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資本主義経済は中国に学ぼう Inflation returns to China

2009-12-12 | グローバル経済
2009年12月12日(土)

中国国家統計局が11日発表した11月の経済指標を読むと中国の経済にも大きな転機が来ている。鉱工業生産が2007年6月以来の19.2%の大幅な伸びとなり、順調な回復をしている。消費者物価指数は10カ月ぶりに前年比で0.6%の上昇と前年比でプラスに転じた。

中国政府は景気浮揚策として、今年60兆円を集中的に注入したが、その効果が急速に現れ,こうした指標に示されている。中国は、米国の大恐慌前後の経済運営の大失敗をよく学んで、ケインズ経済学の教科書どおりの処方箋で進んでいる。一方、当然のことながら、通貨供給量は、年率で30%近い急膨張となり、食料・エネルギー価格も騰勢を強めていて、インフレの足音が聞こえ始めた。

中国政府は、注意深くインフレ対策を打とうとしているが、輸出が本格的に回復するまでは、低金利政策を変えるわけには行かない。そして人民元の事実上の安値固定という為替政策に変更を加えるわけには行かない。

今、金利を上げれば、外国からの資金が洪水のごとく、中国の株式市場と不動産市場に流入して、インフレ抑制の効果はないばかりか逆に、バブルをあおることになる。今、人民元を為替操作から解き放てば、急上昇して輸出にブレーキがかかるから、欧米がどんなに圧力を加えても屈するわけには行かない。

金利を引き上げるのは、欧米が引き上げた後にすること、人民元の切り上げは、インフレ沈静化のために輸入物価を下げる必要が出てからというのが、中国政府の政策担当者の腹積もりだろうと、Financial Timesが、各方面の分析を紹介してる。

市場経済に、慣らし運転から高速道路に乗りつつある中国の経済運営は、このようにしたたかであるが日本はどうか。鳩山政権が超低金利政策を維持し、これから7.2兆円の補正予算と、来年度の94兆円という超赤字予算を組むと発表しても、デフレ圧力は弱まるどころかますます強まっていて、経済の収縮はとまらない。長期金利も低位に張り付いている。

その理由を解く鍵のひとつが、過去には存在しなかった形での、今の中国の存在である。一人当たりのGDPで見ると都市部で日本の1/10、内陸部で日本の1/100という所得水準の労働者が生産する商品を、人為的な水準に固定された人民元で換算して輸出する13億人の超大国中国が隣人として君臨する現実を見る必要がある。

日本の労働者の賃金が、中国の労働者の賃金に収斂する方向に向い、同時に大量の失業を生み出すのは経済の必然である。移民をかたくなに遮断しながら、労働人口の減少を嘆き、高賃金を維持しようとするのは経済原理に反することに気がつくべきである。ファンダメンタルズの裏付けのない円高のもと、1000円を割る中国製ジーパンが、数百万着売れたと単純に喜んでいるわけにはいかないはずである。