世界の動きを英語で追う

世界と日本の最新のできごとを、英語のキーワードを軸にして取り上げます。

「プーチン大帝、危うし」 Putin’s rouble trouble

2008-12-31 | 中国・ロシア・インド・ブラジル動向
2008-12 No.023

昨年末の米国タイム誌の表紙を飾ったプーチン「首相」は、ツァーの称号を同誌から奉られましたが、一年でその帝王の座が揺らいでいます。プーチンの権力構造は、そのKGBで鍛えられた権謀術策と、内外の「敵」をねじ伏せる「力の行使」、世界に冠たるガス供給会社にのし上がったガスプロム(Gazprom)が産み出す莫大な「ドル収入」にありました。

しかしその「力の行使」による旧衛星諸国への軍事介入、ガス供給停止を武器にした「恫喝外交」、石油・ガス資源権益からの「外国資本の追い出し」を強行してきた付けが回ってきたのです。とくにShellやBPを敵に回したあからさまな「攘夷」政策は、外資のロシア離れ、それに伴う株式市場と通貨ルーブルの同時暴落を招きました。そしてそれに拍車をかけたのが、原油価格の急降下です。

プーチン首相は、何が何でも自分は「ルーブル切り下げ首相」として歴史に名を残したくないと、ルーブル防衛に血道をあげています。ルーブル防衛のために注入した資金は11月までの3ヶ月で、875億ドル、今なお週当たり60ないし100億ドルの外貨が流出中です。原油価格が147ドルをつけたころの外貨準備は、6000億ドルありましたが、もし40ドル台が続くと、来年末には2000億ドルに収縮すると予測されています。

しかしもっと大きな問題は、国内の社会不安が急速に増大していることです。11月だけでも40万人の失業が発生し、「反プーチン」の公然たる抗議運動が各地で多発しています。

状況は、「Putin is put in rouble trouble.」ということであります。
(FT 12/29/08)

ドイツ銀行は拝金教総本山 ‘Money is its god’

2008-12-30 | グローバル経済
2008-12 No.022

ドイツの教会のビショップ(Bishop:プロテスタント国ですから、大司教ではなく、日本語では監督と訳されます)が、ドイツ銀行のトップに対してその金儲け主義を評して、「カネを信仰の対象とした偶像崇拝者」と口を極めて攻撃しました。

ドイツ銀行が、「投下資本に対する税前収益率を25%という高率に設定したことがそもそもの間違いのもと」とこき下ろし、「銀行家としての社会的責任はどうした」と詰め寄ったのです。そして返す刀で、米国のブッシュ大統領とグリーンスパン前FRB総裁の「世の中を過度な借金に走らせて金融危機を作り出した」責任を問い、「庶民を愚弄した輩」となで斬りにしました。

またドイツ大統領も以前から、銀行家を、「モンスター」呼ばわりし、「モンスターにふさわしい、もといた場所へと追い返せ」と激しく攻撃してきましたが、同大統領は、クリスマスイブにさらに、「資本は社会に奉仕するように改心させて、今回の金融危機を、世界経済の秩序回復のきっかけにすべきだ」と一撃を加えました。

お二人からのとんだクリスマスプレゼントに、ドイツ銀行首脳は怒り狂っていると報道されています。偶像崇拝(idolatry)をするものと教会から宣告されるということは、破門すなわち社会からの追放、火あぶりの刑が待つのみであり、死後は地獄に落ちるよりほかないのですから。(FT 12/27/08)

原油安の副作用 A dangerously addictive painkiller

2008-12-24 | グローバル経済
2008-12 No.021

金融危機とともに世界大不況の引き金を引いた原油高騰は、今年7月以来急速に原油安に転じました。それはおおむね歓迎されて、ほっとしている人々が大多数ですが、同時に新規油田開発や、代替エネルギー開発にとって大きな打撃となっています。FTは、原油安を「短期的には鎮痛剤」となるが、それに安んじていると、「長期的には中毒」を引き起こすと警告しています。

高い原油を望む勢力、たとえばサウジアラビア政府は、新規油田開発と代替エネルギー開発を持続的に推進するための分かれ目は、1バーレルあたり75ドルであると言っています。またコンサルタントの中には、税金を課すことなどにより60ドルを最低価格とすべきであると主張するものもいます。

いろいろなエネルギー源の原油と競合できる限界価格(1バーレルあたり)を比較すると次のようになります。

      中東油田               30ドル
      他地域油田              40ドル
      ブラジルなどの深海油田        60ドル
      オイル・シェール           110ドル 
      石炭液化               110ドル
      カナダオイル・サンド         90ドル

      エタノール ブラジル(サトウキビ)  45ドル
            米国(とうもろこし)   65ドル
      EU バイオ・ディーゼル油        80ドル

      新規発電所 石炭火力         70ドル
            原子力          145ドル
            風力           75ドル
            海上風力         145ドル
      
70年代の石油危機の後、代替エネルギー開発が盛んになったにもかかわらず、80年代前半の全世界的不況により、原油価格が下がり、新エネルギー開発プロジェクトが事実上すべて放棄されたことを現在繰り返しているようであります。
(FT 12/22/08, ‘Over a barrel’) 

2009年版CEO不当報酬番付候補 Overpaid CEO of the year

2008-12-23 | グローバル企業
2008-12 No.020

FTは不当に高い報酬を得たCEO番付投票を募集すると同時に,、その候補者のショートリストを発表しました。そしてこれらの候補者が得た莫大な報酬は「失敗に対する報酬」(rewards for failure)と呼んでも呼び足らないくらいの、とんでもないものであるといっています。その候補者の下位から上位への一覧:

まず10月に解任されたRoyal Bank of ScotlandのSir Fred Goodwinの2006年と2007年の報酬合計約15億円。そして自分の銀行だけでなくアイスランドの島全体を沈めてしまった同国の銀行家たち。

しかし欧州の銀行家の顔色を失わしめるのは米国の仲間たち。まず政府住宅金融公社のきょうだい、ファニー・メイとフレッディー・マックの両社の巨頭。全世界に金融恐慌の種をばら撒いた功績で得たのは、おのおの20億と30億円以上のレベルの報酬を家に持ち帰りました。

そして、たぶんトップになるのは、9月に破綻したLehman BrothersのDick Fuld氏(2006年約40億円、2007年35億円)とのFTの見立てです。


シリコンバレーのクリスマス休暇 “Man, it’s ugly out there

2008-12-22 | グローバル経済
2008-10 No.019

シリコンバレーも超大型不況の例外ではなくなり、HP, Cisco Systems, Advanced Micro Devices, Dell, Adobeなどは12月22日から1月5日までの長期強制休暇を決め、またGoogleでも、夜間の社内食堂の営業を縮小することにしました。

この長期休暇にはまず使い残しの法定年次休暇(holiday entitlement:10日)を充当し、不足分は無給休暇にするという措置をとるという会社が多いので、労働者への影響は甚大で、幹部も「ひどいことになってきたもんだ」(It’s ugly)と認めています。

ハイテク業界は、今年の第3四半期までは好業績を続けてきたのですが、10月になって変調を来たし(The wheels fell off )、とくに半導体チップの在庫水準は、通常の3倍となっていると報じられています。

ダラスを本拠とするTexas Instrumentの稼働率は45%まで落ちており、これは2001年の、「ITバブル崩壊」以来の悪化です。(FT 12/21/08)




「株の空売り」禁止は無効 Short-selling ban had little impact

2008-12-21 | グローバル経済
2008-12 No.018

「自社の株価の急激な下落は、ヘッジファンドが仕掛けた空売り(short-selling)の、売り浴びせによるものだ」との大合唱に答えて、欧米政府は次々と、空売り禁止令を出し、とくに、実株の借り入れも行わないでおこなう「裸の空売り」(naked short-selling)には各国ともに厳しい禁止措置をとりました。

しかし禁止措置後の株価は、どこの株式市場でも大幅な下落が続き、やはり「株価は景気動向と個別企業業績によって大勢が決する」のだということを証明することになったのです。

逆に、空売り禁止は、取引高の減少と流動性(liquidity)の喪失を招くという副作用を起こし、売り買い気配の差だけが拡大しただけだったと、証券界の各協会が発表しています。

9月19日の英国に続き米国、フランス、ドイツ、イタリア、日本も同様措置をとりましたが、10月に米国が時限措置を解除したのに続いて、今月には欧州各国が解除し、英国も1月に解除します。(FT 12/18/08 25面)



いやいやながら Reluctant president’s bail-out

2008-12-20 | 米国・EU動向
2008-12 No.017

米国上院による救済案否決を受けて、ブッシュ大統領は、1.5兆円の緊急低利融資をGMとFordの2社に対し行うことを、金融界救済法を超法規的に援用して決定しました。FTの見出しに使われた言葉は、ブッシュが私企業救済に公的資金の使用に反対していることを表現した「いやがる大統領”reluctant president’」です。

記者会見では、「自由市場の赴くところに委ねれば、自動車会社は破産し、解体されて、混乱の極みとなるのは疑いない。そうなれば、ただでさえ弱った経済は、ますます長くて深刻な景気後退の奈落の底だ。新大統領就任初日を自動車産業の葬式にするわけにいかない」というのがブッシュ大統領の公式の弁です。

FTが引用するあるアナリストの論評は:「これしきじゃあ、バンド・エードですよ。とても2009年は乗り切れません。たとえていえば174億ドルのアメフトボールをオバマ新大統領に向けてパントキックをあげたというところですよ」

事実、2月17日までに、両社の再建ビジネスモデルを提出させ、3月末までに承認できなければ、融資返済を迫ることになります。それに待遇の大幅切り下げを迫られる全米自動車労組と対決する局面は、目に見えるようです。 ブッシュ大統領は「オバマ新大統領は、パントを受けても、落としてもピンチ」というシナリオを書いて、あとはお手前拝見としたのかどうか。


原油価格は37ドル台に A resounding vote of no confidence

2008-12-19 | 環境・エネルギー・食糧
2008-12 No.016


原油価格が大幅に下落し、その対策のためにOPECが、日量200万バーレルの減産に続いて、さらに200万バーレルの減産を決定しました。これが実行されると、世界の40%を閉めるOPECの生産量は2900万バーレルから2490万バーレルまで急減することになります。

しかし市場は、耳を貸しません。原油需要が長期に減退するとの読みもさることながら、減産合意は厳格に守られたためしがないからです。専門家は、『価格が30ドル台に突っ込んだのは、「カルテルが減産できるはずがないという、市場の圧倒的不信任投票”A resounding vote of no confidence”」である」と論評しています。

この急落は、「原油価格は200ドルを目指す」はずだった人々には大変なショックでしょうし、新規油田・ガス田の開発中ないし出荷開始を待つ企業は収益予想の見直しをしなければなりません。長期的な開発を待つ代替エネルギーの開発スピードは急速に落ちるでしょう。バイオエタノールをめぐる状況は一変しています。(本コラム10月22日「エタノール燃料は…..」参照)

しかし「下がったものは必ず上がる、上がったものは必ず下がる」という循環を繰り返すこと以外に真実はありません。短期的予想をしてもまったく無意味です。代替エネルギーに人類が本当に命運をかけるようになるまで景気循環の波動と投機資金のおもちゃとなって原油価格の乱高下は続くことでしょう。


ゴールドマンの「金鉱枯渇」Goldmine exhausted

2008-12-18 | グローバル企業
2008-12 No.015

金融界最後の優等生Goldman Sachsは、名門投資銀行の地位を捨て、9月に米国政府の支援を受け入れられる銀行持株会社に変身(makeover)しました。

それ以来,活路を見出す方策を探ってきた同社の今期決算によると、1999年に株式上場後初めて四半期決算で21.2億ドル(2200億円)の赤字となり、この結果通年の利益は昨年と比べて52%減の22.2億ドルとなってしまいました。

FTのコラムの見出しは社名をもじって”Goldmine exhausted"「金鉱も枯渇した」と言葉遊びをしています。そしてその株価が7月以来棒下げとなっているグラフには、”Goldman cracks”と見出しをつけています。Goldman Sachsとの語呂合わせで、「亀裂(crack)が入ったゴールドマン」というわけです。

続いて発表となった同業のモルガン・スタンレーの直近四半期決算は2000億円の赤字、通期では前年比47%減の1700億円の黒字となりました。両社ともに投資資産や債権の市場価格による再評価(mark to market)による損失が大きな部分を占めています。



サウジ人工都市建設遅延 The King Abdullah Economic City

2008-12-17 | グローバル経済
2008-12 No.014

「砂漠・石油・王家」の3語がサウジを表す言葉とすれば、「人口爆発・若年失業・ビンラヂディンの祖国」が知られざるサウジの裏面をあらわす3語です。、サウジ政府は急増する人口を吸収し、若者に職を与え、工業化によるGNPの成長を目指すため、4つの新都市を2020年までに海岸地区に完成させる計画を強力に推進中でした。

人工都市が計画された背景には、リヤド・ジェッダ・ダンマンという既存都市には、社会インフラを拡大して人口を吸収する余地が残されていないからです。その4つの中でも、ジェッダの北方に建設中の、アブドラ王の名を冠した「The King Abdullah Economic City」は、当然のことながらもっとも重要なものであります。

ドバイのデベロパーEECが2.7兆円の予算で2百万都市を建設し、100万人の若者に仕事を与えようという壮大なもので, 総面積4000万㎡の工業団地には鉄鋼・アルミ・製菓などをはじめとする2,700のテナントを誘致する計画となっていましたが、昨今の世界金融危機に直撃されて、開発のスピードを落とさざるをえない状況です。

サウジ政府投資庁であるサギアは、プロジェクトへの海外投資意欲は衰えていないと強気ですが、EEC幹部は「政府の支援なしに完成は困難」と認めています。他の3つの計画は大幅な見直しになることは避けられませんが、王様の名前を冠したこのプロジェクトは国威がかかっているだけに政府支援は行われる公算は高いと思われます。

しかし、11月21日の本コラム(2008-11,No.021産油国不協和音)で取り上げましたように、サウジの国家財政を維持できる原油価格は54ドルと推定されていますので、現今の40ドル台では、種々のプロジェクトの先行きは容易ではなくなりました。原油価格が20ドルを切っていた90年代後半サウジ国家財政は破綻し、プロジェクト代金の支払いが遅れ、サウジ国債で弁済されていた時代があったことが思い出されます。


銀行トップのボーナス "Could be inappropriate"

2008-12-16 | グローバル企業
2008-10 No.013

米国政府から25兆円の資金注入を受ける米国金融界の経営者が果たして年末のボーナスを受け取るのかに注目が集まっています。ボーナスの額が問題ではなく受け取るのかどうかが問題となっているのです。判断基準は、第4四半期を含めた今年の業績と政府からの救済資金を受けたか否かの二つです。

しかし、日本の銀行のトップがバブル崩壊後の経営危機時に政府資金の注入を受けた際、即座に報酬を大幅に放棄した(waive)したことにひきかえ、一段の「ためらい」があるのが米国資本主義の大きな特徴です。

まず救済を決定し、監督する立場にある、ポールソン財務長官の注入決定時の発言:資金注入を受けいれている機関は、幹部報酬について「ある種の制限条件」を守っていく必要がある。

21年ぶりに赤字化し政府資金を受け入れたノーザン・トラストのトップ、ワッデル氏のコメント:現今の環境下で、ボーナスを受け取ることはきわめて困難であるといわねばならない。しかし今年度はまだ終わっておらず、第四四半期の業績も考慮する必要がある。そして報酬は、政府救済資金を受け入れたか否かの観点から検討されるべきものである。

とはいえ、ほとんどの金融界トップはボーナス放棄の方向ですが、「自らの判断」で決定するものという原則は崩していないように見えます。そしてその雰囲気はFTの見出し副題の表現に現れています:Executives admit payments could be inappropriate. 金融界トップは「誤りだ」’wrong’ではなく、「不適切であるかも知れない」’could be inappropriate’と考えているのです。


史上最大の5兆円詐欺事件発覚 A Giant Ponzi Scheme

2008-12-15 | グローバル経済
2008-12 No.012

史上最大の金融危機が史上最大の恐慌に転じる危険に満ちた状況の中、史上最大の詐欺事件が摘発されました。詐欺の張本人とされて逮捕されたのは、なんとその経歴から投資家の間で絶大な信用を受けていたNasdaq市場の元会長マバーナード・マドフ(Bernard Madoff)氏。被害総額:500億ドル。手口:ねずみ講。甘い言葉:年率10%の配当。

被害者には、欧米の有名ファンドがずらっと名前を連ねていて、メージャー・リーグのオーナーや、野村證券なども未確認ながら入っているとのうわさです。しかし、今年はじめ当局に届けられた運用残高は1.7兆円であったので、いったいなぜそれが5兆円に膨らんだのかは謎です。

今回の「自転車」を倒したのは、7000億円の預け金の返金を迫った一人の顧客であったとのことです。だますほうもだまされるほうもスケールが違います。それだけに、このような大掛かりな詐欺行為を2005年以来、長期にわたって見逃した規制当局(SECなど)の責任を問う声も強まっています。

アメリカでは、新規投資家からの入金を使って既存顧客にタコ配当を行い、その自転車操業を倒れるまでやり続けるヤリ口を、稀代のイタリア移民詐欺師Ponziの名前をとって「Ponzi scheme」と呼びます。(余談ですが、schemeは日本語化したときは「計画」という意味で気楽に使いますが、もともと「悪巧み」というニュアンスのほうが強いので避けたほうがよい言葉です)。

FTのコラムには、Ponzi以来のねずみ講詐欺の一覧表が出ていて大変興味深いのですが、注意深いが欲も深いヒトをだます機会は、それこそ浜の真砂のごとくこの世に満ちているといっています。そしてその見出しは、詐欺師の名前をもじって”Madoff with ya(your) money”でした。



石炭利用が温暖化ガス削減交渉の障害 Coal-reliant utilities

2008-12-12 | 環境・エネルギー・食糧
2008-12 N0.011

現在、EU内部では「2050年に60-80%の温暖化ガス削減」を京都議定書以降の目標とする合意に向けて折衝が続けられていますが、石炭に依存する欧州諸国特にポーランドが、国家のエネルギー政策の根幹を揺るがすと強い抵抗を示しています。またドイツの電力会社の中でも石炭火力に大きく依存するRWEなども強い懸念を示しています。

石炭依存率を見ると、ポーランドは発電量の90%以上、ドイツ・デンマーク・ブルガリアが40%レベルでならび、英国が続きます。こうした石炭依存電力会社(coal-reliant utilities)の存在が大きな交渉の障害となっています。とくに金融危機と景気の急速な後退のさなか、排出権購入のコストの圧迫が、経済全体に及ぼす影響が大きな問題となります。

旧東欧諸国の石炭火力は、一般的には老朽化していることもあり、熱効率が悪いばかりでなく、公害対策も不十分です。二酸化炭素発生源でもあるばかりでなく重大な公害発生源でもあるのです。EUは世界の温暖化ガス抑制のリーダーとして世界を牽引していくためには、まずその内部での「石炭問題」を解決しなければなりません。それなくしては、石炭消費大国の中国や米国から譲歩を引き出すことはできません。

来週のブリュッセルでのEUトップレベルの交渉の結果は重要です。

世界はいまだ飢えている Almost 1bn people undernourished

2008-12-11 | 環境・エネルギー・食糧
2008-12 No.010

世界農業食料機関(FAO)は、2008年の世界の飢餓の状況について報告書を発表しましたが、その中で2005年までは8.5億人レベルで推移していた慢性的に飢餓状態にある(chronically hungry)人の数が、07年は9.2億人、08年は9.6億人と反転上昇傾向にあると警告しました。

世界の総人口(67億人)に対する飢餓人口比は現在17%であり、まさに6人に1人が飢えている状態です。とくにサハラ砂漠以南(sub-Sahara)の地域ではその比率は3人に1人となっています。今年の報告書の表題は「世界の食料不安(Food Insecurity)の現状」なっており、まさにキーワードは、「food insecure」であります。原因は穀物価格の高騰と、飢餓地域の国々の通貨安による二つの原因の合成にあります。今夏の急騰状態から世界の穀物価格相場はおおむね50%の下落を見ましたが、以前の水準にはまだ戻っていません。

2000年9月に国連で採択された「国連ミレニアム開発目標」(the UN Millennium Development Goals)では、2015年までに世界の飢餓人口を1990年の半分にすることを目指すことが宣言されていますが、この目標への達成は金融危機への対応追われる先進国政府の対応の低下や、穀物価格の異常高騰によって後退(setback)を余儀なくされています。世界はいまだ飢えていることを先進諸国は再認識する必要があります。

食料自給率を40%以下にして世界の貴重な穀物を大量に輸入しながら、一方で各種の農業補助金と高関税で農民ではなく「農業依存人口」を保護する農業政策を続ける政府の方針は、この世界の飢餓というコンテクストから考え直す必要があります。また生産される野菜・果物の30%が「規格外」として捨てられている農業流通の実態、そして毎日大量に廃棄されるコンビニ弁当とファーストフードも同じ次元から考え直す必要があります。


自動産業界の終末「大決戦の日」近し: Carmageddon

2008-12-10 | グローバル企業
2008-12 No.009

FTは、、世界の自動車産業の苦境がまさに、「世界の終末の大決戦―ハルマゲドン」(Armageddon)の状況になっていると表現し、フィアット社の最高幹部の『予言』を紹介しています。そしてその見出しはCar+Armageddonの合成語Carmageddonです。

さてその予言によると、世界の自動車メーカーは6社しか生き残れないというものです。現在過当競争状態にある自動車業界にあって、十分に利益を出していくには年間生産台数は最低550-600万台が必要で、採算分岐点は400万台。トヨタ、フォルクスワーゲン、ルノー・日産、GM、フォードの5社が年産500万台を超えており、現代が400万台で急追しています。

自動車業界の再編は、各社の強力な労働組合の抵抗や、政府の雇用最優先政策による圧力を考えると簡単には進めるわけにいきませんが、年産260万台のフィアット自身の進む道はあるのでしょうか?

フィアットの実質的な持ち主であるアニエリ家の当主は、他社との合併を容認するとの発言をしていることを考えると、上記の最高幹部の『予言』はまさに「連れ合いを求める新聞広告」(lonely hearts ad)の趣があります。候補は同じく同族経営のプジョー・シトロエン。これに同族経営のBMWを加えた3社合併はどうか、とのFTの呼びかけになっています。

2009年は、自動車業界の再編の年となり、2010年の業界地図は現在とまったく違ったものになっていることでしょう。