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世界の動きを英語で追う

世界と日本の最新のできごとを、英語のキーワードを軸にして取り上げます。

misinformationとdisinformationの違い

2021-12-22 | グローバル政治
misinformationと、disinformationの違いは何だろうか?

現在この世界では、SNSには、瞬時に多数の人間に影響を与え、一国の政治・経済情勢を揺り動かす力がある。そしてその影響力の源泉の一つが、SNSを悪用すればmisinformationとdisinformationと称される偽情報の拡散によって世論を操縦できることである。

さてこの二つ偽情報を意味する英語に本質的な違いはあるのだろうか?

misinformationにしてもdisinformationにしても、ともに「誤った情報」のことを指している。ただし、前者は、特定の意図をもって故意に拡散させるものでなく、単純に「誤った」情報を指す。一方、後者は、ある特定の意図をもって故意に拡散される「誤った情報」や、「歪曲した情報」を指す。

さらに言えば、自分に都合の悪いNewsは、言下に「Fake‼」と叫ぶことや、言を左右にして「嘘ではないが真実でもないことを延延と語る」ことは、disinformationによる、政治家の世論操作の範疇に入ると言えよう。

A Political Football (政争の具)

2021-09-04 | グローバル政治
菅首相は、昨日「自民党総裁選挙に出馬しない」と発表して、日本中を驚かせた。

横浜市長選挙で推した候補が惨敗して以後、ここ1週間のかれの動きの結果がすべて裏目に出て、進退窮まったというのが実相だろう。コロナ対策、総裁選、総選挙、党人事、内閣人事すべてが、「政争の具」になって一挙に降りかかり、かれはその重みに耐えきれず、座屈現象を起こしてしまったようだ。

政争の具は、米国ではpolitical footballという。この試合で、菅首相は、掴んだボールをもって突如一人で快走して(running with it.)一挙に挽回しようとしたが、老練な寝技政治家たちのtackleをかわせず、fumbleしてしまった。落ちたボールは二度と戻ってこなかった。

A Dangerous Game of Chicken: 尖閣諸島とアフガンをめぐる「危ういイチかバチかの肝試し」ゲーム

2013-12-01 | グローバル政治
今日期せずしてこの言葉”A Dangerous Game of Chicken”が、二つの外交問題報道記事に現れた。

一つは中国が尖閣諸島を含む空域に防空識別圏(Air Defence Identification Zone: ADIZ)を一方的に設定したうえで、最新戦闘機を配備して、米国、日本、韓国を強く刺激し、西太平洋に緊張状態を作り出したことに関するもの。

Financial Timesは、“This is a dangerous game of chicken, China is testing the limits of the US-Japanese relationship, and the message from the US and Japan has been loud and clear.”(「中国は日米同盟がどこまで堅固かを試そうとしている」)との軍事評論家のコメントを掲載している。中国は、尖閣諸島帰属問題で、日米が軍事行動で対抗する危険を承知で、日米の譲歩を引き出すことを目的に危険な賭けに出てきたと論評されている。

今一つは、アフガニスタンのカルザイ大統領が、2014年以降米軍の撤収後の米国の軍事支援の内容を規定するBilateral Security Agreement (BSA:二国間安全保障協定)への調印を突然拒否して、来年4月の大統領選挙まで延期すると言い出したことに関するもの。CBS放送のWeb版では、カルザイ大統領がその影響力を維持するために、部族会議の賛成決議まで無視して米国に反旗を翻したことを、その見出しを、Afghanistan President Karzai in dangerous game of chicken with U.S. over post-2014 security pact「カルザイは2014年以降の協定の帰趨を試そうとしている」としたうえで、詳報している。

カルザイ大統領は調印を拒んで、自分の影響力を誇示し、米国から種々の譲歩を引き出そうとの魂胆である。しかし米国が2014年以降完全撤退してしまうという強硬策に出れば、タリバンに対抗できず現政権は瓦解してしまうのは必定である。米国もBSAが成立しなければ面目は丸つぶれで、オバマ大統領のグローバル戦略は立ち往生となる。

A Dangerous Game of Chickenとはゲーム理論で、甲乙二者が同じ強行突破か、譲歩かとの二者択一を迫られた状況を指している。どちらも強硬突破を選べば双方ともに破局、どちらかが譲歩すれば強硬策を取った方が一方的勝利者になる。(譲歩した方は、臆病者というわけでchickenと呼ばれる)双方が譲歩すれば平和的解決となる。

こうした火遊びが破滅的な結果をもたらすことがあることは歴史が証明している。そして北朝鮮がこの機にどんな手を打ってくるか、それも問題である。

「占拠運動」は燎原の火のごとく広がるか “The Occupy Wall Street”

2011-10-16 | グローバル政治

2011-10-16

今週末の新聞各紙は、米国発の「ウォールストリートを占拠しよう」デモ(“The Occupy Wall Street Demonstration”)が、全米各地のみならず、全世界的な広がりを見せていることを大きく取り上げている。

その源となったNew York Cityでは土曜日、マンハッタンの Washington Square Parkで深夜に集合した人々が、北上してTimes Squareで約1,000人の集会を行ったが、解散させようと躍起となる警察との小競り合いの末に、80人の逮捕者を出して終息したと報じられている。

集まった人たちの矛先が向かうのは、銀行を中心とした金融界である。デモ隊が叫ぶのは、"Banks got bailed out. We got sold out," (銀行はリーマンショックから、政府の金で救済された。しかし我々は結局裏切られた。我々は長期に失業し、ローンが払えず家を失い、健康保険にも加入できない、我々の貧しさは深刻化するばかりではないか)。

USA Todayは、AP電を引用して、デモ隊のプラカードに書かれた "Keep your corporate hands off my government," and "Mr. Obama, Tear Down That Wall Street."という訴えを紹介している。「ウォールストリートよ、私の政府の政策決定に手出しをするのはやめよ。オバマ大統領、ウォールストリートの解体を」。放縦な貸し出しで巨額の損失を出し破たんした大銀行が救済されたのは2009年。ゼロ金利と、QE1とQE2と呼ばれる大規模なドル資金の供給が行われて金融界は立ち直った。


国家財政破たんから、経済危機に苦しむ欧州各国でも、銀行救済措置を優先し、庶民の苦しみが放置されていることに「怒れる人民」("the indignant")のデモが各都市に広がっている。特にローマでは、ついにデモは週末暴徒化した。

この「占拠運動」への人民の動員はインターネットが裏側から支えている。アラブ国家と社会を長年牛耳ってきた軍事独裁政権を内部崩壊させた同じ力が、西欧民主主義国家を内部から揺さぶり始めた。「選挙制度」を通して民意を反映するはずであった、民主政治システムは実は大いなる虚構ではなかったのか。そのような問いが発せられているのかもしれない。

米国、対リビア強硬策に転換 First Predator Drone Airstrikes

2011-04-25 | グローバル政治
2011/04/25

カダフィ大佐が率いる長期政権側は、民主化を求めて蜂起した反政府勢力と民衆に対して、徹底的な武力行使によって弾圧を継続している。このため当初優勢を伝えられた反政府勢力は、戦線の膠着によって守勢に追い込まれている。こうした情勢下政府軍による包囲が続く西部港湾都市ミスラタでは、市民の救助に向けた動きが加速している。

リビアに対する空爆の根拠となっている国連安保理決議(1973)は、リビア市民を守るために必要なあらゆる措置を取ることを認めているが、地上軍の派遣は認めていない。このため欧州諸国は対カダフィ政権に対して航空機による攻撃を展開して来た。一方オバマ政権は、思惑があってのことか今回のアラブ諸国の反政府運動支援には消極的な態度をとってきた。

The New York Timesによると、こうした状況に危機感を抱いたクリントン国務長官、ライス国連大使、パワー国家安全保障会議(NSC)上級部長の女性3人が、そろって軍事行動を主張したことが決め手となって米国は、リビアへの積極的介入に転じたという。

本日付けのCNNは、ミスラタの政府軍に対して初めて無人爆撃機Predatorによる爆撃を行ったことをペンタゴンが正式に認めたと報道している。(The United States conducted its first Predator drone airstrikes Saturday afternoon, said Pentagon spokesman.)

ここにいうdroneとは、UAV(Unmanned Aerial Vehicle)と総称される無人誘導飛行体の俗称であり、民生・軍事用ともに使用される。ペンタゴンは、米軍人の戦闘犠牲者の数を減少させるために、いわば戦争のアウトソーシングである民間警備会社を盛んに活用するとともに、この無人飛行体である雄バチ(drone)を多用している。しかしアフガニスタンやパキスタンではこのdrone誤爆による民間人死傷者が発生していることが問題化していることも忘れてはならない。



オバマ・胡会談は米中摩擦を「再確認」した Fractious Bilateral Ties

2011-01-20 | グローバル政治
2011年1月20日(木)

訪米中の胡錦濤は、現地水曜日、今から数時間前に、オバマ大統領との首脳会談に臨んだ。

しかしその直後の共同記者会見では、会談が両国間に存在する多くの問題、すなわち人民元の切り上げ問題、チベットをはじめとする人権・宗教・人種問題、ノーベル平和賞をめぐって衆目を集めることとなった表現の自由問題について、その解決より、その存在を再確認するという皮肉な結果に終わった。

特に人民元の相場に関して、オバマ大統領は人民元価値の適正評価に関する「中国政府の対応を不十分」と不満を表明し、一方胡主席は、「相場を人為的に操作しているとの非難は事実無根」と反論した。人権問題については、「普遍的価値」に則る対応を求める米国に対して、中国は「国内問題」への干渉と反論した。

一方、対中国貿易不均衡にいら立つ産業界や、失業に悩む国民に会談成果を強調したいオバマ大統領は、ボーイングの航空機を中心とした総額4兆円に上る大型商談がまとまったことを発表し、米国雇用の拡大につながっていることをアピールしたが、さしたるメディアの反応を得られていない。

オバマ大統領は、中国の目覚ましい経済発展を、「中国国民の努力の成果」とし、それを支えたのは、「東アジアの軍事的安定をもたらした米国の軍事力の展開」であったと、米国の論理をむき出しにした称賛となった。

ホワイトハウスのこうした対応に比べて、とりわけ厳しい反応を示したのは米国議会の4人の幹部議員である。彼らは胡主席を、人権「弾圧」を行う「独裁者」(dictator)と非難して、公式の歓迎夕食会をボイコットしたのである。

Financial Timesが使った両国関係を示す表現は、”Fractious bilateral ties”である。「一筋縄ではいかない米中関係」と訳すべきか

中国、航空母艦12年就役を公表 China reveals aircraft carrier plans

2010-12-18 | グローバル政治
2010年12月18日(土)

Financial Timesは北京発の署名入り記事で、中国が2012年に航空母艦をいよいよ就役させることを公表したことを報じている。これは朝日新聞、韓国の中央日報の報道と軌を一にするものであるが、この中国側発表は公式記者会見などによるものではなく、中国政府が公刊した膨大な報告書の末尾にそっとしのばせてあったものがマスコミによって「発見」されたものである。(Beijing announced its step quietly with one sentence buried at the end of a lengthy government publication.)

中央日報の日本語版は、「中国国家海洋局の研究機関の海洋発展戦略研究所が出した「2010年中国海洋発展報告書」によると、「(中国軍は)2009年に空母建造構想と計画を明らかにした。(これは中国が)本格的に海洋強国を建設するために一歩踏み出したことを示す」と位置づけた。」と報じている。

米国が太平洋に展開する強力な第七艦隊に対抗して中国が空母を初めてこの地域に投入することの影響は計り知れないほど大きい。

この動きは決して新しいものではない。すでに中国の軍部高官は、2年前にFT記者のインタビューに対して「中国が航空母艦を保有しても世界が驚くこともないはずだ」(The world should not be surprised if China built an aircraft carrier.) また昨年3月には日本の自衛隊幹部に対して「中国が航空母艦を持たない唯一の大国であり続けることはない」と語っているのだ。

現在、中国はウクライナから購入した旧ソ連の空母「ワリャーク」(6万トン級)を大連で訓練用空母に改造中している。これらは衛星写真で確認されているし、FTによれば、Google Earthを見れば、近隣の二つの航空基地に離艦・着艦訓練用の滑走路が建設されているのが見えるという。

この報道に対して、中国の軍部はコメントを拒否しているが、その理由は中国にとって極めてタイミング悪いからだ、とFTは論評している。中国政府は、現在周辺諸国の日本、ベトナム、マレーシアと、「小衝突」を繰り返して、これらの国に無用の警戒感をことさら持たせてしまったことに対する対応を迫られているからである。

最近、中国の軍事力とその拡大を誇示する発言を繰り返した軍幹部(recently silenced several military officers who had raised hackles earlier this year with belligerent comments)に対して緘口令を発したとFTは報じている。

しかし、中国の太平洋地域における海洋支配権確立の動きは止めることはできない。FTは、統合参謀本部議長のMike Mullen提督の言葉で記事を締めくくっている。「中国がどこに向かうのかと興味を持っていた過去は過ぎて、今やそれを心配する時代になった」( “gone from being curious about where China is headed to being concerned about it”)



G20、あいまいな言葉の首脳宣言で終わる The Wooly Phrasing

2010-11-14 | グローバル政治
2010年11月14日(日)

ソウルで開催されたG20サミットは、金曜日に首脳宣言を採択して閉幕したが、まさに、その内容は参加各国の意見の相違を浮き彫りにしたものであったとFinancial Timesが論評している。

FTの本日の第一面を貫く大きな見出しは、「G20、米国の貿易不均衡修正提案を退けるー各国首脳は参考指標導入で妥協したのみ」(G20 shuns US over trade flows)としている。

共同宣言のあいまいな表現(the vague language of the communiqué)は紛糾の象徴であり、特にドイツが貿易収支黒字巾圧縮の数値目標設定に断固反対したこと、中国が来年前半に具体化するとの時間軸を受け入れることをやむなくされたことが今回の交渉の大きな特徴であった。

IMFのストラス・カーン専務理事は「G20は論争はしたが結論は出せなかった」とまで言い切った。共同宣言の表現の中でこの経緯を如実に物語立っている部分を見てみよう。

“These indicative guidelines composed of a range of indicators would serve as a mechanism to facilitate timely identification of large imbalances that require preventive and corrective actions to be taken.”

これを翻訳すると、「ここに示されたいくつかの指標に基づく数値指針を設定すれば、予防措置や是正措置を取ることが必要となる過大な不均衡を、時機を失することなく容易に認識できるようにする仕組みとなりうる」となる。

このわけのわからない(the wooly phrasing)、数値指針に関する表現こそが、決裂を回避するための苦肉の妥協の産物であったのだ。FTは、「この下手な英語こそ、交渉がいかに難しかったかを物語っている」との英国外交官の言葉を引用している。

今回わざわざサミットに首脳がやってきたことの意義を見出す成果は、わずかに、IMF運営に発展途上国の発言権を増すための処置をとったことと、銀行の資本と手元流動性を手厚くするように規制するBasel IIIを採択したことくらいであると、記事を締めくくっている。

オバマ、イスラエルとの関係不変を強調 Unbreakable Bond

2010-07-07 | グローバル政治
2010年7月7日(水)

昨日、イスラエルのナタニエフ首相が「関係修復」を目指してホワイトハウスを訪問したことを各紙が一斉に報道している。

イスラエルが行っていたパレスチナ人の支配するガザ地区への海上封鎖を突破して、救援物資を持ち込もうとした市民団体の船舶を、イスラエルが5月31日に公海上で急襲、9人を殺害した事件の後、急速に米国とイスラエルの関係は冷却していた。

オバマ大統領と同首相は約1時間の会見の後、記者団の前にそろって現れ、両国間の緊密な関係をことさら繰り返し強調して見せた。ここでのキーワードは、オバマ大統領が使った「決して切れない(unbreakable)両国の結びつき(the bond)」 である。

ホワイトハウスのブログも、両首脳が「イスラエルとパレスチナが、直接対話によって平和の模索努力(peace process)」を行うことを望み、「対イランの制裁措置(sanctions)」に踏み切った米国の決断」をイスラエルが強く称える発言したことを、繰り返し伝えている。

しかし、船舶急襲と米国民を含む市民活動家殺害と拉致事件について話し合ったかどうかについては、両首脳とも話題とすることを避けている。

また記者団から、「大統領が(事件以来)イスラエルと距離を置いたことは誤りであったか」という鋭い質問に対して、大統領は、「その質問は前提が間違っている。私の過去1年半の間の発言を見れば常にイスラエルを特別の友邦とみなしてきたことが分かる」と、The Wall Street Journalが伝えている。明らかに答弁をはぐらかしている。

Financial Timesは、今回の会談趣旨は、両国のパレスチナ和平に関する意見の相違(the perception of a rift between them)の調整にあったとし、特にイスラエルが一方的にガザ地区への入植者の住宅建設を進めていることが最大の問題であると指摘している。9月までこの入植地建設は一時中断されているが、米国はこれをさらに延期することを強く求めている模様である。

オバマ大統領は国内の強いユダヤ人社会の強硬路線を無視できない。ナタニエフ首相も入植地建設再開をしなければ、政治生命を失う。国際世論を見れば、イスラエルの「暴挙」に与する国はほとんどない。特に「友邦」トルコの信を失って今や敵対関係と呼ぶべき関係にしてしまったことはイスラエルにとって打撃となっている。

もし、イスラエルが入植活動の凍結(the freeze)を解くと、パレスチナ自治区との和解交渉は、絶対に前進しないことは明らかである。これから米国はクリントン国務長官をはじめとした総力で、イスラエル説得交渉を続けることになる。

これが満面の笑みと美辞麗句に満ちた記者会見の裏にある真実である。

悩み深い、オバマ批判のアフガン司令官解任 Civilian Control

2010-06-24 | グローバル政治
2010年6月24日(木)

音楽芸能雑誌Rolling Stone誌7月号に先立ってその内容が、その電子版に事前公開され、アフガン平定のためのNATO軍総司令官Stanly McCrystal将軍が、オバマ大統領、バイデン副大統領をはじめとした文民指導者を総なめに批判していたことが明らかになり、怒ったオバマ大統領は、同司令官を直ちに召喚し、短い会談のあと、先刻解任を発表した。

オバマ大統領は記者会見で解任理由を、「同将軍の行動は、司令官としてふさわしくないだけでなく、文民統制を乱すものであった」からだとしている。そして、「政府部内での議論は歓迎するが、対立は許容しない」("I welcome debate among my team, but I won't tolerate division.")と、同将軍の言動への不快感を表明した。

同司令官と側近の言動内容は、昨日の本欄でも取り上げたように、ホワイトハウスで対アフガン戦略に携わる要人への完膚なきまでの批判と侮辱であり、これが公開されれば解任されることはまず間違いはないものであった。ただし、同司令官がなぜこのような、私生活にまで及ぶ場面での取材を許したかは謎である。先ほど放送されたCNN報道でも取材にあたった雑誌記者も訝っているとの感想であった。

後任には、指揮命令系統からすると同将軍の上官となる、アフガン・中東担当総司令官Petraeus将軍が充てられることも同時に発表されている。同将軍は、先日の下院委員会のアフガン問題の公聴会の席上、マケイン議員の質問中に突然失神して退席するという事態となっていることからも、この任命は一時的なものとみられる。(失神理由は、脱水症状とされている)

米国にとって、8月に予定しているタリバン掃討のための米軍大量投入を前にして、現地政府との関係が極めて良好なMcCrystal司令官の更迭という事態は大打撃である。

最近ワシントンでは、「どうも現地の作戦はうまく機能していない」のではないかとの疑問が蔓延していた。そしてテロの横行はとどまるところを知らない状況である。タリバン拠点のアフガン南部、特に戦略的に重要なカンダハル市周辺の掃討作戦は一向に進展する気配がない。

カルザイ大統領は、今回の問題発生直後から、同将軍を支持し、現職にとどまることを望むとの声明を出している。アフガン政府の意見を無視した付けが大きく回ってくるかもしれない。


オバマ、イスラエルの民間船攻撃に沈黙 Personal Feeling

2010-06-02 | グローバル政治
2010年6月2日(水)

ABC放送が、電子版でクリントン国務長官の記者会見Videoを流しているが、イスラエルを直接の形で非難せず、月曜日の国連安保理の決議を引用する形で、「事件」そのものに対する米国の独自見解を出すことを避けた、無表情な通り一遍の対応であった。

一方、オバマ大統領自身は、現時点で完全に沈黙を守っている。しかも大統領府のホームページ第1面は、メキシコ湾の油流出問題にのみ触れており、イスラエルの暴挙に対するコメントは全くない。これが米国政府の苦しい立場を如実に物語っている。

また、そのホームページに、月曜日午後のRobert Gibbs報道官のブリーフィング内容が全文掲載されているが、同報道官の質疑応答も「気で鼻をくくった」もので、記者の聞きたい事には全く答えていない。

記者:「大統領は、ガザへの救援船へのイスラエルの急襲を非難(condemn)しておられるのですか?」

報道官:「今朝の国連安保理での国際社会や米国の支持で決した内容を繰り返したい。安保理は、イスラエルが公海上において、ガザ地区に向かう救援船団に武力行使した際、人命が失われた事態に対して深甚な遺憾を表明した。安保理はこの文脈において10名の民間人がなくなり、多数の負傷者を出したことに哀悼の意を表した。安保理は、拿捕された船舶と、拘束された民間人の即時釈放を求めている」


記者:「それが大統領の気持ちを表しているとしても、同盟国の中には大統領自身からもっと強い表現を求める声がありますが」

報道官:「繰り返すがこの決議は米国のみならず国際社会によって支持されているものだ」

記者:「大統領は、いまだにさらなる事件に関する事実関係の調査を進めたいとの立場をとりたいということですか?」

報道官:「今読み上げた安保理決議は、迅速、衡平、公明、透明性(prompt, impartial, credible and transparent)のある調査を求めている。われわれが求めるのも同じものだ」

たったこれだけのやり取りで、話題はBPのメキシコ湾での油汚染問題に切り替えられてしまった。大統領の沈黙とこの対応によって米国の行動規範が国内ユダヤ人社会への遠慮に基づくものであることを世界に示した。

そして対イランの核問題交渉の調停役であり、イスラエルとアラブ諸国の仲裁役であったトルコの信頼を失ったことは、オバマ外交に図り知れない打撃となる。米国とイスラエル共通の最大の仮想敵国であるイランを勢いづかせる結果となったのも皮肉な結果である。

クリントン国務長官の疲労感に満ちた無表情こそ今の米国の苦悩の象徴であった。





イスラエル公海で人道支援船団急襲 Obama’s Balancing Act

2010-06-01 | グローバル政治
2010年6月1日(火)

The Wall Street Journal、The New York Times、Financial Timesを含む欧米一流紙の一面トップはすべて「イスラエル軍が31日、パレスチナ自治区ガザへ、向かっていた親パレスチナ団体の救援物資を満載した船団を、公海上で急襲し、民間活動家9人を殺害した事件」を報道している。

この暴挙に、EUやアラブ諸国、国連高官を含む世界各国は非難声明を直ちに出し、アテネ、イスタンブール、バグダッドでは激しい抗議デモが行われている。とくにイスラエルとアラブ社会の仲介役を果たしてきたトルコの怒りは激しい。殺害された民間人にトルコ人が含まれていることもその怒りに輪をかけている。

しかし、オバマ大統領は、国内ユダヤ人世論に遠慮して微温湯的対応しか取れない状況に陥っている。

ホワイトハウスは、「オバマ大統領はナタニエフ首相と電話会議をしたが、その際同首相より、死者が出たことを深く遺憾に思う。この悲劇的事件の真相究明が重要とのコメントがあった」とのみ発表したのである。

Washington Postはその論評記事で、「イスラエルのこの行動は直ちに世界各国から抗議(protests)と非難(condemnations)の嵐を巻き起こした。オバマ政権はイスラエルとの関係改善を図り、イランの核武装問題に対する制裁の国際世論形成の努力をしてきたが、この事件はその努力を大きく損ねるものだ」と解説している。

そしてイスラエルの軍事行動を討議するため、国連の緊急安全保障理事会が月曜日に開催されることとなった。これで、安保理の場は、イランに対する制裁決議を早急に求める米国の意図に反して、イスラエル非難と制裁を求める場と化してしまうことが確実となった。

友邦イスラエルの反パレスチナゲリラと反イランの過激な行動が、イランを利するという皮肉な結果になりつつあることにホワイトハウスは困惑している様子がありありと出ている。
今週火曜日に、オバマ大統領とナタニエフ首相は、いわば両国関係修復のための、復縁の手打ち式(a kiss and make-up session)を行う予定であったが、同首相は急きょ予定を変更して帰国を余儀なくされた。

今後オバマ政権は難しいかじ取り(a difficult balancing act)を迫られることになる。

昨年、オバマ大統領は、カイロでイスラム社会とイスラエルに向けて、「ガザ地区住民の人間としての生きる権利がこれほどはなはだしく蹂躙されている状況は、イスラエルの安全保障のためにならない」(Just as it devastates Palestinian families, the continuing humanitarian crisis in Gaza does not serve Israel's security.) と高らかに宣言した。

オバマ大統領は、この言葉に基づいて行動しなければならない時が来た。




タイ騒乱は何だったのか TheUrban Elite with Outsized Wealth

2010-05-23 | グローバル政治
2010年5月23日(日)

2か月余り続いたバンコックの騒乱は、先週政府側によるタクシン派勢力の強制排除によってようやく沈静化に向かっているかに見える。85人ともいわれる死者と1400人もの負傷者を出した騒乱は、タイの社会と経済に大きな傷を残したことだけは確かである。

Financial Timesは、東京を訪問中の同国のKorn Chatikavanij大蔵大臣とのインタビューをビデオで流し、「タイの経済成長は約1/3減速へ」と、経済面の影響を伝えている。同蔵相はTVインタビューで、「今回の騒擾がなければ、今年は7%成長が可能であったが、いまやそのうちの2%は失われた」と語っている。

注目すべきは、同じインタビューの中で、同蔵相が「暴徒化した人たちは、民主化(democracy)や不平等(inequalities)是正を要求していたが、騒乱の原因が今一つはっきりしない」と発言していることである。本心は、国外にいて「赤シャツ軍団」を遠隔操縦してきたとされるタクシン元首相の「反乱」だと本当は言いたいところであろう。

国土の1/3はまだ夜間外出禁止令(curfew)が出たままになっており、タクシン元首相一族の出身地である北部チェンマイに帰着したデモ参加者が、「戦いはこれからまた始まる」と叫んでいると同紙は伝えている。

彼らの告発するのは、「都市部のエリート族(the urban elite)が二枚舌政治で国民を愚弄して、国の富を独占している(their outsized wealth)」ことである。バンコクと地方の経済不均衡への怒りと、バンコク経済と政治を牛耳る中国系富裕層への反感が根底にある。

首相が呼び掛けた国民的和解を促進するために、企業と個人に対して今回の騒乱の被害対策(a “healing and reconstruction” plan)を実施するとしており、「幸いにも過去の経済成長の結果としてその財源は国庫にある」と同蔵相は語っている。

また、デモ指導者との間で交わした改革の約束の実施の日程(a roadmap)を早急に示すことが重要と語り、インタビューでは富裕税の導入を示唆した。総選挙の早期実施も行うとしたが、条件として「首相が身の危険なく選挙運動ができること」を挙げた。

今回の騒乱収拾にあたって、タイ王室が全く動かなかったことと、軍部がクーデターを起こさなかったことは注目すべき点である。タイ社会も大きく変わった。

英国ブラウン首相失言、労働党総選挙で窮地に Brown Toast

2010-04-29 | グローバル政治
2010年4月29日(木)

5月6日に総選挙を控えて、3党が激しく舌戦を繰り広げている英国で、ランカシャー州を遊説中のブラウン首相がとんでもない失態を演じてしまった。

労働党支持の66歳の婦人が、たまたまパンを買いに出てきたところに、ブラウン首相とばったり会って、路上の会話のやり取りとなった。女性は、移民問題などで労働党の政策を問いただしたのであるが、終始笑顔で対応してもらって満足な出会いとなったはずであった。

しかし、直後車に乗り込んだ首相は、側近に向かって「あれはひどかった(a disaster)。ウーン、ひどい話だ。頑迷固陋の女め(a sort of bigoted woman)。昔は労働党に投票していたのにと、言いおったよ。」などと、口汚くののしったのである。

ところが、首相には背広の襟にはワイヤレスマイクが、onのまま付いていたのである。首相の言ったことはすべてTV局に捕捉され、BBCを含む各局がその全容を、水曜日夜のニュースで流した。日本時間今朝放映されたBBC放送では、聞き取りにくいところもあるので、首相の罵詈雑言の全文が文字化されて画面に映し出されていた。

首相は、その後のマンチェスターでのラジオ放送収録時に、自分の声の記録を聞かされて、前に倒れこむようにして頭を抱え込むという周章狼狽の体をさらし、その様がまたTV放映されてしまった。

首相は謝罪の言葉を述べた後、件の女性宅を訪問し、直接謝罪をしたあと「誤解は解いていただいた」と強弁したが、時はすでに遅かった。

この醜態によって、保守党と自由民主党の野党両党に追い上げられてすでに勝算が立たない労働党には、いわば致命傷となる最悪の事態に追い込まれた。

あまりのコメディめいた展開に、タブロイド各紙も飛びついて報道している。特に首相の名前Brown(茶色)が災いして駄洒落満載の記事で読者を煽っている。

最大のタブロイド紙であるThe Sunを見てみよう。

まず見出し。”Popped out for a loaf, she came back with BROWN TOAST.” 「パンを買いに出た彼女、茶色に焦げたトーストを持って帰る羽目に」となっている。brownには、うんざりしたという意味がある。toastには、ドジという意味がある。しいて訳すと「パンを買いに出たら、ドジ首相のおかげで、焦げたトーストパンをもって帰る羽目になっちまったよ」

そして、首相が「自分の声」の録音を聞くことになった際のことを、The Sunは、”And he soon realised he was deep in the brown stuff.”と表現している。

英語人は、brownと聞くと汚い話で恐縮だが、「ウンチ」を連想する。したがってthe brown stuff で、the shitの婉曲表現としている。しいて訳すと、「しばらくしてブラウン首相は、ブラウン色のものにまみれてしまったことに気がつくことになった」

労働党が惨敗したら、このエピソードは長く英国政治史に、最悪のジョークとして記録されるであろう。



オバマ、核サミット外交攻勢 “Proliferators are not welcome”

2010-04-13 | グローバル政治
2010年4月13日(火)

先週ロシアとはチェコのプラハで、米ロ間の戦略核兵器削減条約(START)に調印したオバマ大統領の外交攻勢は、12日と13日の両日、47カ国の首脳を招待してワシントンで開催されている核安全保障サミット(a nuclear security summit)でその極に達している。

米国が世界の元首級をこのように多数会議に招請したのは、第二次大戦後の1945年以来である。今回国際機関としては、国連、国際原子力機関(IAEA)、EUが参加している。そして問題のイランと北朝鮮は招待されていない。

また、大統領が、サミット会議と平行して行われる、米国との二国間首脳会議に事前に招待したのは:

アルメニアSargsyan大統領、中国胡錦涛主席, ドイツMerkel首相, インドSingh首相、ヨルダンAbdullah国王、マレーシアNajib首相、パキスタンGilani首相、南アZuma大統領、カザフスタンNazarbayev大統領の9人である。

鳩山首相が個別公式会談を申し入れたのに断られたことは、すでに報道されている通りである。

今回のサミットの大きなテーマは、核拡散防止、特に「核物質がテロリストの手に渡ることを防止すること」にある。これに関して、「核拡散国は世界ののけ者」(“Proliferators are not welcome”)と発言しているのは、英国のミリバンド外相である。

またIAEAの天野事務局長は、「核保有国の核物質や放射性物質の管理は万全ではなく、窃盗や密輸される危険が高い。管理を強化すべきである。二日に一回の割合で、窃盗や密輸に関する情報提供を受けているのが現状である」とBBC放送に語っている。

米国は、初日に胡錦涛主席から、イランの核疑惑に対する制裁に関して協力を取り付け、ウクライナからは高度濃縮ウランの米国への移送と譲渡という宣言を取り付けることに成功した。チリとカナダも同様な方針をとることをコミットしている。

フランスは核兵器保有を自国の安全のために続けると、サルコジ大統領が宣言したことも注目されている。

上記47カ国のリストも、ホワイトハウスの報道官から発表になっている。このリストはきわめて意味のあるものと考えられるので下記に転載しておく。

このリストにあって出席しなかったのはイスラエルのナタニエフ首相である。BBC放送の解説によると、アラブからの参加国から、「イスラエル国内の核施設への国際機関による査察要求が出る」との情報を察知したのがその理由であるという。

参加国リスト(アルファベット順)
Algeria, Argentina, Armenia, Australia, Belgium, Brazil, Canada, Chile, China, the Czech Republic, Egypt, Finland, France, Georgia, Germany, India, Indonesia, Israel, Italy, Japan, Jordan, Kazakhstan, Malaysia, Mexico, Morocco, Netherlands, New Zealand, Nigeria, Norway, Pakistan, Philippines, Poland, the Republic of Korea, the Russian Federation, Saudi Arabia, Singapore, Switzerland, South Africa, Spain, Sweden, Thailand, Turkey, United Arab Emirates, the United Kingdom, Ukraine and Vietnam。