世界の動きを英語で追う

世界と日本の最新のできごとを、英語のキーワードを軸にして取り上げます。

テルモの海外買収、価格は適正だったか Aquisition is Quite Expensive.

2011-03-08 | 世界から見た日本
2011年3月8日(火)

昨晩の日経新聞夕刊のトップ記事は「テルモ。米で大型買収、医療機器会社、2400億円、新興国を開拓」とテルモの「快挙」としてその戦略的買収を大きく報じている。買収先企業はスウェーデンのガンブロ社の子会社で、輸血関連機器製造業の米国企業CardianBCTである。

一方、日経が報じていなくて、Financial Timesが報じている重要な情報がある。今回その買収金額は、26.3億ドルであるが、これは企業の重要な企業価値指標であり、企業買収時に買収金額の算定に決定的な役割を果たすEBTDA比率が15倍となっている。EBITDAは純益に税金・利払い・減価償却をたし戻したもので企業の収益力を表示する。株式の時価や買収金額がひと株当たりこのEBITDAの何倍となるかで企業価値がどこまで大きいかを比較する。すなわち同業他社と同一時点でのEBITDA倍率を比較することが投資判断材料となる。

FTは「アナリストの評価ではCardianBCTの企業価値はEBITDAの8倍といったところ」と報じているので、テルモはとんでもなく高値掴みをした、ないしはつかまされたのではないかとFTは問題を投げかけている。(The acquisition is quite expensive.) 日経の翌朝の記事を丹念に読むと記者会見でテルモ代表者はこの点を質されている。

企業買収の成否は、買収金額よりも買収後の企業統治を確立し、収益基盤に正しく組み込むことができるかにより大きく依存しているともいえるが、買収金額が過大であればその後の収益に重大な影響が出る。テルモ経営陣の説明責任はこれから果されることになる。

今回の買収のFinnacial Adviserは明らかではないが、常に勝者は買収金額に比例して報酬を受け取る彼らであることも、これから買収に出かける各社経営陣は心しておくべきである。