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楽天、三木谷 浩史が進める英語社内公用語化 ”Englishisation"

2012-06-17 | グローバル文化
Financial Timesの週末版の人気連載記事'Lunch with the FT'に、三木谷浩史楽天社長が登場して、FTのDavid Pillingアジア総局長のインタビューを受けている。場所は三木谷氏の親せきが経営する銀座の鉄板焼きレストラン「かいか」。テーマは同氏が唱導し、楽天社内で実践している「英語化」である。

この英語化という言葉に三木谷氏はEnglishizationという造語を充てている。FTはこの単語を英語には語彙として定着しない言葉として扱い、引用符をつけて、"Englishisation"としている。Google検索してみると、アジアの英語問題を取り扱っている論文に使用例があることがわかるので、三木谷氏自身だけが使う造語ではないようだ。

記事の内容は、同氏が常日頃あちこちで主張していることがほとんどなので、ここには繰り返さないが、言わんとするところは、「日本人がこの島国に引きこもって、過去の遺産にすがって、一見平和で、豊かな生活を楽しんでいるうちに、知らず知らず没落の一途をたどっている("This is very pleasant long-term decline.)とし、「SonyやPanasonicには挑戦する気概がなくなり、世界戦略(a global strategy)が欠落している」ということだ。そして日本企業の海外進出がほとんどうまくいかない理由として、日本の企業文化で海外の会社を経営しようとすることであると断じている。

旧日本軍が植民地経営に失敗した大きな理由の一つが、現地の文化と言語を暴力で封殺し、アジア地域の「日本語化」を進めようとたことであった。いまだにきちんとした英語が話せない社員を現地に送り込んで、日本的経営を「実践」している企業が多い。本社に向いたままで、日本語ばかりで社内で話し、日本商社、邦銀と毎日日本語で話し、夜は日本料理屋にたむろして、日本の歌のカラオケで一日が終わる単身赴任者の腰掛駐在ではグローバル化は夢のまた夢である。

時たま入社する優秀な現地スタッフも、早々に見切りをつけて、現地日本企業を去っていく。理由は明白でみんな分かっているのに事態は一向に改善していない。残るのは、怪しげな日本人スタッフの英語をわかってくれる二流以下の社員のみというケースも多い。


三木谷氏は、その解決の手段として英語があり、いまや世界語として定着した英語を使えずして、この沈滞と閉塞状況を脱却できないと声高らかに、2年前に楽天社内の英語公用化を始めたのだが、批判するばかりの経済界主流を尻目に、楽天の快進撃と、社内英語化は着々と進んでいる。三木谷氏はなにも趣味で英語をと言っているわけではないのは明白である。海外進出しようとしても「英語を話せる人材の無さに」に愕然とした経験からではないかと推測する。ユニクロにも同じような状況があるはずだ。

この話の前提には、英語のグローバル化という共通認識がある。批判する人は、アングロサクソンによる「英語帝国主義の陰謀」という。英語という前に「現地の言葉をまず習得せよ」という批判も出てくる。しかし、ほとんどの政治・経済・メディア・技術の情報が英語化していて、インターネット上の情報も大勢は英語によっている。こうした現実認識をきちんとすれば、おのずと取るべき道は一つである。