世界の動きを英語で追う

世界と日本の最新のできごとを、英語のキーワードを軸にして取り上げます。

中国社会、急速な高齢化とともに親孝行文化を消失 Filial Piety

2011-04-30 | 世界から見た日本
2011-04-30

中国にもひたひたと高齢化という波が、大規模に押し寄せている。

Financial Timesは上海での取材記事を「シルバータウン化を見据える中国」(China looks forward to age of the ‘silvertown’)との見出しのもと、高齢化というまぎれもない統計的な事実と、富裕化に伴う親子関係の変質を解説報道を行っている。

注目すべきは、「一人っ子政策」を30年続けた結果、親子関係が希薄化し、親子同居は減少し、独居老人が激増しているという事実である。

中国が発表した人口調査結果によると、10年前と比較すると総人口は5.84%増加して13.4億人となったのに対して、60歳以上の人口が4800万人増加して全体に占める割合も10%から13.3%に上昇した。

一方、中国の儒教的伝統思想である「親孝行」(filial piety)は衰退し、親も子も同じ家に住むことを嫌う傾向が強まっているという。そして不動産業、保険業者、外国人投資家は、養老施設に対する投資に着目しており、そうした大型老人ホームは、「シルバータウン」と命名されて巨額の投資ファンドを集め始めている。

北京政府は、子供が親を放擲する傾向をいさめるため、成人した子供に定期的に親を訪問する義務を課す法律を制定したと同紙は、伝えているが、同時にシルバー産業の会社代表者の” Social change means there is a big profit space in the market for ‘eldercare’ services.” (社会的な変化が起こって、老人介護という宝の山ができたということだ)という言葉を紹介している。

ホリエモン、次は刑務所ビジネス Next Venture is Jail

2011-04-27 | 世界から見た日本
2011/04/27

The Wall Street Journalが、ホリエモンの上告を最高裁が棄却したことを伝えている。

見出しにいわく「堀江貴文氏、次は刑務所ビジネス」、「試合終了、少なくとも当面は」(Time’s up for Takafumi Horie. For now, at least)と何となくエールを送る感じの論調となっている。

そしてWSJは、ホリエモンのTwitter上の短く切れよく書かれた(succinct)一言「棄却された。。。」(I was rejected.)を紹介して、これから彼の新しい活動が始まるのだと紹介している。そして同氏に使われた表現は、“Japan’s controversial cyber guru”(日本の毀誉褒貶かまびすしいサイバー導師)である。

2年半の実刑判決を受けた後の、インターネットの検索は同氏に関するものが大きく占有することになったこと、また彼のTwitterには69万人のフォローワーがついている、と報じ、先週「ホリエモンの宇宙論」(“Horiemon’s Cosmology”)が発刊され、これからのITビジネスの舞台は宇宙とぶち上げていることも紹介している。

判決前に、健康診断も済ませ、レーシック手術まで受けた周到さで覚悟の「入所」であることをうかがわせる。そしてこの入所ほど新刊の売り上げに寄与するものはなかろうと評している。(And there’s nothing like jailbird opprobrium to help lift sales:前科者のレッテルに勝る本のPRは無い)

そして入所後彼がサイバー戦士として戦い続けることができるかは未知数だが、沈黙を守る(radio silence)などと考えない方がよいと記事を結んでいる。

どうも、「一罰百戒」の検察の論理は、ことホリエモンのケースでは逆作用したのかも知れないと思わせるほどのWSJの「温情記事」である。


菅政権の無策、震災・原発を「逆風」化 Frustration over Kan's Handling

2011-04-26 | 世界から見た日本
2011/4/26

The Wall Street Journalは、「日本与党選挙で痛手」(Ruling Party Hurt in Japan Election)との東京発の記事を掲載し、地方首長と議会選挙で民主党が大敗北を喫し、菅首相への退陣圧力はいやがうえにも高まっていると報じている。

特に愛知県の衆院補選において候補者も擁立できず自民に議席を献上することになったことは民主党の退潮の象徴であることは衆目の一致するところであるが、The Wall Street Journalはその部分も詳報している。この間の事情を、地元の中日新聞は、「大震災後、初の国政選挙となった衆院愛知6区補選は自民元職が返り咲いた。政権与党は不戦敗、地域政党にも風は吹かなかった。(中略) 前回衆院選で十五の小選挙区を民主が独占した愛知県で、自民が民主王国の一角に何とかくさびを打ち込んだ。補選は民主前衆院議員が二月の名古屋市長選出馬のため辞職したことで実施された。民主は菅政権への逆風を懸念して候補を擁立できず、不戦敗となった。」と報道しているが、WSJもそれをほぼなぞる形で詳報している。

WSJの本日の選挙結果や政治情勢に関する報道内容は、我々には既知のことがほとんどであるが、「東日本大震災が発生したため、菅首相の伝家の宝刀ともいうべき「衆議院の抜き打ち解散・総選挙」(a snap general election)はという選択肢はもはや無くなった」との政治学者の論評を引用していることは注目される。

しかも、菅首相が災害復旧のための4兆円の第一次補正予算を5月2日に国会を通過させることができても、与野党の「震災協調」はそこまでであって、その後16ないし25兆円と推定される復興財政支出の補正予算化には、野党の協力はもはや得られぬとの予想を米国民に解説している。そして民主党内部からの火の手(factional disputes within his own party)も制御できないところまで来ていると論評していることも注目される。

「震災を奇貨として政権維持をはかろうととした菅首相のもくろみは、不首尾に終わった」というのがWSJの米国民へのメッセージである。



米国、対リビア強硬策に転換 First Predator Drone Airstrikes

2011-04-25 | グローバル政治
2011/04/25

カダフィ大佐が率いる長期政権側は、民主化を求めて蜂起した反政府勢力と民衆に対して、徹底的な武力行使によって弾圧を継続している。このため当初優勢を伝えられた反政府勢力は、戦線の膠着によって守勢に追い込まれている。こうした情勢下政府軍による包囲が続く西部港湾都市ミスラタでは、市民の救助に向けた動きが加速している。

リビアに対する空爆の根拠となっている国連安保理決議(1973)は、リビア市民を守るために必要なあらゆる措置を取ることを認めているが、地上軍の派遣は認めていない。このため欧州諸国は対カダフィ政権に対して航空機による攻撃を展開して来た。一方オバマ政権は、思惑があってのことか今回のアラブ諸国の反政府運動支援には消極的な態度をとってきた。

The New York Timesによると、こうした状況に危機感を抱いたクリントン国務長官、ライス国連大使、パワー国家安全保障会議(NSC)上級部長の女性3人が、そろって軍事行動を主張したことが決め手となって米国は、リビアへの積極的介入に転じたという。

本日付けのCNNは、ミスラタの政府軍に対して初めて無人爆撃機Predatorによる爆撃を行ったことをペンタゴンが正式に認めたと報道している。(The United States conducted its first Predator drone airstrikes Saturday afternoon, said Pentagon spokesman.)

ここにいうdroneとは、UAV(Unmanned Aerial Vehicle)と総称される無人誘導飛行体の俗称であり、民生・軍事用ともに使用される。ペンタゴンは、米軍人の戦闘犠牲者の数を減少させるために、いわば戦争のアウトソーシングである民間警備会社を盛んに活用するとともに、この無人飛行体である雄バチ(drone)を多用している。しかしアフガニスタンやパキスタンではこのdrone誤爆による民間人死傷者が発生していることが問題化していることも忘れてはならない。



BPメキシコ湾原油流出事故3兆円訴訟へ Counterclaim, Cross-claim

2011-04-23 | 世界から見た日本
2011-04-23

昨年4月21日に、深海油田開発を行っていたメキシコ湾上の掘削リグが爆発、原油が流出した結果、未曾有の環境汚染を引き起こした責任企業であるBPは、提訴期限でもある発生後ちょうど一年目に当たる21日に、下請企業Halliburton, TransoceanおよびCameron の3社に対して損害賠償を求める民事訴訟を起こした。

BPはすでに177億ドルの費用を支出しており、409億ドル(3.2兆円)の損失引当金を計上済みであるが、今回はそれに関して各社に応分の負担を求めるとともに、追加の損害賠償を求めるものである。特にオイルリグの所有者であり操業を請け負っていたTransocean社には、400億ドルの巨額損害賠償を求めていることが注目を引く。

このTransocean社に出資する三井石油開発は、そのHPで、「今回の事故に関する事実関係・背景について多くの調査が現在も進行中であり、現時点で支払い義務を負うことになるか否かは明らかでないため、BPが求める支払いを留保してきました。また、今後もBPより請求書を受領することが予想されますが、これらの状況が続く間は、BPに対する支払いを留保し続けることになろうと予想しております。」とその見解を表明している。

3社のうちの1社であるCameron は「わが社は、提起された訴訟に対して、原告だけでなく他の被告に対しても訴訟で応じることにした。これには契約上の免責条項の適用を求めることも含まれている」と正面から応じる態度を表明している。(“Additionally, in order to protect ourselves, we, too, have filed cross-claims and counterclaims, including our indemnity claims, against other parties to the litigation.”)他2者も同様の構えである。

Financial Timesは、今回のBPの提訴は、損害賠償の応分の負担を下請企業に求めるもので、企業行動としては当然であるが、深追いすればするほどBPの企業イメージを損ねるものである故、早期に和解に進む公算が高いと見る識者の意見を紹介している。

いずれにせよ環境汚染の損害賠償の負担をいかに担保していくかは、資源・エネルギー企業にとって重大課題であることを示したという点でも今後の訴訟の帰趨には重大な関心を寄せていくべきである。