世界の動きを英語で追う

世界と日本の最新のできごとを、英語のキーワードを軸にして取り上げます。

オバマ、オリンピックを優先 564 Amendments to Healthcare Bill

2009-09-29 | 世界から見た日本
2009年9月29日(火)

オバマ大統領が、シカゴに2016年の夏季オリンピックを招致するために、10月2日のコペンハーゲンにおけるIOCの投票を前に、現地入りしてアピールすることを突如決めた。

同大統領は直前まで、健保改革法案を成立させるための議会対策を優先するために、現地入りはしないとしてきたので、180°(about-face)の方針転換であると、Financial Timesが報じている。

オバマ大統領は、自分自身は行けないが代わりにミシェル夫人を現地入りさせるとしてきたのであるが、同大統領の出身地であるChicagoの応援のため、今行かないと、米国内からは万一Chicagoが落選した場合の反響が懸念されるからである。

ちなみにRio de Janeiroのためには、ルーラ大統領が、Madridのためにはカルロス国王が現地入りすることが決まっている。最終選考に残った東京を含む4都市の中で、Chicagoの選考委員の間での「評判」は、リオやマドリードに劣後していると伝えられている。

オバマ大統領の突然のコペンハーゲン入りの背景には、米国議会における健保改革法案審議の予想外の遅れという事態がある。天王山ともいうべき、上院財務委員会(the Senate finance committee)の可決は先週に予定されていたが、今週にもつれ込んで、審議日程の先行きが読めないほど混迷している。

この大きな原因は、共和党が審議妨害を狙って多数の改正案を提出していることにある。出された修正案はすでに564件に達しており、この審議のために、委員会審議は今週も続けられる。それがオバマ大統領に、「トンボ帰り」でIOCに対する最終説明会への出席を決心させた「本当の理由」である。

翻ってわが鳩山首相は、どう対処されるか。

「オバマは、右翼の陰謀の標的化」 Vast right-wing conspiracy

2009-09-28 | 米国・EU動向
2009年9月28日(月)

ビル・クリントン元大統領は、最近活発に表舞台に出たがっているようである。北朝鮮に拘束された女性記者の救出に、シャトル外交の冴えを見せて、オバマ大統領や、クリントン国務長官を出し抜いた成果を見せ付けたのは、記憶に新しい。

健保改革法案の扱いをめぐって、各地の政治集会(town meetings)で、特に白人高齢者層から過激な反対に会い、圧倒的多数を持つ議会でも法案審議がスムーズに進んでいないことに焦燥感を募らせるオバマ大統領であるが、先般ビル・クリントン氏は、「この反対運動の影には、オバマ大統領に対する人種偏見(racism)がある」と、突然いったい応援しているのか、妨害しているのか、効果の定まらない意見を発表して物議をかもした。

そして、今回は、NBC放送のインタビュー番組に出た同氏は、「オバマ大統領も、かつて自分を悩ました、右翼サイドからの同種の広範な陰謀活動(the right-wing conspiracy)の標的になっている」と、これまた、真意不明の「応援演説」を行った。

この、the right-wing conspiracyという言葉は、クリントン元大統領が、Monica Lewinskyとの不倫騒動が露見したときに、Hillary Clinton夫人が、政敵の大統領攻撃を称して、「大統領はその被害者」という意味をこめて使用したものである。

今回、当のご本人が、オバマ大統領援護にその言葉を持ち出すのも、真のメッセージは何かを考えると興味深い。もし、この「右翼の陰謀」が、米国の右半分の中に潜む黒い動機を表現しているとすると危険な兆候の予言である。

かつてアイゼンハウワー大統領が米国を蝕む諸悪の根源として非難した「軍産複合体」、Poor Whiteの人種差別主義、没落させられたFBIやCIAの反撃が始まるという意味で、ビル・クリントンはその言葉を使ったとすればである。


イラン、ミサイル発射実験敢行 Thunder and Conqueror

2009-09-27 | グローバル政治
2009年9月27日(日)

第二ウラン濃縮工場の建設を、米英仏の諜報機関に探知され、国連総会の直前に
世界原子力エネルギー機関(IAEA)に「自白」を余儀なくされたイランは、「何も国際協定に違反していない」と開き直っている。

一方、 ロシアや中国が今回はイラン擁護に回らないため、国連による対イラン「制裁」の可能性が高まっているが、イランはこの最中に二種類の短距離ミサイルの発射実験をあえて行い、国際社会への「反抗姿勢」をあらわにした。

2機のミサイルは、英語ではThunder69「雷鳴69型」と、Conqueror110「征服者110型」で、射程距離は150kmである。そして同時に、イスラエルを射程内におけるMeteor3「流星3型」の発射実験を月曜日に行う予定であることともに、イスラム革命防衛隊の戦争能力を向上させるためThe Great Prophet IV(偉大な預言者4世)というコードネームで呼ぶWar Game(戦時想定演習)を開始すると、今日発表した。

10月1日の、英米仏中ロ5カ国にドイツを加えた6カ国との協議を前に、イランは戦時体制準備に入っている。このイランの強硬姿勢は、イラク・アフガニスタン・パキスタンの不安定情勢をさらに不安定化させるばかりで、オバマ大統領の、「タリバン掃蕩作戦」に重大な影響を与えることになる。


オバマ、イランの「核隠し」を暴露 ‘Shock and Anger’

2009-09-26 | グローバル政治
2009年9月26日(土)

金曜日のピッツバーグで開催のG20金融首脳会議の直前、会議開始を遅らせて、オバマ大統領が英国ブラウン首相とフランスのサルコジ大統領を従えて緊急記者会見を行い、イランの秘密第二ウラン濃縮施設の存在を暴露し、イランを強く非難した。

この第二ウラン濃縮施設は、イランの南方160kmの地点にここ数年建設が進められていたこと、そして米・英・仏の3カ国の諜報機関が追跡していたものであると、オバマ大統領が発表したが、まさにこの施設は昨日の本欄で、「イランについてはウラン濃縮技術を含め状況未確認」としたものが明るみに出たということである。

10月1日に、イランと安保理常任理事国プラス独の6カ国が協議に入ることになっていること、そしてアハマディネジャド大統領の総会出席をにらんで、この濃縮施設の存在を、今週月曜日に米国は世界原子力エネルギー機関(AEIA)に通告したのである。

この3カ国の行動を察知して驚いたイランは、今週IAEAに公式書簡を送り濃縮工場の存在を認め、総会出席中の同大統領は「平和利用目的で、ここ1年程度で稼動させる。IAEAの査察を受け入れる」とこれまでの態度を一変させた。

これまでイランに同情的であったロシアも中国も、この事実の露見とイラン政府の「自白」の事態を前にして、もはやイランを表立って支持できない立場に追い込まれている。

これからイランは、このままでは上述の10月の会議では守勢に回ってしまうことは確実であるので、それを回避しようとする手を打つと思われる。そしてこの「自白」と「暴露」は、イスラエルの主張を裏付けたものになったので、同国が濃縮施設爆撃を含む極端な行動をとる可能性を、完全には排除できない。

オバマの「核なき世界」 A world without nuclear weapons

2009-09-25 | グローバル政治
2009年9月25日(金)

水曜日、国連安全保障理事会(the U.N. Security Council)は、核軍縮促進を決議した。オバマ大統領は、米国大統領として初めて安保理議長として、イランと北朝鮮の核兵器開発を非難した上で、核保有国には保有核弾頭数の削減を、開発途上国には、核兵器開発を行わぬようにと説得の演説を行った。

"We must stop the spread of nuclear weapons and seek the goal of a world without them.” 「核兵器拡散を阻止し、核なき世界という目標に向けて進まねばならない」というのが、同大統領の主張の真髄を形成している。

しかし、包括的核実験防止条約CTBT)に、米国はまだ批准していない。この条約には、クリントン政権が1996年9月に署名済みだが、当時共和党が多数派だった上院が批准に反対したままになっている。オバマ大統領は上院での批准を行うと宣言しているが、これを実行しない限り、世界に正義を求める資格は無い。

批准を拒んでいるそのほかの10カ国の顔ぶれを見れば、世界の不安定化要因がどこにあるか、一目瞭然である:イスラエル、イラン、インド、インドネシア、エジプト、コロンビア、中華人民共和国、朝鮮民主主義人民共和国、パキスタンである。

年末に期限が切れる、米ロ間の戦略核兵器削減交渉(START-I)は、米国が、イランを仮想敵国とした中欧での中距離核ミサイルとレーダー探査網の配備を見送ったことで、交渉再開の可能性が高まってきた。

オバマ大統領の「核なき世界」を作ろうとの呼びかけが、「核クラブにこれ以上の会員を入れないよ」という呼びかけに終わらぬよう、核クラブの存在そのものを消滅させてこそ、本来の意味になることを、日本人はしっかり意識しておかねばならない。

2008年1月現在の、核クラブ会員の核弾頭保有数が、一時より削減されたとは言え今なお地球を何回破壊しても余りあるほどに存在していることを再認識しておこう。

米国4075 ロシア5189
フランス348 イギリス185 
中国176 イスラエル80 
インド60-70 パキスタン60 
北朝鮮6-8? 
(イランについてはウラン濃縮技術を含め状況未確認)



オバマ、「問題は反米だけでは解決できない」 anti-Americanism

2009-09-24 | グローバル政治
2009年9月24日(木)

オバマ大統領は、世界の指導者を前に、国連総会で37分にわたる代表演説を行い「過去において、多くの国々がほとんど反射神経的に反米(almost reflexive anti-Americanism)の姿勢をとってきたが、それだけで世界の問題を解決できるわけはない、世界を、現状固定化(status quo)のくびきから解放させねばならない」と強い調子で訴えた。

「米国は、一人勝手に振舞っていると非難してきた国々は、(米国が協調によって問題解決しようと手を差し伸べている)今、傍観者に回って米国が一人で問題を解決するのを待っていることは許されない」というのが演説冒頭の一節である。

火曜日の、気候変動問題に関する首脳会議では、12月のコペンハーゲンのCOP15会議に向けての合意は形成されなかった。また、水曜日のイスラエル・パレスチナ・米国の首脳による初めての3者会談も、双方のかたくなな態度(immovable positions)でまったく進展を見なかった。

イラク撤兵から、アフガニスタン増派への転換シナリオは、不透明感が増しつつある。北朝鮮もイランも核問題でまったく譲歩の姿勢を見せない。ロシアのメジデェーエフ大統領から、国連の対イラン制裁発動で支持を取り付けたのが唯一の救いという外交上手詰まり状態に置かれている。

オバマ大統領の、米国の一国主義からの脱却を宣言する代表演説となったが、途中時折拍手が沸いたものの、standing ovationはとうとう出ず仕舞いであった。

オバマ大統領の演説直後に演壇に上がったリビヤのカダフィ大佐は、「総会は190カ国のためのただの飾り物。非民主的な運営の国連など戦後の遺物。安保理5カ国だけで物事が決まる国連など要らない」という趣旨の激越な長広舌をふるい、最後は国連憲章の冊子を後ろに投げ捨てた。

カダフィ大佐の態度の是非は別として、それを、「制度疲労と機能不全に陥って、肥大化した職員の官僚主義に蝕まれている国連を改革せねばならぬときが来ている」という意味にとるなら、その部分の主張は正しい。

安保理の常任理事国5カ国に限定した拒否権は、第二次世界大戦戦勝国の特権という遺制であることは、みんながわかっていて手を付けない、いわばオバマ大統領のいうstatus quo(現状固定)そのものである。



オバマ、中国主席に対イラン政策協力強硬要請 ‘Forceful’

2009-09-23 | グローバル政治
2009年9月23日(水)

オバマ米大統領は昨日、ニューヨークで中国の胡錦濤国家主席と会談し、冒頭、「真に協力的で包括的な米中関係を模索していく」との意向を表明したが、同時にイランの核開発阻止に向けた協力を強く求めた(President Barack Obama was “forceful” in calling for more co-operation from Beijing over Iran.)とFinancial Times が伝えている。

ここで、オバマ大統領の語気を伝える言葉として選ばれた“forceful”「強硬に」という言葉は、現今の対イラン情勢を考えると意味深長である。今次国連総会とともに開催される安全保障理事会では、オバマ大統領は、輪番の議長席に座ることになっているので、核開発疑惑の行動をとる同国に対して、制裁ないしは何らかの強い決議をめざしたいところである。

ところで内容が明らかにされなかった、「“forceful”に要求した”co-operation”」とは何であろうか?

中国は今月に入ってから、日量3万ないし4万バーレルのガソリンを、第三国経由で供給していることが、業界筋の情報として把握されている。イランは、ガソリン使用に対する補助金を出しており、しかも老朽製油所が稼動停止しているため、1日に12万バーレルのガソリン不足に見舞われている。石油輸出国が、ガソリン輸入を行うという状況に陥っている。

こうした状況下で、SINOPECなどの中国政府に近い企業が、第三国のトレーダー経由、「敵に塩ならぬ油を送っている」ことは、両首脳間で重要な話題になったことは想像に難くない。

今週これからの国連総会や安保理理事会で、、対イラン経済制裁がどのように扱われるか注視に値する。


オバマ、アフガン増派を迫られる No easy choices left

2009-09-22 | グローバル政治
2009年9月22日(火)

アフガニスタン駐留米軍のマクリスタル司令官が8月末にゲーツ国防長官に提出した66ページに渡る現状評価報告書を、The Washington Post紙が入手し、その内容が公開された。

これによって米軍をはじめとする連合軍の置かれた苦しい戦況が明らかになると
ともに、派遣軍の増派なくして、勝利はおぼつかないとする現地司令官からの強い圧力にオバマ大統領はさらされていることが公になった。

同司令官の報告書のなかの表現はきわめて直接的である: 

「来年増派が無ければ、この戦いは敗戦に終わる公算が高い」(The conflict will likely result in failure)
「先手を取って、反乱軍の勢いを12ヶ月以内に押し戻すことができないと、彼らに勝てる可能性が無くなるであろう」(Defeating the insurgency is no longer possible)

マクリスタル司令官の要求する兵力は、現状の9.2万人に対して、24万人である。一方、オバマ政権のコミットは、2011年までに13.4万人である。

空爆や砲撃は、民間人への誤爆が重大な問題化したため、パキスタンでもアフガニスタンでももはや広範には使えない。そして、反乱軍と民間人の区別がつかないゲリラ戦となったいま、自爆テロの恐怖とあわせて、事前の計算以上に地上軍が必要になってしまったというのが現状であろう。

オバマ大統領の、政策アジェンダのトップは、いまや四面楚歌の状態に陥ってきた健康保険改革(healthcare reform)である。オバマ大統領は、今週主要TV局すべてとの個別のインタビューに応じるなど、ほとんどの時間をその対応につぎ込んでいる。

このように、アフガンやイラン問題を第2順位以下にせざるを得ない中での、マクリスタル司令官報告書のリークである。それが、政権中枢部からか、軍部筋からか、共和党筋からかを考えてみれば、現在の米国政治の力学が見えてくるはずだ。

The Financial Times の論説の見出しは、"No easy choices left in Afghanistan"(アフガンに容易な選択肢は無い)である。同盟軍の劣勢は事実であり長期戦を覚悟の上戦い抜くほかが無いと主張している。英国はアフガンで惨敗を喫した歴史をロシアと共有している。どんなに腐敗していようが、選挙が不正に満ちていようがアフガンを捨てるわけには行かないと、呼びかけている。

不況がCO2削減に大きな効果  A Unique Opportunity

2009-09-21 | 世界から見た日本
2009年9月21日(月)

国際エネルギー機関(IEA)が、昨年から始まった世界規模の経済後退の影響を受けて、今年、温暖化ガスの排出が地球規模で大幅に減少すると発表した。景気後退こそ、温暖化ガス削減のために、比類なきチャンス(a unique opportunity)であると皮肉をこめて、報道している。

今回の発表は、同機関の国際エネルギー年次報告書(World Energy Outlook)の簡略版の公開に先行してなされたものである。

この減少幅は過去40年間でもっとも大きなものであり、今年の減少は前回の1981年の景気後退時の減少幅を大幅に上回るものであるという。

経済活動の停滞、特に石炭火力の新規運転開始が延期されていることや、政府間の合意に基づく温暖化ガス排出削減の努力が効果を発揮することが期待できると分析し、その例として欧州の「2020年までに20%削減目標」の実施、米国の自動車の排出ガス規制、中国の省エネ政策などをあげている。

来週NYで開催される国連機構変動サミットには、鳩山首相も参加するが。さらに12月のコペンハーゲンで開催される気候変動枠組み条約国会議(COP15)では、2012年に期限が来る京都議定書の改定に関する合意を目指している。

しかしながら、これらの重要会議を前に,各国の足並みはそろっていない。米国、EU、日本はそれぞれ削減目標をすでに表明しているが、中国やインドは、先進国のレベルまでの経済成長を実現するまでは削減を受け入れることはできないとするのが基本姿勢である。

反オバマ運動の底流に人種差別意識 Tea Party organizers

2009-09-20 | 米国・EU動向
2009年9月20日(日)

オバマ政権の健康保険改革に反対する「茶会運動」(Tea Party organizers)が、「反黒人」運動の様相を呈してきた。

この運動に付けられたTea Partyという名前は、米国の独立戦争のきっかけとなった1773年にBostonで発生した反英暴動事件(ボストン茶会事件)を下敷きにしている。当時は、茶の輸入関税を英国の利益のために引き上げたことに端を発した反植民地運動であったが、今回は、連邦政府の権力が肥大化して各州の権利が侵されることに抗議し、健保の国民皆保険化に反対し、その結果起こる将来の増税に反対するという運動である。

しかし、問題は、この運動が反オバマ政策運動に名を借りた「反黒人運動」ではないかという懸念が出てくるような事態に発展していることである。各地で開かれている抗議集会には、オバマ大統領をアフリカの魔術師(witch doctor)に仕立てた写真を使ったプラカードが林立している。

ある写真ではオバマ大統領が、羽飾りをつけ、鼻から牙を突き出しているまがまがしい姿にされているし、別のプラカードでは顔に白化粧を施した恐ろしい形相の魔術師としてのオバマ大統領の似顔が描かれている。

この運動の指導部は、こうした過激な人々を、「腐ったリンゴ」(bad apples)と突き放して、運動全体が人種差別運動とされることを警戒しているが、本質を隠蔽することはできない。

Financial Timesは、反健保皆保険運動を「怒れる白人老人層」(angry white seniors)の反逆であると論評している。 一方CNNは、「今回の運動の背景には1906年にAtlantaで起こった黒人に対する集団殺戮事件を想起させる反黒人感情がある」と論評し、黒人の社会的な地位向上に焦燥感をあおられた白人の感情の激発であった事件との類似性を指摘している。

また、カーター元大統領が、「健康保険改革を巡るオバマ大統領への批判は、人種差別の現われ」と指摘したことも波紋が広げている。オバマ氏を大統領に選ぶことのできる度量のひろい民主主義と、狭量な人種主義が同時に存在するのが米国の本質である。

オバマ、金融改革再宣言 Bankers’ ‘Bonus Culture’

2009-09-19 | グローバル経済
2009年9月19日(土)

ピッツバーグにおけるG20サッミットを直前にしたオバマ大統領は、金融改革による金融市場の規律強化策に関して、各国との合意を目指すことを,週末のラジオ演説の中で、改めて力説した。

そして、オバマ大統領は、サミットにおける中心議題が金融議題となるにもかかわらず、米国議会における、金融改革法案の審議はきわめてスピードが遅くなっていることを指摘し、「世界一の経済大国である米国は、言葉だけではなく、模範となるべき行動で世界をリードしなければならない」と訴えた。

各国は、銀行界の「ボーナス文化」(bonus culture)に歯止めを打つことを目指して会議を先導していくことは確実である。Larry Summers大統領経済顧問は、「銀行幹部の給与の決定方法を新規まき直して、今回の経済危機が、簡単には繰りかえされぬようにすべきである」と発言している。

こうした議論を背景にオバマ大統領は、「経済システム全体を危機に陥れ、納税者に後始末のツケを回すことになるので、短期利益指向で、手厚い幹部のボーナス(fat executive bonuses)を求める向こう見ずな経営姿勢を許してはならない」と宣言した。

オバマ改革を阻止し、銀行への責任追及を回避させようとするウォール・ストリートのロビーストがうごめいている現状にも触れて、「企業が、規制を逃れて相変わらず振舞うことを許してはならないし、それに政治が頬かむりを決め込むことも許してはならない」と、大統領は決意を新たにした。



オバマ、ミサイル防衛放棄の衝撃 Obama under fire for U-turn

2009-09-18 | 米国・EU動向
2009年9月18日(金)

オバマ大統領は、ブッシュ政権が進めていた中欧ミサイル防衛構想(MD: Missile Defense Shield)を放棄すると発表し、欧州に衝撃が走っている。 

計画ではイランの核ミサイル脅威への対処のために、米国はポーランドに10基の迎撃用のパトリオット・ミサイルを配備し、チェコにレーダー基地を建設することを進めてきたが、ロシアは、対イラン防衛に名を借りた敵対行為であると非難してきた。

オバマ大統領はイランの核脅威の再評価によって、両国に配備するパトリオット・ミサイルを中核とする防衛網の必要性がないと判断するに至ったとし、海上に配備するイージス艦をベースにした新システムにその機能を果たさせることができるとしている。

そして同時に、イランとロシアに隣接するトルコに、総額7,000億円相当のパトリオット・ミサイルを売却する計画であることを議会に事前通告した。

オバマ大統領は、今年4月に「核なき世界宣言」をプラハで行い、モスクワでは「ロシアとの冷戦関係をreset」 したいと演説。さらには、年末に期限が来る戦略核兵器削減条約(START I )の交渉再開に意欲を燃やしており、今回の決断もこの一連の外交政策の上にあるものと推測される。

メジディーエフ大統領は、もちろんこの動きを歓迎し、「米国大統領が、われわれとの合意(our agreements)の実現に向けて責任ある行動をとったことを評価する」との発言を行ったが、この”our agreements”とは何をさすのか、今後の議論を呼ぶことになるであろう。

当然のことながら共和党は、厳しい批判を開始し、Financial Timesは、「オバマミサイル政策Uターンで集中砲火」の見出しで報じている。John McCainは、この大統領の決定を、「性急にして、重大な判断ミス」(rushed and seriously misguided)であると激しい攻撃を行った。

これに対し、米国政府は、ロシアとの取引(quid pro quo)は無いとし、クレムリンも一切裏取引はないと言明している。


一方、国民の大多数が反対に回っていたが、政府の強い姿勢で米国のミサイル防衛計画を受け入れてきたチェコやポーランド政府は狼狽の様相を呈している。特に昨年のロシアのグルジア侵攻をみて、ロシアの中東欧への脅威を実感し、歴史を思い出した両国をはじめ欧州諸国はこの決定を、「ロシアへの譲歩」ととる向きが多い。今回の米国の方向転換の意味を消化し理解するためには多少の時間を要すると見られる。

オバマ大統領は来週国連の安全保障理事会で輪番の議長を務めることとなっている。そして、常任理事国5カ国にドイツを加えて6カ国は、10月1日から、イランと核疑惑に関する問題打開交渉を行う。オバマ大統領の真意はそこで明らかになるはずである。



藤井大臣円高誘発 A 77-year-old former treasury bureaucrat

2009-09-17 | 世界から見た日本
2009年9月17日(木)

Financial Timesは、「77歳の大蔵官僚出身の藤井新財務相の就任会見での発言を受けて、円は7ヶ月ぶりの高値圏に上昇した」と報道している。

同紙は、同財務相の「円高が極端なものにならない限り、市場介入政策に反対する。現在の市場の動きは心配すべきものではない(current currency moves are not a concern)」との発言は、政府の介入を懸念する市場を沈静化させようとしたのだと解説している。

同時に、政府介入の是非を問われた、藤井氏が、「政府の為替市場介入は、自由経済に反するものだ」と、その基本姿勢を確認したことは、市場に対して「新政権が自民党政権と比較して不介入姿勢(less interventionist than predecessor)をとること」を宣言するものだと、市場の反応を伝えている。

そして、就任直後のこの発言を、「異例に明確な発言(unusually emphatic comments)」であると位置づけているのは、あいまいにして意味不明の発言をすることが政治の常道であり、政策担当者は、「不明瞭発言」を旨としてきた日本の政治からの転換と捉えている。

そして、藤井新財務相に付けた形容語「77歳の大蔵官僚出身」は、そこに鳩山政権ないしは日本の政治全体を象徴させようとしていて、それなりに意味深長である。


影の党首は小沢か?Ozawa is pulling the strings or not?

2009-09-16 | 世界から見た日本
2009年9月16日(水)

本日、国会で首班指名を受け首相に就任することになる鳩山民主党代表が、直面する政治課題について、The Wall Street Journalが東京発の解説記事を書いている。

まず第一番の問題(his primary challenge)は、連立を組んだ社民党と国民新党との政策面での調整である。民主党そのものがはさまざまな主張の異なる集団を内部に抱えているいわば、ごた混ぜ(a hodgepodge)の政党であるがゆえに、個々の政策実行に当たっては、党内外での意見調整は極めて難しくなると観測している。

そして、早速問われるのは、選挙公約として掲げた官僚支配からの脱却、子育て支援、対等な対米関係を、いかに実行に移すかである。鳩山氏は、火曜日の党内議員総会で、「選挙公約を実行するのは容易ではない。いわば海図無き政策運営を迫られるので、試行錯誤(trial and error)することはやむを得ない」という趣旨の発言をしたと伝えている。

そしてそれに対する審判は来年7月の参議院選挙で下される。勝てば、連立に依存する必要がなくなるし、負ければ即、政界は不安定化する。

しかし同紙は、鳩山氏にとってもっとも大きな課題は、党幹事長に納まった小沢氏が舞台裏からすべてを演出しているいう評価をいかに払拭するかだと論評している。(to avoid the impression that Mr. Ozawa is running the show from behind the scenes.)

懲りない輩 Choosing to ignore the Lehman lessons

2009-09-15 | グローバル経済
2009年9月15日(火)

リーマンショック一周年にあたり、オバマ大統領は、Wall Streetに出かけ、「政府の救済措置は機能しており、経済は安定化しつつあるが、(金融システムの)将来の崩壊に備えて改革が必要である」と語り、「正常化しているといって、いい気になってはいけない。(Normalcy cannot be complacency) 景気と金融界が回復基調にある今こそ、早急に行動(step lightly)すべきであると」と注意を促した。

「のど元過ぎれば熱さ忘れる」のたとえどおり、金融界にはまたぞろリスク性の高い商品に手を出しつつある。こうした兆候を嘆き、「リーマンショック後の危機から教訓を学ばず、まだまだ回復が十分でないのに、事実誤認している懲りない輩がいる」と強い警告を発した。

また、オバマ大統領の提唱する金融制度改革の中には消費者保護のための消費者金融保護庁(Consumer Financial Protection Agency)が含まれているが、これに対しては議員からの反対だけではなく、連邦準備制度(FRB)議長のBernanke氏までが、「それはFBRの管掌範囲であり、新組織は不要」と反対に回っている。

縄張り争い(turf war)をしようとしているFRBには、「今回の危機に手をこまねいた(asleep at the switch)責任を忘れたか」との非難の声もあがっている。

新自由主義に基づく市場原理優先を盾に、無秩序な短期利益優先の企業行動と法外なボーナス報酬をほしいままにした金融界幹部の行動を制御できなかったFRBやSEC, そして財務省の自己反省は、Greenspan前FRB議長の悔悟の議会証言くらいでは足りない。

オバマ大統領の戦いは続く。