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「2019年、中国を襲う水不足と飢饉」 Dry China

2009-12-31 | 中国・ロシア・インド・ブラジル動向
2009年12月31日(木)

Financial Timesは年末のLEX欄で、「2019年に、2010年代を振り返る」という未来予測のシリーズを載せている。すでに世界的な水不足が現実化しているなか、「中国はこれから10年の間に水不足で壊滅的打撃を受けるだろう」というシナリオが示されている。

その見出しの言葉は”Dry China”で、2009年末に過去10年を振り返って、「中国帝国」が水で滅び、そのとき中国の最高指導者に上り詰めている「習近平主席」が周辺国に食料援助を乞うことになるという話を語る:

『2010年の初めのことを思い出す。この重大な問題の予兆はすでにあったのだ。気づくべきだった。「マカオのカジノのアイスバケットに氷がなくて空っぽだったこと」や、「内モンゴルの新築の家のトイレに水が流せなかったこと」ことがすべて今日の災いの始まりだったのだ』

『2015年に中国は、からからに乾ききった。2009年から2012年まで、中国政府は景気浮揚のために金融を極限まで緩和し、信用を膨張させた。その結果、巨額の資金が投資に回り、闇雲に建設された工場で工業用水が大量に消費された』

『中国は世界人口の20%を占めるのに、水資源は6%に満たなかった。水を大量に、がぶ飲みする(water-guzzling)セメント・鉄鋼工場に操業停止を命じてみたものの、本気で取り締まりは行われなかった。なぜなら失業者を大量に生み出すような政策を、出世第一の地方政府官僚が本気でやるはずがないからだ』

『その後4年経って、危機は破滅的な状況へと進行した。内陸部では作物は壊滅し、飢饉が襲い、土地は打ち捨てられる事態となった。一方で水の豊富な沿海部でさえ給水制限が行われる事態となった』

『この事態は、2010年にきちんと対策を打っていれば回避可能であったのだ。10年前には中国はすべてがそろっていたのだ。栄養の行き届いた労働者に潤沢な通貨供給。中国は世界のひのき舞台を闊歩し始めていた。そんな中2010年に、人民元が大幅に切り上げられて、価値のあがった元を使った中国企業によるM&Aが世界中を怒涛の勢いで席巻した』

『しかし2009年には見逃されていた重大な事実があった。水の大切さである。灌漑プロジェクトに使われた資金は、銀行貸し出しの合計の1/1000にすぎなかったのだ。水利灌漑・用水プロジェクトは政治目的化してしまい、国家の計として真剣に取り組まれなかった。その傍らで工場は廃水を垂れ流していた』

『2019年末のいまや、中国はかつての強国のおごり高ぶった面影はない。「習近平国家主席」は、周囲の貧しい国に食料援助を請うことを考え始めている。これぞまさしくおごる平家ひさしからずのたとえ(a measure of how far the mighty have fallen)の好例である』

水資源の枯渇問題は、二酸化炭素による地球温暖化問題と表裏一体をなす全人類的課題である。人口問題と食糧問題も水問題から切り離せない。化石燃料の枯渇も時間の問題となってきている。この5つの問題こそ、「今そこにある危機」として意識されねばならない。LEXの白昼夢は、まさに現代の寓話である。