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日本は米国の圧力を「無視」しているのか Japan ignores US pressure

2009-12-16 | 世界から見た日本
2009年12月16日(水)

鳩山首相は、普天間飛行場を、辺野古のキャンプ・シュワブへ移転するとした計画を修正すると言明し、「沖縄県民の思いに答えるため辺野古ではない地域を模索する」とし、結論を出すに必要な時間は数カ月単位が必要(“My understanding is that several months are likely to be needed.”)との趣旨を記者団に語った。

政府の基本政策閣僚委員会では、「日米で合意した現行計画も排除せず、移設先は与党3党で協議する」方針を確認したが、この発言は、「米側に理解を求めつつ、県外移設を模索したい」との首相の本心を吐露したものである。

この西欧人にはほとんど理解不能の言葉使いの連続を、Financial Timesは、’Japan ignores US pressure over air base’(日本は飛行場移転に関する米国の圧力を無視)との見出しのもと東京特派員の報告を掲載している。

欧米人の理解の結果は、’ignore’(無視する)という一語に集約されているが、これを読めばきっと首相以下は、「無視」などしていないと「誤解」・「誤訳」だと反論するに違いない。

一方、同紙は、国内の反応に関して、野党自民党は、この先送りを、首相の優柔不断とリーダーシップの欠如の表れ(a further sign of Mr Hatoyama’s indecision and lack of leadership)だと断定し、右顧左眄するだけで何も決めないで先送りする首相の政治姿勢(“He is just showing a nice face to everybody and putting things off,”)を非難していると伝えている。

一方、結論が先送りされたことについてもっとも喜んでいる連立与党の福島党首の発言は、 “very glad” that there was no “hasty decision”と報じ、この日米関係の冷却の事態をもっとも心配しているのは、周辺国特に台湾であると報じている。

日本は、第二次世界大戦の終末時に出されたポツダム宣言を、「受諾も拒否もしない」という意味で、「黙殺」という言葉を使った声明を出したのであるが、英訳には無視’ignore’という言葉が使われ、原爆の投下につながったという苦い歴史を持つ。

外交は言葉の戦いである。言葉と論理は相手に伝わってこそ意味を持つ。こうした事態になって首相はオバマ大統領に対して自ら使った”Trust me”という重い言葉を実現する責任がますます生じている。

(注:Financial Timesは、電子版では'neglect'を使い、アジア版の紙面では'resist'を使っている)