世界の動きを英語で追う

世界と日本の最新のできごとを、英語のキーワードを軸にして取り上げます。

温暖化ガスを、「排出する権利」を売買する tradable pollution

2009-12-15 | 環境・エネルギー・食糧
2009年12月15日(火)

コペンハーゲンで行われている温暖化ガス排出削減に関する、「京都議定書」失効後の新しい条約締結のための政府間の交渉は、難航を極めている。

中でも温暖化そのものを科学者の「情報操作」によるインチキと、決め付けるサウジなどの産油国の反対は異彩を放っている。また、二酸化炭素の排出などはほとんど自然現象の域を出ない多数の最貧国が大多数を占めるアフリカは、先進国からの援助金の劇的な増額を求めているが、会議の進行に不満を抱き昨日会議を数時間集団でボイコットした。

急速な経済成長を遂げつつある、中国・インド・ブラジルなどは、先進国に対し、「自分たちは二酸化炭素排出を好きなだけして経済成長を果たした上で、他国の成長に対して制限を加えるなど、いわば「盗人猛々しい」論理である」と怒り、先進国側のさらなる削減と、発展途上国の支援の増額を求めて強硬な態度を崩さない。

中国は、自らを「発展途上国」と呼んで、日本などの2020-30年時点での排出削減提案を、「不十分」と非難している。

ここにきて「京都議定書の延長」というウルトラCの対案が出てきて混迷の度が深まりつつあるが、金曜日の閉幕までにコペンハーゲン入りするオバマ大統領などの各国首脳が、この混乱をいかに収拾できるかが注目の的である。(イタリアのベルスコーニ首相はミラノでの負傷で出席取りやめとなった)

そんな中、二酸化炭素の排出権の取引を通じて、排出量削減努力を後押ししようとの意図の下に、EUが推進する、「排出権取引市場」(carbon trading market)は、低迷を続けているとFinancial Timesが報じている。

現在、「排出権」は、1トン当たり14ユーロに低迷している。ちなみに、2006年には一時30ユーロを越えたときもあるが、2008年の前半までは、20ドル台にはとどまっていた。排出権の売り手になる新エネルギーにとって投資採算ラインに達する排出権価格は: 地上風力発電131ユーロ、海上風力248ユーロ、太陽光572ユーロと算定される。

一方、金融界やヘッジファンドの一部は、排出権を金融商品市場の崩壊後の有望商品として希望を託している。その例としてBloombergが、コンサルタントのNew Energyを先週買収したが、その理由は、「排出権市場が今後10年で200兆円市場に急成長をする」という読みだそうである。

果たして排出権取引が、二酸化炭素排出抑制の有効な手段となりうるか、単に投機の対象商品としてまたも災危の源になるのか、まだ見えない。

南京30万人大虐殺72周年記念 Nanjing Massacre remembered

2009-12-14 | グローバル政治
2009年12月14日(月)

本日の、中国の「人民日報」のサイトを見てみると、英語版と日本語版では内容が違うことに気がつく。

日本語版では、11日付けで「習近平副主席が日本、韓国、カンボジア、ミャンマー歴訪へ」という記事と、「胡錦濤主席、日本の民主党代表団と会談」との記事が出ているが、英語版にはない。

記事によると、習近平副主席の訪日は、「日本政府、韓国政府、カンボジア政府、およびミャンマーのマウン・エイ国家平和開発評議会副議長の招待を受け、12月14日から22日にかけてこれら4カ国を公式訪問する」中のひとつであることがわかる。

そして、140人の国会議員を含む600人の大訪中団を引率した小沢民主党幹事長が、胡錦濤主席に語った言葉を、そのまま引用すると:

「中国の経済・社会発展の新たな成果や、国際・地域問題において中国の果たしている重要な建設的役割を高く評価。国際・地域情勢の深いレベルでの変化は、各分野での両国の友好協力の深化に、広大な展望を切り開いた。民主党は一貫して日中関係の全面的な発展を自らの務めとしており、今後も引き続き両党の交流制度を土台に、中国側との協力を強化し、日中戦略的互恵関係をたゆまず新たな段階へと押し上げるべく努力していく」となっている。

一方、英語版にあって日本語版にないのが、"Nanjing Massacre remembered after 72 years"(南京虐殺、72周年を偲ぶ)という記事である。

「人々は、第二次世界大戦中に日本の侵略軍が犯した南京大虐殺を生き残った人たちの写真展を訪れた。12月13日は、30万人が死んだ南京虐殺の72周年の記念日である(Dec. 13, 2009 is the 72nd anniversary of the Nanjing massacre, which left 300,000 Chinese people dead.)」との記事とともに、6枚の当日の模様を伝える写真を掲載している。


イラク、外国資本を入れて石油大国へ The two-day auction

2009-12-13 | グローバル政治
2009年12月13日(日)

イラクが、石油確認埋蔵量(proven oil reserves)で、サウジアラビアに注ぐ世界第2位となる公算が高まり、OPEC内にも生産割り当て(quota)に関して大きな地殻変動が起きるだろうと、Financial Timesがトップ記事で報じている。

イラク政府は、油田開発を外国企業に開放する方針の下、金曜日と土曜日に国際公開入札を実施した。その結果、イラク政府は、先にExxonMobil、Eni、BPとの油田開発契約を調印したことに続いて、金曜日にはRoyal Dutch Shellと中国のCNPCの両社と、そして土曜日にはロシアのLukoilと立て続けに契約調印を行った。

現在イラクの石油埋蔵量は、1,150億バーレルとされており、サウジの2,640億バーレル、イランの1,370億バーレルの後塵を拝して世界第3位である。しかしこのイラクの数字は、1970年代に行われた調査に基づくものであり、その後の探査技術の長足の進歩の結果を考慮すると、サウジアラビアと比肩するものになると推定されている。

今回、各社と合意に達した内容を総合すると、今後10年以内に原油生産は、現在の日量730万バーレルから、サウジを越える日量1000万バーレルに達する計画となる。しかし、目標の生産に達するにはパイプライン、輸出港の施設整備、道路建設などのインフラ整備が大前提となっている。

そして、最も大きな問題は治安回復が進むかである。日本からは今回の入札で、石油資源開発がマレーシアのPetronasと組んで、日量23万バーレルの油田開発権を獲得したが、「治安安定化までは自社社員は現地入りさせない」と発表している。イラク国内では、宗派間対立から首都バグダッドのみならず全土で爆弾テロは沈静化するどころか、激しさを増している状況下治安問題は予断を許さない。

しかも今回の入札は、「戦後」の石油利権の獲得を目指す各社の激しい競争となり、それを反映して開発報酬はダンピングとも言うべきレベルまで下がった。果たしてそれが、石油の販売から得る利益と大きな開発リスクと見合うかどうかはわからない。

さらに大きな不確定要素として残るのは、来年3月に予定される総選挙によって安定的な政府が樹立されるかどうか、またその政府が今回の外国企業との契約をそのまま継続するかどうかである。




資本主義経済は中国に学ぼう Inflation returns to China

2009-12-12 | グローバル経済
2009年12月12日(土)

中国国家統計局が11日発表した11月の経済指標を読むと中国の経済にも大きな転機が来ている。鉱工業生産が2007年6月以来の19.2%の大幅な伸びとなり、順調な回復をしている。消費者物価指数は10カ月ぶりに前年比で0.6%の上昇と前年比でプラスに転じた。

中国政府は景気浮揚策として、今年60兆円を集中的に注入したが、その効果が急速に現れ,こうした指標に示されている。中国は、米国の大恐慌前後の経済運営の大失敗をよく学んで、ケインズ経済学の教科書どおりの処方箋で進んでいる。一方、当然のことながら、通貨供給量は、年率で30%近い急膨張となり、食料・エネルギー価格も騰勢を強めていて、インフレの足音が聞こえ始めた。

中国政府は、注意深くインフレ対策を打とうとしているが、輸出が本格的に回復するまでは、低金利政策を変えるわけには行かない。そして人民元の事実上の安値固定という為替政策に変更を加えるわけには行かない。

今、金利を上げれば、外国からの資金が洪水のごとく、中国の株式市場と不動産市場に流入して、インフレ抑制の効果はないばかりか逆に、バブルをあおることになる。今、人民元を為替操作から解き放てば、急上昇して輸出にブレーキがかかるから、欧米がどんなに圧力を加えても屈するわけには行かない。

金利を引き上げるのは、欧米が引き上げた後にすること、人民元の切り上げは、インフレ沈静化のために輸入物価を下げる必要が出てからというのが、中国政府の政策担当者の腹積もりだろうと、Financial Timesが、各方面の分析を紹介してる。

市場経済に、慣らし運転から高速道路に乗りつつある中国の経済運営は、このようにしたたかであるが日本はどうか。鳩山政権が超低金利政策を維持し、これから7.2兆円の補正予算と、来年度の94兆円という超赤字予算を組むと発表しても、デフレ圧力は弱まるどころかますます強まっていて、経済の収縮はとまらない。長期金利も低位に張り付いている。

その理由を解く鍵のひとつが、過去には存在しなかった形での、今の中国の存在である。一人当たりのGDPで見ると都市部で日本の1/10、内陸部で日本の1/100という所得水準の労働者が生産する商品を、人為的な水準に固定された人民元で換算して輸出する13億人の超大国中国が隣人として君臨する現実を見る必要がある。

日本の労働者の賃金が、中国の労働者の賃金に収斂する方向に向い、同時に大量の失業を生み出すのは経済の必然である。移民をかたくなに遮断しながら、労働人口の減少を嘆き、高賃金を維持しようとするのは経済原理に反することに気がつくべきである。ファンダメンタルズの裏付けのない円高のもと、1000円を割る中国製ジーパンが、数百万着売れたと単純に喜んでいるわけにはいかないはずである。



オバマ、受賞演説での「良い戦争論」 American Exceptionalism

2009-12-11 | グローバル政治
2009年12月11日(金)

アフガニスタンに3万人を増派することを決定した直後のオバマ大統領は、ノーベル平和賞授賞式に臨み、その記念演説の中で、一貫して「戦争の中には(some war)には、『良い戦争』(just war)がある」との信念に基づき、大統領として決定した戦争拡大方針を正当化した。もちろん米国の戦っているのは「良い戦争」である。

この良い戦争と良い平和(the idea of a "just war" and a "just peace")という言葉の底にあるのは、「米国の考える正義が人類の正義であることは歴史が証明している」との信念である。

アメリカは常に正しいという主張(American Exceptionalism)が演説の随所に通奏低音として聞こえてくる。

「どんな誤りを犯していたとしても、この60年間にわたり米国はその国民の血と武力によって世界平和の維持に寄与してきたというのも事実なのだ」(“The United States of America has helped underwrite global security for more than six decades with the blood of our citizens and the strength of our arms.”)

「戦争行為は、平和維持のために一定の役割を果たす手段である。」(The instruments of war do have a role to play in preserving the peace.)

「アルカイダのように交渉では武器を捨てない集団がいるからこそ、時には武力が正当化されるという言葉を、冷笑の対象にしてはならない。その言葉こそが、歴史を(正しく)認識し、人類が不完全な存在であること、理性には限界があることを認識することにほかならないからだ。」

「戦争自体は、決して光り輝くものではないし、賞賛すべきものでもない。しかしそのことと、正義のために戦争は必要であり、またある種の人間の感情の表現であることは相反することである。それゆえ、この二つの真実にどう折り合いをつけさせることができるかが大きな課題なのだ」("War itself is never glorious, and we must never trumpet it as such, So part of our challenge is reconciling these two seemingly irreconcilable truths -- that war is sometimes necessary, and war is at some level an expression of human feelings.")

大統領が、このノーベル平和授賞に値する働きをしたかについての、米国世論調査が出ている。大統領はしたと答えたのは17%、まだだが将来するだろうという人が、35%、していないし将来もしないだろうと答えた人は、43%に達している。

こんな中で、いわば「褒め殺し」状況の授賞であるのだが、スエーデン側は、「オバマ大統領の平和への努力への応援」だと説明している。そして大統領は、「平和のために良い戦争を戦う」という、自己撞着に満ちた道を歩むことを宣言したのである。


タイガーのCM中止はいつまでか "Gatorade Tiger Focus"

2009-12-10 | グローバル経済
2009年12月10日(木)

三大TVネットワークは、自らそのblog上で「道を踏み誤ったこと」(transgrssion)を認めたタイガーウッズのCMを、11月30日以来全面的に停止している。この措置は徹底していて、先週末のタイガーが主催するゴルフ大会であるthe Chevron World Challengeの放映時にも、彼のCMは出さなかった。

一方、これらのタイガーを起用しているほとんどのスポンサー会社は、「タイガーとの契約は維持するが、ここ数週間は、CMからタイガーははずす」という方針を打ち出している。この数週間の間に、事態の推移を見ながら、今後の方針を慎重に見極めようというのが大勢のようである。

タイガーを起用しているスポンサーとしては、スポーツ用品のNike、かみそりのGillette、スポーツドリンクのGatorade、電話会社のAT&T、コンサルタントのAccentureなどそうそうたる業界のトップ会社が並んでいる。

このなかで、タイガーをはずすと明言したのは、Gatoradeのみであるが、同社は「この決定は事件以前にされていたもの」とコメントしている。その販売中止を決めた商品の名前は"Gatorade Tiger Focus"というもので、タイガーの名前が入っているがその本当の理由かも知れない。

これらのスポンサーや、一枚1,000ドルもする署名を含めた各種のグッズからタイガーが得ている収入は、今年だけでも100億円、これまでのそれらの収入の合計は1,000億円を超えると算定されている。目下のところタイガー自身の「ブランド価値」の毀損は壊滅的である。

ブランド価値維持に多額の費用を投じている、消費者商品の製造販売会社としては、タイガーというスーパースターが生み出してきた収益と、スキャンダルによるブランドイメージの毀損を天秤にかけて、固唾をのんで次々と現れる、タイガーのお友達(mistresses)の写真を眺めているはずである。

一方、こうした騒動の中でも、これを利用する抜け目のない動きも活発だと、ABC放送は伝えている。ネットオークションのeBayは、タイガー関連商品を4,606から、7,680種類に増やしたのがその例である。



ドバイ発金融危機の感染者第一号はギリシャか 

2009-12-09 | グローバル経済
2009年12月9日(水)

ドバイワールドの2.6兆円の巨額債務のうち今月に返済期限が到来する部分についての、英銀を中心とする債権者との繰り延べ交渉が始まり、小康を得たかに見えたドバイの金融情勢にまた新たな問題が浮上した。

ドバイ電力水利庁の債務2000億円分を証券化して売り出されている債券に問題が波及したのだ。この証券の償還期限はもともと、2036年であったが、ドバイ政府系企業の格付けが下げられたために、「期限の利益」を喪失して、繰上げ償還を求められる公算が高くなった。

その新しい償還期限は、ドバイワールド子会社の債務4000億円の返済期限12月14日と同日になるという。

ドバイ政府は、ドバイワールドは政府系であっても独立企業であるとして、「貸し手責任」を主張してきたが、今回のドバイ電力水利庁は政府そのものであり、国家による債務保証(sovereign debt guarantee)が与えられている。

しかし、ドバイの返済能力への疑問から、たとえ債権者が「繰り上げ償還の権利放棄」をしても、それが「債務不履行」とみなされる可能性があり、格付け機関は、直ちに従来のA格から、BBBマイナスないしはその下のジャンク債の格付けまで落とした。その結果、下げが続くドバイの株式市場は、即日さらに6%下げた。

ドバイ一国の金融破たんから、経済発展途上国への問題波及への懸念があり、特に、バブル投資に沸いてきた、アイルランド・ギリシャ・東欧諸国などに連鎖の兆しが出ている。まず、首都アテネの治安が悪化の一途にあり、財政破綻状態にあるギリシャが感染したようだ。

Standard & Poor'sは、ギリシャの格付けをAマイナスは維持したものの「要注意」とした。Jean-Claude Trichet欧州中央銀行総裁は、「財政再建に果断なる行動を」とギリシャ政府へ警告を発したが、これはマイナスAより下になると、欧州中央銀行からの貸し出しに支障が出ることを念頭においての発言であった。

このニュースに影響されて、火曜日のNY株式市場は、ダウ平均で100ドル以上の下げとなった。

波高いコペンハーゲン会議の開幕 The e-mail Flap

2009-12-08 | 環境・エネルギー・食糧
2009年12月8日

地球温暖化対策を話し合い、「京都議定書」失効後の新しい枠組みの締結を目指すCOP15がコペンハーゲンで月曜日に開幕した。

初日は、主催者の国連が、協定に向かわせるためのムードを盛り上げに腐心したが、もっとも大きな障害は、CO2排出大国の米中がどれだけの実質排出削減に応じるかに尽きる。

それとともに、温暖化問題の原因をこれまで作ってこなかった貧しい発展途上国に、対策費用を先進国がどれだけ拠出できるかも大きな議論の対象となる。

会議開催前に、米国、中国、インド、ブラジル、南アフリカなどの、これまで京都議定書の中では具体的な削減目標値をコミットしてこなかった国々が今回数値目標を出してきたことは大きな前進ではあるが、その数値は低すぎるとの批判が強い。

こうした、会議前の世界の論調に対して、総会の議長を務める主催地デンマークのConnie Hedegaard 大臣は、「地球大気の上昇を摂氏2℃以内に抑えるべし」とする科学者のコンセンサスに向かって各国が肯定的に行動することが協定達成の可能性を高めるが、われわれはまだそこまでいたっていない。また途上国への経済援助について合意できるかどうかもこの会議の課題である」と発言している。

しかし、もっと注目されるのは、ノーベル賞の受賞者、IPCC議長のパチャウリ氏の発言であった。同氏は「温暖化防止の行動を!」と訴えたが、同時に最近英国の大学のサーバーに侵入したハッカーが、「地球環境科学者たちが、事実を歪曲させてまでも問題を誇大に宣伝しようとした意図があること」を示すe-mailを暴露した騒動(the e-mail flap)を取り上げた。

同氏は、地球温暖化を示す確固たる証拠を数え上げて、「これらの数々の証拠は一致して地球温暖化傾向に関する科学的研究成果を裏付けている」と、今回指弾されている科学者の研究も含めて、異例の擁護の発言をしたことが注目される。

パチャウリ氏が、会議冒頭であえて言及しなければならないほど、地球温暖化研究のための科学者の方法論や、温暖化現象の科学的解釈について疑義をさしはさむ圧力も高まっている。それは純粋の科学的見地からの反論もあれば、政治的な意図に基づくものもある。

オバマ大統領支持率50%割れ Obama's approval rating

2009-12-07 | 米国・EU動向
2009年12月7日(月)

CNNが実施した電話による世論調査によると、「オバマが大統領として行っている仕事(the job Obama is doing as president)を支持するか?」という問いに対して支持するとした回答が50%を割り込んだことを報じている。この数字は先月の調査から7ポイントの急落である。

アフガニスタン増派を発表した直後の調査であったが、もっとも大きく支持率を下げた層は、「大学を出ていない白人」(noncollege-educated white voters)の層であることは、失業問題が色濃く反映されたものと解釈されている。若者や女性の間での支持率が急落していることも同様の理由であると推定されている。

一方、アフガニスタンへの3万人増派への支持は60%で、2011年中半に撤兵するとしたことには、2/3の支持を受けている。しかし大半のアメリカ人は、撤兵時期を最初に示すのは愚策であると考え、その時期になっても撤兵できなくなるとだろうと思っている人が大勢を占めていることも同時に判明した。

また重要なことは、アメリカ人は、アフガニスタン政策を支持しつつも戦争自体には反対だと答えている。現在のアフガニスタン問題への対応は、ブッシュの後始末と考えている人が多くいるが、54%の人は、「2011年に解決できていなければ、それはオバマの責任」と回答している。


この世論調査は、ほとんど共和党の主張と同じである。このためもあってか、アフガニスタンの撤兵時期については、クリントン国務長官や、ゲーツ国防長官は、「情勢次第のことである」との趣旨で相次いで発言し、オバマ大統領の、「2011年7月から撤兵開始」という明言を事実上撤回し始めている。

大統領就任の年に、支持率が50%を割り込んだ大統領は、オバマが最初ではない。レーガン大統領は、同じく11月に49%に、クリントンは5月には割りこんでしまったという記録がある。




ロシア大統領、クラブ惨事に怒り No brains and No conscience

2009-12-06 | 中国・ロシア・インド・ブラジル動向
2009年12月6日(日)

ロシアの英語ネットメディア「RIANOVOSTI」が、「ロシア・ウラル地方のペルミにあるナイトクラブで現地の土曜日朝1時ころに発生した火災によって、100人以上が死亡、130人以上が負傷した」と大惨事を報道している。

「連邦検察捜査委員会は、ナイトクラブ設立7周年を祝うパーティの会場内での花火の違法使用が原因とみて安全規則違反容疑で捜査を始め、クラブの支配人2人を拘束し、さらに4人を同じ容疑で指名手配した」

現地に急派された緊急事態相(Emergency Minister)とのTV電話会議で「このナイトクラブでは過去に2度、花火の使用で罰金処分を受けており、来週も消防の査察を受ける予定となっていた。」と報告を受けた、メドベージェフ・ロシア大統領が、怒りの声明を発表した。

「彼らには使う頭もなければ良心もない(no brains and no conscience)。現場で起こっていたことに無関心いられたとは恐るべきことだ。徹底した処罰を行う。現在の法律では今回の責任者が受ける刑罰は軽すぎる。このような犯罪行為には、法改正をしてもっと重い刑で臨むべきだ」と怒り、12月7日を「国民服喪の日」とした。現地のロシア・ウラル地方のペルミ州の知事も、3日間の服喪を発表し、この期間TVやラジオでの「歌舞音曲」に放送に自粛を求めた。

このナイトクラブ‘the Lame Horse’のサイトwww.clubxl.ru.は、まだネット上にupされたままになっていて、その7周年パーティーの広告を、日本時間の午前8時時点で見れるが、そこには「 P.S. Колпачки, дудочки, сосочки и шарики приветствуются. В костюме новорожденных вход FREE до 0: 00!」となっている。

それは,"guests dressed as new-born babies are admitted free until midnight."(12時までに生まれたままの格好でご来場のかたは入場無料)という意味であると、この英語ネット局が解説している。



民主党政府、連立小党に振り回される Indecisive and Disunited 

2009-12-05 | 世界から見た日本
2009年12月5日(土)

Financial Times が経済対策をめぐる政府与党内の混乱振りを、「連立小党強硬反対で、景気対策遅延」(Japan coalition partner forces stimulus delay)との見出しで報じている。

7兆円の政府案に対して、小さいながら声の大きい(a small but vocal )の国民新党が8兆円を主張して譲らず、結論は来週に持ち越したが、この政府与党内の優柔不断と不統一(indecisive and disunited)は、野党の攻撃の的になるであろうと予想している。

鳩山首相は、積極的財政出動を主張する金融担当大臣を務める国民新党党首の亀井氏に対する気兼ねしている(unwilling to overrule directly Shizuka Kamei)いると解説。一方財政規律を唱える藤井財務大臣に対して、亀井氏は、歯に衣を着せない批判を加えていることをその言葉を引用してまで伝えている。

さらに鳩山首相の「気兼ね」は、米軍の普天間基地移転問題に絡んでもうひとつの連立小党党首である福島氏にも及んでいる。福島氏の、「政府が米国との合意を実行するならば、連立離脱もありうべし」と恫喝に屈し(bowing to pressure from the SDP leader Mizuho Fukushima)、この問題の最終決断を来年まで先延ばしする公算が大と同紙は伝えている。

そして、同日の国会最終日に、郵政株凍結法案が成立したことを伝えるThe Wall Street Journal記事の中に登場するのは、小泉元首相と、その言葉まで引用された亀井大臣のみであることも、何かを象徴している。



GE、NBC売却で8000億円の利益創出 $8Bn Gain from Spin-off

2009-12-04 | グローバル企業
2009年12月4日(金)

米国のメディア産業の再編に非常に大きな変化をもたらす可能性の大きい企業売却・統合が行われる。

GEが事実上支配する三大放送ネットワークのひとつNBCU(NBCユニバーサル)と、米ブロードバンド(高速大容量)インフラ大手のコムキャスト(Comcast)のCATV部分が合体し、新NBCUとすることで両者が合意した。

それと同時に今年3月から行われてきたこの大型M&Aの構造も明らかになった。まずNBCUの総資産は300億ドル、総負債は91億ドルと算定された。これを現在GEが80%、フランスのメディア大手のVivendiが20%保有しているので、まずGEが、Vivendi株を58億ドルで買収し、100%支配下に置く。

そして、Comcastはその72.5億ドルと算定されたCATV資産と、キャシュ65億ドルを拠出し、新NBCUの51%の株式を取得して支配権を取る。GEは49%の株式保有を継続するというものである。

しかし、この総資産372.5億ドルとなる新NBCUという放送・CATV複合メディアの出現に対して、今後議会や独禁法監督機関の厳しい審査(tough scrutiny)が待ち受けているとFinancial Timesは報じている。

GEのImmelt会長は、CNBCの記者会見で、「再投資にまわせる資金は、このNBCUの部分売却後で、250億ドル(約2.5兆円)に達すると発表したことに基づき、Financial Timesは、この売却で得た収益は80億ドル(約8000億円)と計算している。

同紙は、この資金は、今週落札に失敗したフランスのAreva社の送・配電機器製造部門の買収資金に充当を予定されていたものと推定している。

余談。GEは、コネチカット州フェアフィールドに本社を置くが、NYにはNBCが入る30 Rockefeller Plazaにも豪奢な事務所を構え、屋上にはGEのロゴを燦然と輝かせている。

もともとこのビルはNBCの元のオーナーであった電気通信機メーカーのRCAが所有していたものを、GEが1986年に4億ドル以上で買収したものであるが、それ以後GEのシンボルタワーとなってきた。

ABC放送は、「GE幹部はNBCの支配権を売却後も、この事務所とロゴを残すことに執着」していることに対して、"CEO Ego"との批判が出ていることを伝えている。


旧ソ連の敗軍の将、アフガン敗退を語る An Unwinnable War

2009-12-03 | 世界から見た日本
2009年12月3日(木)

昨日のオバマ大統領のアフガニスタン戦線への3万人増派決定に対して、米国議会内で厳しい質問にさらされはじめているが、CNNは旧ソ連軍の将軍で、国防副大臣まで務めたVictor Yermakov元司令官とのインタビューの結果を報じている。

同将軍の警告の言葉は、「戦禍の地で歴史は繰り返される。米国とその同盟軍はいよいよ’勝利なき戦い’の泥沼に苦しむことになる」(The United States and its allies become increasingly mired in an "unwinnable war.")ということに尽きている。

「ソ連は、1979年の侵攻以来9年間に15,000人の戦死者を出すという血みどろの戦いの末、10万人の将兵を無残な形で撤兵させざるを得なかった。それがソ連経済の破綻にもつながった。アフガン人を武力で屈服させようとした試みは失敗した。そしてアフガンは、‘ソ連のベトナム戦争’と化した。20年後の今日オバマ大統領は10万の米軍と、4.5万の同盟軍で同じことをしようとしている」

「われわれも、大軍を繰り出したが、決してアフガン征服が目的ではなかった。政治的安定化のために国際協力の手を差し伸べようという大義の下にやったのではある。しかし武力で民主主義を押し付けることはできない」

「アフガン人は、今日は外国人の言うことを聞くふりをする。米国民主主義は最高だと。当時でさえアフガン人は、ソ連政体は最高だといってくれたのだ。しかし、撤兵すればその背中を撃ってくるのがアフガン人だ」

「16世紀にかの地に到着したチンギス汗の末裔である当時の最高指導者Baburは言った:アフガニスタンは征服されたことはない。誰にも降伏したことはない、自由を愛する民なのだと」

「武力で拠点確保をしたとしても、米軍はソ連軍と同じ過ちを犯すであろう。そこに友好的な政権を樹立させたとしても、米軍が去れば元の木阿弥と化す。ソ連が武力制圧できた地域でさえ、支配できたのは昼間だけで、夜になればムジャヘッディンの世界だった。米軍が昼間制圧しても、夜になればタリバンの世界であるのは今も同じだ」

ではどうすればよいのかという問いに対して、元将軍は、「軍事費に使う巨額の予算をそっくり民生安定化にそそぎこめばよいのだ。アフガン経済を立て直し、産業を興し、教育制度を確立し、学校やモスクを再建させることだ。ソ連は撤兵後そのような方向に転換して、それが機能することがわかった。残念ながらそれを思い知ったのは撤兵後4年も経った時であったことだ」と結んだ。



オバマ、アフガン戦略発表へ "very aggressive"

2009-12-02 | グローバル政治
2009年12月2日(水)

本日,後数時間後の日本時間午前10:00よりオバマ大統領は、ウェストポイント陸軍士官学校で、米国のアフガン軍事作戦方針を発表する。

現時点までに、メディアに明らかになったところをまとめると、増派規模は、オバマ大統領が「当初想定した2万人」より多く、現地司令官の要請の「4万人以上」よりは少ない3万人を6ヶ月以内に展開し、米軍兵力を10万人とするものである。

このペースは「現地司令官の要請の1年」より加速されたものとなる。意思決定を遅らせて、実行を加速させるのは現実的ではないとの批判が出ているが、軍関係者は、「"very aggressive"だがやりぬく」とのコメントをしている。

そして撤兵の目途(timeline)は3年。これについては、反政府活動を鎮圧した上でアフガン軍・警察に治安維持能力をつけてから撤兵するには期間が短すぎるとの批判がすでに出始めている。

また、戦費は毎年300億ドル(約3兆円)が必要であり、このため戦費への充当目的の特別税(surtax)創設も俎上に上っている。大統領は発表の中で戦費調達の方針も明らかにする。

一方、CNNが緊急に行った世論調査では、アフガン増派に対して賛否は拮抗している。与党民主党支持者の間では、約7割が反対し、野党共和党支持者は7割が賛成している。男性は、支持が大勢を、女性は反対が大勢を占めている。

現在までの米兵のアフガニスタンにおける死者は900人、英国をはじめとするNATO軍の死者は、600名に達している。こうした拮抗する世論を背景にオバマ大統が、議会でこの戦争方針に対する賛成を得ることは、容易ではない。

また、「オバマのアフガン」が「ブッシュのイラク」の二の舞になることを懸念する声も出ている。大統領は、今月オスロで、ノーベル平和賞を授賞式に望むが、その際の受賞の答礼演説も注目される。


オバマ、アフガン派兵方針明日発表 To ‘finish the job’

2009-12-01 | グローバル政治
2001年12月1日(火)

オバマ大統領は、就任時にイラク撤兵とアフガン増派方針を打ち出しながらその後、最終決定を先送りしてきた。いよいよ先送りの限度である年末を控えて、火曜日夕刻(日本時間水曜日10:00)に、公式発表することを明らかにした。大統領発表では、増派規模の決定に加えて、増派の理由付けと、撤兵時期の明示が求められている。

最終段階でここまで増派についての意思決定が遅れた理由は、まず、アフガンの大統領選挙による不正投票が白日の下にさらした同国政府内にはびこる汚職の実態である。そしてタリバン掃蕩作戦がおよそ成功することがおよびもつかないほど膠着し、同盟軍の死者が急増していることである。そして現地軍司令官の4万人以上の増派要請に対し、現地大使が反対するという異例の事態に立ち至ったことがあげられる。

火曜日の大統領演説に先立ち、日曜日夜にヒラリー国務長官、ゲイツ国防長官に加え、McChrystal現地司令官とKarl Eikenberry大使を交えた緊急ビデオ会議が招集され、大統領から方針の説明があった模様である。それを受けて米国のメディアは、増派規模を3万人と推定報道している。これが事実とすると現在アフガニスタンには、68,000人の米軍が駐留しているので、ほぼ10万人の規模となる。

これに先立ち、オバマ大統領は先週、「自分の任期中にアフガン問題を片付ける(finish the job)」 と宣言している。またオバマ大統領を側面援助するために、盟邦英国のBrown首相は、5,000人の増派を決定し、派遣軍の規模を1万人にすることを議会に説明した。

イタリアのFranco Frattini外務大臣も増派をすでに発表している。オバマ大統領は、すでに英・仏・伊・露の各国首脳に直接電話で説明、ワシントン訪問中のオーストラリアのKevin Rudd首相には直接説明を行ったことが明らかになっている。

Brown首相は議会で、英国内からテロの危険を排除するためには、アフガン・パキスタン地域のアルカイダやタリバン勢力を駆逐することが必要と力説し、「この問題が生じたところで、同盟軍とともに戦わねば、われわれの義務を果たしたことにはならない」"We should be failing in our duty if we didn't work with our allies to deal with the problem where it starts."と発言している。

歴史を紐解けば、英国は、1838-42年と1878-80年の2回にわたり、ロシアとイランの勢力拡大を阻止するためにアフガンに侵攻し、現地のゲリラ軍に完膚なきまでに敗北を喫したという因縁の場所である。1979年に侵攻したソ連軍も、米国の支援を受けたタリバンに対して悲劇的な敗北を喫し、ソ連軍の権威失墜から、ベルリンの壁崩壊に至ったことは記憶に新しい。今タリバンに、米国をはじめとする西側同盟軍が挑んで、苦汁をなめている。