世界の動きを英語で追う

世界と日本の最新のできごとを、英語のキーワードを軸にして取り上げます。

The Affluent Society「豊かな社会」と西部邁

2018-04-30 | グローバル経済
稀代の現代日本の思想家で、世俗の潮流にあくまで棹を指し続けた西部邁氏が、奇妙な死を遂げたとのニュースに触発されて氏の代表的評論「大衆への反逆」を、読み返した。

この西部の本の表題は、スペインの思想家オルテガが、ナチが勢力を拡大しつつあった時代の欧州で、1930年に出版した「大衆の反逆」という有名な本の表題の裏返しになっている。西部の「大衆への反逆」は2014年初版であるが、今や彼の晩年となってしまった時期に当たる。

その中に、1958年初版のGalbraithの代表作「豊かな社会」について、西部が1980年に書いた短い批評が再録されている。政治権力は民主化によって大衆の手にわたり、技術革新によって大衆消費が可能となり、「豊かな社会」が到来した。このガルブレイスの鋭い経済面からの文明批評について、西部は、ここで表題に使われた言葉"affluent"を、「豊かな」と訳すのは、このコンテクストでは、誤訳と論ずる。むしろ「過剰な」というべきであり、さらにaffluentは同氏の誤用であり、Effluent Society(放出する社会)というべきであったとする。すなわち、誰かのシナリオに乗せられて、過剰消費に追い立てられる大衆は、消費のかすを噴出させることによる反動で前進するよりほかに自己確認の方法がなくなってしまっていると説いている。


「大衆への反逆」は、文春学芸文庫ライブラリーから刊行されている。


定年退職出戻り就職急増中 The Unretired

2017-12-04 | 世界から見た日本
Financial Times12月4日号の職業欄は、「出戻り就職者」(Returners)を取り上げている。そのまたの名を、The Unretired、すなわち「定年巻き戻し組」と、言うと。
最近の英国では、定年退職者の約25%が、何らかの有給の職場への復帰をしており、それも定年退職後5年以内が半数以上であるという。また米国でも同様の傾向がみられると報じている。

あこがれた、「毎日が日曜日」の生活が実現した当初は、天国であっても、元気があって知力に衰えがない「市場性のある」働き手は、犬の散歩ばかりして暮らすことに耐えられなくなるのだ。社会はこうした高齢者再雇用に対応する必要があると説いている。

そして、出戻り理由として、注目すべきは、「EU離脱後の先行き不安」を挙げる人が増えていることだという。

ドイツで広がる「メルケル」疲れ ”Merkel Fatigue"

2017-12-03 | 米国・EU動向
選挙で敗れて、連立工作も不調の少数与党党首メルケル首相に対しドイツ国民や、与党支持者の間に、疲労感が蔓延し始めているとの、Financial Timesの論評である。そのことばはずばりMerkel fatigue.
17年間も君臨しドイツを押しも押されぬEUの中心の地位に押し上げた彼女も、国内と世界の激変にもはや追随出来ぬのも歴史の必然のようだ。深く刻まれつつある彼女の顔のしわと、時折見せる憔悴の表情に比して、ご当人は案外落ち着いているのは、彼女にとってかわる政治家が全くいないせいだと、断定している。

Bitcoin: poxy currency 疫病神通貨

2017-12-02 | グローバル経済
11月30日付けFinancialTimesのLex.コラムは3月の1,000ドルから10倍以上に暴騰しているビットコインを"poxy currency"(疫病神通貨)として警告している。それは、南海泡沫バブルや、チューリップバブルに似て、貪欲と好奇心にあおられて、ろくに手を洗わない人の手から手へと伝染する心の病だと。

トランプの反知性主義的ブログ活用法(anti-intellectualism)

2017-01-09 | 米国・EU動向
昨日ここで、トランプ氏がそのブログで”Stupid people or Fools"と「バカ」呼ばわりするのは、共和党主流派、Obama大統領やClinton氏を頂点とする民主党幹部、民主党選挙対策本部を盗聴したのはプーチン大統領の指示と断じたCIAなどの諜報機関、Trump氏を攻撃してきたマスコミなど、これまで米国をリードしてきた既成知的エリート層であると書いた。

しかし、かれは、真正「バカ」を「バカ」呼ばわりしているわけではない。そして暴力的言辞を駆使するかれ自身も決して「バカ」ではない。その真の攻撃対象は、きわめて知的水準の高い、自由・平等・正義・グローバリズムといった価値観を表す言葉をもとに世論をリードし、米国の政治を動かしてきた上にあげたような人たちである。トランプのメッセージは、「もうバカの好きにはさせないぞ」ということである。ここが大衆に支持されるところとなっている。それにどうも自分がトランプ支持とは公言したくない「隠れトランプ信者」が結構いる節がある。

文明や文化の成果の集積と、教育による再生産で、我々の知的水準は向上し、世の中はよくなってきたと普通は思う。しかし、しばしばその恩恵に浴すことのできない人々と、その息苦しさと偽善性に耐えられない人々の割合が一定レベルに達すると、揺り戻しが起こる。それは、「反知性主義」(anti-intellectualism)という現象として知られている。

トランプ氏は、選挙期間中一貫して、トランプ批判に回りクリントンにくみした米国マスコミエリートに対して、これからも執拗に「復讐」を続けるであろう。米国の金融・証券、ジャーナリズムと映画産業はユダヤ人脈に支配されていることも合わせ考えておくと、これから起こることの理解も進むかもしれない。どう考えても、彼は趣味でブログで咆哮しているのではない。彼の言うところの「バカ」の巣窟であるマスコミの報道に頼っていては、勝てるわけはないと計算したのだろう。大衆とリアルタイムで直結するブログで勝負に出ようと。いわば「バカ抜き」である。

Donald Trumpが「バカ」呼ばわりするのは誰か?"Stupid" People or Fools

2017-01-08 | 米国・EU動向

今朝、Donald Trump氏のTwitterを開いたら、次の3件が立て続けにUpされていた。

Jan 7 7:02
Having a good relationship with Russia is a good thing, not a bad thing. Only "stupid" people, or fools, would think that it is bad! We.....

Jan 7 7:10
have enough problems around the world without yet another one. When I am President, Russia will respect us far more than they do now and....

Jan 7 7:21
both countries will, perhaps, work together to solve some of the many great and pressing problems and issues of the WORLD!

これら3件は一つにまとめれば「ロシアと良好な関係を持つことに反対するのは、バカだけだ。この世界には次々問題が起こる。私が大統領になれば、ロシアは米国に対し、今よりはずっと敬意を表すだろう。そして両国は大きなしかも急を要する国際問題解決に協調することになる。」ということだ。

同氏がここで「バカ」呼ばわりするのは、ロシア融和政策に反対する共和党主流派、Obama大統領やClinton氏を頂点とする民主党幹部、民主党選挙対策本部を盗聴したのはプーチン大統領の指示と断じたCIAなどの諜報機関、Trump氏を攻撃してきたマスコミなど、これまで米国をリードしてきた既成知的エリート層である。

トランプはなぜロシアをここまでかばうのか?Iron-Clad Truth

2017-01-03 | 米国・EU動向
不思議なことがあるものだ。次期米国大統領は、終始「ハッキングの犯人特定は難しい」として、ロシアをかばっている。そして、自分だけが知っている事実があるとして、みずからも語り、報道官に指名した人物も次のように語っている。

Incoming White House press secretary Sean Spicer is defending cryptic comments by President-elect Donald Trump that he knows "things that other people don't know" when it comes to allegations of Russian hacking.

トランプは、報道陣に火曜日か、水曜日にその事実を明らかにするとしている。本日ABC放送のインタビューに応じたある議員は、米国の諜報機関のブリーフィングの内容に関して、ロシアの関与は"iron-clad"(鉄に裏打ちされたのごとくゆるぎない)真実だと言っている。そしてマケインなどの共和党の幹部は、オバマの対ロ制裁が生ぬるいと批判している。

ロシアは、オバマ政権が発動した外交官の追放に反応せず、もうすぐ権力の座に就くトランプの対応に懸けている。このようなことは、前代未聞であり、米露関係が非常に不思議な力学に支配される時代となってきた。トランプは、「すべてを知っている」と公言した。これからその言葉の重みが世界を動かすことになる。

サイバー攻撃で米国大統領選挙妨害(Cyber-Meddling)はあったか 

2017-01-01 | 米国・EU動向
トランプ次期大統領は、日を追って親ロシアの姿勢を明確化し、プーチン大統領への親愛の情までさらに露わにしている。昨日の大晦日に800人を集める大規模な私的なパーティを開催したが、その開始直前に記者団を前にしてホワイトハウスやCIAのロシア諜報機関のサイバー攻撃に関する発表に真っ向から挑戦する自説を展開して見せた。CNNの報道を引用するとその要旨は次のようになる。

West Palm Beach, Florida (CNN)President-elect Donald Trump reiterated his doubts Saturday that Russia was behind cyber-meddling in the US election, saying such a crime would be difficult to prove.

Cyber-meddlingとは、ハッカー攻撃による選挙干渉ないしは、選挙妨害のことを指す新語である。プーチンが「親友」であるトランプを応援して、クリントン落選のネタ探しのため民主党本部にハッカー攻撃を仕掛けたとすれば、米国の将来の国家安全保障の根幹を揺るがす大問題となる。

ロシア諜報機関は、ビジネスマンとしてのトランプの過去のロシアでの行動記録をすべて集積しているであろうから、これもこれからロシア側がどのように切り札として使うか、また第三者やマスコミの調査によっていろいろな事実が明らかになってくれば、どのようなことになるのか予断を許さない。

トランプ、オバマの広島訪問と発言に対し"Who cares?" 

2016-05-29 | 米国・EU動向
オバマ大統領の広島が実現して、一つの時代が終わり、一つの時代が始まったといえるが、象徴的なことは、「核廃絶を唱える」米国大統領が献花するその後ろに、武官が核ミサイルの発射ボタンが格納されたアタッシュケースをもって控えていたことである。

さて、共和党大統領候補としてのトランプ氏が、キャンペーン中の演説で、この訪問をカリフォルニアで評して「謝罪しないなら全く構わない」といったと日経新聞朝刊が報じている。発言のテクストは:"It's fine, as long as he doesn't apologize, it's fine. Who cares?"である。

意味としてはこの翻訳は正しい。しかしこの発言のコンテクストと、吐き捨てるような物言いからして、そんな生易しい気持ちで言ったものではない。ぜひYouTubeで演説を聞かれるとよいとおもう。この"Who cares?"はまさに捨て台詞である。オバマなんかが、何をしようとも、なにを言おうとも、広島でどんなご託を並べようとも、原爆投下を謝罪しない限り、構うことはないさ、という気持ちがこもっていて、本心を隠さぬ政治家となれる資質を余すところなく示したといえる。

オバマ大統領を切り捨て、原爆投下を肯定し、米国優位史観を丸出しにしたこのWho cares?こそ、今の米国人の下層階級と中産階級の心に響くものはないといえる。トランプの頭の中には、ジョン・W・ダワーの「忘却のしかた、記憶のしかた」第2章に詳しく述べられている太平洋戦争前、戦中、戦後の米国人の日本人観が、見事に保存されているともいえるだろう。

ヒラリー・クリントン、トランプを「無鉄砲放言居士"a loose cannon"」と酷評

2016-05-05 | 米国・EU動向
ドナルド・トランプが、対立候補二人の撤収宣言により実質上の共和党大統領候補の地位を得て、「これからはヒラリー・クリントンをやり玉に挙げる」とまたまたの怪気炎を上げた。Financial Timesは、クリントンの反撃の言葉を、"Hillary Clinton dismisses Donald Trump as a 'loose cannon."(トランプは、「無鉄砲放言居士の一言」で、片づけた)と報じている。

loose cannonとは’、甲板上で本来結索されていなければならない大砲が、索から外れてしまった状態にあることをたとえに使った言い回しである。その舌禍を恐れぬ放言癖を持った(ないしはそう見せかけている)厄介な男が、周囲の迷惑を顧みず、相手かまわず罵詈雑言の限りを言い放つさまは、いつどこへ弾丸が飛んでいくかわからぬ大砲におとらず危険な存在である。

トランプの対日政策がその「放言通り」実行されると、日米安保条約は片務状態であるから廃棄ないしは双務条約へと改訂、在日米軍基地の撤収ないしは費用の全額負担要求、日本の本格的再軍備と核武装容認ということになる。戦争経済の魅力は、低成長にあえぐ先進国にとって悪魔のささやきである。トランプは、そんな声をも代弁しているかに見える。

東芝における「チャレンジーChallenge」の誤用、Stretchというべきだった

2015-07-23 | 世界から見た日本
東芝で、歴代3社長が同時辞任という事態に発展した「不適切会計」問題で、マスコミ報道は過熱している。「不適切」という言葉は、最近多用されるようになった、婉曲表現であるが、英語では"inappropriate"という形容詞または、"irregularities"という名詞が相当する。後者は、議会での野次を「不規則発言」ということにどこか共通性がある。そして不倫は「不適切な関係」と総称されて、何か難しいことを行っていることを想起させてくれるので楽しい表現である。一昔前であれば、この東芝の「事案」は、ずばり「粉飾決算」である。そしてこの「事案」というのも最近のはやりである。警官が汚職をすれば署長が、教え子がいじめ自殺をすれば校長が、「本事案」とその大事件を呼びかえるのである。


さて、日経新聞のコラム「春秋」が、「社長月例という会議で、社内カンパニーの長らに「チャレンジ」と称する過大な目標の設定が命ぜられる。意を受けた事業部長、社員らが会計操作に手を染め続ける。内部統制も効かない。誰もが「まずい」と思いつつ、破滅の坂を転がっていく。どれだけの人が苦い酒を飲み、眠れぬ夜を過ごしたかと同情を禁じ得ない。」と悪代官と善良な領民のアナロジーで表現している。

さてここで問題となるのは、「チャレンジ」という英語の日本的誤訳ないし、誤用である。英語のChallengeは、必ず相手が存在して、その相手の命を奪うことを決意した時や、相手の地位・正当性・主張を打倒することを決心した場面が前提となる言葉である。チャレンジは、大体「挑戦」と翻訳されているが、積極的、進取の前向きなものごとへの取り組みという意味で日本語化している。どこか微妙に言葉の中心軸がずれて日本語化してしまったようである。名詞のchallengesは、「自分に向かってくる困難な事態」と理解すべき場合がほとんどである。憲法学者は安倍さんの法案にまさに合憲性で、challengeしたのであり、安倍さんにとって法案が無事通過できるかは、今日現在、立ち向かうべきa big challenge(大問題)なのである。

さて、歴代3社長殿は「チャレンジ」ではなく、なんと表現すべきであったのだろうか?それは"stretch"である。ストレッチの無い計画を出せば米国企業社会では、すぐに失職する危険がある。ストレッチの達成が、個人のボーナスと直結し、雇用契約の更新の前提となる契約社会である。したがって達成不能のストレッチを引き受けることは、破滅が待っているから、日本のような全社員が唯々諾々と実効不能のStretch命令に従うことはまず起こりえない。一方、日本では旧日本軍の伝統が生きていて、「なせば成る」、「やってみなきゃわからないじゃないか」、「本気でやってみろ」、「一億火の玉」と、猪突猛進、最後は玉砕まで進んでしまうのだ。

上海の新年カウントダウン、群衆圧死事故: A Stampede

2015-01-01 | 中国・ロシア・インド・ブラジル動向
上海発共同通信は次のように速報している:上海市中心部の観光名所、外灘(バンド)で12月31日深夜、新年の到来を祝うカウントダウンなどのため集まっていた若者らが折り重なるように相次いで倒れ、36人が死亡、47人が負傷した。うち13人が重傷。同市政府が1日発表した。なお、TV報道などによると、群衆に対して紙幣に似た交換券のようなものを、建物の上からまいたらしくそれに群衆が殺到したものという。

日本でも、近年では2001年夏に起こった明石の花火大会に集まった群衆が階段周辺で折り重なって倒れたことが原因で11人が圧死している。世界的にみると、1990年と、2004年にメッカで発生した事故が、最大級のものである。

こうした、イベント行事や、何らかの理由で集まった群衆が、自然発生的に、無秩序な集団となって押し合い、もみあい状態で、壁・床に押し付けられ、また人の下敷きとなって多数の死者を出すことを、英語ではstampedeと呼ぶ。本来これは敵に追われた動物の群れが一方向目指して『潰走』することを指している。家畜の群れでさえ、驚きが原因となって、潰走すること、すなわちstampedeすることは起こりうる。カウボーイ映画ではよく見られたシーンである。人間の行動心理学や、集団行動の制御の研究分野では、crowd crush(群衆圧死事故)と呼ぶ。

群衆、特にイベントに集まる聴衆に関しては、常にこのriskが存在する。主催者、警備会社、警察は、施設、動線管理、救難体制の観点からリスク管理責任があることを銘記すべきであろう。

ソニーを襲ったハッカー攻撃のすさまじさ Cyberattack

2014-12-31 | グローバル企業
12月30日付けのThe New York Timesが、今回従業員数7,000人のSony Picturesが受けたサイバー攻撃の顛末の一部始終を詳報している。

感謝祭の数日前に起こった同社のシステムに生じた障害は当初、通常のものと軽く考えられていたが、それは、契約書・予算書を含む膨大な量の文書の流出、データセンターのデータの完全消去、75%のサーバー破壊、未公開を含む5本のフィルムの窃取という重大な事態に展開して、企業が受けたハッカー攻撃としては前代未聞のものとなった。

個人のemailなどもすべて流出したために、CEOをはじめとする経営幹部の赤裸々な個人的情報、社会的制裁対象となりうる人種差別発言、俳優への悪口などがマスコミに流出してしまったことの影響は甚大である。また、北朝鮮と推定されているハッカーの圧力に屈して、件の映画"The Interview"の公開を一時的にせよ中止したことの企業イメージの悪化は今後も尾を引く問題を残した。

ハッカーはまだ公開しないでいる文書を、これから小出しにマスコミに漏えいする作戦を取るらしい。したがってSonyの被害は拡大の可能性が高い。

cybersecurity対策は、今後の政治・軍事・社会・企業経営上の重要課題として急浮上してきたというべきであろう。ハッカー攻撃は企業の存立も揺るがしかねない現代社会の大きな脅威となった感がある。

蛇足:最近の欧米mediaでは、サイバーに関しては、2語に分けたりハイフンでつながずに、cyberattack, cybersecurityなどと、、単一の単語としての表記が主流となってきた。言及する機会が多くなり単一概念としてとらえられ始めたということである。

Cyber Attack: Sony Pictutesへの攻撃と、中国のGmail遮断途絶

2014-12-31 | IT・科学技術
北朝鮮政府のよるものとされるハッキングがSony Picturesに仕掛けられ、その報復として、米国政府が北朝鮮のネットを機能不全に陥れる措置をとったと報道されている。一方、中国国内ではGmaiがここ1週間のうちに数度の機能不全となったことを経て今は途絶状態となっており、中国政府による言論統制の一環として行われていると観測されている。

こうしたweb上のデータの窃取やシステムの破壊活動は、Cyber Attack、Cyber Terrorism、Cyber Crimeと総称されている。そしてこれに対抗するための保安措置は、Cyber Securityと呼ばれていまやIT産業のなかで重要な一部門を構成するに至っている。もし、米国と北朝鮮の間で行われているものが事実とすれば、まさにCyber Warの原型と呼ぶべきかもしれない。

ところで、Cyberという言葉は、ギリシャ語で操舵手、水先案内人を意味する言葉が語源となっている。この古色蒼然とした言葉を現代のICTの世界に復活させたのは、Nobert Wienerである。動物や機械の中に組み込まれた自動制御機構を研究する中で、1948年の同氏の著書の中で使われたのを初出とする。その後"cybernetics"というコンピュータ・通信制御理論の代名詞となって久しいが、いまやあまりお目に掛からなくなっている。それに代わり言いやすいIT, ないしはICTのほうが言葉として凌駕してしまった。しかし俄然このところ前述のような接頭辞としてCyberは復活を果たした感がある。御存じのサイボーグは、やはりCyberを語幹とする新造語であった。

もう一つのCPI: Corruption Perceptions Index

2014-12-30 | グローバル企業
CPIと言えば、普通Consumer Price Indexすなわち消費者物価指数をさすが、ここで紹介するのはTransparency Internationalというベルリンに本拠を置く反腐敗運動を推進する民間団体が毎年発表するCorruption Perceptions Index(汚職認識指数)のことである。

今年のIndexは世界175の国と地域について、各国の公共部門の汚職腐敗の指数とランキングが示されている。どのような基準で、だれが採点しているのかはつまびらかにしないが、この指数はかなりの年数の実績があるので、何らかの相対比較が可能である。点数は清潔度満点が100、最低点が0で表示されている。清潔度世界最高はデンマークの92点、日本は76点で世界15位となっている。日本の企業活動の公明性や、公的な政府間援助の有効性の観点から、こうしたランキングに敏感になることは必要なことである。特に公共性の高い商談、プロジェクト参画、投資の際のリスク分析と対策には活用することが望まれる。

ちなみに、BRICsと、その高度成長と潜在的な経済力の大きさが注目されてきた4ヶ国は、すべてCPI劣等生であることに十分な注意が必要である。ブラジル(69位、43点)、インド(85位、38点)、中国(100位、36点)、ロシア(136位、27位)となっている。また近年その超低賃金と経済未開度に着目して、日本企業が殺到しているミャンマーは、156位、21点という堂々たる汚職腐敗天国であることも留意の必要がある。

今、中国では習近平国家主席の政権強化のために、エネルギー・電力・自動車産業に照準を合わせた汚職摘発運動が最高潮に達している。またブラジルではブラジル最大の国営企業ペトロブラスの巨大利権をめぐって、政権与党を巻き込んだ一大疑獄の様相を呈しているが、与党は反撃のため、長年野党が支配してきたサンパウロ州の地下鉄プロジェクトに関して海外企業を標的に摘発が進んでいることを昨日のFinancial Timesが大きく報道している。正義は政治が決定することも大事な常識である。