世界の動きを英語で追う

世界と日本の最新のできごとを、英語のキーワードを軸にして取り上げます。

トヨタは制裁金支払いで問題解決できたのか Toyota Bashing

2010-04-30 | 世界から見た日本
2010年4月30日(金)

木曜日のFinacial Timesは、トヨタ問題を取り上げながら、日本の企業文化の弱点、特に危機対応の弱さと、「謝って嵐をやりすごす」ことに汲々とする姿勢に切り込む大特集記事を組んだ。概要は次の通りである。

Ray LaHood運輸長官は先週、「トヨタが約16億円の罰金を受け入れたのは、米国政府のトヨタに対する道徳的勝利(a moral victory)である。トヨタが法的義務を遵守しなかった責任を認めたことに満足している」と多少切り口上で(a little formulaic)でコメントを出した。

一方、トヨタ側は、「罰金支払いに合意したのは、ひとえに本件に早くけりを付けるためであり、裁判沙汰になることを避けるためである。決して違法行為を犯したと認めたわけではない。また安全問題に関しては、欠陥を隠蔽したことはない」と宣言した。

このことに関して、「トヨタは昨年11月以来約900万台の車をリコールによって栄光から転落してしまったが、トヨタウォッチャーの目には、「トヨタは必至になって危機回避を図っているだけ」としか見えない」と同紙の論点は鋭い。

同社幹部は、沈黙を破って以来「謝罪を激流のように(a torrent of apologies)」に発してきたが、何が問題の原因なのかについて、また将来いかなる行動を取るのかについては具体的に説明していない。自らのイメージを「悪漢」ではなく「被害者」と作り上げることにまい進しているだけではないかとの批判の払拭に必至になる一方、ただ一人も責任を取って辞職してはいない。

トヨタのこうした態度は、格好のお笑いのネタにされている。米国の夜の深夜人気シリーズ「Late Night with David Letterman」の中で、豊田社長を模した芸人が出てきて、謝罪を始めたものの、突然消費者を、「デブッチョめが、ドンチャン騒ぎやがって。うそのクレームで訴えたり、びくびくした子猫みたいに運転するやつなんて、トヨタの車を買う資格はない」とこき下ろす寸劇をやらせた。

実際のトヨタ幹部の謝罪は、もっと微妙な言い回しであるが、常に誤りを犯すことを極度に恐れたものになっている。豊田社長も、謝罪はしているが、言っていることは、「トヨタが多くの方にご心配をかけたことは申し訳ない」ということであり、「不良車を製造したこと」に対してではない。

「トヨタには、間違ったことをしたという認識はない。その巨大な会社のサイズ、社内官僚制度、自社技術に対する過信で、モノが見えなくなっている」との日本人コンサルタントの言葉を紹介している。その典型は、2月にプリウスのブレーキの利きが悪いという問題に対して、「運転者の気のせい」だと消費者に責任転嫁をしようとしたことである。

そして、翌月トヨタは、消費者にへりくだる作戦に出てきたが、「将来問題を繰り返さないために組織変革を行い、安全な車の製造にまい進し、消費者には安全技術と安全運転に関する情報を出して行きたい」との具体的には何も語っていない説明に終始した。

日本の会社では、外部とのコミュニケーションすなわちPRが軽視されてきた。広報の担当には専門家はいなくて、単に人事異動で回ってくる人たちが一定期間だけその業務を担当している。そこには危機管理、緊急時対応という概念に裏打ちされた欧米の会社では当然とされる機能がない。

日本人はすぐ謝るが、本当に責任を取るという意識が希薄である。このことに関して「トヨタショック」の著者井上久夫氏がFinancial Timesの取材に応じている。「トヨタのような日本の会社では、保守的で官僚的な整合性が求められる。危機を予測して問題点を指摘する人は疎んじられる」。「かつては反対意見も尊重されたが、今では“仲良くやる”調整型が幹部の資格になってしまった」

こんな状態であるから、問題が深刻化する中で、豊田社長は今年1月にダボス会議に嬉々として出かけたことや、同氏が米国でMBAを取っており、輸出比率が70%を超える会社のCEOを務めながらTVインタビューで英語でやって欲しいといわれて狼狽したことなどの現象になって現れると指摘する。

また、日本ではトヨタも含めて今回の一連の米国側の処断を、米国の日本たたき、トヨタつぶしの陰謀と片付けたいとする世論が蔓延しつつある。(the most popular conspiracy theories)。オバマ大統領が、トヨタ問題を使って日本を追い詰めることで選挙民の歓心を買っているという説明も出ている。

トヨタに欠けているのは、自己に対する責任ある態度表明である。米国の消費者は、問題あったことを認めすぐに徹底的な解決に乗り出すことを態度で示す(a “we’ll-fix-it” attitude)ことを評価する。

遅まきながらトヨタも危機対応で改善の兆しを見せ始めている。Consumer Report誌が、危険を指摘したLexus GX460SUVを直ちにリコールしたことにそれが現れている。しかし「最近はずいぶん良くなったが、トヨタの帳尻はまだまだ毎日ブランドの毀損している額のほうが多いといわねばならない」との論評を紹介して記事を結んでいる。




英国ブラウン首相失言、労働党総選挙で窮地に Brown Toast

2010-04-29 | グローバル政治
2010年4月29日(木)

5月6日に総選挙を控えて、3党が激しく舌戦を繰り広げている英国で、ランカシャー州を遊説中のブラウン首相がとんでもない失態を演じてしまった。

労働党支持の66歳の婦人が、たまたまパンを買いに出てきたところに、ブラウン首相とばったり会って、路上の会話のやり取りとなった。女性は、移民問題などで労働党の政策を問いただしたのであるが、終始笑顔で対応してもらって満足な出会いとなったはずであった。

しかし、直後車に乗り込んだ首相は、側近に向かって「あれはひどかった(a disaster)。ウーン、ひどい話だ。頑迷固陋の女め(a sort of bigoted woman)。昔は労働党に投票していたのにと、言いおったよ。」などと、口汚くののしったのである。

ところが、首相には背広の襟にはワイヤレスマイクが、onのまま付いていたのである。首相の言ったことはすべてTV局に捕捉され、BBCを含む各局がその全容を、水曜日夜のニュースで流した。日本時間今朝放映されたBBC放送では、聞き取りにくいところもあるので、首相の罵詈雑言の全文が文字化されて画面に映し出されていた。

首相は、その後のマンチェスターでのラジオ放送収録時に、自分の声の記録を聞かされて、前に倒れこむようにして頭を抱え込むという周章狼狽の体をさらし、その様がまたTV放映されてしまった。

首相は謝罪の言葉を述べた後、件の女性宅を訪問し、直接謝罪をしたあと「誤解は解いていただいた」と強弁したが、時はすでに遅かった。

この醜態によって、保守党と自由民主党の野党両党に追い上げられてすでに勝算が立たない労働党には、いわば致命傷となる最悪の事態に追い込まれた。

あまりのコメディめいた展開に、タブロイド各紙も飛びついて報道している。特に首相の名前Brown(茶色)が災いして駄洒落満載の記事で読者を煽っている。

最大のタブロイド紙であるThe Sunを見てみよう。

まず見出し。”Popped out for a loaf, she came back with BROWN TOAST.” 「パンを買いに出た彼女、茶色に焦げたトーストを持って帰る羽目に」となっている。brownには、うんざりしたという意味がある。toastには、ドジという意味がある。しいて訳すと「パンを買いに出たら、ドジ首相のおかげで、焦げたトーストパンをもって帰る羽目になっちまったよ」

そして、首相が「自分の声」の録音を聞くことになった際のことを、The Sunは、”And he soon realised he was deep in the brown stuff.”と表現している。

英語人は、brownと聞くと汚い話で恐縮だが、「ウンチ」を連想する。したがってthe brown stuff で、the shitの婉曲表現としている。しいて訳すと、「しばらくしてブラウン首相は、ブラウン色のものにまみれてしまったことに気がつくことになった」

労働党が惨敗したら、このエピソードは長く英国政治史に、最悪のジョークとして記録されるであろう。



ゴールドマン幹部議会で、訴追全面否定 A Combative Hearing

2010-04-28 | グローバル企業
2010年4月28日(水)

全世界が注目してきたゴールドマン幹部と社員を召還した上院委員会の宣誓証言が予定通り、火曜日に行われた。

これを受けたNYSEの同行株はわずかに上げた。この議会証言内容は今月に入りほとんどがSECとゴールドマンから開示されてきたので、市場はそれを十分織り込んできたこともその理由のひとつである。

一方、金融株全般とダウ平均株価は、S&Pがギリシャとポルトガルの長期・短期債務に関する格付けを大幅に引き下げ、格付け方向の見通し(outlook)を、ネガティブとしたことを嫌気して大幅安となった。通貨では、ユーロはPIGS諸国のギリシャとポルトガルの国債利回りが上昇し、価格を下げたことを受けて、大幅に下落、円は相対的に上昇した。

議会証言内容は、すでに本欄でも取り上げてきた内容どおりで、新味はなかったが、しかし質問に立った議員の舌鋒は鋭く、The Wall Street Journalは、その様を、「戦闘的聴聞会(a combative hearing)」と表現し、議員たちの糾弾対象は、ゴールドマンが「いんちきカジノ(a crooked casino)で「客をだました(deceiving customes)」こと」であると総括した。

受けてたったゴールドマン側は、首尾一貫して、「まったく違法行為(wrongdoing)はなかった」との趣旨で自己弁護を行った。「破綻した金融商品CDOを組成した過程でも、自らその商品の暴落を予想して空売りを行ったことも、なんら糾弾されるべき行動はなかった」との趣旨である。

注目すべきは、「自社の利益を守ることが株主への忠実な行為であり、その義務からの経営陣の指示に従業員が従ったまで」、「空売りは自社のポジションから来る巨大なリスク回避のための必要な手段」、「リスクを張る投資を誘引して市場活性化を図るために空売りは当然の手段」との主張を、ゴールドマンが繰り返していることである。

顧客に破綻が確実化している金融商品を買わせ、自らはその商品の暴落を見越して逆張りに走ったことを肯定し、破綻確実な住宅金融証券をかき集めてそれをまとめた仕組み証券を組成したことについては、意図的ではなかったと否定したのである。

金融商品を売る主体が、自らの資金を投入して逆張りの空売りに走ることを自社の利益のためと主張することの正当性や、客先にその商品が「第三者の中立アドバイザが、組成したもの」として売り込んだことの客観性の証明が、これから問われていく。

ところで、今回同行幹部のe-mailがSECによって多数公開されて物議をかもしているが、その中でも最も有名になったトレーダー”Fabulous Fab”の証言台での発言は次のようなものであった。

"These emails were personal emails that I deeply regret. They reflect very bad on the firm and on myself."

SECの今後の行動と、オバマ金融改革法案の成否に注目しよう。

ギリシャの債務繰延とユーロ圏追放が論議に Expel from Euro

2010-04-27 | グローバル経済
2010年4月27日(火)

ギリシャ救済が大詰めを迎えているが、EU内でも最大の救済資金拠出国となるドイツのメルケル首相が、ドイツがギリシャ支援方向であることをメディアに明らかにした。

これをBBCは「メルケル首相は、ギリシャが一定の条件(certain conditions)を実行すれば、援助を実行するとの立場」と報じ、一方The New York Timesは、「メルケル首相は、ギリシャが緊縮財政政策をより強化することを遵守することを強く求めた」ことを強調し、表現に差が出ている。

それを反映して、NYTは、そのトップ記事の見出しを「ギリシャ債務問題への信認またもや低下」として、ギリシャ国債がさらに値を崩し新安値となったことと、ユーロも対ドル、対ポンドで安値となったことを報じた。

現在火急の問題としてIMFとEUがギリシャに対する約6兆円の緊急協調援助を協議中であるが、それによって「5月危機」を乗り切れても、いずれにせよ同国の巨額な対外債務返済はその先は無理とする見方が有力となってきたのである。

投資家の信認低下によって、月曜日に10年物国債は9.5%まで上昇しており、こうした高利借入コストの上昇のもとでは、ギリシャが「2012年までに財政再建を果たせねばならない」という条件の実行は、GDPの115%に及ぶ債務返済に苦しむなかでは無理だろうとの反応が出始めた。

その事態を、NYの市場関係者は、「市場は、債務リスケを織り込み始めた」(“The market is now pricing in a debt rescheduling,”)と、NYTに語っている。

大幅な債務カット(deep haircuts)と、返済繰り延べ(rescheduling)は、これまでも中進国や最貧国では常態化してきたが、EU加盟国で通貨ユーロに参加している国としては、欧州通貨同盟の歴史上初めての事態である。

EU加盟国の中では、ギリシャにユーロ通貨を放棄させるべしとの議論も出てきたが、メルケル首相は、月曜日記者団に、「ギリシャのユーロ圏追放はない」と言下に否定した(rejected the idea of expelling Greece from the eurozone)。

ポルトガル、アイルランド、スペインとギリシャはPIGSと不名誉なあだ名で一まとめに呼ばれているが、万一ギリシャがユーロ内にとどまれなければ、影響はこれらの国にも波及して行くのは不可避である。

月曜日ポルトガル、アイルランドの国債の利率もギリシャとともに上昇した。


ゴールドマンCEO議会証言 Frankenstein Against His Inventor

2010-04-26 | グローバル企業
2010年4月26日(月)

今週火曜日にゴールドマン・サックスのCEO、Lloyd Blankfein氏が、関与した部下とともにSECが訴追している詐欺行為に関して、議会の小委員会で証言に立つ。

厳しい査問が待ち受けていることは間違いがないので、この査問を乗り切れるか否かがゴールドマンの将来を決めるといっても過言ではない。

ゴールドマンは、この議会委員会への召喚に先立ち、すでにSECが一部を公開したゴールドマン社員のメールの全容を、自ら公開した

その中に、SECから会社とともに訴追されて、第一のメールですでに有名になった31歳のトレーダーFabrice Tourr氏の第二の問題メールも含まれている。

第一のメールでは、「市場は崩壊している。生き残るのは自分だけだ」と、自らの優秀さを誇示していたのだが、今回の第二のメールは、同氏が、交際を求めていた女性に送ったものである。

「売りまくった証券は、フランケンシュタインみたいに、考えだした僕に立ち向かってきた。1ヶ月前に100ドルの値がついていたのに、いまや93ドルになった。投資の総額が数十億ドルになっているから、この差額は巨額に膨らんでいる」と、仕組んだ証券の暴落で巨利を得たことにわれながら驚きながら自慢しているのだ。

ゴールドマンは、複雑な仕組みの証券を、市場が上向きのときに売り出したのであるが、市場の流れが変わったところで、暴落を予想して空売りに全力を挙げた。仕組まれた証券の中身を知らされないままゴールドマンから証券を買った投資家は大損をしたことは言うまでもない。

ゴールドマンの幹部は、2007年のこの事態の際、大儲けに欣喜雀躍した言葉を書き連ねたメールを交換していたのである。こうしたメールをあえて公開に踏み切ったゴールドマンであるが、これによると2007年には、CEO自身も、「空売りで儲けたことを誇る」メールを出していることが判明した。

ゴールドマンのスポークスマンは、「e-mailの中身はお恥ずかしい限りであるが、わが銀行が不法行為を働いたという証拠ではない。2007年に1200億円も損失を出している」と強く自己弁護を行っている。

今週は、月曜日にSECが本件に関して記者会見を開いて、翌日の議会証言についての情報の開示を行うが、この月曜日には、オバマ大統領が推進する金融改革法案が、上院での投票に掛けられる。そのタイミング設定から考えると、今回のゴールドマンに対するSECへの訴追や、議会への召喚はこれに合わせた政治的なショーとの一面を否定できない。

ゴールドマンCEOの議会証言の行方が大いに注目される。



ギリシャ債務破綻、最後の審判は近いか The Time Has Come

2010-04-25 | グローバル経済
2010年4月25日(日)

ギリシャは金曜日にEUとIMFに対して、対外債務の危機回避のための支援を要請した。

しかし、この「ギリシャの公式支援要請」の報道を受けた金融市場では、ギリシャ国債の価格は、逆に下がってしまい、6兆円の効果に対する市場の懐疑があらわになった。いまやギリシャ国債の金利は、10年物で9%近くとなって、ドイツ国債の3倍の水準となっている。

市場は早くから、ギリシャ政府が、圧力に屈して恥を忍んでも「救済資金要請」に出ることを予測していたので、これからは、今回要請されている約6兆円の支援が現実にいつ拠出されるかに関心が移ったといえる。

また拠出されても,すなわち債務破綻を先送りする効果しかないのではないかという見方も根強い。これを金融界では、「最後の審判(The day of reckoning)」のその場しのぎと表現している。

さらに、ギリシャに対する信頼性を落としているのは、EUの統計部局が、「ギリシャの国家財政赤字の額は、公式発表の額を大きく上回っている」と、前日の木曜日に発表していたことであり、これもあって対ギリシャ投融資の市場心理はいっそう悪くなっている。

ギリシャは、最初の「最後の審判」として、5月19日に約1兆円の国債の償還を迎える。このために先に触れた合計約6兆円の協調融資(EU300億ユーロ、IMF150億ユーロ)の緊急拠出が要請されたのである。

ギリシャのパパンドレウ首相は、「運命のときは来た(The time has come)。このカネを必要とするのはギリシャにとって火急の問題」と金曜日に国民に訴えた。

一方、今回の緊急資金の注入については、ギリシャの蔵相から「ワン・センテンスの短い要請」がEUとIMFに出された。それについて、同蔵相は期限どおりの入金には疑問を抱いていないと記者会見で大見得を切っている。

The Wall Street Journalは、EU側も、こと本件に関しては「いつもの官僚主義的のろのろとした対応」はないだろうと、関係者の言葉を総括している。

いずれにしても、ギリシャはこの「5月危機」は乗り切るかも知れないが、そのあと2012年までに財政赤字を縮小することをEUにコミットさせられている。IMFも厳しい財政規律の導入を求めていくことになる。

IMFは、ギリシャが約束を守らないときは、拠出金を停止するのがルールとなっている。そしてこうした対外コミット実行は、常に国内政治との軋轢を呼ぶのは、累積債務国の「いつも通る道」である。

またEUも、IMFも、市場も「この6兆円の緊急注入くらいでは、ギリシャの問題の解決にならない」と考えていることでは共通している。


ドイツで「ゴールドマンに非難ゴウゴウ」 Goldfinger of Goldman

2010-04-23 | グローバル企業
2010年4月23日(木)

ゴールドマンがドイツに初めて投資銀行として乗り込んだのは1990年である。

本拠地を金融センターのフランクフルトに置き強力なネットワークを同国に築き上げ、大企業と政府・自治体との関係は、金融・証券業界の中で追随を許さないところまで業績を拡大してきた。銀行の規模では、ドイツ国内でドイツ銀行についで2位であるが、外国資本の銀行ではトップの地位にある。

The Wall Street Journalは、「こうした盛名を馳せてきた同社も、SECに詐欺の民事訴追を受けたことが引き金になって、いまや経済界では悪者として集中砲火を受けている」とドイツ発の記事で伝えている。

ゴールドマンがSECに訴追された「詐欺事件」の被害者の中に、IKBドイツ工業銀行が含まれているが、同銀行はリーマンショック前後の金融危機で倒産し、ドイツ政府は救済資金として1.3兆円を救出せざるを得なかったということが背景にある。ドイツ人の同行に対する国民感情へのその影響は大きい。

そして、おり悪くドイツで同銀行はベルリン市と紛争を起こしている最中でもあったので、同行のドイツ部隊は頭を抱え込んでいるという。

ベルリン市の持つ公営住宅会社のIPOを引き受ける投資顧問となっていた「ゴールドマンが、住宅の売却に絡んだ取引を有利にするためにベルリン市を、弁護士を使って恫喝した」と、市側が同社を厳しく非難し、市の幹部は、「ゴールドマンには、避けられるなら二度と仕事を頼まない」とまで公言している。

こうした事件も含めて、業界を押さえてきたゴールドマンの商法は強引なことはつとに有名であった。

保守的で「コンセンサスと譲歩」を重んじる国においては、何かと摩擦が絶えなかったところへ、SECによる訴追があったため、火に油を注いだ格好となった。同紙は「くすぶってきた不満が、声高のゴールドマンたたき」になった(Quiet grumbling is turning into a vocal battering)と表現している。

最近の重要な動きとしては、金融界に対する規制論者としても有名なメルケル首相の率いるドイツ政府は、ゴールドマンが関与する契約をすべて調査することを関係機関に命じた。公的金融機関であるBayernLB,は、SEC訴追を理由にして、ゴールドマンに出していた顧問契約を撤回するという事態も発生している。

さてゴールドマンのドイツの最高幹部はAlexander Dibelius氏であるが、同氏の率いる部隊への評判はすこぶる悪いとThe Wall Street Journalが報道している。同行は、投資顧問をやりながら、一方で顧問先と競合する入札に参加してくるのは日常茶飯事であるという。利益相反の批判に対しては、「負け組みにはそんな問題も起きないということだ」(Only those who don't win any business have no potential conflicts)と答えるのが同氏の口癖であったという。

こうした同氏にドイツのメディアが付けたあだ名は、「ゴールドフィンガー」である。

彼の指揮した仕事でもっとも名高いのは、従業員7万人規模の小売・旅行業のArcandor AGが、2009年に倒産に至る過程の取引である。同行がArcandorから買収したデパート店舗を高値でリースバックし、採算割れを起こさせたのが直接の原因であったという。ゴールドマンは、このケースでは投資顧問・投資家・不動産業者として関与していたというのであるから、利益の相反行為もはなはだしいと非難を受けている。

一方、ゴールドマン関係者は「政治的にスケープゴートにされて、無様なところをさらして(with egg on our face)しまった。今は、ゴールドマンを悪者(the villain)にしておけば安全地帯(no downside)にいられるわけだから不公平もはなはだしいといって、地団駄を踏んでいる」」との趣旨で記事は結ばれている。


オバマ金融規制規制法案とゴールドマン 訴追  Dark Market

2010-04-22 | グローバル企業
2010年4月22日(水)

米国議会上院の金融改革を審議していたパネルが、金融システムが万一混乱しても(meltdown)米国経済への影響を最小限にすることを目指し、また今回の危機の際のように納税者の金で破綻金融金融機関を救済しなければならないという事態を回避することを意図する法案を承認した。

この法案は一般にはわかりにくく、また不正取引の温床とされているデリバティブ取引、それは 民主党議員の言葉を借りれば、「野放図で闇の市場(a currently unregulated, dark market)」ということになるが、それに対する規制をめざすものである。

上院の有力議員はこの法案を、すでに上院銀行委員会で承認されている金融規制強化法案と合体させて、上院可決に持ち込みたいとしている、とCNNが速報している。

金融機関の規制に情熱を傾けるオバマ大統領は、木曜日にNYに向かうことになっている。この法案の通過は、まさに共和党がオバマ大統領の規制強化策に反対するよすがとしてきた『厚い壁』に走った最初の亀裂であるとThe New York Timesが論評している。

上院共和党は、この動きを「民主党に譲歩させた」といっているし、民主党は「共和党はただただ、国民の反発を恐れて早々と、矛を収めた」といっている。

いずれにしてもこのところ米国政界を支配してきた二大政党間の対立激化は一応の軟着陸を見たともいえる。ただ、両党間でどのような裏での取引があったのかは公にされていないし、今後二つの法案がどのように一本化されるかは予断を許さない。

ただいえることは、先週金曜日に、本欄でも継続して取り上げたゴールドマン・サックスをSECが詐欺のかどで訴追したことが、この法案承認に大きく影響を与えたことは間違いがない。

そして今週発表になったゴールドマンとシティバンクが巨額の黒字決算を発表したことも無関係ではない。あれだけウォールストリートの代弁者といわれてきた共和党が、ガラッと態度を変えたのである。

このパネルが承認した法案には、金融システムへの脅威に対する「早期警戒警報」(early warning)と設置と、5兆円の民間資金を基にした破綻金融機関救済ファンドの設置が含まれている。もし金融機関が破綻した場合、たとえば今回の金融危機でAIGがデリバティブ取引で破綻を来たしたような例を防止するために為替レートのスワップ取引は、外為市場を介すること、第三者の担保があることを条件つけることになる。

オバマ大統領は、救済資金に民間金融機関に拠出を求めることは、政府の規制力をそぐものとして反対しているので、今後共和党との修正案作成に当たっては、このあたりが駆け引きの焦点になろうと、NYTは予測している。

ゴールドマンサックスの訴追は、ある意味で、オバマ大統領とSECの阿吽の呼吸によって行われたと見るのはあながち間違ってはいない。金融改革が叫びはじめられたのは、2007年の中半であるから、すでに3年が経過した。

そして英国では5月6日の総選挙を控えて、ゴールドマンたたきが激しい。ドイツでも、メルケル首相も強い姿勢で臨んでいる。日本は、もっと政権の存続にかかわる別の問題で忙しい。



ゴールドマン訴追、『準主役』Paulson猛反撃 A Wells Notice

2010-04-21 | グローバル企業
2010年4月21日(水) 

今回のSECによるゴールドマンサックスとその社員1名に対する詐欺容疑での訴追に関して、重大な役割を果たしたとされているが、訴追に値する問題行動(any wrongdoing)はおこなっていないとされている、John Paulson氏が率いるヘッジファンドが、投資解約期限を控えて発言を始めた。

ファンドへの投資家の中には、「問題行動があるならば」、「将来司直の手が入るならば」投資を引き上げるとするところが相次いでいるためである。

まず、投資家に対しては「現在政治的、法的な渦中(political and legal vortex)にいるが、必ずや無傷で(unscathed)で復帰する」と宣言した上で、今週月曜日に100を越す「ゴールドマン訴追以降資金を引き上げる可能性のある」顧客に電話会議を行い沈静化を図ったとThe Wall Street Journalが伝えている。

しかし、ポールソン氏の投資対象の株価は、「訴訟発表」以来軒並み下げている。またポールソン氏の投資対象に影響が出るとされている、カナダの投資ファンドPropel Multi-Strategy Fundの上場が延期されるという事態も出ている。

月曜日の夜の電話会議で、投資家の一人がポールソン氏に、「ファンドの誰かが、いわゆるWell’s Notice(SECの訴追対象への事前通告書)を受けとっているか」と質問したところ同氏は否定し、「本件はわれわれから投資家が逃げるようなものではない(distraction)。この騒動もそのうち鎮静化するはず」と回答したという。

投資家の間では、海外の規制機関も含めてさらに捜査が拡大することをに対する恐れが高まっている。そうした場合に備えて出資金を引き上げたいとの慎重姿勢をとろうとするのもうなずけるところである。

「電話を掛けてくる人の中にはまるで捜査官のような尋問口調の人もいる。しかし大体は、ファンドには協力的な態度で臨んでくれている。ポールソン氏に問題がなかったと確信している。出口に押し寄せるということではない」とのいくつかの内部のコメントが紹介されている。

ポールソン氏は火曜日に至って、投資家に対して書簡を送り、「2007年にはわれわれは、経験の深い住宅ローンへの投資家とはみなされていなかった。市場の優秀な投資家の大勢はわれわれに逆張りをしようというムードであった」と説明している。

投資家の方でも、「ポールソン氏の手法は、投資家が解約を図ってもそれが、ファンドの価格を押し下げに直結するようなものではなかった」と語っているという。

「ゴールドマンとの取引では、住宅ローンに関しては、空売りポジションを張ったが、こうした取引では買い持ちか、空売りかいずれかのポジションを持つのは当たり前。このファンドを買った投資家は格付け会社の各付けを鵜呑みにしたので、勉強不足であったということだ」と冷静に説明したという。

ポールソンのファンドの投資家が6月30日までに投資を引き上げるか否かの決定期限は金曜日に迫っている。同ファンドの償還請求期限は2ヶ月前と設定されていて、年4回決定の機会が与えられている。

ポールソン社と同じく2007年に住宅ローンベースのファンドを組成したMagnetar Capital LLCも投資家の動揺への対応に追われている。同ファンドには7000億円の投資金が投入されている。同ファンドの責任者は、「個々の投資家のカネが、どのCDOに投入されていたかは把握していない」と管理手法を説明している。

The Wall Street Journalは、「Magnet Capitalに対する捜査は続行されていて、それが顧客投資家にどう影響するかはまだわからない。同社の挙動については、2008年1月以来取り上げてきた。今週になって同ファンドは、『われわれの住宅ローンをベースにしたCDOの組成に当たっての判断は、統計モデルによる相場予想に立脚するものであって、住宅ローン市場が崩壊すると読んだわけではない』と説明している」という解説で記事を結んでいる。


「ゴールドマン詐欺」にファンドの黒幕 The Worst of The Worst

2010-04-20 | グローバル経済
2010年4月20日(火)


本日のFinancial Times第一面のトップは、「AIG、ゴールドマンに損害賠償訴訟検討中」との記事である。そして同紙は、これが引き金となってゴールドマンに対する損害賠償請求が多発するのではないかと予測している。

昨年経営破綻後米国政府管理会社となっているAIGが、先週米国証券取引委員会(SEC)が詐欺で訴追したゴールドマンを相手取って「CDO取引関連で2000億円の損失補償を蒙った」として、SECへの告訴と損害賠償訴訟を検討しているという。

AIGの言い分によれば、昨年AIGとの間に結ばれていた6000億円相当のCDO損失補償保険契約のうち3000億円分の解約に合意したが、その時に、ゴールドマンが2000億円相当のCDOを担保として差し出すことが条件となっていた。その後このCDOが「紙くず同然」になった結果、AIGに2000億円の損害が発生したというものである。

さて、米国の雑誌Timeは、ゴールドマン訴追の裏で、まさに「破綻証券」を仕組んだファンドの挙動を解説し論評している。

「SECがゴールドマンを訴追した。この裏には故意に破綻確実な住宅ローンをベースにした証券(CDO)を仕組んだファンドとその協力者がいた。その中心にいるのが、ファンドを率いるPaulson氏」。

「同氏は、必ず支払い不能に陥ると予想される住宅ローンを自ら選び出した上で、それを束にして新たにCDOを発行するようにゴールドマンに働きかけた。自らはそのCDOを空売りしておいて、予定通りCDOが紙くずになったとき1000億円以上の巨利を手にした」

同誌は、Paulson氏の手口をさらに紹介している。

「住宅ローンも良質なものも焦げ付きの確率の高いものもある。その中から、彼は焦げ付き確実なローン、いわば「クソ」(the worst of the worst)を集めることに専心した。ここに例のみずからをFabulous Fabと呼ぶFabrice Tourre氏が登場。いわば「ミソ」なしの「クソ」だけのCDOをPaulson氏のために仕組んだ」。

「この証券の売出しにはACA Capital社が選ばれた。ゴールドマンは投資家に、『そのCDOの中味はACAが選んだ』と説明した。住宅関連証券投資で価格下落に賭けて儲けきたことで有名なPaulsonでは、買手が付かないからだった。予定通り住宅バブルは破裂し、CDOは暴落、投資家たちには1000億円の損失が残った」。

Timeはなおも説明を続ける。「こうした仕組みで儲けたのはゴールドマンだけに限らない。Merrill Lynch、Citigroup、JPMorgan ChaseもシカゴのヘッジファンドMagnetarと組んで同様取引をしていた。またGeorge Soros氏もCDOへの逆張りで巨利を得たとされている」

ゴールドマンは、SECの訴追に猛反撃していることは、すでに本欄で取り上げたが、Time誌によれば、「Paulson氏も、『このCDOの販売には一切タッチしていない。ゴールドマンの販売部隊が自分でやったこと。それにS&Pや、Moody’sもこのCDOにトリプルAの格付けを与えていたのだ』と、詐欺的な売り込みへの関与と責任を否定している」という。


「2008年末に有名ファンドの代表が議会証言に呼ばれたときは、銀行・証券界の幹部が徹底的に追求されたのとは対照的に、いわば英雄的に扱われた。しかし時代は変わった。今度ヘッジファンドが議会証言台に立つときはただではすまないだろう(Praise will not be on the agenda)」

ゴールドマン詐欺訴追の波紋、欧州に伝播 Moral Bankruptcy

2010-04-19 | グローバル経済
2010年4月19日(月)

米国の証券取引委員会(SEC)がゴールドマンサックス(Goldman Sachs)を、詐欺罪で訴追したことが、欧州にも大きな波紋を引き起こしていることを、Financial Tmesが取り上げている。

5月6日に総選挙を控えて舌戦中のブラウン英国首相は、日曜日に「SECが暴き出した事実は、ゴールドマンの『道徳的破産』(moral bankruptcy)であり、ショックを受けた。これは史上最悪のケースというべきものなのであろう。」と強く非難した。

SECがゴールドマンと社員一名を訴追したのであるが、最も重要な訴因は、「2007年にゴールドマンが売り出した仕組み証券CDOを後で組成していたのがヘッジファンドのPaulson社であった。同社はその証券の価格崩壊を予想して逆張りで1000億円を儲けた。しかしゴールドマンはPaulson社の組成になる証券であることを投資家に説明しなかったことが詐欺罪を構成する」というもの。

英国政府のみならずドイツ政府も、法的手段をとることを明らかにしている。特にドイツ政府は、この件の最初の被害者3社のうちのひとつがドイツの銀行IKBであり、米国の住宅バブル崩壊したときに150億円の損失を蒙って倒産したこともあり、SECの訴追を重く見ている。

SECは、オバマ大統領の金融機関に対する規制強化政策や、議会の金融界に対するきわめて厳しい追求が続いていることを受けて、不退転の姿勢で本件に臨んでいる。一方、ゴールドマンは、徹底抗戦の構えである。

それは、本件が9ヶ月前にSECがゴールドマンに訴追前提の調査を通告していたにもかかわらず、和解合意にいたらず、法廷に持ち出されるという異例の事態となったことが雄弁に物語っている。

ゴールドマン側は、CEOのLloyd Blankfein氏の辞任はないとコメントを出しているが、幹部の一人が、「SECが会社と社員を、事前の警告無しに、訴追に踏み切ったことに驚愕(stunned)している」と, Financial Timesに語っている。

Lloyd Blankfein氏は、4月27日に上院の常設委員会に召還されている。すでに数ヶ月にわたって複数のゴールドマン関係者が、世界的な金融システムの崩壊(the global financial meltdown)を誘発した原因を追求している議会のパネルで宣誓証言を行ってきており、いよいよその調査も最終段階にはいる。

今回の金融崩壊への追及の焦点は、投資家への詐欺に近い裏切り、個人的な報酬を求めての放縦な行動、そしてそれを座視して機能できなかった規制機関のあり方に絞られてきた。そして被告席にいるのは、CDOとCDSという二つの金融商品でもある。



ゴールドマン・サックスを詐欺でSECが訴追 Fabulous Fab

2010-04-17 | グローバル企業
2010年4月17日(土)

SECがGoldman Sachsを詐欺容疑で訴追したことから、金曜日のNY株式市場で同社株は10%以上値を下げ、これを嫌気した市場も大幅安となった。

米国証券取引委員会(SEC)は、金曜日Goldman Sachsと、同社の当時の担当副社長Fabrice Tourreを、サブプライム住宅ローンをベースとした債務担保証券CDO(Collateralized Debt Obligations)を、「破綻することを仕組んだ上で」投資家に十分な情報を提供せずに販売して、10億ドルの損失を与えたとして、詐欺に関する民事訴訟(a civil suit)を裁判所に提起した。

SECの訴状を要約すれば、「Goldman Sachsは、必ず破綻するように極秘に仕組んだ証券を売りつけた。ヘッジファンドPauson社が仕組んだものにも関わらず、あたかも公平な第三者が公正に選択した信用度の高い住宅ローンをベースとするものであると思わせたことが詐欺に相当する」ということになる。

Paulson社は、サブプライムローンの破綻を予想して、空売りのポジションを持っていたので1000億円の利益を得、一方投資家は1000億円の損失を蒙り、Goldman Sachsは、15億円の手数料収入を得たと、SECは算定している。

2007年に売り出されたCDO、ABACUS 2007-AC1は9ヶ月間で組み込まれた債務の99%が信用格付けがひき下げられて実質的に破綻した。

会社とともに訴追されたTourreは、現在31歳。フランスのEcole Centrale Parisで学士号を取得後、Stanford Universityで、オペレーションズ・リサーチで修士号を取得。2001年にGoldman Sachsに入社して、仕組み証券の担当副社長となったと、その経歴をThe Wall Street Journalが伝えている。

同氏は、混乱の中で友人に次のようなメールを送っていたとSECが公表している。

「この建物全体は今にも崩壊する。生き残る可能性のあるのはただ一人、あのすばらしいFabulous Fab(rice Tourre)様一人。この複雑怪奇にして(complex)、人の金で組んだ(highly leveraged)、不可思議な取引(exotic trades)は、彼の生み出したもの。彼にさえこの怪物の正体はよくわからんときたもんだ。(without necessarily understanding all of the implications of those monstruosities(まま)!!!!")」

このメールほど、Wall Streetで、サブプライムローンの崩壊をきっかけとする金融危機を作りだしたカネの亡者どもの本音を活写しているものはない。崩壊感覚を味わいながら、自分の名前で駄洒落を飛ばし、フランス人特有のmonstrosityをミススペルしてところも笑える。

Goldman Sachsは、自らも90億円の損失を蒙っており、「SECの訴追は事実無根」と公式に反論をしている。不思議なことに関与したヘッジファンドPaulson社は訴追を免れているが、SECの説明を読むと、「投資家にいかなる説明(representation)をしていない)として、詐欺行為の関与者として認定しないということらしい。

Goldman Sachsは、もうひとつの金融商品CDSで、ギリシャという国家の財政を破綻に追いやったとして、一身に非難を浴びている最中である(2月26日の本欄記事参照)。今回CDOに関する詐欺罪での訴追を受けたことは、リーマンショック後の唯一の生き残り投資銀行にも、いよいよ「最後の審判」が下りるということかもしれない。

鳩山首相、核サミット出席元首通信簿ビリ Increasingly Loopy

2010-04-16 | 世界から見た日本
2010年4月16日(金)

米国のリベラル派有力紙The Washington Postのコラムが、今週ワシントンで開催された核安全保障サミットへ参加した36人の国家元首の「通信簿」をつけた。成績の判定基準は、オバマ大統領と首脳会談が持てたかどうか、どれだけの時間を「占有」したかである。

まず、胡錦涛国家主席はオバマ大統領との会談が90分にも及んだことから文句のない優勝であるとした。

そしてそれにつけたコメントは「それにつけてもオバマ大統領のお辞儀はどうなっているんだ。写真を見てくれ(胡主席はふんぞり返り、オバマ大統領は深く腰を追って握手している)大統領は生まれつき御辞儀がうまいんだな。胡主席が米国経済を牛耳っているし。本当のところ」とからかっている。

そして、このお祭り騒ぎ(the extravaganza)のビリ(the biggest loser)は,わが鳩山首相との御託宣である。

コラム氏はこの間の事情を、「ツキに見放され、オバマ政権の内部の評では、ますますトチ狂っている(increasingly loopy)とされている」鳩山首相への残念賞はメインコースとデザートの間の非公式会談だったようだ、と笑いのめしている。

「この金持ちの息子は、その両国間の問題処理で見せるいい加減さ(unreliability)で、大統領官邸を驚かせてきたが、それが元で日米間にヒビが入った。特に普天間問題がそれである」と解説している。

5月までに解決させるといいながら何も起こっていない現状に対して、「由紀夫ちゃん(Yukio)、お仲間のはずだだったよね。分かってる?金のかかってるアメリカの核の傘を差させてあげたでしょ。ずいぶん貯金できたでしょ。その上、こっちはトヨタの車やなんか買ってあげているよね」とからかっている。

そして、「誰がサミットで鳩山君(Hatoyama)にすこし優しくしてあげたか?胡主席が、鳩山首相に「私的」に会合したのである」と結んでいる。

これに対して平野博文官房長官が、15日午後の記者会見で、「一国の首脳に対して、いささか非礼な面があるのではないか」と不快感を示した。

しかし、この記事は胡主席の名前(Hu)を誰のwhoに引っかけるなど駄洒落がいっぱいで、上記に訳したようにオバマ大統領まで「笑い飛ばしている」ものである。

いわば平野長官は、「裸の王様が、裸だと幼児に指摘されて怒った」ようなものである。一国の首相に非礼なことばだけではなく、まさに非礼な振る舞いで侮辱しているのは、民主党幹部や連立与党幹部のほうではないだろうか。日本の週刊誌も「非礼な言葉」で満ちているが、これはどうされるのか。

平野長官は、世界の耳目をわざわざ、「問題記事」に向けさせたようなものである。The Washington Postのコラム氏は、さぞ喜んでいるであろう。




ダウ続伸、米国経済復調か Upbeat signals on US economy

2010-04-15 | 米国・EU動向
2010年4月15日(木)

NY株式市場は数時間前に続伸で引けた。S&P500Sは約6週ぶりの大幅高の1,210.65で、1200ドルの大台にのせた。また、ダウ工業株30種平均は103.69ドル(0.9%)高の11123.11ドルとなった。

発表が始まった第1四半期決算の出だしが好調で、今後大手も引き続き好調決算の発表が続くと予想される中、3月の小売業績が予想を上回る伸びを示したことを率直に反映した。The Wall Street Journalは、これを「景気回復の証拠は数多」(Evidence mounts of strong recovery)と見出しにつけて報道している。

また、Financial Timesは、同日のバーナンキ連邦銀行議長の議会証言を、「強気の景気見通し」(a bullish tone on the economy)、そして、「見方は明るくなった」(upbeat)と評している。

同議長は、議会証言で、「われわれは、緩やかな景気回復軌道(a path to moderate recovery)にある。二番底の危険は否定できないが、数ヶ月前に比べればその可能性は低くなっている」としたが、同時に「景気にはまだ足枷(“significant restraints”)が残っている。なかなか下がらない失業率、低迷する住宅建設、連邦政府・州政府の惨憺たる財政状態がそれだ」との警告も忘れなかった。

同議長は同時に、3月の公開市場委員会(FOMC)の「連邦銀行は、相当期間例外的に低い金利水準を維持する」との発表通り、米国経済が完全に回復するまで政策を継続すると確認した。


メディアによっては、この後半部分の警告を中心にして報道しているところもある。全体の証言トーンが、強気(bullish)で明るい(upbeat)であったことは変化としてより注目すべきなのであろう。

また業績回復の著しい第1四半期決算を公表したJPMorganのCEO Jamie Dimon氏も、NYで「景気がふたたび失速する危険は薄いとし、景気の底堅さに対する投資家の自信が戻った」とのコメントしている。しかし、同時に同社の復配は、「雇用と消費の本格的回復を確認するまで(until it saw sustained rises in employment and continued good news from consumers)は見送るとしている。

このように有力な経済人が、二人とも、「景気の二番底の可能性は低い」(the risk of a “double-dip” recession)としながらも留保条件をつけたことで共通しているので、「楽観しつつ慎重な態度を取っている」ことに注目しておく必要がある。






オバマ、核拡散防止でリーダーシップ確立 We cannot drift

2010-04-14 | グローバル企業
2010年4月14日(水)

最終的には49カ国の参加を得た、核安全保障サミット(the nuclear security summit)は、2013年までに、核物質の世界的規模での管理体制の確立を目指すオバマ大統領の目的どおりに、最終コミュニケを採択して成功裏に終了した。

次回は、2012年に韓国で開催することが決定したがこれには、「北朝鮮が核兵器開発を放棄し国際社会へ復帰すれば招待する」という、北朝鮮への重要なメッセージが含まれている。

また、中国の胡錦涛は総会席上では、核兵器開発疑惑に関する国連のイラン制裁強化には触れなかったが、オバマ大統領との首脳会談では「協調する」ことを表明している。

オバマ大統領は、総会冒頭で演説し、「核物質の違法取引は増えており、世界の安全への懸念は増大している」として、核物質の貯蔵に関する情報交換を強化し、(まだ極少数の国しか批准していない)国連の核物質管理に関する決議(the UN’s Convention on Physical Protection of Nuclear Material)の遵守を呼びかけた。

さらにアルカイダのようなテロリスト集団が、核爆弾を入手しようと躍起になっている現状を警告し、「世界の安全と生存のためには、ためらっている暇はない(We cannot drift)」と結束を訴えた。

そして、「21世紀の問題は、国家が単独では解決できない。世界全体で解決しなければならない」と語り、ウクライナ、カナダ、マレーシアが自発的に、高濃縮ウランの放棄を含む核物質拡散防止策にとりくむことを表明したことを高く評価した。

また、中国とインドが、核物質の国際管理センターの自国内での設置を提案したことも注目される。

こうした取り組みは、核軍縮・核拡散防止目的のみならず、原子力発電が脱炭素電源としてこれから世界のエネルギー供給の大部分をまかなう時代が到来することが予想される現在、その安全保障問題面での重要な条件整備であることを注目する必要がある。

世界は一歩前進した。