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オバマ、受賞演説での「良い戦争論」 American Exceptionalism

2009-12-11 | グローバル政治
2009年12月11日(金)

アフガニスタンに3万人を増派することを決定した直後のオバマ大統領は、ノーベル平和賞授賞式に臨み、その記念演説の中で、一貫して「戦争の中には(some war)には、『良い戦争』(just war)がある」との信念に基づき、大統領として決定した戦争拡大方針を正当化した。もちろん米国の戦っているのは「良い戦争」である。

この良い戦争と良い平和(the idea of a "just war" and a "just peace")という言葉の底にあるのは、「米国の考える正義が人類の正義であることは歴史が証明している」との信念である。

アメリカは常に正しいという主張(American Exceptionalism)が演説の随所に通奏低音として聞こえてくる。

「どんな誤りを犯していたとしても、この60年間にわたり米国はその国民の血と武力によって世界平和の維持に寄与してきたというのも事実なのだ」(“The United States of America has helped underwrite global security for more than six decades with the blood of our citizens and the strength of our arms.”)

「戦争行為は、平和維持のために一定の役割を果たす手段である。」(The instruments of war do have a role to play in preserving the peace.)

「アルカイダのように交渉では武器を捨てない集団がいるからこそ、時には武力が正当化されるという言葉を、冷笑の対象にしてはならない。その言葉こそが、歴史を(正しく)認識し、人類が不完全な存在であること、理性には限界があることを認識することにほかならないからだ。」

「戦争自体は、決して光り輝くものではないし、賞賛すべきものでもない。しかしそのことと、正義のために戦争は必要であり、またある種の人間の感情の表現であることは相反することである。それゆえ、この二つの真実にどう折り合いをつけさせることができるかが大きな課題なのだ」("War itself is never glorious, and we must never trumpet it as such, So part of our challenge is reconciling these two seemingly irreconcilable truths -- that war is sometimes necessary, and war is at some level an expression of human feelings.")

大統領が、このノーベル平和授賞に値する働きをしたかについての、米国世論調査が出ている。大統領はしたと答えたのは17%、まだだが将来するだろうという人が、35%、していないし将来もしないだろうと答えた人は、43%に達している。

こんな中で、いわば「褒め殺し」状況の授賞であるのだが、スエーデン側は、「オバマ大統領の平和への努力への応援」だと説明している。そして大統領は、「平和のために良い戦争を戦う」という、自己撞着に満ちた道を歩むことを宣言したのである。