejudged the outcome)」 と発言し、「この法案は“野垂れ死にさせる”( dying on the vine)」とまで言い切っていると、The New York Timesが伝えている。

京都議定書からの離脱によって、温暖化問題での世界におけるリーダーシップを失った米国のブッシュ政権下における8年間の空白を取り戻そうとするオバマ大統領には、このように内外からの大きな壁が立ちふさがっている。


「失業対策は失業率で対応を」 jobs “saved or created”

2009-11-25 | 米国・EU動向
2009年11月25日(水)

オバマ政権が、米国経済の回復のために注入している巨額の「景気刺激策」(stimulus funds)の効果を強調するために使用している、「刺激策によって救済されたか、創出された雇用」(jobs “saved or created” by the program)という言葉は、不正確(inaccurate)であるとして、共和党幹部議員が、バイデン副大統領にその使用を中止するように申し入れた。

「このような不正確にして混乱を招く統計数字(metric)をもて遊ぶのはやめて、失業率一本に絞って対策を推進すべきである」というのが共和党の主張である。

10月30日の政府報告によると、64万人の雇用が救済されるか、創出されたとされ、政府はこの統計は正確であると主張しているが、別の統計によるといろいろの問題が噴出してきている。

存在しない地区からの報告が含まれていたり、政府自身が「不正確」であるとして、6万人分の統計を抹消したり、さらに5万人分については、刺激策の導入とは無関係であったとして抹消されたのである。

オバマ大統領は、今のところこの問題を、「枝葉末節の問題」“a side issue”と片付けているが、共和党側は、「大統領は、本質がお分かりになっていないと申し上げているのだ」“We respectfully submit that the President is missing the point.”と反論している。

共和党は、10%を超えた失業率のほうが、経済の実態を表す数字として実証されたもの(tried and tested metrics of measuring economic growth)とし、事態をゆがめている数字の操作(deceptive accounting tricks)をやめよるようさらに大統領に詰め寄る方針であると、ABC放送が、内部文書をもとに報じている。

オバマ、官民科学技術振興策打ち上げ "Educate to Innovate"

2009-11-24 | 米国・EU動向
2009年11月24日(火)

オバマ大統領は月曜日、官民合同で科学science・技術technology・工学engineering・数学mathematicsの頭文字をとったSTEMの振興を図るため,政府のみならず官民合同で青少年の教育機会を拡大することを狙いとした、「イノベーションのための教育キャンペーン(an “Educate to Innovate” campaign)を開始すると発表した。

米国大統領府のホームページによると,この運動は政府のみならず、大手企業・財団・非営利団体・科学技術学会とのパートナーシップによって、青少年の科学と数学の理解力(literacy)向上を図ろうとするものだと説明している。

特に米国の青少年の科学と数学の能力が、2006年の国際試験(Programme for International Student Assessment (PISA) comparison)において、科学知識で30カ国中21位、数学の試験においては25位であったことに重大な危機感を抱いていると述べている。

具体策はこれから打ち出されるが、米国の青少年の科学数学の知識・理解力を高めるための各種プログラムを、民間企業と団体と一緒に進めようとしており、それにはTV番組製作者や、ゲーム製作者との協業が、第一に挙げられている。

このオバマ大統領の呼びかけに大手企業が応じているが、たとえばマイクロソフトの23日付のホームページを見ると、ゲームソフトでの協力をはじめとして会社を上げてこのキャンペーンに参加することの決意のもと、7ページに及ぶ行動計画を発表している。

ちなみに、上記のPISAとは、OECDが主催して、3年おきに実施される科学・読解・数学の能力試験で、2006年には57カ国で40万人の15歳の生徒が受験した。日本は科学で6位、数学では10位となっている。



東芝、仏電機大手買収王手Bid for French National Champion

2009-11-23 | グローバル企業
2009年11月23日(月)

フランスの国営重電機会社Arevaは、中核の原子力部門を残し、送・配電機器部門を売却することを決定し、売り先を決めるための入札を行った。このM&Aは、日・米・欧の重電機市場再編の重要な意味を持つものであり、Financial Timesが詳報している。

この入札には、現地フランスの発電・送電・配電機器会社Alstom/Schneider Electric連合、GE連合と東芝連合の三者が参加、現在落札者の決定最終段階にある。現在、東芝がもっとも高い価格である約6000億円を提示して最有力との報道があるが、フランスの国威問題も絡んで外国勢がスンナリとは落札するのは難しいとされている。

Financial Timesは、東芝の対抗馬GEのフランス代表Clara Gaymard氏への取材に基づいて、現況を分析している。まず、GEのイメルト(Jeff Immelt)会長が、アメリカ好きのサルコジ大統領がシラク内閣の大臣を務めていたときから毎年会談をしてきた仲であることに言及している。

GEの入札金額は、二番札の6億ドル(5400億円)であるという。このGEに向けては三つの批判が行われている。まず単純に外国企業に基幹産業を売り渡してよいのかという愛国的反発。(これは東芝も同じ立場)第二に、GEが原子力分野での手ごわい競合者であるのに、それを強化するような売却を行ってよいのかという意見。(これも東芝は同じ立場)

そしてGEが、private equityと総称されるベンチャー投資ファンドCVCと組んで応札してきたことを捉えて、「GEの本心は、自らの弱い送・配電部門を好条件で売却することにあり、そのためにArevaの強い部門とまず統合させようとしているだけだ」との攻撃があった。

この批判に驚いたGEは、直ちにこのヘマ(the gaffe made by GE at the start)に気づき、CVCとの関係を解消して、「身の潔白」を行動で示した。この一事をもってしてもこの買収にかけるGEの意気込みの強さがわかる。

GEのClara Gaymardフランス代表は、「GEがいかにフランスに根を下ろした『フランス企業』としてここ40年来フランスに貢献してきたかを強調し、GEがArevaを買収すれば、フランスに米国・中国・欧州市場から年間2000億円以上の売り上げ増加をもたらせる」と宣伝することに余念がない。

GEのイメルト会長が、オバマ大統領の政策顧問団の一員として進言した、送配電網のIT化による省エネ化を図る「スマートグリッド構想」はいまやオバマ政権のグリーン政策の中軸を形成するに至っている。

しかし、GEはじめウェスチングハウスは、80年代から90年代にかけて、不採算部門として送・配電部門を売却してしまったために、現在米国送・配電機器市場は、ABBやSiemensなどの欧州勢に席巻されている。このままではGEは、「スマートグリッド」の果実を刈り取る方法がないのだ。それゆえAREVAの送・配電機器部門は、GEにとっては戦略的に不可欠な『買い物』である。

フランス政府は、東芝に落札の通知も出せず困っている様子であるが、近々再入札を行う方針であるいう声も聞こえてくるという。その本心は、『群を抜いた高値入札者が現れてくれれば意思決定も容易になるのに』ということらしい。



中国、炭鉱事故続発、死者4000名超 the deadliest in the world

2009-11-22 | 中国・ロシア・インド・ブラジル動向
2009年11月22日(日)

中国の国営通信社新華社(the Xinhua news agency)が、本日7:00に配信したニュースによると、中国東北部の黒龍江省(Heilongjiang Province)の炭鉱で大規模な爆発があり、すでに78名の死亡が確認されたことを報じている。

土曜日早朝の2:30に爆発が発生したときには、530名が働いていたが、まだ21人の安否が不明である。

現場では、胡錦濤国家主席と温家宝首相の指示を受けた張徳江副首相が指揮を執り、地下約500メートルの坑内に閉じ込められた作業員の救出活動に当たっている。こうした、高官が直接派遣されて陣頭指揮に当たることが、いかに炭鉱事故が深刻な問題であるかということを物語っている。

中国では、不完全な防災体制のままで、多数の炭鉱の操業がいまだに続いており、国内外からの強い需要に応えようとしているため、今年に入ってからも各地の炭鉱での事故は続発している。

ちなみに2006年には4700名が死亡し、政府の規制が強まる中にもかかわらず、2008年には3000名ものの作業員が死亡している。そして今年は、すでにその数は4000名を越してしまっている。

政府は国内外からの炭鉱の安全と人命優先の圧力を受け、その対策として、防災設備が整っていない中小炭鉱の閉山を指示して来たが、「儲け主義」優先の風潮はなかなか弱まらないのが実情である。

このように中国の炭鉱は、the deadliest in the world(世界でもっとも死者の多い炭鉱)と呼ばれて久しい.

しかし、地球環境問題の観点から、さらに問題が大きいのは、産出された石炭が、家庭暖房用として公害源となるばかりでなく、世界でもっとも効率の悪い石炭火力発電所で、公害対策をまったく施さないまま大量に燃焼させていることである。

中国の老朽石炭火力発電所は、温暖化ガスの原因となる二酸化炭素発生源であるのみならず、重大な環境汚染の源となる硫化化合物、窒化化合物、粉塵を撒き散らす公害源となっている。

ペイリン、自叙伝発売全米キャンペーン開始 Going Rogue

2009-11-21 | 米国・EU動向
2009年11月20日(土)

米大統領選挙で共和党副大統領候補だったサラ・ペイリン(Sarah Palin)前アラスカ州知事の回顧録」が11月17日に出版されたが、彼女は、全米に宣伝のツアーを派手に展開し始め、それが大きな話題になっている。

この回顧録はもともと2010年春に出版される予定だったが、年末のクリスマス商戦に間に合わせるために、彼女に出版社が急がせて早く書き上げさせたものである。

その題名は、「Going Rogue: An American Life」である。この”Going Rogue”は、そのまま訳せば、「はぐれ者になって」となる。もちろん、ブッシュ政権が、イランや北朝鮮を‘rogue nations’(ならず者国家)と呼んだように、「ワル」という響きも濃厚な言葉でもある。

この題名をことさら選んだのには、理由がある。彼女が、大統領選挙中に、選挙戦略や、個々の戦術で、ことごとく選挙参謀や、マケイン氏と対立していたときに、オンライン・マガジン’Slate’上で政治評論家John Dickerson氏が、「サラ・ペイリンが、マケインに楯突くのは意図があってのことか、何もないのか」と論評した記事に由来する。

同氏は、その記事の冒頭で、「サラ・ペイリンははぐれ者になったか」(Has Sarah Palin "gone rogue"?) と疑問を投げかけ、さらに記事中で、the Palin-as-a-lone-wolf (一匹狼ペイリン)とか、Palin-as-rogue (はぐれ者ペイリン)と評したのである。

颯爽とメディアの舞台に復帰した彼女の言葉は、"My ambition, if you will, my desire, is to help our country in whatever role that may be, and I cannot predict what that will be." であった。(私の野心、エーと、私の願望と聞かれたら、それはこの国の役に立ちたいということね。どんな役割であってもいいのよ。それが何になるかは私にもわからないわ)

アラスカ州知事の職を突然投げ打った彼女の願望が、ベストセラーで儲けたいということだけではないことは、明らかである。


中国、英語人口でインドを抜くDemographic Dividend or Disaster

2009-11-20 | グローバル文化
2009年11月20日(金)

British Councilは、世界各国における「大英帝国」の植民地政策の一翼を担い、BBC放送と一体になって英語人口の増大という任務を与えられて75年前に設立された国家組織であるが、このほど”English Next India”という表題のもと、「中国の英語人口がインドのそれを追い抜いた」という研究報告書をまとめた。

インドでは、大帝国の植民地での重要遺産である、英語を第二公用語とする州が多いことを、国際競争力のひとつの源泉としてきた。現在人口の5%が英語を話していると推定されるので、2010年には「流暢に英語を話す人々」の実数は、5500万人となると予想している。

しかし、いまや隣のより経済インフラが整った超大国中国が、小学校から英語を必須科目にして、毎年2000万人の新しい英語人口を増やし続けていることが、インドは中国との競争力で、ますます後塵を拝することになると報告書は警告している。

Financial Timesによると、英語による授業がないこと(the lack of English-medium education)が、産業界からの英語を使える人材への強い期待にこたえられない理由であるとしている。インド商工会議所(the Federation of Indian Chambers of Commerce and Industry)などの調査によると、約64%の企業は、英語を含む技術系新卒者の能力不足に、不満を示しているという。

また、隆盛を誇るインドIT産業の旗手ともいうべきInfosys社の創業者の一人は、「インドは大量の新卒技術者に恵まれている(”demographic dividend”)が、英語教育を経済開発計画の中にキチンと組み入れないと、使い物にならない大量の技術者を生み出すことになる(“demographic disaster”)とコメントしていると, 報じている。

同紙は一方で、中国の英語人口が増えたという統計が、本当に国民全体の英語力が上がったこととは別であるとも解説し、大国の象徴である中国の海外平和活動が十分機能しない理由は、まさに質の高い英語力(good English skills)が欠けているからだと指摘している。

普天間基地移転問題で、鳩山首相が「‘Trust me’といったら、オバマ大統領が、’I trust you.’と答えたから問題ない」という趣旨で記者団に胸を張っておられた。英語とは技術であるが、文化でもあることを教えてくれるエピソードである

オバマ、アフガン増派で苦しい選択に  ‘I have a clean slate’

2009-11-19 | グローバル政治
2009年11月19日(木)

アフガニスタンのカルザイ大統領の二期目の就任式が、今日カブールで行われるが、米国からは従来言われていたアフガニスタン・パキスタン担当のホルブルック特別代表ではなく、急遽クリントン国務長官が代表として出席することになった。

同長官にとってアフガニスタン訪問は、初めてであり、カルザイ大統領との会談では、選挙時の不正投票問題を踏まえたうえで、政権全体にわたる腐敗体質からの脱皮について具体的なアクションを強く迫るものと見られる。

オバマ大統領は、マッククリスタル現地軍司令官の44,000名の増派要請を、9月に受けながら結論を先延ばしにしてきていて、ここに来ても、「数週間のうちには決めることになる」(only “over the next several weeks”)とのみ発言している。

米国は、カルザイ大統領が本気で腐敗追放に取り組まない限り(his commitment to stamp out corruption)、増派を決定しない構えで、カルザイ大統領に圧力を加える作戦だと、Financial Timesが論評している。(to use the uncertainty over his decision to exert more pressure on the government of Hamid Karzai)

共和党が、マッククリスタル現地軍司令官の早期増派決定要求を後押ししている。一方、増派に懐疑的な民主党議員は、駐アフガニスタン大使(元アフガン派遣軍司令官)が送った「政権腐敗に改善の確約がない限り、増派反対」との公電に勢いを得ている。一方、世論のアフガン政策に関するオバマ大統領支持率は50%を切ってしまった。

こうした状況に、オバマ大統領は、アフガン問題は、自分の任期中に片付け次期大統領には、「すべてケリをつけました」(clean the slate)と言えるようにしてから政権を渡したいと決意の程を披瀝した。

しかし米兵の死者が急増しタリバンの勢力がますます強まる中、ほとんど不可能な要求である「アフガンから汚職と麻薬を短期間に追放する」ことが米国と同盟国の増派の条件となったことは、大統領の政策選択の幅がさらに狭まったということである。



オバマ訪中、両国の同床異夢浮き彫り Past Statements

2009-11-18 | グローバル経済
2009年11月18日(水)

17日、オバマ大統領と胡錦濤国家主席は、3時間にわたる首脳会談後、世界経済の回復に向けた連携強化や、両国の軍事面での協力、クリーンエネルギー開発、果ては宇宙空間の有人飛行などでの協力などを盛り込んだ9ページにわたる共同声明を発表し、共同記者会見に臨んだ。

しかし、「記者会見」とは名ばかりで、両首脳がおのおのの別個に見解を開陳するだけで、会場からの質問を一切受け付けない異例のものとなったと、Financial Timeが報じている。

上海におけるオバマ大統領の「自由宣言」演説の影響拡大を中国政府が恐れていることもあるが、対立点における隔たりがあまりに大きかったことを物語っている。同紙は、この会見を、「近来には珍しい事前の脚本どおりに行われたもの」と論評している。(one of the most tightly scripted in recent years)

しかし、この見かけ両国の協力関係の強化を歌い上げる「儀式」(a carefully orchestrated show of co-operation)に対し、オバマ大統領が歯に衣を着せない態度にでたのは、まず、人民元が昨年夏以来事実上対ドルで固定化(pegged)ことに対する是正を求めたときであった。

オバマ大統領は、「人民元を市場の動きに委ねる方向へと政策をとる」とした中国政府の“過去の”約束(past statements)を非常に多としたい」と発言した。この‘過去の’という表現は極めて重要で、今回中国側は人民元の切り上げに関して同意しなかったということを意味し、対する胡錦濤国家主席は、この会見では人民元問題に言及しなかった。

その代わりに、胡錦濤国家主席は「両国はあらゆる保護貿易政策に反対しなければならない」と応酬し、言外に米国が現在中国製鋼管やタイヤにダンピング課税を含む輸入制限措置を取っていることを非難し、その撤廃を会談でもとめたことを事実上明らかにした。

イランの核開発についても、オバマ大統領は、「イランは国際社会に対してそれが、平和目的であることと、その開発内容を透明化すべきである」という趣旨で、強い調子で要求したが、胡錦濤国家主席は「交渉を通じて、解決を追求することが重要」といなし、中国がイラン説得のイニシアチブを取る意思のないこと、制裁措置の強化に組することはありえないことを内外に示した。

中国と米国は、金融・貿易・為替・投資と、あらゆる経済面での結合が強まる中で対立点も明確となってきた。80年代の日米関係を想起させるものがある。

FRB議長、「ドル安注意報」 Fed 'attentive' to US dollar drop

2009-11-17 | グローバル経済
2009年11月17日(火)

米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長は、New Yorkで月曜日に講演し、「ドル安に関して注意体制("attentive")に入っている。ドルの強さを維持できるよう努力をする"help ensure that the dollar is strong"」と発言し、

ドルは今年に入ってから、ユーロに対して13%減価しているが、これに関し「この減価の意味するところにも注意を払っており、ドルの動きを監視していく」と続けた。

さらに続けて、市場に非常に重要なメッセージを送った。「始まったばかりの景気回復に水を差さないように、金利水準を実質的に上げないで、ドルに対する信認を維持していきたい」’to bolster confidence in the dollar without actually raising rates, as that might hurt the nascent recovery’

始まったばかりの景気回復(the nascent recovery)とは、第3四半期のGDPが5期ぶりにプラスに転じたことを指している。同議長は、米経済は「来年も緩やかな成長が続くと見込まれるが、銀行貸し出しの鈍さや雇用市場の弱さがマイナス要因」と指摘しており、「ゼロ金利政策」の出口戦略(an exit strategy)を実行するには程遠い状況であることを公式に認めた格好である。

このFRB議長の発言を聞いた市場では、他通貨に対してドル売りが先行した。またゼロ金利のドルを借りて、金利の高い国の通貨を買って金利鞘を稼ぐいわゆるキャリー取引(carry trade)が誘発されたことがドル売りに拍車をかけた。金への逃避もいっそう高まり、1130ドル台を付けた。

一方、低金利政策の継続は好材料と受け止めた株式市場はにぎわった。それを後押ししたのは、好調な車の売上を反映して、1.4%伸張した米国の10月の小売売上高である。ダウ工業株30種は136.49ドル(1.33%)高の10,406.96ドル。 ナスダック総合指数は29.97ポイント(1.38%)高の2197.85となった。

元高・ドル安によって、巨額の手持ち米国国債の目減りと、輸出の減退を招くことに反対してきた中国をオバマ大統領が今訪問中である。中国政府がいらだっていることは想像に難くない。



オバマ、ASEAN首脳会議に初めて出席 ‘Pacific President’

2009-11-16 | グローバル政治
2009年11月16日(月)

シンガポールでAPEC総会と同日に開催されたASEAN首脳会議に、オバマ大統領は、米国大統領として初めて出席した。

欧米諸国は、ASEANがミャンマーの1962年の軍事クーデーター以来とってきた非民主的な人権抑圧政策に、断固たる態度で臨んでこなかったことをこれまで厳しく非難してきた。

それもあり、米国はこれまでASEAN無視政策を貫き、高官の出席すら行ってこなかったことからするとおおきな政策の変換である。この大転換の裏には、この地域でますます影響力を増大させている中国への警戒感がある。東京演説で、オバマ大統領が自らを‘Pacific President’と呼んで、アジアへのコミットメントを深める意思表示をしたのも同じ背景からである。

オバマ大統領は、ASEAN首脳会議の伝統に従って、会議前に全員で手を組む行事にも参加した後円卓協議に臨んだ。しかし、ミャンマーのThein Sein首相と同じ部屋には入ったが、握手や直接の対話は両者の間にはなかった。

同会議で、オバマ大統領は、東京演説と同じく、ミャンマーの政治犯として20年間に渡って自宅軟禁を繰り返し課されているアウン・サン・スー・チー氏(Aung San Suu Kyi)の解放を求めた。

ただし、ASEAN首脳会議共同宣言には、即時解放は盛り込まれず、「ミャンマーの政治・経済改革を推進する新政策に期待する。国内の諸民族間の和解を達成し、2010年の総選挙が、自由で、公正で、すべての人々の意見が反映し、透明性のあるものとするよう望む」と述べるにとどまった。

こうしたASEAN諸国のミャンマーへの遠慮が先立つASEAN諸国は、現在のところ解決を米国頼みにしているのが実情である。制裁を加えながら軍事政権との対話を再開させようとする二面作戦(a two-prong approach)を進める米国の介入に期待しているのだとReutersは論評している。