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世界の動きを英語で追う

世界と日本の最新のできごとを、英語のキーワードを軸にして取り上げます。

Automat: NYで、コロナ禍乗り切りに自販機レストラン復活

2021-12-19 | 米国・EU動向
街頭に置いた自販機で、すぐ食べられる形でラーメンなどをサーブする商売は、日本でも導入されている。
一方、レストラン自体を自販機に置き換えてしまう、ファースト・フード店」はautomat(オートマット)と呼ばれていて、その奔りは19世紀末のベルリンに遡るという。米国では20世紀初頭に各地に現れたが、やがてファミレスに押されて消滅した歴史がある。
最近この店内は自販機だけが置かれた、無人化レストランであるautomatがNYを中心に復活しつつあるという。接客時の人の接触を避けるとともに、前代未聞の人手不足に陥った現在の米国の雇用状況を解決するために出現してきているという。
全米に広がり、世界に広がるTrendとなるか?

隠れトランプ

2020-10-26 | 米国・EU動向
米国大統領選挙の各種世論調査では、バイデン氏がトランプ氏を大きく引き離しているものがほとんどである。前回2016年の際は、直前まで同様状況で、ヒラリー・クリントンの当選を疑う人は少数派であった。今回もそのdeja vu(いつかどこかで見た光景)ではないか、という人が結構出てきた。本心はトランプ大好きだけれど、公言すると仲間はずれになったり、職場にいられなくなったりする危険があるから、トランプ支持とは言わない人が多くいると言うのだ。この人たちのことは、Hidden shy voterというそうである。隠れキリシタンならぬ、隠れトランプ支持者というわけである。

ドイツで広がる「メルケル」疲れ ”Merkel Fatigue"

2017-12-03 | 米国・EU動向
選挙で敗れて、連立工作も不調の少数与党党首メルケル首相に対しドイツ国民や、与党支持者の間に、疲労感が蔓延し始めているとの、Financial Timesの論評である。そのことばはずばりMerkel fatigue.
17年間も君臨しドイツを押しも押されぬEUの中心の地位に押し上げた彼女も、国内と世界の激変にもはや追随出来ぬのも歴史の必然のようだ。深く刻まれつつある彼女の顔のしわと、時折見せる憔悴の表情に比して、ご当人は案外落ち着いているのは、彼女にとってかわる政治家が全くいないせいだと、断定している。

トランプの反知性主義的ブログ活用法(anti-intellectualism)

2017-01-09 | 米国・EU動向
昨日ここで、トランプ氏がそのブログで”Stupid people or Fools"と「バカ」呼ばわりするのは、共和党主流派、Obama大統領やClinton氏を頂点とする民主党幹部、民主党選挙対策本部を盗聴したのはプーチン大統領の指示と断じたCIAなどの諜報機関、Trump氏を攻撃してきたマスコミなど、これまで米国をリードしてきた既成知的エリート層であると書いた。

しかし、かれは、真正「バカ」を「バカ」呼ばわりしているわけではない。そして暴力的言辞を駆使するかれ自身も決して「バカ」ではない。その真の攻撃対象は、きわめて知的水準の高い、自由・平等・正義・グローバリズムといった価値観を表す言葉をもとに世論をリードし、米国の政治を動かしてきた上にあげたような人たちである。トランプのメッセージは、「もうバカの好きにはさせないぞ」ということである。ここが大衆に支持されるところとなっている。それにどうも自分がトランプ支持とは公言したくない「隠れトランプ信者」が結構いる節がある。

文明や文化の成果の集積と、教育による再生産で、我々の知的水準は向上し、世の中はよくなってきたと普通は思う。しかし、しばしばその恩恵に浴すことのできない人々と、その息苦しさと偽善性に耐えられない人々の割合が一定レベルに達すると、揺り戻しが起こる。それは、「反知性主義」(anti-intellectualism)という現象として知られている。

トランプ氏は、選挙期間中一貫して、トランプ批判に回りクリントンにくみした米国マスコミエリートに対して、これからも執拗に「復讐」を続けるであろう。米国の金融・証券、ジャーナリズムと映画産業はユダヤ人脈に支配されていることも合わせ考えておくと、これから起こることの理解も進むかもしれない。どう考えても、彼は趣味でブログで咆哮しているのではない。彼の言うところの「バカ」の巣窟であるマスコミの報道に頼っていては、勝てるわけはないと計算したのだろう。大衆とリアルタイムで直結するブログで勝負に出ようと。いわば「バカ抜き」である。

Donald Trumpが「バカ」呼ばわりするのは誰か?"Stupid" People or Fools

2017-01-08 | 米国・EU動向

今朝、Donald Trump氏のTwitterを開いたら、次の3件が立て続けにUpされていた。

Jan 7 7:02
Having a good relationship with Russia is a good thing, not a bad thing. Only "stupid" people, or fools, would think that it is bad! We.....

Jan 7 7:10
have enough problems around the world without yet another one. When I am President, Russia will respect us far more than they do now and....

Jan 7 7:21
both countries will, perhaps, work together to solve some of the many great and pressing problems and issues of the WORLD!

これら3件は一つにまとめれば「ロシアと良好な関係を持つことに反対するのは、バカだけだ。この世界には次々問題が起こる。私が大統領になれば、ロシアは米国に対し、今よりはずっと敬意を表すだろう。そして両国は大きなしかも急を要する国際問題解決に協調することになる。」ということだ。

同氏がここで「バカ」呼ばわりするのは、ロシア融和政策に反対する共和党主流派、Obama大統領やClinton氏を頂点とする民主党幹部、民主党選挙対策本部を盗聴したのはプーチン大統領の指示と断じたCIAなどの諜報機関、Trump氏を攻撃してきたマスコミなど、これまで米国をリードしてきた既成知的エリート層である。

トランプはなぜロシアをここまでかばうのか?Iron-Clad Truth

2017-01-03 | 米国・EU動向
不思議なことがあるものだ。次期米国大統領は、終始「ハッキングの犯人特定は難しい」として、ロシアをかばっている。そして、自分だけが知っている事実があるとして、みずからも語り、報道官に指名した人物も次のように語っている。

Incoming White House press secretary Sean Spicer is defending cryptic comments by President-elect Donald Trump that he knows "things that other people don't know" when it comes to allegations of Russian hacking.

トランプは、報道陣に火曜日か、水曜日にその事実を明らかにするとしている。本日ABC放送のインタビューに応じたある議員は、米国の諜報機関のブリーフィングの内容に関して、ロシアの関与は"iron-clad"(鉄に裏打ちされたのごとくゆるぎない)真実だと言っている。そしてマケインなどの共和党の幹部は、オバマの対ロ制裁が生ぬるいと批判している。

ロシアは、オバマ政権が発動した外交官の追放に反応せず、もうすぐ権力の座に就くトランプの対応に懸けている。このようなことは、前代未聞であり、米露関係が非常に不思議な力学に支配される時代となってきた。トランプは、「すべてを知っている」と公言した。これからその言葉の重みが世界を動かすことになる。

サイバー攻撃で米国大統領選挙妨害(Cyber-Meddling)はあったか 

2017-01-01 | 米国・EU動向
トランプ次期大統領は、日を追って親ロシアの姿勢を明確化し、プーチン大統領への親愛の情までさらに露わにしている。昨日の大晦日に800人を集める大規模な私的なパーティを開催したが、その開始直前に記者団を前にしてホワイトハウスやCIAのロシア諜報機関のサイバー攻撃に関する発表に真っ向から挑戦する自説を展開して見せた。CNNの報道を引用するとその要旨は次のようになる。

West Palm Beach, Florida (CNN)President-elect Donald Trump reiterated his doubts Saturday that Russia was behind cyber-meddling in the US election, saying such a crime would be difficult to prove.

Cyber-meddlingとは、ハッカー攻撃による選挙干渉ないしは、選挙妨害のことを指す新語である。プーチンが「親友」であるトランプを応援して、クリントン落選のネタ探しのため民主党本部にハッカー攻撃を仕掛けたとすれば、米国の将来の国家安全保障の根幹を揺るがす大問題となる。

ロシア諜報機関は、ビジネスマンとしてのトランプの過去のロシアでの行動記録をすべて集積しているであろうから、これもこれからロシア側がどのように切り札として使うか、また第三者やマスコミの調査によっていろいろな事実が明らかになってくれば、どのようなことになるのか予断を許さない。

トランプ、オバマの広島訪問と発言に対し"Who cares?" 

2016-05-29 | 米国・EU動向
オバマ大統領の広島が実現して、一つの時代が終わり、一つの時代が始まったといえるが、象徴的なことは、「核廃絶を唱える」米国大統領が献花するその後ろに、武官が核ミサイルの発射ボタンが格納されたアタッシュケースをもって控えていたことである。

さて、共和党大統領候補としてのトランプ氏が、キャンペーン中の演説で、この訪問をカリフォルニアで評して「謝罪しないなら全く構わない」といったと日経新聞朝刊が報じている。発言のテクストは:"It's fine, as long as he doesn't apologize, it's fine. Who cares?"である。

意味としてはこの翻訳は正しい。しかしこの発言のコンテクストと、吐き捨てるような物言いからして、そんな生易しい気持ちで言ったものではない。ぜひYouTubeで演説を聞かれるとよいとおもう。この"Who cares?"はまさに捨て台詞である。オバマなんかが、何をしようとも、なにを言おうとも、広島でどんなご託を並べようとも、原爆投下を謝罪しない限り、構うことはないさ、という気持ちがこもっていて、本心を隠さぬ政治家となれる資質を余すところなく示したといえる。

オバマ大統領を切り捨て、原爆投下を肯定し、米国優位史観を丸出しにしたこのWho cares?こそ、今の米国人の下層階級と中産階級の心に響くものはないといえる。トランプの頭の中には、ジョン・W・ダワーの「忘却のしかた、記憶のしかた」第2章に詳しく述べられている太平洋戦争前、戦中、戦後の米国人の日本人観が、見事に保存されているともいえるだろう。

ヒラリー・クリントン、トランプを「無鉄砲放言居士"a loose cannon"」と酷評

2016-05-05 | 米国・EU動向
ドナルド・トランプが、対立候補二人の撤収宣言により実質上の共和党大統領候補の地位を得て、「これからはヒラリー・クリントンをやり玉に挙げる」とまたまたの怪気炎を上げた。Financial Timesは、クリントンの反撃の言葉を、"Hillary Clinton dismisses Donald Trump as a 'loose cannon."(トランプは、「無鉄砲放言居士の一言」で、片づけた)と報じている。

loose cannonとは’、甲板上で本来結索されていなければならない大砲が、索から外れてしまった状態にあることをたとえに使った言い回しである。その舌禍を恐れぬ放言癖を持った(ないしはそう見せかけている)厄介な男が、周囲の迷惑を顧みず、相手かまわず罵詈雑言の限りを言い放つさまは、いつどこへ弾丸が飛んでいくかわからぬ大砲におとらず危険な存在である。

トランプの対日政策がその「放言通り」実行されると、日米安保条約は片務状態であるから廃棄ないしは双務条約へと改訂、在日米軍基地の撤収ないしは費用の全額負担要求、日本の本格的再軍備と核武装容認ということになる。戦争経済の魅力は、低成長にあえぐ先進国にとって悪魔のささやきである。トランプは、そんな声をも代弁しているかに見える。

オバマ大統領のイノウエ上院議員への弔辞:A Powerful Sense of Hope

2012-12-25 | 米国・EU動向
米上院歳出委員長で、民主党の重鎮、ダニエル・イノウエ上院議員(ハワイ州選出)が17日、88歳で逝去した。1924年、福岡県からハワイに移住した日本人の両親の間に生まれた日系2世で、第2次大戦中、日系人部隊に参加し、その功績は、偏見を受けていた日系人の存在を米国内で高めた。1959年に下院議員に当選以後、上院に転じ50年間議員を続けた。

葬儀には、オバマ大統領、クリントン元大統領が参列し、弔辞を述べたが、オバマ大統領はその11歳の少年時代にイノウエ議員の演説に衝撃的な感動を受けたことが、政治家を志すようになった理由だとの回想を披露した。

大統領のブログからその弔辞の重要な一部を紹介してみよう。

『白人の母親と、黒人の父親の間に生まれ、インドネシアとハワイで育った私は、そのころ、この世の中にどう合わせて行くかは見かけほど簡単ではないと、考え始める年頃だった。そんな時にこの人が現れた。並外れた戦功を引っ提げて、社会の片隅から力強くのし上がってきたこの人は、いわゆる上院議員のイメージからはまったくかけ離れていた。しかしこの人が(日系人というハンディを乗り越えて)全米の人々から尊敬を集める様を見て、私が人生で何ができるかということを教えてもらった気がしたものだ』

(Now, here I was, a young boy with a white mom, a black father, raised in Indonesia and Hawaii. And I was beginning to sense how fitting into the world might not be as simple as it might seem. And so to see this man, this senator, this powerful, accomplished person who wasn't out of central casting when it came to what you'd think a senator might look like at the time, and the way he commanded the respect of an entire nation I think it hinted to me what might be possible in my own life.)

オバマ少年の心を打ったのは、太平洋戦争中敵性国民として、強制収容所に収監されるという国家の裏切りにあった日系人の一人であったにも拘わらず、米国の民主主義の理念を信じて、欧州戦線に従軍し、片腕を失いながら大きな勲功を立てた一人の人間の姿であった。オバマ大統領はその時の感動を、『言葉にはできなかったが、心に希望の光が強く差し込んできたのだ』と心を込めた言葉を贈った。

(A man who believed in America even when its government didn't necessarily believe in him. That meant something to me. It gave me a powerful sense -- one that I couldn’t put into words -- a powerful sense of hope.)

イノウエ議員の、差別と闘いつつ政治的信念を貫徹した人生に、自らを重ね合わせたオバマ大統領の弔辞は素晴らしい。

「善玉ガンマンを学校に配備せよ」全米ライフル協会声明 A 'Good Guy With a Gun' in Every School

2012-12-22 | 米国・EU動向
またまた起こった米国における学校での銃乱射事件。26人ものの人命が無残にも奪われて全米ライフル協会(the National Rifle Association:NRA)の反応が注目されていたが、協会会長と副会長の二人が、金曜日に記者会見に応じた。

その言葉は、われわれを驚かせるに十分であるが、さすがの銃社会の米国民も、多くは反発するか当惑気味であるとNY Timesが報じている。

副会長いわく、「全米各校に武装警備員を配備すべきだ。武装警備員がいたら防げた事故だったのだ。本当に責められるべきは銃ではなく、暴力をあおるTVゲームであり、ニュースメディアであり、弛緩した警察力だ。」

副会長が、「悪玉ガンマンを止められるのは、善玉ガンマンしかいない」といったところで、その言葉は抗議の声にかき消されたという。こうしたNRAの言説は、多数の学校関係者、警察当局者、政治家各層から、「笑止千万、正気の沙汰にあらず」と受け止められていると、NYTは報じている。

副会長は、「あらゆる銃規制の訴えに耳を貸すつもりはない」と言い放ち、二人は、記者団からの「オバマ大統領と、今後話し合っていくのか」という質問を無視して、会場をそそくさと立ち去ったという。

米国では銃を持つことは国民の権利であることが、憲法で保障されていている。そして身分証明書さえあれば、すぐに重火器まで購入することができる社会である。これからもこの状況は変わることはないだろう。



ちなみに、市民の武装による自衛権を認めたものされている米国憲法修正第2条を、次に掲げて置こう:

"A well regulated Militia, being necessary to the security of a free State, the right of the people to keep and bear Arms, shall not be infringed." (修正第二条 規律ある民兵は、自由な国家の安全にとって必要であるから、人民が武器を保蔵しまた携帯する権利は、これを侵してはならない)

米国憲法は、1788年に独立13州の批准を経て成立したが、英国の権利章典に照らして、国民の権利保護が十分でないとする批判が相次ぎ1791年に10ヶ条の修正が追加された。米国人はこの修正10ヶ条を自分たちの「権利章典」(Bill of Rights)と呼んでいる。しばしば映画やニュースで、耳にする表現に、"Take the Fifth"がある。これは修正第5条に定まれた諸規定のうち「黙秘権」を行使するという意味である。現在米国憲法には27ヶ条にのぼる修正条項が存在する。

オバマ大統領、アフガン撤退の決意は如何? A Powerful Quartet

2011-06-22 | 米国・EU動向
2011-06-22

オバマ大統領は、選挙戦突入を前に、今週現地水曜日アフガンからの兵員引き上げを公に発表する予定であると、 Financial Timesが伝えている。大統領は、水曜日にその決意会見を行ったあとに、NYの基地に赴き、イラク・アフガン派遣部隊を慰問する予定となっている。

現在、オバマ政権第一年目に増派された3万人を含めて10万人の兵力を展開しているが、撤兵規模については、ホワイトハウスは厳しいかん口令を敷いており、大規模撤兵に反対している軍部と調整が済んでいないことをうかがわせている。

軍部は、あくまで10万の兵力からの多少の削減(pressure from the military to unveil only a modest drawdown of the 100,000 US troops)にとどめるべしと主張している。

政権内部でも、撤兵に反対している強力な4人組( A powerful quartet)と称されているのはゲーツ国防長官、クリントン国務長官、マレン統合参謀会議議長、ペトレアス・アフガン方面軍司令官であり、強く現有勢力の維持を主張している。

しかし、オバマの政治基盤の民主党内部のみならず、共和党の強硬派の一角にも厭戦気分が充満し始めている。数千億円の戦費を浪費しながら、さしたる成果を米国にもたらしていないことにいら立っているのだ。その急先鋒はバイデン副大統領である。上述の3万人増派(the 30,000-strong surge)の際のオバマ大統領の公約によると、撤兵は7月から始めなければならないという事情も背景となっている。

オバマ大統領は、大統領選をにらみ公約通りの撤兵開始をメンツにかけても行わねばならない。しかし現実はタリバン勢力の衰える兆しはない。軍部の絶対反対の主張に抗してとりうる道は、形だけの撤兵、すなわち数千人規模の撤兵にとどまるのではと、FTは読んでいる。

一方、カルザイ大統領は、米国ともども穏健派タリバン勢力と、和平交渉を秘密裏に始めたことを公表した。いまだ不安定なイラク、方向感の出ないアフガン、アラブ社会全体の動揺による北アフリカ、サウジ半島の騒擾に、アラブ世界に多方面展開する米国にとって出口なしの状況に陥りつつある。

一方、国内経済の不振と失業率増加は、オバマの選挙戦の命取りとなりかねない。撤兵を急ぎ内にこもってモンロー主義に走るか、国内打開のために一挙に攻勢に転じて戦時景気刺激の賭けに出るか、オバマの決断は明日わかる。


共和党大統領候補に、「堕胎是非の踏み絵」 Susan B. Anthony List

2011-06-20 | 米国・EU動向
2011/06/20

米国大統領選挙戦は、13日に行われた、現時点での共和党側の候補者を集めた演説会を以って火蓋が切って下された。

この全米TV中継された演説会には7人が参加したが、今これらの参加者には、大統領になった場合、堕胎禁止を政策実行せよと要求する「Susan B. Anthony List」と称されるいわば「踏み絵」への賛否表明が迫られている。

現在賛成を表明してそのリストに署名したのは、Michele Bachmann、Newt Gingrich、Ron Paul、Tim Pawlenty、Rick Santorum の5氏であるが、現時点での最有力候補のMitt Romneyと Herman Cainの両氏は署名の意思表示をしていないと米国ABC Newsが伝えている。

Susan B. Anthony Listは4項目からなるが、それらは ①連邦判事には、米国憲法の初心に立ち返る価値観の持ち主のみを任命すること、②閣僚や行政の要職には堕胎反対派(pro-life)のみを任命すること、③堕胎を実行する医療団体・病院への連邦補助金を禁止すること、④「苦痛を感じるまでに成長した胎児保護法」(a Pain-Capable Unborn Child Protection Act)の立法化を図ることである。

署名反対の二人も、共和党党員として当然のことながら、堕胎禁止(pro-life)を基本姿勢としているが、二人とも「第4項」の立法化は議会の仕事であり、あまりに広い義務を候補者に求めるもの(overly broad)だと異を唱えている。

特にMitt Romney氏については過去に堕胎賛成(pro-choice)に回ったことがあることを指摘されていることは、同氏の今後にどのような影響が出るかが注目される。そして最も注目される候補、Sarah Oalin女史はいつ立候補表明するかによって選挙戦の趨勢は大きく変わる。

今回の大統領選の争点は景気回復や、失業率の改善といった経済問題が前面に押し出されてくることが予想されるが、全米を支配する宗教上の右派勢力の影響力を無視しては勝利を収めることはできない。しかし初戦段階で堕胎禁止を強く打ち出してリベラル層の支持を失いたくないという思惑も働いている。

いまだに聖書記述を絶対なものとして、進化論を認めず、キリストの復活を信じる人々が米国の政治を動かしているということを注目する必要がある。こうした「聖書原理主義者」は過激な行動を取る。堕胎を実施する産科医院が爆破されたり、産科医師が殺害されるというのは、稀ではないのだ。

オバマ大統領、「下がらぬ米国の失業率、即効薬なし」と No Quick Fix

2011-06-12 | 米国・EU動向
2011年6月12日

オバマ大統領は今週末のラジオ演説で、低迷する経済と下がらぬ失業率に関して、「この悪環境に陥ったのは一朝一夕のことではない。したがってそこからの脱却も時間のかかるのは当然」(But the truth is, we didn't get into this mess overnight, and we won't get out of it overnight. It's going to take time)と共和党からの責任追及に反論した。暗に原因は前政権のブッシュ大統領にあると言っているのだ。

オバマ大統領いわく、「この経済問題に即効性のある対策はない(there is no "quick fix to our economic problems,")。そのために今経済界と協力して雇用創出に努力しているところだ」。産業界との協力とは、50万人の職業訓練校生(community college students)に、業界が保証する就業機会を与えることを指している」。同大統領はその演説の最後に、「訓練校の卒業証書は就職に役に立ちますよ」と若者に呼び掛けたことは特に注目に値する(you'll know that your diploma will give you a leg up in the job market.)

最近の失業統計によると、失業率は9.0%から9.1%に上昇してしまったので、オバマ政権の失業対策に対する信認が急落しており、すでにその火蓋が切って落とされた大統領選挙の前哨戦に悪影響が出ないように、民主党としては対策を迫られている状況にある。

共和党は、雇用創出の手段は、連邦政府の借入金を圧縮すること、各国との自由貿易協定野締結を促進すること、国産エネルギー増産によるべきであるとしている。特に国の借金をこれ以上増大させないために、現在設定されている14.3兆ドルの連邦政府の借入上限の増枠は断固として阻止すると息巻いている。そして、中小企業減税や、規制緩和によって、産業の活性化を図るべしというのが、「小さい政府」を常に主張する共和党路線である。
これに対して大統領は、成長と雇用を確保するために、中産階級のライフスタイルの変更を力説した。この為の重要な対策として教育改革をあげ、大学進学率の引き上げと、先にあげたように職業訓練の拡充を目指すとしている。また雇用機会の創出に資する有効な施策として、再生可能エネルギーの開発と、利用拡大を」訴えている。

オバマ大統領は、今後も政権の政策実行による景気回復と失業率改善の可能性が低いと見ているようだ。そのため景気後退の中での大統領選を意識して、中長期対策に論争の中心を移す作戦に出てきた。

さらには「弱いドル」作戦によって産業界の支持を取り付けようとしている。翻って我が国は政治混乱によって、不自然な円高相場に対抗する政治的意思を失ってしまっている。「市場経済原理」を隠れ蓑にした国際金融資本、欧米多国籍企業、為替投機で巨利を得ている投機筋のなすがままになっているのが日本の現状である。

オバマ大統領、教育と技術への傾斜 “No room for Second Place”

2011-01-27 | 米国・EU動向
2011年1月27日(木)

火曜日に行われたオバマ大統領の一般教書(the State of the Union)演説はその大半を内政問題に重点を置き、財政支出の凍結を公約することによって共和党との和解を図り、教育と技術開発への重点投資を軸に米国の産業を再生させて雇用の創成を図ることを高らかに宣言した。

その対立軸には軍事ではなく、教育と技術力によって米国を追い上げる中国・インド・韓国といった新興国を挙げた。そこに日本の名前は言及されていない。

演説直後のCNNによる世論調査では、82%という高率で米国民はこの一般教書演説を支持している。昨秋の中間選挙で大敗を喫したオバマ大統領にとってまさに起死回生の賭けは大成功となった。「核なき世界」でも、「アフガン勝利による米国の大義」でもなく、「技術革新」(innovation)がキーワードとなった。

さて米国庶民の反応を見るには、”US Today”を読むのが手っ取り早いが、本日の同紙の一面は、オバマ大統領が早速ウィスコンシン州にある、太陽光発電設備会社や、風力発電設備会社を訪れて、米国民の「技術革新」への取り組みを鼓舞する演説を行ったことを報じている。

大統領いわく、「これらのハイテク会社こそ米国に雇用機会を提供し、未来に勝利(win the furure)をもたらすものだ」「この技術革新ゲームへの賭け金をぐっと上げよう」("We've got to up our game,").

そしてレンボー氏にはぜひ聞かせたい言葉がオバマ大統領から出た。アメリカンフットボールの有名コーチの言葉を引用しながら、「二位なんてものはない。わがゲームの居場所はただ一つ。それは一位だ」("there is no room for second place -- there is only one place in my game, and that's first place.")

大統領は続けて、「この決意こそがまさに我々が必要としているものだ」と、「さあ今こそ世界にこれを示そう」と格調の高い言葉が続く。そして、50年前に米国がソ連の技術の前に屈した屈辱のスプートニクショック( "Sputnik moment" )を乗り越えたようにというわけである。

工場見学を終えた大統領が発した言葉は、"the plant is just very cool."(工場はとてもかっこいいね)。