世界の動きを英語で追う

世界と日本の最新のできごとを、英語のキーワードを軸にして取り上げます。

BP、四半期決算で1.5兆円の損失計上 A Leaner Machine

2010-07-28 | グローバル企業
2010年7月28日(水)

メキシコ湾の海底油田からの原因流出対策に全力を挙げるオイル・メジャーBPの第2四半期の決算が発表になった。同四半期の損失額は約1.5兆円で、同時に3兆円の資産売却と、CEOのTony Hayward氏の10月1日付けでの更迭を発表した。

今回、海上プラットフォーム爆発とその後の原油流出事故の復旧、流出原油回収、環境原状回復、損害賠償、罰金のために総額322億ドル(約3兆円)の引当金が取られた。税金還付を勘定に入れると純損失見込み額は約220億ドルとなる。

しかし、Credit Swisseのアナリストは、「BPの過失が明白になれば、損失額は126億ドル増える可能性がある」との警告を発しているとThe Wall Street Journalが伝えている。

「BPは、この措置で、同社の原油生産量は日量4百万バーレルから、3.5百万バーレルに縮小した上での再出発を目指す」と同紙が伝えている。同社幹部は、「この措置で、BPは生まれ変わる。また予想損失を十分カヴァーする体力もあるし、来年には復配できる」との自信を示している。また「この資産リストラにより、より贅肉を削ぎ落した筋肉質の会社(a more finely tuned, leaner, meaner machine)になれる可能性がある」と評価するアナリストもいる。

一方、「マコンド海底油田権益の共同所有者となっているAnadarko社と三井の両者は、ともに事故はBPの過失によるものとして損失分担責任を拒否しているが、これに対して、Tony Hayward CEOはあらゆる法的手段(through all legal means available)に訴えて両者を追及すると言明した」と同紙は伝えている。


中国に、不良債権問題と人民元切上圧力 A Fatal Desease

2010-07-27 | 中国・ロシア・インド・ブラジル動向
2010年7月27日(火)

中国の経済に関して、Financial Timesが「地方政府の借入金が不良債権化するリスクが増大している」との警告記事を掲載し、The Wall Street Journalが、IMFの「人民元の過小評価の報告書」に言及した記事を掲載している。

まずFTであるが、「中国の銀行が地方政府に対して貸し出している約110兆円のうち20%が不良債権化する危険がある」との、中国人民銀行高官の発言を報道している。

この融資のほとんどは、中国政府が昨年来進めてきた景気浮揚策としての公共事業に使われてきたが、今年に入って「特に不動産投資に向かった融資については、不良債権化の危険性が高い」ことを中央政府が警告してきた。

S&Pは、もし30%の貸し出しが焦げ付くと、銀行界全体の不良債権率を4-6%押し上げると算定している。大手銀行にとって影響は少ないが、地方銀行にとっての影響は甚大になろうと予測している。

中国の銀行貸出額は、昨年9.6兆元と2008年の倍に急増した。これを見た中国の規制当局は、貸出の圧縮を強く指導し始め、その効果は、成長の鈍化としてその効果が出始めている。そして不動産デベロパー向けの貸し出しは今年第2四半期に62%減少した。

10年前には50%に達した銀行貸し出しの不良債権は現在では1.3%となって健全化されているが、今回、不動産関連と地方政府向け融資がどれくらいの焦げ付きとなるかは予断を許さない。

一方、WSJが、中国の査定結果に関する年次報告書を9月までに完成させるが、中国政府は2007年以来同種報告の公刊に同意しないため公刊されるか否かは現在わからないと報じている。しかし、その内容は、「人民元は著しく過小評価されている("substantially undervalued")」との趣旨であることを明らかにした。

人民元を2年間にわたり対ドルで固定してきた中国政府は、6月19日にそれを緩和し、当局が管理する範囲内での変動相場制に移行したが、その結果の切上げ巾は現在0.7%にすぎない。

中国政府はたびたび「この為替管理が国内のインフレを抑制しながら、金融政策を有効に機能させる最善策である」と国内向けプロパガンダを繰り返しているが、先進諸国は、「安い人民元によって輸出ドライブをかけている」との批判を緩めていない。

中国では、膨大な貿易収支の黒字による外貨獲得、切上げ期待の投機資金の大量流入が起こっているが、中国政府は、ドル買いで人民元の切り上がりを阻止しようと懸命になっている。その結果、大量の人民元が金融市場に散布されて、それがインフレ圧力を高めていく。いつまでこの人為的な相場操縦が可能であるか?

中国政府は、「インフレは死に至る病」(a dangerous and fatal desease)というフリードマンの言葉を合言葉にし、「プラザ合意」によって円高を強制された「日本の愚を繰り返すな」と日本に学んでいるという。


BP、CEO更迭決定  "With Honor for the Sake of BP"

2010-07-26 | グローバル企業
2010年7月26日(月)

4月21日以来、ルイジアナ州沖合の海底油田からの原油流出事故に対処に苦しんできたBP取締役会は、現在のCEOであるTony Hayward氏を更迭し、後任に現在社長職(Managing Director)にあるBob Dudley氏を充てることを決定した模様と、The Wall Street JournalやFinancial Timesが報道している。

公式発表は、ロンドン時間の月曜日にもなされる手はずとなっている。取締役会は、先週からHayward氏に辞任を打診してきたが、同氏はすでに取締役会殿交渉結果、「会社のための名誉ある辞任」(resign "with honor for the sake of BP)として受け入れを決心しているという。

WSJの記事によれば、火曜日に予定されている第2四半期決算は、Hayward氏が行い、約2カ月の引き継ぎを経て、10月1日にBob Dudley氏に交代する手はずである。

Bob Dudley氏は、BPに吸収合併されたAmoco社出身の米国人、そして今回の事故地点にも近くその影響を受けているミシシッピ州の出身である。同氏はかつて、CEOのポジションをめぐってHayward氏と争った間柄であったが、今度の人事には同氏にとっても周囲にとっても驚きをもって受け止められているという。

現CEO Hayward氏は、今度の事故の対処、米国議会での証言、その後の失言(the gaffe)や行動で世論の強い非難にさらされてきた。それと好対照に昼夜を徹して現場指揮にあたってきたBob Dudley氏の株が上がったことや、米国人を英国の企業トップに据えることで対米世論の矛先をかわすということがこの更迭人事の背景である。

火曜日発表の第2四半期決算にどれだけの損失を織り込みまた将来の損失総額見積もりを発表するかに市場は強い関心を寄せている。現在までの事故対策費用は、一日当たり約100億円とWSJは算定している。

これには、今後多数提起される損害賠償は全く考慮されていない。BPはオバマ大統領との会見の際に、2兆円の供託金勘定の設定に合意しており、この払込原資を作るため、すでに7000億円の資産売却を決めている。

BPと米政府、対策で意見衝突 To be Driven by the Science

2010-07-19 | 環境・エネルギー・食糧
2010年7月19日(月)

BPは、先週木曜日に油井の開口部に対する封入キャップの取り付けが完了したことにより、メキシコ湾への油流出阻止に成功した。しかし今後の措置でBPと米国政府間で深刻な対立が生じている。

本日の各紙の見出しを見てみると、有力紙で封入成功を強調しているのは、次の2紙である。
Financial Times: Containment cap working, says BP(BP、封入キャップは有効と言明)

The New York Times: Optimistic BP Hopeful that Damaged Well Can Stay Closed (BP、損傷している油井の閉塞は持続可能と楽観視)

一方、日曜日になってにわかに今後の措置について両者の意見対立が明らかになってきたがそれを反映した見出しをつけているのは次の二つである:

Washington Post: BP, Allen voice dueling views on fate of oil cap(BPと米政府責任者、封入キャップの措置で意見対立)

ABC放送: BP, Feds Clash Over Reopening Capped Gulf Oil Well (BPと政府、キャップを開けるか否かで衝突)

BPは、「とりあえず油の流出が阻止できているので、キャップをそのままにしておき、現在掘削中で問題の油井管に今月末までには到達する「救出用パイプ」 (relief pipes)を油井管に接続し泥(mud)を注入して永久に油井を埋め殺したい」としている。

一方、米国政府は、「現在とりあえず止まっているが、封入圧力の値が予想値より低いのは、キャップで流出を阻止したため、原油が海底下の地層のどこかに漏れ出している懸念がある。また無理やり封入を続けると油井管が、内部圧力の上昇で破断し、制御不能の流出につながるのではないか」と心配している。

そのため、キャップを外して原油を再び流し、全量を海上の油回収船に吸い上げるべきだとするのが米政府の主張。一方、BPは「とりあえず止まっているのだからこのままにしたいという態度を取っているが、「だれも原油が油井から流出しているのをもう一度見たくないだろう」 と本心を語っている。米政府責任者は、「すべての決定は科学的な根拠が必要」(all decisions are driven by the science)との立場である。

失敗が許されぬ状況での双方の責任者の意見対立は深刻である。特にBPにとっては、会社存亡の危機における重大決定を迫られている。すでに3ヶ月間で流出した原油は最大184百万ガロン(約74万kl)と米国政府は算定している。


SEC、ゴールドマンに500億円の罰金で決着  Intentional or not

2010-07-18 | グローバル企業
2010年7月18日(日)

SEC(米国証券委員会)は、SECは、ゴールドマンサックスに対して、投資家に販売した金融商品CDOの組成に詐欺容疑(intentionally duping)があるとして調べを進めてきたが、先週木曜日に、550億ドルの罰金を科すとの決定を行った。

しかしSECのこの決定に至るまでには、内部の激しい意見対立の経緯があったことを、The Wall Street Journalが明らかにしている。

SECの決定は最高幹部5人の投票で行われるが、結果は3対2と票が割れた。民主党系コミッショナー賛成2票、共和党系反対2票に対して、オバマ大統領の信任厚いMary Schapiro 議長の票がすべてを決した。

ゴールドマン側は、顧客に破綻が確実化している金融商品を買わせ、自らはその商品の暴落を見越して逆張りに走ったことを肯定し、破綻確実な住宅金融証券をかき集めてそれをまとめた仕組み証券を組成したことについては、意図的ではなかったと否定してきたが、今回のSECの決定ではゴールドマンの行為が意図的(intentionally)であったか否かの判断は示されなかった。ゴールドマンに求められるのは、この罰金と「誤りがあった(a mistake)」と認めることのみである。

4月の議会証言で行ったその自己弁護、「まったく違法行為(wrongdoing)はなかった」、「破綻した金融商品CDOを組成した過程でも、自らその商品の暴落を予想して空売りを行ったことも、なんら糾弾されるべき行動はなかった」、「自社の利益を守ることが株主への忠実な行為である」、「空売りは自社のポジションから来る巨大なリスク回避のための必要な手段」、との主張を共和党系コミッショナーが支持したものとみられる。

この対立を反映して、SECが採決の根拠にしたのは、詐欺容疑としてもっとも厳しい規則10b(a sweeping antifraude provision)ではなく、詐欺意図については一段弱い規則17a(the lesser charge)であったと同紙が報じている。そしてゴールドマンは、これ以上のSEC捜査によって内部事情が外部に流出して、今後予想される民事損害賠償に不利になることを恐れて妥協に踏み切ったとされている。

一方、SEC自体も、金融危機を引き起こした金融・証券会社の行動の監督責任を問われていることもあり、厳罰をもって早期決着する必要があったが、共和党への政治的配慮を優先した形である。罰金額は巷間1000億円を超すと見られていたがその半分のレベルで妥協が図られた。

オバマ大統領が悲願としてきた金融改革法が間もなく施工されて、FRBやSECの監督権限の一元化や、強化が行われる。その法案が上院を通過した同じ週に、このゴールドマンに対する罰金が、SEC76の歴史でも最大級のレベルで決着したことは象徴的である。


オバマの米国金融改革法案両院通過 A Sea Change

2010-07-16 | 米国・EU動向
2010年7月16日(金)

米国上院が60対39で、オバマ政権が悲願ともしてきた金融改革法(the Dodd-Frank bill)を承認した。

1年の紆余曲折の末、民主党は一部共和党議員の説得に成功し、最終段階まで薄氷を踏む経過を経て、数時間前に上院100名のうち絶対的多数(supermajority)と称される60名の賛同を得たのである。

The Wall Street Journalは、「議会は金融のあらゆる場面を規制する法改正を承認した。これで自動現金支払機から、ウォール・ストリートのトレーダーの挙動までが影響を受けることになる。銀行・証券に対する政府の規制が一段と強化される」と報じ、「大恐慌以来の画期的な改革となる」と冒頭で寸評している。そしてこの新法に与えた表現は「未曾有の大変化」(a sea change)である。

そして, これから大統領署名を経てから、10に及ぶ規制当局側が、この法律の施行細則を決める作業に着手するが、同紙は法律そのものよりも、それをもとにした規制当局の編成の組み換え、数百本に及ぶと予想される細則の内容の方が、影響が大きいと解説している。

また、規制を受ける側も大がかりな準備に入っている。たとえばJPMorganでは、社内に100の作業チームを立ち上げているという。

「規制緩和がすべてを解決する魔法の杖」と信じて、金融・証券活動を市場経済の手に委ねたら、放埓の横行が起こりついには破綻に至った。そしてその次に、政府権限の強化と規制強化へと揺り戻しが起こっている。これは歴史上の「いつものサイクル」である。

今回、オバマ大統領は、経済界からの強い批判と、彼らの激しいロビー活動を乗り越えてついに改革の糸口をつかんだ。フランクリン・D・ルーズベルトから80年目の「世直し大統領」として名を残せるかどうか、これから1年が勝負である。

米経済界、オバマと対決姿勢強める anti-business/pro-union

2010-07-14 | 米国・EU動向
2010年7月14日(水)

Financial Timesは、米国商工会議所会頭のTom Donahue氏とのインタビュー記事を掲載し、ビジネス界とオバマ政権の間にある対立の構図を鮮明に描き出している。その記事の見出しは、「オバマ、企業政策で非難ごうごう」(Obama berated on business)となっている。

米国商工会議所は最大のビジネス界を代表するロビー団体で、今夏にオバマ大統領の失政を追及する「雇用拡大サミット」(a jobs summit)を計画している。それに向けてオバマ政権に対する批判のトーンを上げているが、特に「オバマ大統領が、あまりにも労働組合寄り」(pro-union)で、「規制導入にばかり熱心すぎて、その結果企業はあえいでいる」という点に攻撃の的を絞っている。

Donohue氏は語る。「大統領選挙で、労働組合がオバマ大統領に献金した額は、およそ450億円。これで労組のための政策に熱心な理由がわかる」と手厳しい。これに対して商工会議所側は、今秋の中間選挙で共和党を強く支持することを表明していて、約50億円の献金を行うことを決めている。

民主党は、今週「金融再規制法(the financial re-regulation bill)」の議会通過のために全力を挙げているところだ。これを「企業の活力を削ぎ、投資活動を鈍らせるもの」と同会頭は批判している。

さらにまた、共和党や米国商工会議所が強く反対している環境関連法案には、温暖化ガス削減のための排出権枠を各産業・企業に割り当て、もしその枠を企業が守れなければ排出権を外部購入させるといういわゆる、「キャップ・アンド・トレード」(cap and trade)が含まれている。

一方、産業界を代表する巨大企業GEのトップ、Jeff Immelt会長は、今月初め、イタリアでの民間経済人との夕食会でオバマ大統領を批判したことは既報のとおりである。

「やっと回復し始めたばかりの米国景気に水を差すのが、金融危機後の経済立て直しと称して大統領が取っている『過剰規制』(over-regulation)政策である」と批判したうえで、

「米国経済界は大統領を好きでないし、大統領は経済界のことを好きではない。大統領と、こうも馬が合わなければ(not in sync)どうしようもない」とまで言った。

もっとも、この発言の引き起こした波紋の大きさに驚いたImmelt会長は、今週火曜日に、Financial Timesのインタビューに応じて、「景気は回復している。成長路線は、政府と産業界で整合性がなければならない。成長も雇用拡大もオバマ大統領と産業界にとって等しく重要だ」と、前言を実質的に撤回した。

財界・共和党の連携と、労組・民主党の連携は、米国政治のもっとも基本的な構造であることに変わりはない。オバマ大統領が就任以来、倒産した大型企業の救済を行い、景気刺激のために大型の財政支出を断行したおかげで、産業界も恩恵をこうむったはずなのに、財界は、「大統領を責め」、「共和党支持」を外せないし外さない。

インド経済成長に急ブレーキ A Blistering Pace of Growth

2010-07-13 | 中国・ロシア・インド・ブラジル動向
2010年7月13日(火)

Financial Timesが、「世界的金融危機のあとインド経済は猛烈なスピードで急回復していたが、最近発表された今年5月のデータによると、4月の猛烈な勢い(a blistering pace)から急速な減速状態に入った」と報じている。

その急ブレーキがかかったとされる成長鈍化の中身を見てみる。

工業生産は、前年同月比で4月の16.5%から、5月の11.5%にダウンした。理由は車などの耐久消費財の消費が減速した(moderated)ことと、工場設備などの資本財への投資が急落(a plunge)したためと説明されている。

資本財の生産は、4月の年率70%の伸びから、5月には30%にまで減少、耐久消費財の生産は、同じく30%から24%に減速した。

低成長にあえぐ先進諸国からみれば、まだまだ十分に高い数字であるが、インド中央銀行筋も、「この減速はエコノミストには予想外(off-guard)だったかもしれないが、二桁台の成長は8ヶ月続いており、インド経済はまだまだ底堅い(robust)」と言明している。

耐久消費財の売れ行きは、安いクレジットに依存しているので、金利動向に敏感である。したがってインド中銀が、インフレ対策のため、今月2日に基準金利を0.25%引き上げ、さらに27日にさらに引き締め策を決めようとしていることへの懸念が強く、インド商工会議所は中銀に対し、工場設備投資意欲を殺ぐ金利引き上げの中止を強く求めている。

同紙は、「年率10%という超インフレを抑制しようとする中央銀行(the Reserved Bank of India)が、相次ぐ利上げを行おうしているが、中銀の利上げの前の5月にすでに経済が減速軌道に入ったとすると、ますますさらなる利上げは、成長を阻害することを懸念する」との産業界の声を紹介している。

一方で、「経済危機後の異常なまでの高率成長が正常化しただけで、今後は農業セクターがけん引力になる」との意見や、「今回の製造業の成長鈍化は、ここ数年設備投資を怠ってきたため、工場設備の能力不足が障害(supply bottleneck)になっている可能性がある」との民間エコノミストの見方も紹介している。

インドでは二桁台の持続的成長が二桁台のインフレを引き起こしている。中国では10%近くの成長が不動産バブルを引き起こしている。両国ともその過熱を抑えにかかっているが、過度に引き締めが起こると、全世界的な不況になる危険性がある。それほど両国の影響力は強まっている。



民主党大敗の報道 A Stunning Rebuke

2010-07-12 | 世界から見た日本
2010年7月12日(月)

参議院議員選挙は、与党民主党が「大敗」して終わったが、有力紙の報道をその電子版の見出しから見てみる。

The New York Timesは、「日本の与党、中間選挙で大敗」(” Major Setback for Japan’s Ruling Party in Midterm Vote”)としている。

そして「与党はこの9ヶ月間政策的に苦しんできたが、この国民の信任投票ともいうべき中間選挙で大敗が明らかになった。それを受けて菅総理は『選挙結果いかんにかかわらず首相を辞任しない』と語った」と冒頭で伝えている。

The Wall Street Journalは、「与党、参議院選挙で痛撃を食らう」(”Japan Ruling Party Pummeled in Upper-House Vote”)とした。

そして記事冒頭は、「10か月前に民主党に歴史的政権交代を託した国民は、一転してノーを突き付けた(a stunning rebuke)」。としている。

Financial Timesは、「日本の首相、選挙で敗北喫する」(Japanese premier suffers setback at polls)と形容詞抜きの表現となっているが、冒頭の一文は、「民主党は参議院選挙で手ひどい打撃を受けた(a painful defeat)」と表現している。そして、世界第2位の経済規模の日本の財政改革がこれで進まなくなるかも知れないと予想している。

Washington Postは、選挙直前の記事で、「日本の選挙民、民主党に審判」(Parliamentary vote tests Democrats in Japan)として、「菅首相は急速に支持を失っているが、その原因になった突然の増税提案に関してトーンダウンを図っている。日曜日の選挙は9カ月の民主党政治に対する国民の審判となる」と報じていた。


グーグルと中国和解、サイト継続許可  A Face-saving Solution

2010-07-11 | グローバル企業
2010年7月11日(日)

先週金曜日突然、グーグルが、「中国政府から営業許可を得た」と発表して、中国が検閲問題で妥協することはないと見ていた業界を驚かせたと、Financial Timesが伝えている。

昨年来、中国政府はグーグルのサイト運営に干渉し、「ポルノへのアクセスを許している」 との理由で、中国語サイトを閉じることを命じたことから、米中政府間での問題に発展していた

グーグルの発表は、ブログ上のわずか2行で、「インターネット・コンテント・プロバイダーの営業許可が更新されたので、ウェブ検索機能を中国のユーザーに提供を継続することになりました」との趣旨となっている。中国側は取材に応じていない。

今回の妥協策は、中国国内のユーザーからのアクセスはいったん中継サイトへつながれ、さらにもう一回クリックしてから、香港に回送されるという手順を取ることになる。

しかし、今回の妥協策は検閲問題(censorship)の根本的解決にならないことをFTが指摘している。すなわちこのサイトへのアクセスの速度が遅いこと、中国政府が問題視する海外のサイトへのアクセスはブロックされてしまうことである。

今回は、グーグルの中国撤退という事態になれば米中政府間問題となることを避けたい中国政府と、4億人のユーザーのいる中国市場から「追い出されたくない」グーグルの双方の顔をたてるもの(a face-saving solution)だとしている。

そして、米国のグローバル企業として、通信の自由を侵すアクセス自主検閲をした会社としての汚名を残したくないグーグルにとって今回の措置は、「検閲をしているのはわが社ではない。中国政府だ」といえる措置だと言えるのが最大のグーグル側の利点であると論評している。(“Google is no longer the enforcer of censorship – China is.”)

中国市場でのグーグルの参入の歴史を同紙がまとめているので引用しておく:

2000年:中国語サイトGoogle.comのサービス開始。

2006年:中国国内向けのGoogle.cnを開設したが、中国政府の許可条件として「特定サイトへのアクセス制限を自主検閲すること」を受け入れたため、内外から強い批判を受けた。中国政府は、Google. Comを閉鎖させ、Google.cnに一本化。

2009年:中国政府が、ポルノサイト閲覧可能状態を理由に、Googl.cnの海外サイトへのアクセスを一方的に制限。

2010年:グーグルは「自主検閲を中止し、中国市場から撤退」を表明して公然と中国政府と対決姿勢を鮮明にした。中国国内の検索アクセスをすべて香港に回送する処置を取って対抗したが、6月になって中国政府は、グーグルの全面的サービスを禁止する方針を表明。

中国は米国国債を見捨てない No “Nuclear Option”

2010-07-08 | グローバル経済
2010年7月8日(木)


中国の外貨保有高は、経常収支の黒字が続く中、すでに2.45兆ドルと世界の中では日本の倍以上という驚異的なレベルに達している。この外貨をどのような形で保有するかが、世界の経済のみならず、特に米国、日本、EUの為替、金融に対して支配的な要素となってきた。

中国は、外貨保有の大部分を米国国債で運用することによって、米国の経常収支の赤字と、財政赤字の補てんをする役目をはたし始めている。この役目はかつて日本が中心になってきたものであるが、今や中国がその地位について、米国に対して影響力を行使するところまでになっている。

本日のFinancial Timesのトップ記事は、「中国は、米国国債を見捨てない」 (Beijing rules out dumping US Bonds)となっており、米国国債をあきらめて他の保有手段、たとえば金や日本国債に軸足を移すといういわば、米国にとって大ショック(Nuclear Option)となる政策を取らないと、通貨当局が明言したことを伝えている。

中国政府の通貨当局は、その政策に透明性がないという批判にこたえる形で、ここ数日にわたって声明を出しているが、中国が巨額の日本国債を買い進めていることが世界に報道されたため、「ドル保有をあきらめたのか?」という問いに答えるものでもある。

そして、声明の中で、「米国国債市場は、安全性・流動性・運用コストの観点から中国にとって極めて重要である」と見解を明らかにしたことは、ドルの為替レートを安定化させるためにも、また米国国債金利の低位安定にも重要な効果を発揮した。

財政赤字の解決の見通しがないまま、大量の国債を発行し続ける日本で、国債の金利が上がらないのは、運用のすべを失った日本の銀行が国債を買うほかないからだ、という説明がなされてきたが、これからは中国という強力なささえ手が現れたことも理由になっていく。

またゼロ金利の円がどんどん切り上がっていくのは、中国の日本国債買いのための円需要が発生しているからだと分かった。

Financial Timesは、「経常黒字国の日本にとって、円を買い支えてもらう必要はないのに、中国の円買いでますます円高になり、輸出企業が苦しむことは歓迎していない。円債の買い付けをこのまま許すと、日本は人民元資産を買って対抗するわけにはいかないので、両国の関係に緊張をもたらすだろう」と分析している。

中国政府が国債を買い進めるだけでなく、中国富裕層の日本の不動産投資もブームになっている。これからの日本は、中国の影響をもっと受けることになることだけは確実である。


オバマ、イスラエルとの関係不変を強調 Unbreakable Bond

2010-07-07 | グローバル政治
2010年7月7日(水)

昨日、イスラエルのナタニエフ首相が「関係修復」を目指してホワイトハウスを訪問したことを各紙が一斉に報道している。

イスラエルが行っていたパレスチナ人の支配するガザ地区への海上封鎖を突破して、救援物資を持ち込もうとした市民団体の船舶を、イスラエルが5月31日に公海上で急襲、9人を殺害した事件の後、急速に米国とイスラエルの関係は冷却していた。

オバマ大統領と同首相は約1時間の会見の後、記者団の前にそろって現れ、両国間の緊密な関係をことさら繰り返し強調して見せた。ここでのキーワードは、オバマ大統領が使った「決して切れない(unbreakable)両国の結びつき(the bond)」 である。

ホワイトハウスのブログも、両首脳が「イスラエルとパレスチナが、直接対話によって平和の模索努力(peace process)」を行うことを望み、「対イランの制裁措置(sanctions)」に踏み切った米国の決断」をイスラエルが強く称える発言したことを、繰り返し伝えている。

しかし、船舶急襲と米国民を含む市民活動家殺害と拉致事件について話し合ったかどうかについては、両首脳とも話題とすることを避けている。

また記者団から、「大統領が(事件以来)イスラエルと距離を置いたことは誤りであったか」という鋭い質問に対して、大統領は、「その質問は前提が間違っている。私の過去1年半の間の発言を見れば常にイスラエルを特別の友邦とみなしてきたことが分かる」と、The Wall Street Journalが伝えている。明らかに答弁をはぐらかしている。

Financial Timesは、今回の会談趣旨は、両国のパレスチナ和平に関する意見の相違(the perception of a rift between them)の調整にあったとし、特にイスラエルが一方的にガザ地区への入植者の住宅建設を進めていることが最大の問題であると指摘している。9月までこの入植地建設は一時中断されているが、米国はこれをさらに延期することを強く求めている模様である。

オバマ大統領は国内の強いユダヤ人社会の強硬路線を無視できない。ナタニエフ首相も入植地建設再開をしなければ、政治生命を失う。国際世論を見れば、イスラエルの「暴挙」に与する国はほとんどない。特に「友邦」トルコの信を失って今や敵対関係と呼ぶべき関係にしてしまったことはイスラエルにとって打撃となっている。

もし、イスラエルが入植活動の凍結(the freeze)を解くと、パレスチナ自治区との和解交渉は、絶対に前進しないことは明らかである。これから米国はクリントン国務長官をはじめとした総力で、イスラエル説得交渉を続けることになる。

これが満面の笑みと美辞麗句に満ちた記者会見の裏にある真実である。

菅首相、なぜ今「消費税増税」? Tokyo’s Latest Tax Blunder

2010-07-06 | 世界から見た日本
2010年7月6日(火)

The Wall Street Journalの寸評欄が、菅首相が突然「消費税率10%」を 宣言したことを、「日本政府、またも税制政策で懲りない失策」(Tokyo’s Latest Tax Blunder)との見出しのもと手厳しく批判している。

同紙は、「日本では税制に選挙前に手をつけた政権はこれまでしばしば敗北してきたことは歴史が教えているのに、参議院選挙直前にした菅首相が、この最悪のタイミングでいったいなぜ経済的にマイナスとなる政策を?」と訝っている。

前任の鳩山元首相は、政治的な敗北を恐れて、「消費税率には最低4年間は手をつけない」としてきたし、民主党の黒幕小沢幹事長も菅首相に警告を発してきた。デフレ対策に躍起となっているこの時期に、消費に水をかけるのは愚策も甚だしいし、「国内投資を刺激して経済成長を後押しするために法人税率を引き下げる」とする同首相の経済政策と平仄が合わない。

「日本の高度成長を支えたのは、第二次大戦後、対GNPでの税収比率を抑制したからであり、失われた20年という「日本病」(The country’s malaise)こそ、過大な財政支出と増税がもたらしたものだ」という認識を日本人はしっかり持っているはずなのに、と分析を加えている。

同紙は続ける。

「菅首相は、消費税増税が、GNP比200%という巨額の国家債務を減らす唯一の道と信じ込まされているようである。低所得者層には減免措置を取るというが、具体策を示さず思いつき発言の域を超えない」と舌鋒は鋭い。

そして、「増税政策の根拠に、政敵自民党の主張を引き合いに出して正当化をしようとしている」のは笑止であると断じている。

「一般論として、税制を簡素化し、所得税率をフラット化し、課税ベースを広げるのは正しい方向であるが、菅政権のやろうとしているのはその逆である。菅氏は直前まで務めた財務相時代に所得税増税に賛意を示していたし、後任の野田大臣は、富裕層への課税強化による、税負担の公平化(more egalitarian)を図るべしと主張している」。

「もっと問題なのは、菅首相が経済成長への道筋をじっくり示していないことである。日本に必要なのは、社会にイノベーションを起こすための、貿易・移民・投資の急速な自由化政策の導入である。法人税率を40%から25%に減税するという公約はこの意味で正しい。郵政民営化促進は、官製の参入障壁の除去による民業振興を推進するための、恰好のシグナルになるはずのものだ」。

「選挙民の心配は、二大紙の世論調査に直ちに現れた。菅首相に対する支持が10ポイント下落したのである。日本国民は菅さんを鳩山さんより好きなようだが、消費税の増税がどんな問題を引き起こすかも十分知っているということだ」と、寸評欄は記事を結んでいる。




中国の労働争議、アジア諸国に伝播 Mirrored Across Region

2010-07-05 | グローバル経済
2010年7月5日(月)

最近中国国内において、賃上げを求める労働争議が頻発し、特に日系企業や台湾系企業が狙い撃ちに会うという様相を呈しているが、この動きは東南アジアの「超低賃金」国にも伝播しつつある。

中国での労働争議の頻発と賃金急上昇を見て、外国資本は急速に東南アジアのカンボジア、ベトナム、ラオスなどに工場移転を進める動きを活発化させているが、こうした国でも同様にストライキが起こっているとのFinancial Times の報道である。

現在中国とこれらの国の間にはどのくらいの賃金格差があるのだろうか。現在の月額の最低賃金水準をFTが比較している。

カンボジアでは、月額賃金は50ドルに6ドルの生活手当であるから、約5,000円となる。政府はこれに5ドルの加算を提案しているが、同国最大の労働組合連合は、70ドルへの引き上げを要求している。

ベトナムの外国資本の工場に対して決められている最低賃金は、現在52.5ドル。ラオスは昨年35ドルから42ドルに引き上げられている。

ちなみに上海や中国南部の最低賃金は、月額1,000元を突破している。これを最新の人民元レートである6.771元/ドルで換算すると約148ドルとなるので、これらの地域の水準は中国の1/3であるといえる。

こうした中国の1/3以下の低賃金労働を求める外資は、すでに縫製などの労働集約型の工場を中国から東南アジアに急速に移動し始めている。

一方これを受け入れる側の国々、たとえばカンボジアは現在100%出資の法人設立を認めてその進出を促進している。同国政府発表によれば2010年第一四半期だけで対前年比56%増の290件の外資進出があったとしている。世銀調査でも2009年の外国投資が500億円レベルから、今年は700億円レベルに急増すると予測されている。

ラオスなどの諸国では、社会インフラが未整備であり、電気供給も不安定である。しかも社会には腐敗が蔓延している状況であるが、グローバリゼーションの動きは止まらない。FTは、米国から今月カンボジアにGEやJPMorganなどが参加した経済ミッションが訪問したことを報じている。


GE会長,中国とオバマを非難 Harsh Words for China & Obama

2010-07-02 | グローバル企業
2010年7月2日(金)

米国産業界を代表する多国籍企業GE(General Electric)のJeffrey Immelt会長が、ローマで開催された夕食会で、「中国の外国企業への敵対的な閉鎖性とオバマ大統領の過剰規制」を、歯に衣を着せぬ激しい調子で非難したことを、Financial Timesがトップで報じている。

居並ぶイタリア財界のトップを前にして、同氏は、「GEは、中国に’植民地化’されるのを嫌っている資源豊かな他の国への投資を模索し始めている」と前置きして、「中国は我々が成功を収めるのを見たくはないのだと思う」と、ますます強まる中国政府の閉鎖的な政策を強く非難した。

さらに、「中国はGEに5,300億円の売り上げをもたらしてはいるが、ここ25年間、中国において世界で最も厳しい商売をさせられてきた。中国もインドもGEにとって重要ではあるが、われわれは次を模索し始めている。資源に恵まれた、中東、アフリカ、中南米とインドネシアがそれだ。これらの国にはいわゆる中国による経済的植民地化を嫌い、独立の気概がある」と発言。

さらに同氏は、返す刀でオバマ大統領を非難した。

「嘆かわしいのは、やっと回復し始めたばかりの米国景気に水を差すのが、金融危機後の経済立て直しと称して大統領が取っている『過剰規制』(over-regulation)政策である」と批判したうえで、「米国経済界は大統領を好きでないし、大統領は経済界のことを好きではない。産業界を擁護するドイツのメルケル首相を見よ」と、オバマ大統領の経済政策を、前提なしに全否定した。

「米国民の気分は最悪。哀れなのは輸出に励む我々だ(a pathetic exporter)。もう一度米国産業界は世界に冠たる地位に復活しなければならないが、大統領と、こうも馬が合わなければ(not in sync)どうしようもない」

FTはこの記事の最後で、「会長のコメントは文脈から切り離されて報道された。しかも正確さに欠ける。会長のオバマ大統領に関する発言は、私的な夕食会席上での、米国政府との一般的な関係に言及したものでのものであり、同大統領のみについて語ったわけではない。中国についても、同国市場がGEにとって魅力があり、重要だと発言したものだ」とのGE側のコメントを掲載している。

一方、The Wall Street Journalは、直ちに反応して、「GE、報道されている会長発言から距離を置く」(GE Distances Itself From CEO's Reported Comments)との見出しのもとに、GEの「会長がローマの会合で中国とオバマ大統領を切って捨てるような発言をしたかの報道があるが、これはGEの会社としての見解を反映するものではない」とのコメントを伝えている。

そして、WSJは「記事の正確さには自信がある」とのFT側の反論も同時に言及している。

あれほど中国重視の企業姿勢を早くから打ち出し、巨額の投資も続けているGEのトップの発言の内容としても、タイミングも不可解である。またオバマ大統領の経済諮問委員として、科学技術振興や新規投資に関して政権と蜜月の関係を保ってきた同会長のいきなりの大統領批判はいぶかしい。

この発言は確実に大きな波紋を呼ぶことは間違いない。今後出てくるかもしれないWelch前会長の発言に注目しよう。