世界の動きを英語で追う

世界と日本の最新のできごとを、英語のキーワードを軸にして取り上げます。

ベトナム投資ツアー健在: 'Vietnam in trouble'ものともせず

2008-05-31 | グローバル経済
日本人のベトナム投資用口座開設ツアーは、ベトナム経済が2008年に入って大きく動いているにもかかわらず、依然大繁盛していて、日本人観光客は、一件数百万円の口座を現地のファンドに次々と開設しているとのことです。

ベトナム経済は、今年に入って年率25%のインフレが起こっており、経済成長率は9%から7%に減速し、経常収支の赤字は莫大なものに膨れています。その結果ドルにリンクしている現地通貨は、1/3程度の切り下げが予測されています。

また信用膨張は続いており、貸し出し残は昨年比50%伸びていますが、政府は金利を8%台から12%台に上げたのみで、実質金利はマイナスになっていて、インフレ抑制の政策意思は示されていません。

一方株価は、昨年比で55%下落していますが、長期的な投資として買い進める株主の意欲は依然衰えていないようです。

株やファンドも日本、中国、ベトナム、インド、グローバルとオプションがたくさんあります。投資対象も株やファンドだけでなく資源や食糧や金融先物や外為もありますから、投資家は忙しい世の中になりました。

アデランスがすっ飛んだ Slipping of Aderans' wig

2008-05-31 | 世界から見た日本
物言う株主であるファンドのSteel Partnersがかつらメーカーのアデランスの株主総会で、取締役全員の再任否決という前代未聞の決議を引き出すことに成功したことが内外に大きく報道されています。

文字通り、かつら(wig)メーカーアデランスの会社の幹部(wig)がすっ飛ばされたわけであります。

また全般的に見ても、物言うファンド株主(activist funds)の圧力は効果が出ています。Topix 100で70社が配当を増額し、そのうちの23社はなんと減益下での増配であったのです。


海外の論評は大体「株主無視の経営を、ゆるゆるのガバナンスで続ける日本の会社に対する批判は、ブルドッグソースがSteel Partnersの買収提案を毒薬条項の行使ではねつけて以来、ますます強まっていたが、今回の件はまさに大きな一石を投ずるものである。続くケースが現われるかが問題だ」というものに集約されます。


日本では、物事はじわじわとしか変わらない(partiality to incremental change)から多くは望めないとも言いながら、やはり変えうるという認識を与えた”事件”でありました。



食糧危機は”静かなる津波”(the silent Tsunami)

2008-05-30 | 環境・エネルギー・食糧
地球温暖化や砂漠化、急成長を遂げる新興国の需要急増、バイオ燃料への用途転換などによる食糧の需給バランスの劇的な変化に加えて、投機マネーの流入による更なる価格の押し上げが起こっています。

そして自国消費優先のための輸出禁止や制限によって、さらに問題は拡大しています。食糧と原油の価格高騰が最貧国の飢餓をさらに悪化させている現況を、Robert Zoellick世銀総裁は”Silent Tsunami”と表現して、緊急対応を呼びかけています。

4月に、世銀で150カ国によって緊急対応策が採択されて,12億ドルの飢餓救済基金が設定されることになっています。また6月には、ローマで国連主催の首脳会議、さらに、7月には洞爺湖でG8サミットが予定されていますが、これらの首脳会議においては、食糧問題対策が最重要議題の一つとなるはずです。

グローバリゼーションの進展で、国連・世銀・IMF・WTOのような国際機関の機能不全が目立ちますが、地球温暖化・金融危機・石油危機・食糧危機と立て続けに全人類的共通課題が起こっている情勢のもと本来の活躍が期待されます。


Sharon Stoneの'地震は因果応報(karma)'との失言で大激震

2008-05-29 | 中国・ロシア・インド・ブラジル動向
カンヌ映画祭に出席した、ハリウッド大女優Sharon Stoneは、香港TV局とのインタービューで、「四川大地震は、チベット人を抑圧している中国の悪政に対する因果応報(karma)である」との発言をし、これがインターネットに乗って中国に広く流れるところとなりました。

中国国内からの、反発は激しく、彼女がモデルを務めるDiorは驚き、彼女の発言は不適切でDiorはまったく支持しないと直ちに全面謝罪の姿勢を打ち出しました。

Diorは中国に、68店舗を展開し、北京市内にも11店舗を有して、強力な拡販を行っているところであり、主力化粧品のスキンケアのモデルとして彼女を2005年以来起用してきた同社の困惑は、計り知れません。

サルコジ大統領発言が引き起こしたカルフール不買運動が沈静化した直後でもあり、中国国民は大人の対応をするかは予断を許さない状況です。Diorは「何の因果(karma)でこうなるの」と恨みごとを言っているのではとの趣旨の見出しをFTがつけています。



Bush政権元報道官回想録出版 a serious strategic blunder

2008-05-29 | 米国・EU動向
Bush政権で2006年の辞任まで3年間報道を担当した、Scott McLellan氏が、”What Happened: Inside the Bush WHite House and Washington's Culture of Deception"(ブッシュ政権とワシントンの欺瞞の文化の内部で起こったこと)という内部告発の本を来週出版しますが、その内容が公開されてマスコミに大きく取り上げられています。

その中で、イラク戦争を、「深刻な戦略上のヘマであり、重大な誤謬」である断じるとともに、その政策遂行の際にブッシュ大統領は、率直さと正直さに欠けていたと非難しているとのことです。

また大統領自身の麻薬使用疑惑にも触れるなど、ホワイト・ハウス関係者は身内の裏切りに困惑し切っていて、「自分たちが知っているMclellan氏の言葉とは思えない」といぶかっているそうです。

この本の政治的な衝撃がいかなるものになるか当面目が離せません。

ユーロ10才 Emu's second 10 years may be tougher

2008-05-28 | グローバル政治
ユーロ導入の決定以来10年を経過しました。FTの論客Martin Wolfが「この先10年はこれまでのような、強大な通貨への成長の歴史の単純な延長となるほど、甘くない」という趣旨の一文を寄せています。

現在EU加盟国27ヶ国のうち、15ヶ国でユーロは通貨として採用されていますが、同氏は「ユーロを支える条約である、EMUは通貨連合としては成功したが、経済連合としては必ずしもそうではない」とも言っています。

域内の経済に関しては、1999年から2007年の間の加盟国内の経済力に大きな格差が生じていることが問題であるというのです。ちなみに、賃金、経常収支、内国投資額、住宅価格などについて大変な差が存在していることが数字で示されています。

拝啓チルドレン様 A letter to TCI

2008-05-28 | 世界から見た日本
本日のFTのLex Columnに風変わりな論評が載りました。

チルドレンのファンドに投資をしている投資家が、チルドレンに物申すという形を取ったものです。

鎖国的な国の、ハリネズミのようなかたくなな電力会社に出資をしようと、これ以上拘わりあうのは、投資家の利益にならない。ましてや、その電力会社の株式持合いをしている収益性も低い会社の株式を割高な株価で買うのはとんでもないとの叱責であります。

すなわち、チルドレンに説教をしつつ日本を揶揄しているのであります。

アジアの石油価格助成金 Asian Fuel Subsidies

2008-05-23 | グローバル経済
原油価格は、いよいよ130ドル台に達しました。

激変する市場で、価格統制や燃料価格補助金制度がある国々においては、思わぬ波及効果が発生します。

価格の暴騰に耐え切れず、台湾は石油に対する政府補助金制度を変更し、来月から小売価格を20%引き上げる方針であり、マレーシア・インドネシアも追随の公算が高まっています。

一方多消費国中国・インドは小売価格に関する制限を変更するのではないかといううわさを否定しています。

その結果中国の国営の元売り会社は、原油の仕入れ値の上昇を、小売価格に転嫁できないため、販売量を下げることで対応しています。こうした事態に中国政府は、オリンピックに際してのガソリン不足という事態回避のため、元売り会社への差損の負担を制度化したと伝えられています。

インドでは安い価格を維持する国営元売り会社と競合する民営元売り会社は、国営会社の価格に引きずられて売れば売るほど赤字になるので900箇所のガソリンスタンドを閉鎖したとのことです。


Moody's株価急落 Its shares tumble

2008-05-22 | グローバル企業
昨日のFT報道によって、Moody'sの株価は、15%急落しました。

米国のSECや、英国のFSAといった、金融・株式の監督機関は、通常の迅速な対応姿勢を示さず、「規制権限があるのか検討中」との曖昧な態度表明をしました。格付けの信頼性が揺らいだことで、金融システムへの更なる混乱が引き起こされる可能性があります。

Moody'sの約20%の株式を所有するのは、稀代の投資家Warren Buffet氏です。現在同氏は、欧州の非上場会社の買収をめざして、スイスなどを行脚中ですが、「一日でムーディーズの価値が変わるわけでもあるまい」と楽観的な反応を示しているとのことです。

ますます、この件から眼が離せません。

事業没収リスク BP Moscow office raid

2008-05-21 | 中国・ロシア・インド・ブラジル動向
BPとロシアの富豪との折半出資でガス田・油田開発を行うTNK-BPは、石油・ガス資源開発から外資を追い出したい政府とGazpromの強硬手段行使の新しい標的となっています。

昨日、TNK-BPの事務所は三月以来二度目の家宅捜査を受けたのです。先般BP出向者のビザ発給問題が解決したら、彼らに対し事務所での執務禁止命令が出されました。また約260億円の税金問題も提起されています。ガス田開発許可条件違反を提起され、その結果ガス田の権益をGazpromに売却することで合意しているものの契約調印は遅れに遅れています。

「この道はいつか来た道」を絵に描いたような強権発動を、プーチン大帝は、ロシア反体制派をかくまう憎き大英帝国に対して行っているようにも見えます。

欠陥格付露呈 a bug in Moody’s computer models

2008-05-21 | グローバル企業
FTが入手した文書によると、Moody'sの高度なデリバティブ金融商品の格付けを算出するコンピューター・モデルに欠陥があり、誤った格付けを行ったこと、またその事実は2007年初めには同社内で分かっていたとのことです。この誤りにより,最高のAAAと格付けされたものには、本来は最大4ノッチ下に格付けされるべきであったものがあるとも報じています。

昨年来、サブプライム・ローン問題から発して、それを組み込んだ金融商品の破綻損失が拡大するにつれ、規制当局は格付け機関の信頼性と責任を問題視し始めていましたが、大手金融機関の破綻危機が沈静化し始めたいま、改めてその責任が問われようとしているのだと思います。

前回のエンロン危機では、会計事務所の責任が問われて大きな業界再編につながりましたが、今回は格付け機関にどのようなことが起こるのか注視いたしましょう。

世界平和指数 US & Russia are given poor marks

2008-05-21 | グローバル政治
世界各国の、戦争・紛争への関与、軍事予算の多寡、国内治安などのfactorを加味して採点した140ヶ国についての”Global Peace Index"が、英国の独立系think tankから発表されました。

上位は、アイスランド、デンマーク、ノルウェー、ニュージーランド、日本の順番となっていますが、総じて西欧諸国が上位を占めています。

下位は140位から逆に、イラク、ソマリア、スーダン、アフガニスタン、イスラエルとなっていて、毎日の新聞の見出しからわれわれが持っているイメージと合致します。

一方大国の順位を見てみますと、中国は67位、米国は97位、ロシアは131位となっています。米国はイラクへの関与に加えて、満杯の刑務所や銃社会の問題が点数を下げている理由です。ロシアは悪名高いチェチェン紛争で大きく点数を失いましたが(given poor marks)、ロシア・マフィアによる凶悪犯罪や反体制派の暗殺などのロシア社会の暗部も問題視されています。

いろいろ考えさせられますが、日本は5位というのは注目してよいと思います。いろいろ問題もありますが、われわれは平和な国に住んでいるのだということでしょうか?

サブプライム伝染病 GE feeling the squeeze in Asia

2008-05-20 | グローバル経済
中国・インド・中東の急速な成長の果実を享受して、業績を大きく伸ばしてきた欧米の巨大企業、たとえばGE, Siemens, ABBなどは、これらの地域からの収益にかげりが見え始めたことを認め始めています。

GEは、その収益の半分以上を海外市場に依存するグローバル企業に変身することに成功しています。ここに来て、中国・インドがサブプライム問題に端を発する金融危機の影響を受け始めて成長が鈍化してきたために、GEも影響を免れぬ状況にあるというわけです。

他の地域や、市場での悪い出来事からの伝染を免れて、自らは隆々と生きていける状態にあることを、流行の言葉でいいますと、「decoupled」(結合されていない、遮断されている)といいます。

しかしこれはglobalized economyの下では、難しいことです。世界を一体化させた欧米の企業が、世界の他地域のいいことだけは一体化可能で、不都合なことは遮断できると考えるのはやはり不自然であります。globalizationとは一体化と同義語であるからです。

アラブの女性重役:More women on gulf boards

2008-05-19 | グローバル文化
クウェートの取締役会の女性の比率は、2.7%であり、イタリアの2%や日本の0.4%を凌駕しています。アラブ諸国のように一般には、女性の社会進出がまだ遅れている地域に比べてもわが国の、遅れが目立ちます。ちなみに、米国は13.6%, ノルウェーは22%です。

しかし湾岸各国の会社の取締役会は、ほとんどが一家族、一族で占められていることが多いので、governanceの観点からは、欧米と同列にには論じられぬことを付け加えておきましょう。

ソロス経済学デビュー:The New Paradigm for Financial System

2008-05-19 | グローバル経済
投資家George Soros氏が、30年来暖めてきたという独自の経済理論を、このほど本にして出版しました。その本の題名は,「金融システムの新しいパラダイム」です。

同氏は、既成の経済学による説明を否定して「市場では、人はその状況を認識しようとし、それを変えようと行動するが、その相互作用が起こるとき市場は反射的に反応する」との考えを中心に据え、バブルは「流れ」(trend)と「事実誤認」(misconception)の合成の結果起こる市場の反射的反応であるとの理論を構築しています。

同氏が、この考えに基づき実際に投資を行い、赫赫たる成果を出してきたわけですから、この理論の正当性は実証されているのだと見るか、はたまた反論の嵐が起こるか、無視されるか、これからが見ものであります。

一方われわれ素人には同氏の、「現在の信用危機は1930年代以来の巨大なものであり、ドルを基軸通貨とした25年にわたる信用膨張の時代の終焉である」との現状分析のほうが分かりやすく、思わずうなずいてしまいます。