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「慰安婦問題」橋下発言: "Outrageous and Offensive"

2013-05-27 | 世界から見た日本
「従軍慰安婦」を「当時は必要なものだった(necessary)」とする、大阪市長にして日本維新の会共同代表橋下徹氏の発言は、第二次世界大戦、とりわけ太平洋戦争に対する日本人の現実認識や歴史認識がいかなるものかを、はからずも世界に示すことになった。

BBC放送は、橋下発言の問題個所を、"If you want them [troops fighting a war] to have a rest in such a situation, a comfort women  system is necessary. Anyone can understand that."と翻訳してWebに掲載している。世界をリードすべき経済大国日本の政界寵児の思考方法と、"Anyone can understand that."と締めくくる乱暴な非論理性は、世界から驚きを持ってみられたに違いない。

加えて、橋下氏は沖縄駐留米軍司令官に、兵士の性犯罪抑制のために、「風俗の活用を進言」したと報道されている。橋下発言全体に対して当然中国・韓国は直ちに強い抗議声明を出して反発姿勢を示したが、友邦米国の国務省も、同氏発言を「言語同断の侮辱」(outrageous and offensive)と最大級の形容詞で非難するコメントを出した。

ところで、日本で合法化されている「風俗」という言葉も日本的な、事実を歪曲する婉曲表現であり、英語に翻訳すると"prostitution"「売春」としか翻訳しようがない。橋下氏も犯罪としての「売春」活用を進言したわけではないということなのだろうが、こういうところにも言語上の  gapを意識できない「意識のガラパゴス化現象」が顕著に表れている。

この問題に関しては、世界の中では、1995年のいわゆる「村山談話」が厳然と存在する。その中で、日本が「植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与え」たことを「疑うべくもないこの歴史の事実」とし、「痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明」し、さらに慰安婦関係調査結果発表に関する河野内閣官房長官談話(河野談話)によって従軍慰安婦の存在を認めたのである。

日本は、言霊の国と誇ってきたが、なんと政治家諸氏の言葉の軽いことだろうか。