世界の動きを英語で追う

世界と日本の最新のできごとを、英語のキーワードを軸にして取り上げます。

SAP、対オラクル賠償金13億ドル支払判決 A Cost of Doing Business

2010-11-27 | グローバル企業
2010年11月27日(土)

オラクルは、ドイツの業務用ソフトの大手SAPを相手取って、カルフォルニア州の裁判所に、その子会社がソフトを盗用したとして、16.5億ドルの損害賠償を求めて民事訴訟を起こしていたが、このほど13億ドルの支払いを命ずる判決を勝ち取った。

訴因は、SAPが2005年に1000万ドルで買収した子会社TomorrowNowが、違法にオラクルのソフトをダウンロードして自社ソフトに組み込んで販売していたともの。SAPは違法行為を認めつつも実害は4000万ドル以下として対抗しており、今回の賠償額に関しても過大であるとして反訴するとしている。

今回のソフトの盗用での損害賠償金である約1,000億円は、過去の類似ケースに比較しても巨額(a blockbuster)であるが、そのSAP社への経営上のインパクトについてFinancial Timesの株式論評欄The LEX columnが解説している。

まずSAP社はこの判決に対して平静を保っている。そして投資家も、株価で1%下げたのみで過剰反応を起こしていない。これはその損害賠償額がSAPの株式の市場価値(SAP’s market capitalization)の2%にしか過ぎないこと、賠償金額も今後の上級裁判で減額が予想されること、ソフト業界では訴訟事は日常茶飯事(10 a penny)で、こうした賠償はいわば、税金のようなものだ(almost a cost of doing business)という認識があるからだと論評している。

とはいえ、1000億円が巨額であることに変わりがない。SAPの今年のフリーキャッシュフローは約2,600億円、来年は3,400億円くらいと予測されており、配当金を800億円支払っても、この賠償金支払いの余裕は十分ある。

しかし今年5月に行った、Sybaseの約5,000億円の大型買収で、現在バランスシートは債務超過の厳しい状況にあるので、今後の事業投資や、買収案件への取り組みは、慎重にならざるを得ない。

今年になって共同最高経営責任者に就任し、「保守的すぎるとの評判」(an old school reputation)のSAPに新風を吹き込み再活性化させると宣言したBill McDermottとJim Snabe両氏の出鼻をくじくものだとしている。

G20、あいまいな言葉の首脳宣言で終わる The Wooly Phrasing

2010-11-14 | グローバル政治
2010年11月14日(日)

ソウルで開催されたG20サミットは、金曜日に首脳宣言を採択して閉幕したが、まさに、その内容は参加各国の意見の相違を浮き彫りにしたものであったとFinancial Timesが論評している。

FTの本日の第一面を貫く大きな見出しは、「G20、米国の貿易不均衡修正提案を退けるー各国首脳は参考指標導入で妥協したのみ」(G20 shuns US over trade flows)としている。

共同宣言のあいまいな表現(the vague language of the communiqué)は紛糾の象徴であり、特にドイツが貿易収支黒字巾圧縮の数値目標設定に断固反対したこと、中国が来年前半に具体化するとの時間軸を受け入れることをやむなくされたことが今回の交渉の大きな特徴であった。

IMFのストラス・カーン専務理事は「G20は論争はしたが結論は出せなかった」とまで言い切った。共同宣言の表現の中でこの経緯を如実に物語立っている部分を見てみよう。

“These indicative guidelines composed of a range of indicators would serve as a mechanism to facilitate timely identification of large imbalances that require preventive and corrective actions to be taken.”

これを翻訳すると、「ここに示されたいくつかの指標に基づく数値指針を設定すれば、予防措置や是正措置を取ることが必要となる過大な不均衡を、時機を失することなく容易に認識できるようにする仕組みとなりうる」となる。

このわけのわからない(the wooly phrasing)、数値指針に関する表現こそが、決裂を回避するための苦肉の妥協の産物であったのだ。FTは、「この下手な英語こそ、交渉がいかに難しかったかを物語っている」との英国外交官の言葉を引用している。

今回わざわざサミットに首脳がやってきたことの意義を見出す成果は、わずかに、IMF運営に発展途上国の発言権を増すための処置をとったことと、銀行の資本と手元流動性を手厚くするように規制するBasel IIIを採択したことくらいであると、記事を締めくくっている。

世銀総裁、突然「金本位」回帰をほのめかす Fascination with Gold

2010-11-09 | グローバル経済
2010年11月9日(火)

月曜日のFinancial TimesにZoellick世界銀行総裁が寄稿して、「金を世界の通貨管理のための参考指標に使用する」ことを、唐突に提案したが、反応は総じて鈍く(lukewarm)で、まさに「今頃なぜ金本位制度への回帰を思わせる提案を行ったのか」といぶかしがる向きが大勢を占めていると、同紙が報道している。

同紙は論説でもこのことを取り上げているが、その見出しは、”Gold Digging at the World Bank”(世銀で金採掘作業)としてほとんど、Zoellick世界銀行総裁の提案を揶揄するものとなっている。

第二次世界大戦後の世銀とIMFの創設にかかわった経済学者ケインズは、金本位制度を「蛮人の詩」“a barbarous relic”とその時代遅れと無用さを表現したが、いまどき金のことを持ち出すのはまさに、希少な奇特人といわねばならいとまで同紙は酷評している。

世銀総裁は「金本位回帰」を直接言っているわけではなく、多数の通貨を基軸に据えて「金」をも参照指標にしようというのであるが、具体的性に欠けるため、なにを一体言わんとしえいるのかがわからないというのが正直なところである。FTは、金が果たす役割はもはやないと言い切り、金価格は、インフレ・デフレの指標でもないし、通貨安定化のための準備制度にももはやならない、しかもその市場価格は、ここ10年で1オンス当たり200から1,400ドルまで大きく変動していると否定的論評を行っている。

FTは、さらにこの世銀総裁提案に比べれば、袋叩きにあった(ill-fated)との感のあるガイトナー米財務長官の「財政赤字・黒字巾を国民所得の4%内に規制する」の提案がまだましだとまで言っている。

世銀総裁の真意が「奈辺にありやはいずれも知らじ」であるが、世銀加盟国のために世間の注目を狙ったものか、鬼面、人を驚かせて通貨大改革の先頭に立ちたいのかいずれかであろうとしたうえで、同総裁はあくまで、「これはどうか」と質問しているのであって、「こうすべき」と答えを出したわけではないということさえ取り違えなければ、立派な目標といえる、と結んでいる。“Both are excellent goals – so long as his questions are not mistaken for answers.”

市場はこの提案をはやして、1オンス当たり1,400ドルを突破した。自ら相場の乱高下を作り出してその提案の無効を証明したようなものとなった。


京都APEC財務相会議、事実上の破綻 Labored Consent

2010-11-07 | グローバル経済
2010年11月6日(日)

京都で土曜日に開催されたAPEC財務相会議は、13日から開催予定のAPEC首脳会議と、11日からソウルで開催予定のG20サミットへの重要な準備会合と位置付けられていたが、貿易不均衡是正に向けて何の実質的な踏み込んだ結果を生まなかったと、The New York Timesは報道している。(No new ground in correcting global trade imbalances)。

本朝の日経新聞一面では、「通貨安競争回避で一致」との見出しでの報道であるが、一方、このThe NY Timesをはじめ欧米各紙は、会議結果について、論点整理程度に終わったとしか見ておらず、今後の米国と新興国をはじめとする各国の対立激化を予測しているのとは好対照である。The NY Timesの使った会議結果への評価の言葉は、’Labored Consent’である。強いて訳せば「苦しい合意」、「こじつけのつじつま合わせ」ということである。

米国は、資金を企業・個人住宅ローン向けに注入して景気浮揚を図るために、連邦準備制度(the Federal Reserve Board)による、6000億ドルにも上る7-10年物国債の買い入れ計画を発表している。これは日銀が長年にわたってやってもやっても効果が出ない「量的緩和」(Quantitative Easing)と全く同じ金融政策で、オバマ政権になってから2回目であるため”QE2”と呼ばれている。金利は下限に張り付き、財政破綻で国家予算からのねん出ができないオバマ政権としては、これ以外の手段はないというのが実態である。
 
これに対して、タイ、韓国、ブラジルなどの「輸出立国」各国は一斉に、「米国によるドル安誘導政策」と位置付けて反対の立場をとった。大量の低利資金の市場流入による米国国内のインフレを意図的に作り出し、結果としてのドル安による米国からの輸出増大を狙ったものであるとの非難をしている。さらに大量に市場に供給される低金利のドルが、これらの新興国に流入しバブル経済を煽るとの懸念を表明している。

このため米国のガイトナー財務長官は、会議中終始守勢に立たされた。皮肉なことにまさに中国に対して向けてきた米国の非難、すなわち「通貨操作による輸出促進政策」が、米国に向けられ始めたのである(the charge that it is doing what it has long accused China of doing)。

中国と米国は、「国際通貨戦争」における奇妙な連合国となりつつある。

(注)QE2は、有名豪華クルーザーの「The Queen Elizabeth 2」(QE2)のもじりでもある。

オバマに「きつい一発」 American voters Delivered a Shellacking

2010-11-04 | 世界から見た日本
2010年11月4日(木)

米国中間選挙で、下院の勢力図が大差で逆転するという民主党の大敗で終わったが、Financial Timesはオバマ大統領が、「これから経済活性化と雇用増大を実現させる」と宣言し、共和党に対して挑戦的な姿勢を打ち出したことを報じたが、同時に大統領は、「選挙民からは手ひどいお仕置きを受けた」(American voters delivered what he called a “shellacking”’ at the polls halfway through his first term.)と耳慣れないa shellackingという口語を使って敗北を認めたことを伝えている。

そして、The Wall Street Journalの見出しは、「中国喜ぶ、ロシア残念がる」(U.S. Vote Cheered in China, Rued in Russia)として、オバマ大敗に対する各国の反応を伝えている。今回の結果は、中国とイスラエルの一部勢力を喜ばせ、アジアとロシアはがっかり、イラクやアフガニスタンは無表情と描写している。日本やアジア諸国、それにロシアはオバマ政権が取ってきた対中強硬姿勢を、国内政策優先のために軟化させてしまうことを懸念していると伝えている。

中国が喜んでいる理由として、中国は人権問題に敏感に反応して、中国の内政に干渉してくる民主党政権に好感を持っていないので、おおむねオバマ敗退を歓迎しているが、一方共和党の対外強硬派の台頭も恐れていると報じている。

一方、The New York Timesは、「共和党幹部オバマ健保改革法の廃止を誓う」(G.O.P. Leaders Vow to Repeal Health Care Law)として、共和党がオバマ政権を追い詰めていく方針を記者会見であきらかにしたことを伝えている

共和党幹部は、記者会見で、中間選挙の大勝利を背景に、「小さい政府、財政支出削減と、年末に切れるブッシュ政権が制定した減税政策の継続」(a vision of smaller government and lower spending, as well as the continuation of the Bush-era tax cuts)をはかるとしている。そして何よりも共和党員がこぞって反対してきた政府管掌健康保険の適用拡大を廃止させると勢い込んでいる。(a vow to repeal the big new health care law)

各紙の映し出す写真、ビデオのオバマ大統領の表情は厳しい。

「ロシア大統領の国後訪問は、内政問題」 A purely domestic matter

2010-11-02 | 世界から見た日本
2010年11月2日(火)

日本政府の中止要請を無視する形で,ロシアのメドベージェフ大統領が北方四島(the Northern Territories)の一つ国後島を3.5時間に渉って訪問し、四島がロシアの領土の一部であることを誇示した。

日本政府は、駐日大使を呼び抗議を行ったが、これに対してロシアの外務大臣は、「受け入れがたい」(unacceptable)こと、と反論した。

さらに、ロシア大使は、NHKのインタビューに対して、「大統領の四島訪問は、純然たる国内問題(a purely domestic matter)であり、「日本政府に冷静な態度を取るよう(calmly)) にと求めたと、Financial Timesが報じている。

ところで、もう昔話と化してしまったが、2009年2月に、サハリンでメドベージェフ・麻生会談が行われ、「新たな、独創的で型にはまらないアプローチ(an “outside the box” approach)で、我々の世代で解決すべく、具体的な作業を加速しようということで一致した」と麻生首相は発表したことが思い出される。当時から中身の無い「独創的アプローチ発言」と揶揄されてきたが、今回それが証明された。

この「独創的アプローチ発言」以来何の目新しい考え方の提示は双方に無い状況(no obvious new thinking)が続き言葉そのものも忘れ去られた。まさに平和条約の締結や四島の帰属問題解決などは「夢のまた夢」の状況にある。

同紙は、さらにロシアの論調を紹介している。「外交の対応のまずさが日本を恰好の餌食にしている(Japan’s weak diplomatic responses made it an easy target.)

そしてロシアの世論の大勢ともいうべき意見として、1996-2003年に日本大使を務めた人物の発言を紹介している。

「日本人は第二次大戦に負けたことを認めようとしない。日本は侵略者で、敗者として領土を失ったのだ。なにを根拠に領土返還などと主張するのか(Under what justification do they want them all back?)」