大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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☆( 1年間366日分の日々の出来事  )

B,日々の恐怖

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C,奇妙小説

☆(  しづめばこ P574 )                          

しづめばこ 5月11日 P295

2014-05-11 18:29:42 | C,しづめばこ
しづめばこ 5月11日 P295  、大峰正楓の小説部屋で再開しました。


小説“しづめばこ”は読み易いようにbook形式になっています。
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日々の恐怖 5月10日 子供の幽霊

2014-05-10 18:04:14 | B,日々の恐怖




    日々の恐怖 5月10日 子供の幽霊



 全国的に有名でテレビの怪奇現象特集でも良く取り上げられた心霊スポットの、すぐ近くのとある場所での出来事です。
地元では結構広まっていた話なので、場所など特定できる方もいらっしゃるかもしれません。
 当時、心霊現象に興味のある年頃だった事から、仲間内で有名な心霊スポットや噂で聞いた怖い場所、墓地などを夜中に散策したり、写真を撮ったりしていました。

 ある時、友人Mがほぼ間違いなく出ると言われているスポットの情報を得たので、行ってみようという事になりました。
その場所は、○○橋の横の細い路地を入って行った場所で、外灯などはほとんどない薄暗い道で、その道を道なりに進んで行くと右カーブにさしかかり、そのカーブの正面に、壁が白く赤レンガで作られた階段のある家があって、その階段の所に2人の子供の霊が出ると言う。
 ちょうど○○橋の横の路地を入ってすぐの所で川遊びしていて、溺れて亡くなった2人の子供の霊ではないか、と言われていた。
その道は、殆どの人が日が暮れてからは通る事を避けて迂回しているらしく、どうしても通らなければならない時や、その近所に住んでいる人達は、車のライトを消して通るようにしているとか。
 車のライトや灯りがあると、その子供の霊が喜んで、階段を駆け下りてきて付いて来てしまうらしいのです。
そんな話を聞き、私と友人M、その他2人の友人の計4人で行ってみることにした。


 ○○橋の路地にさしかかった時、前を走っている車もその路地に入って行き、その車の後ろに付いて行く形になった。
路地に入って少し進んだ川の横のガードレールに、花束が供えられていた。
ここで溺れて亡くなった子供に供えられたものなのかは判らなかったけど、なんとなくそれらしい感じもした。
 その後に少し進むと、前を走る車が突然ヘッドライトもスモールライトも消し、無灯火の状態になった。

「 おいマジかよ。マジでそういう場所なんだなココは・・・。」
「 本当にライト消して行かなきゃヤバイのか・・・。」

 住民なのか、我々と同じように噂を聞いてきたヤツらなのか、判らなかったけど、前を走る車が噂通りにライトを消したのを見て、さすがに全員びびり始めた。

「 おいやべぇぞ。早くライト消せ・」

そう友達に言われてライトを消して、前の車に付いていった。
外灯など殆ど無い場所なのでかなり暗くて、周りがうっすら見える程度の視界なので、
前の車も徐行する感じで進んでいった。
 すると、正面に白い壁の家が見え始めた。

「 あれか?」
「 たぶんあれだな。」

うっすらと見えるその家を全員目を凝らして見た。
たしかに道は右にカーブしているようで、間違いなくその家だった。
近づいていくと赤いレンガの階段も見えはじめ、さらにゆっくりと進んでいくと、

「 うわああああああいるいるいるよおおお。」
「 ええ?」
「 うわああああマジいるぞお。」
「 子供が座ってる!」
「 ちょっと早く!早く!離れろ!」
「 はやく通り過ぎろって!」
「 バカ静かにしろ!」

全員パニック状態になってしまった。
私は運転しながらだったのでチラっと見ただけだったけど、確かに階段の踊り場に子供が2人座って、楽しそうに話をしているように見えた。
それは、ぼんやりと白っぽく透けるような感じで、明らかに人間ではなかった。
しかし、大きさや仕草から子供と感じとれた。
 その家を通り過ぎた所でライトを付けて、急いでその場所を離れた。
大通りに出る手前で、前を走っていた車が止まっていて、我々を同じくらいの年齢のヤツらが興奮状態で車の外で話をしていた。
我々と同じく噂を聞いて見に来たヤツらだった。
 私も車を止めて、外に出てそいつらの所にいって、

「 見えた?」

と話しかけた。

「 見た!」
「 見えた!」
「 確かにいたよな!」

全員パニックりながらも確認しあっていた。
少しすると冷静になり、

「 これだけの人数で全員が全員見れるような心霊現象ってあるのか?」
「 霊って霊感の強いヤツにしか見えないんだよな?」

なんて言い始め、人数も増えて強気になったせいもあって、みんなで歩いて見に行ってみようって話になった。

 我々4人+先行者3人の計7人で歩いて向かった。
あの家が近づいてくると、さすがにまたびびり始めたが、人数と勢いで進んでいった。
 こちら側からいくと階段の手すり壁があって、踊り場は正面までいかないと見えなかった。
そして、正面までいって踊り場を見て、全員が顔を見合わせた。
そこには、ニコニコと笑った2人の子供の絵に『いらっしゃいませ』と書かれた看板が置いてあったのだ。
そして、車から見た位置まで離れてそれを見てみると、文字や絵の細部までは見えずに、ぼんやりと白っぽく浮かび上がった子供が踊り場にいるようにしか見えなかった。

 誰が発見して、誰が話を作ったのかは定かではありません。
もし、ライトを付けたまま行ってたり、昼間に行ってたら、こんなにパニックになるような恐怖感は味わえなかったと思います。
もし幽霊を目の当たりにした時、どういう事になるのかも解りました。



 心霊とは全く関係のない落ちのある話をしてしまいました。
ただ見た瞬間は、気のせいなのか、出ると解っているが故の暗示なのか、確かに子供の霊が足をバタバタさせたり、顏を見あったりしながら楽しそうに会話をしているように見えたので、もしかしたら本当にそこにダブっていたのかもしれません。



 数ヶ月後、どこからその話を聞いてきたのか判りませんが、友人Hが、

「 ○○に子供の幽霊が出る家があるらしいんだけど、行ってみないか?」

と言う話が出たので、行ってみる事にした。
 メンバーは私と友人Mと、今回主人公の友人Hの計3人だった。
当然、私と友人Mは既にそのネタは知っていましたが、どうせ暇だし知らないフリをして友人Hに付き合う事にした。
友人Hは、近くの川で溺れた子供の霊が出るとか、ライトは消さないと憑りつかれるとか、そこに止まってはいけないとか、若干違う内容が追加された説明を始めたので、ほうほうと聞きながら例の場所へ案内してもらった。
 ○○橋の横の路地を入ると、すぐにライトを消せと友人Hから指示があったが、暗いから危ないとか理由を付けてライトを消すのを拒んだ。
すると友人Hは、

「 憑りつかれるからライトを早く消せ!」

とブチ切れそうになりながら声を荒げて言い始めたので、

「 わかったわかった。」

と、なだめながらライトを消した。
しばらく進むと例の家が見えてきたので、

「 あれか?」

と友人Hに聞くと、

「 たぶんあれで間違いないと思う。」

と応えた。
 そのまま進んでいって、もうぼんやりと子供の霊が見えてきたのに友人Hは無言だったので、

「 ここ?何か見える?」

と聞いてみた。
友人Hからは相変わらず返事が無かったので、友人Mに、

「 何か見える?」

と同じ質問をちょっと笑いながらした。
すると友人Mは、

「 なんも見えないけど、どうなんだ?ガセか?」

と答えた。
 と、その時。

H「 ばっか!いるじゃねーーかよおおおお。」
私「 え?どこに?」
H「 階段のとこに2人いるじゃねーーかよおおお。」
M「 誰も居ないぞ?」
H「 いるだろうがああああ!おまえらバカか!」
私「 何もいないよなぁ?」
H「 いるだろうあそこにいいい、おぇえええええ、おえぇえええええ。」

友人Hは泣いて吐きそうになりながらパニックに陥っていた。
あまりにも可愛そうなので、ライトを点けたままもう1周してあげた。



 数週間後、後輩から、

「 ○○に子供の幽霊が出る家があるらしいんですけど、知ってますか?」

と聞かれた。
もうめんどくさいので、何か聞いたことあるけど良く知らないと答えておいた。











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日々の恐怖 5月9日 海の家

2014-05-09 19:03:39 | B,日々の恐怖



    日々の恐怖 5月9日 海の家



 昭和50年代後半、俺が小学2年になったばかりの頃、うちの親父が友人の借金の保証人になって、友人が飛んだから我が家は家も土地も全て奪われ、一家全員宿無しになってしまった。
 父は高速道路建設で7月から8月の2ヶ月間、出稼ぎのような状態だ。
母と姉(当時小6)と俺(当時小2)の3人は、7月から8月いっぱい、親戚から紹介された町営の海の家の住み込み従業員生活となった。
 海の家といっても、浜は小さく、建物も昔は漁師小屋(番屋)だったところ。
朝は8時に開けて、夕方5時に閉店。
更衣室と水道水シャワーと簡単な飲食提供。
掃除をしたら、店の残り物の焼きそばやおでんで食事。
雨の日以外は夏の間は無休。
 姉と俺は、元の小学校から遠く離れて友達も誰もいない土地で、海水浴客相手の接客を頑張ってた。

 この海の家で、俺と姉は不思議なものをよく見た。
夜、誰もいなくなった浜でよく火の玉を見た。
母親は、

「 イカ釣り漁船の照明だ。」

と言っていたが、絶対に違う。
 沖の方に火の玉がヒョコヒョコ流れて、やがて上空に向かってスゥーと飛び上がってやがて消えていく。
花火かもしれないが、わざわざ船で沖に出て、花火をやるようなオシャレなところではない。
 最初と二回目、三回目あたりは不気味な感じもしたが、五回目あたりからは姉も俺も、

「 またか・・。」

と見物するようになっていた。
約2ヶ月で10回以上は見たので、そのうち飽きて、わざわざ見物もしなくなった。

 雨の日は海の家は休みなのだが、母が町役場に出かけ、俺と姉はお留守番した日のことだ。
けっこうな暴風雨で昼間なのに真っ暗だったのを覚えている。
俺と姉は、映りが悪い14型のカラーテレビを見ていたのだが、突然、停電してしまった。
 古い小屋だったから風雨の音ばかりが響く中、姉と俺は、

「 やだな~。」

とボヤきながら、明かり取りの高いところにある窓を何気なく見たら、長い髪の毛をざんばらにしたような人間が、明かり取りの窓からこちらを見下ろしている。
 最初は常連客の誰かがフザケているのかと、姉が、

「 だれ?」

と声をかけると、ざんばら男は、

「 ゴブゴブ。」

と声を出して、すっと窓から離れた。
夕方になって雨がやんだので、外から明かり取りの窓へ向かってみると、海藻が何本かぶら下がっていた。
 それから、雨の日には、よくそのザンギリ頭がよく現れ、明かり取りの窓から覗いていることに気付いた。
そして、よくよく見ると髪の毛ではなく、顔中を海藻で覆っていることに気付いた。
 姉と俺で、小雨の中、波打ち際で遊んでいたら、全身も見たことがある。
磯でなにかを拾っている人影が見えて、俺が、

「 あれ?」

と声を出したら、

「 ゴブゴブ。」

と言いながら海へ向かっていって消えた。
全身が海藻まみれで、身長は2メートル以上あったと思う。
やたら手足が長かった。

 一番怖かった記憶は、8月15日だった。
お盆は一日だけ休みで、父も出稼ぎ先から海の家へ帰ってきていた。
久々に父親と再会して嬉しかったことと、お土産の豚肉の味噌漬けが美味しかったことを覚えている。
 夜中、ゴザの上で寝ていると、姉に、

「 なんか、変な音しない?」

と起こされた。
外から波の音に混ざって、

“ カシャカシャ…、カシャカシャ…。”

という音が聞こえてくる。
 夜の海からは色んな音が聞こえてくるのには慣れてしまっていたが、聞きなれない音というのは気持ちが悪い。
父親を無理矢理に起こして、3人で窓からそっと覗くと、月明かりの中、骸骨が浜を歩いていた。
 やたらと大きな骸骨で、表面にフジツボらしきものがびっしりついていて気持ち悪い。
それが酔っぱらいのようにフラフラと浜を歩いている。
なにかを探すかのようにうろついている骸骨を数分見ていたが、父親がガラリと戸を開けると、骸骨はその瞬間に消えた。
 8月下旬、海にクラゲが出るようになる頃、父の実家のある東京へ引っ越すことになった。
残された借金も、町役場の人が紹介してくれた弁護士を通じてどうにかなった。
俺たち家族がいなくなった後、町営の海の家はなくなった、と聞いた。

 その後、大きくなってから、母に人魂や海藻人間や骸骨のことを聞くと、母も何度も見たと言う。
でも、子供たちが怖がるから、絶対に怖がる素振りは見せないようにしていたらしい。
人魂は、母も何十回と見たことから、そういうもんだ、としか思わなかった。
 母は、

「 海藻人間は夜明け近くに、海の家の前にトコブシ(小さい種類のアワビ)やヒメサザエを30粒ほど置いて行くことも何度かあった。」

と言った。
母は、それらを普通に食卓に乗せていた。

「 あの頃、うちは貧乏だったから、アレも哀れに思ったんだろう。」

と母が説明してくれた。
 ただ、骸骨だけは“いかんヤツ”だと母は認識していた。
アレは、海で死んで、遺体が発見されてないヤツなんだと思う。
 父は、母から、

「 あの海の家はお化け屋敷だ、早く何とかしてくれ。」

と何度も電話で言われていたらしい。
 ところが、理数系だった父は信じず、あの8月15日の骸骨を見るまでは、面倒臭いとしか思っていなかった。
あの骸骨を見て、

「 あんなお化け屋敷に妻子を置いておけない。」

と、本気で借金処理を頑張ったんだと、後から知った。
 姉は、小さい頃は言わなかったが、人魂を目の前30cmで見た、と俺が大学生になってから白状した。
便所(小屋の外にある)に行った時、やたらと外が明るいな、と思っていたら、目の前にバスケットボールぐらいある人魂が飛んできた、と。
そして、姉の目の前で静止したので、よくよく人魂を見ると、人魂の光の中にお婆さんの生首みたいなものが見えた。
 姉は驚いて、人魂の中のお婆さんにペコリと頭を下げたら、凄い勢いで人魂は沖に向かった。
人魂の中に、人の頭があるなんて知ったら、小さい弟が怖がるだろう、と黙っていたそうだ。

「 怖くなかったのか?」

と問うと、

「 見慣れていたし、お婆さんも普通のお婆さんだったから、怖くはないけど、ただ驚いた。」

と言った。

 俺は、大学3年の時、バイクのソロツーリングで一度だけ、あの海の家のあった辺りに行った。
駐車場と浜へ降りる階段が残っていたが、海の家は跡形もなく消えていた。
海藻人間を目撃した磯は残っていたが、俺が子供の頃のようには貝もなかった。
なんで、あの頃、あんなにも色んなモノを見たのに、あまり怖くなかったんだろうか?














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しづめばこ 5月9日 P294

2014-05-09 19:03:13 | C,しづめばこ
しづめばこ 5月9日 P294  、大峰正楓の小説部屋で再開しました。


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日々の恐怖 5月8日 教授

2014-05-08 19:22:39 | B,日々の恐怖


    日々の恐怖 5月8日 教授


 あれは大学生の頃の話です。
当時の研究室の教授が普段はちゃんとした紳士なんだけど、とんでもない酒乱で新歓コンパとか追いコンとかでビール一杯飲んだだけで、ぐでんぐでんに酔っ払って別人になってしまう人だった。
それがおもしろくて、みんな酔っ払った教授の皿に食った後のカニの殻とかをそっと置いて、酔っ払った教授がその殻にバリバリとかぶりつくのを眺めて笑ったりしてた。
教授は次の日とかになると記憶が飛んでいるのか、ケロッといつもの紳士に戻っていた。

 あるコンパの日、2次会も終ってさぁ帰ろうかという時、いつものように教授は既にわけわからん酔っ払いと化し、店を出たところの歩道に仰向けにひっくり返って、手足をばたばたさせながら何かわめいていた。
いつもなら面倒くさいからそのまま置き去りにしてみんなさっさと帰るんだけど、その日はなぜか帰ったふりをして、こっそり物影から教授を観察しようということになった。
 数分経っただろうか・・・、それまでひっくり返ってばたばたしてた教授はいきなりサクッと立ち上がり、しっかりした足取りで歩いて行った。
酔っ払いの痕跡など微塵もない、いつもの紳士だった。
 後日、何かの機会に教授と親しい別の先生に酒の席でその話をしたら、

「 ああ、それね、気をつけたほうがいいよ、ふふふ。」

どうやら結構有名な話だったらしい。












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日々の恐怖 5月7日 茶碗

2014-05-07 19:11:34 | B,日々の恐怖


   日々の恐怖 5月7日 茶碗


 僕がまだ6歳ぐらいのときの話です。
それまで市街地に住んでたんだけど、小学校へあがる春に緑の多い郊外に引っ越した。
 近所には田圃や畑があって、兼業農家をやってる地元の人が多い。
そんなのどかな環境の町はずれにある新興住宅に、僕ら家族は移ってきた。
慣れないこともあったけど、僕は小学校へあがってすぐに友達ができて、二ヶ月もたった頃には、もうすっかりその町に馴染んだつもりになってた。
 ある日曜日、昼ご飯を食べてから友達三人と学校の近くにある田圃のあぜ道で、遊びがてら、おたまじゃくしをとっていた。
ビンに入れて家に持って帰って、カエルになるのを見たかったからだ。
用水路のなかに手を突っ込んでたら、いきなり小便がしたくなってきた。
 僕は何匹かつかまえていたし、もう帰ってもよかったんだけど、友達は、もっとつかまえるつもりでいた。
時刻は五時半ぐらいだったと思う。
そろそろ日が暮れどきで、空はうっすらと陰り始めていた。
 僕は友達を置いて、ちょっと小便しにいってくると駆けだした。
家まで帰る気はなくて、そこらで適当なところを探していた。
 ちょっと離れたところに、まだ行ったことのない古いお寺があって、歩いていた道からそこに飛び込むと、トイレを探すのが面倒だったから、寺の横手のほうにある低い木の茂みですませた。
はやく友達のところへ帰りたかったけれど、なにを間違えたのか、僕は道とは反対の寺の裏側へ歩いていってしまった。
 間違ったとわかって引き返そうとしたとき、小さくカチャカチャと音がした。
何だろうと思って振り返ったら、暗い寺のなかからボンヤリと光が漏れている。
そっちに行くと、雨戸と障子が開け放してあって、ふと見れば、薄暗い電球を吊った下で、四人家族がご飯を食べてた。
 住職らしい丸禿の男と、痩せた奥さんと、まだ小さい子供が二人、ちゃぶ台のまわりに正座して、それぞれに茶碗を持ってる。
カチャカチャっていうのは、お箸が茶碗に当たる音だった。
 誰も何も言わずに、黙々と食べながら何も話さない。
静まり返った食卓に、ただカチャカチャとお箸の音がするだけ。
僕も何も言わず、そっとその場から立ち去ろうとした。
 そしたら、奥さんが小さな声で、

「 あんた、どこの子?これ食べていく?」

振り向いたら、奥さんのそばにあったお櫃から、ご飯を茶碗によそってくれている。

「 はい、お食べよ。」

茶碗を出してくれたその白い腕が、こちらへ、異様に長くニュルッと伸びてきたように感じた。
僕は奥さんの差し出している茶碗に背を向けると走り出した。
 あまりの怖さに膝ががくがくしていたけど、なんとかかんとか友達のところまで戻れた。
それで、寺で見たことを泣きながら話したら、ずっと地元に住んでる友達が真っ青になって震えながら言った。

「 あの寺、今は誰も住んでないよ。だって、みんな死んだから。」

 聞けば、前の住職は何かの事情でノイローゼのようになって、家族が寝ているときに包丁を持ち出して無理心中をはかり、奥さんと子供たちを刺し殺したあとは、自分も首の動脈を切って自殺したということだった。
 僕らは怖くなってそれぞれ走って家に帰った。
寺で見たことを親に話したけれど、あまり真剣にとりあってくれなかった。
 その夜から二日続けて高熱がでて、きっと体調が悪かったからそんな幻を見たんだろう、ということにされてしまった。
 今でも、その寺はある。
すっかり寂れて荒れ果てているが、今でもその寺はある。
住職一家の供養はされているはずだということだが、あの寺の裏手に行けば、今もぼんやりと光が見えるような気がして大学の休みに帰省しても、僕は絶対にあそこには近寄らないようにしている。













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しづめばこ 5月7日 P293

2014-05-07 19:11:10 | C,しづめばこ
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日々の恐怖 5月6日 夕焼け

2014-05-06 19:46:00 | B,日々の恐怖


    日々の恐怖 5月6日 夕焼け


 その日は塾があるため、早めに部活を切り上げカバンを取りに4階の教室に戻った。
カバンを持って教室から出たとき、反対側の校舎の上に夕焼けが見えた。
 そのとき、空がいつもより少なく見えた。
理由はすぐにわかった。
向いの校舎の上にもう一つ教室がある。
自分のいた中学は4階建て。
上にもう一つ階があるなら5階建てになってしまう。
 一瞬自分のいる階が3階なのかと思うが、後ろを見ると4階の自分の教室があった。
そして廊下の向こうの教室にはピアノが見えていた。
ピアノが置いてあるのは4階の音楽室のみ。
つまり自分がいるのは4階であっている。
初めは不思議だったが少しづつ怖くなり、一気に階段を駆け下り学校から離れた。
 学校から少し遠ざかり全体の校舎が見える位置にきた。
振り返ると、4階建ての校舎と沈みゆく夕焼けが見えるだけだった。











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日々の恐怖 5月5日 研修医

2014-05-05 17:52:45 | B,日々の恐怖


    日々の恐怖 5月5日 研修医


 これは研修医時代、しかも働き始めの4月の話です。(日付まで覚えています)
おりしも世間はお花見+新歓シーズン真っただ中、浮かれすぎてべろんべろんになって救急車でご来院いただく酔っ払いで、深夜も大忙しでした。
 ちなみにある意味洒落にならないことに、前後不覚の酔っ払いは研修医のいい練習台です。
普段めったに使わない太い針で点滴の練習をさせられたりしました。
一応治療上太い針で点滴をとって急速輸液ってのは医学上正しいのも事実ですよ?
でも、血行がよくて血管がとりやすく、失敗しても怒られず、しかも大半は健康な成人男性というわけで、上の先生にいやおうなしに一番太い針を渡され、何回も何回もやり直しをさせられながら、半泣きでブスブスやってました。
 普通の22G針は研修医同士で何回か練習すればすぐ入れれるのですが、16Gという輸血の為の針になるとなかなかコツがつかめず、入れられる方も激痛…。
でも、練習しておかないと、出血で血管のへしゃげた交通事故の被害者なんかには絶対入らないわけで。
(皆様、特に春は飲みすぎには注意ですよ!)


 話を戻します。
その日の深夜、心肺停止の患者が搬送されてきました。
まだ本当に若い方で、医者になりたての若造は使命感に燃え、教科書通りに必死に蘇生を行いました。
しかし結局30分経過したところで、ご家族と連絡をとった統括当直医の一言で全ては終了。
 その方は、(自分は知りませんでしたが)今まで何回も自殺未遂で受診していた常連さん。
しかもいわゆる「引き際を抑えた見事な未遂」で、ギリギリ死なない程度でとどめていたようです。
しかし今回、運が悪かったというのか自業自得というのか…。
だいぶ薬のせいで心臓が弱っていたらしく、(推測ですが)まさかの心停止。
 駆けつけた知人という人も、固定電話から救急車は要請したものの到着時にはその場におらず連絡不能。
状況から事件性が否定できないため、警察に連絡。
 検視が行われることになりましたが、たまたま大きな事件があったので朝まで引き取れないとのこと。
家族と連絡を取る時、やむを得ず故人の携帯を見て連絡をとりましたが、あっさり蘇生中止を希望。
 生前、家族全員をさんざん振り回し、借金を負わせ、みんなが疲れきって病んでしまった、自殺が最後の希望だったろうから頼むから逝かせてやってくれ、と…。
死亡確認後改めて連絡しましたが、地方に住んでいて今晩は引き取りにも付添にもいけないとのことでした。
 最後に携帯から電話をしていた(おそらく通報者でしょう)異性の知人にも連絡をとりましたが、今までまとわりつかれ、逃げようとすれば自殺未遂をされて疲れ切っていた、家族でも友達でも何でもない、もう関わりたくない、と泣き声で通話を切り、その後はつながらず…。

 暗澹とした気分になりました。最初の社会勉強でした。

 結局遺体をどうしようかという話になり、もう一度話は警察へ。
誰かが面会に来た時にすぐ会えるようにという配慮から、「隔離室」に安置することとなりました。
 この隔離室、少し説明しにくいのですが、救急の一番奥まったところにあります。
手前から診察スペース(ウォークインの診察室と救急車受け入れ)があり、処置のスペースがあります。
私たちはだいたいこの処置スペースと診察スペースを行き来しています。
 さらに奥に経過観察用のベッドが10台あるのですが、そのさらに突き当りにあります。
カーテン付きのドアで仕切られていて、救急室のベッド側と廊下2か所から出入りできますが、どちらも施錠できます。(以前知らない間にホームレスが入っていたりしたことがあったので…)
 正しい使用方法はインフルエンザの患者の点滴などですが、今回はそこに入っていただこうというわけです。
空調も別になっているので、その部屋だけ最低温度に設定してクーラーをかけ、施錠しました。

 ショックを受けていた自分も、すぐにまた怒涛のように運び込まれる酔っ払いの相手をしているうちに、その患者のことが頭から抜け落ちて行きました。
それがだいたい11時ごろ。

 異変が起きたのは深夜1時半ごろでした。

 観察用ベッドと隔離ベッドは先ほども言ったように近いとはいえ少し離れているので、 各ベッドに一つずつナースコールがあり、鳴らすと「エリーゼのために」が流れます。
意外と音が大きく、救急全体で聞こえるので、だいたい看護師さんが誰か手を止めて、ベッドのところに行ってくれます。(しょうもない要件ばかり何回も言ってると何もしないこともあるみたいですが)
しかし、悲しいことに看護師よりも研修医の方が立場が下で…、あとは察してください。
 というわけでぱっと板を見に行くと、観察室のランプがチカチカ。
何も考えずにナースコールを取って「どうしましたか?」と言った瞬間、後ろからぱっと別のドクターが切ってしまいました。(ちょうど壁についてる固定電話みたいになっています)

「 え・・・。」
「 お前良く見ろ、観察室だぞ。」
「 あっ・・・え、あのー、酔っ払いが忍び込んでる、とか?」
「 鍵は俺がかけた。」

そういってポケットから鍵を出す上級医。

「そして今も持ってる。あとは聞くな、考えるな。こういうことも、たまにある。」

そして鍵を戻してぼそっと

「 ただの故障だ、厭な偶然、それだけだからな。」

もうそのあとは怖くてしかたありませんでした。
 しかし自分がやらかしてしまったせいでしょうか、その後ベルが鳴る鳴る…。
ひっきりなしにエリーゼのためにがガンガン流れます。
そのたびにめんどくさそうに受話器をガチャギリする上級医。
しかしベルはひどくなる一方でした。
 ♪ミレミシレドラ~…、のメロディーが流れるのですが、途中くらいからこちらが切らなくても勝手に途中で切れるのです。
ミレミシレドミレミシレド、みたいな感じで。
最後はミレミシミレミシミレミレミレ…、みたいになってましたね。
 明らかにこちらをせかしていました。
私と同じく入りたての看護師さんもいたのですが、彼女は完全に腰が抜けて泣きながら座り込んでいたし。
 そして、

「 おい!うっせーんだよ!!さっさと行ってやれやゴルァ!!!!」

と空気の読めない酔っ払い共。
中にはオラオラ言いながら隔離室のドアを蹴るDQNまでいて、ちょっとしたカオスでした。
 そんな中一人不機嫌オーラを立てていたのは師長さんでした。
とうとうしびれを切らした彼女はツカツカと受話器のところに行ってさっと取ると一言、

「 黙って、さっさと死ね!!!」

救急中にしっかりと声が響き、ぱたりと途絶えたナースコール。
 理解したのかしないのか知りませんが、空気をやっと読んでくれた酔っ払い達。
くるりと振り返った師長さんは、それはそれは、頼もしいとかじゃなくて純粋に恐ろしかったです。

「 仕事しろ!」

その後は馬車馬のように働きましたとも。
 酔っ払いはいつも居座ってしまって返すのに苦労するのですが、皆様本当に理解が早かった。
腰を抜かしていた看護師さんはその後、「ICUで死ぬ間際の人が氷をポリポリ食べていてその音が耳から離れない。」と言い残してやめて行きましたが、師長さんいわく軟弱ものだからだそうです。
 女社会、子供を5人育て上げ、なおかつ893やDQNのやってくる救急外来をあえて選ぶ、そんな猛者。
今でも心底恐ろしいです。
あと、心当たりがあってもこの話はあまり広げないでくださいね。
特定されたら…、考えたくないですから。













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しづめばこ 5月5日 P292

2014-05-05 17:52:15 | C,しづめばこ
しづめばこ 5月5日 P292  、大峰正楓の小説部屋で再開しました。


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日々の恐怖 5月4日 予言

2014-05-04 19:11:27 | B,日々の恐怖



   日々の恐怖 5月4日 予言



 俺、病院勤務なんだ。
で、患者さんの中に予言者ってあだ名の婆ちゃんがいる。
と言っても、別に新興宗教みたいに、うさんくさい予言とかするわけじゃないんだ。
 その婆ちゃん、かなり重度の認知症で、ほとんど一日中寝てる。
昼も夜もずーっと寝てる。
 でも、まれに目をさまして、泣きわめくことがあるんだよな。
なんかね、怖くて怖くて仕方ないっていう泣き方。
子供が怖い夢見たあと、泣きわめいてすがってくるだろ。 
あんな感じ。
 婆ちゃん何か必死に訴えようとしてるんだけどさ、言葉がうまく出なくて(脳梗塞後遺症)、俺をはじめ職員にとっちゃ何言ってんのかわからない。
わかってるのは、その婆ちゃんがそんなふうに泣きわめいた日か、またはその次の日、同じフロアに入院してる誰かが死ぬってことなんだよな。
 その婆ちゃん、もう1年近く入院してるけど、今のところその予言は一回もはずれたことないんだよね。
そんなに多く死人が出るタイプの病棟じゃないから、偶然ってのも考えにくいんだ。
 今までの的中回数は10回前後くらいだと思う。
その婆ちゃん、そんな時、どんな夢見てるんだろな。
もし見られたら、さぞ怖いだろうな、といつも思う。










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日々の恐怖 5月3日 人形

2014-05-03 19:06:11 | B,日々の恐怖




     日々の恐怖 5月3日 人形




 俺は小学1年から小学校を卒業するまで、アパートに家族で住んでいました。
そこの大家さんの子供Yが俺と同い年やったんです。
それで、俺の住んでるアパートの真ん前に大家さんの家があります。
古い昔ながらの平屋なんですが、でかいです。
 当然、そのYと遊びまくりました。 
学校一緒で、家がバリ近、同い年で男同士です。
てか、幼馴染です。
 俺らはファミコンにハマってて、そのYの家ですることが多かったんです。
俺の家は両親が共働きで、Yの家の方が広いし、おかんもずっと家にいます。
ほんと絵に描いたような専業主婦でした。
バンバン家事やってました。
 それで、そのおかんのすごいとこは、合間に俺らの相手をしてくれます。
色んな話してくれるんですが、結構面白いんです、怖い話とかしてくれたりで。
 ある日、Yのおかんが人形の興味深い話をしてくれました。
Yの家には髪の伸びた日本人形があります。
その日本人形の髪は、普通の長さより5センチぐらい伸びています。
俺は最初見たとき、これがテレビでやっていた呪いの日本人形なのかと、ホントにゾクッとしました。
 でも、YもYのおかんも、何故かまったくスルーです。

「 変じゃない?」

と俺が質問すると、Yのおかんは、

「 これね、もともとは長い髪の束を人形の中に入れ込んで、そのナンボかを見えるように頭から出してるんよ。
余ったのは中に入ったまんま。」

“ 感じ、わかりましたか?”

Yのおかんは、

「 それで、10年も20年も経ったら、頭の接着剤が弱くなってきて、中の髪の毛がズルズル外に落ちてきてん。
呪いの人形も一緒ちゃう?」

俺は理論的な解説に、なるほどと感心しました。
 それで俺は、人形の髪がどんだけ中に入ってるか強烈に知りたくなりました。
チャンスを狙っていた俺は、数日後YとYのおかんがいないのを見計らって、やめときゃいいのに人形の髪の毛を力任せに引っ張りました。

「 ブチッ!」

その人形の髪の毛はカツラ状態に剥がれ、なんと人形の頭はツルツルでした。

「 わっ!」

俺は急いで台所のご飯粒を取って来て、カツラの裏に擦り付け人形の頭に被せて逃げました。
 数日間、人形を壊したことを怒られないか、はたまた、人形の祟りがないか、ビクビクしていましたが特に何も起こらず、その後、小学校卒業と同時に無事引っ越しました。











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しづめばこ 5月3日 P291

2014-05-03 19:05:34 | C,しづめばこ
しづめばこ 5月3日 P291  、大峰正楓の小説部屋で再開しました。


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日々の恐怖 5月2日 思い出話

2014-05-02 18:04:37 | B,日々の恐怖


   日々の恐怖 5月2日 思い出話


 もう暑くなってきたので、思い出話いいでしょうか?
たしか二十歳の時だったと思うんだけど、大工をしてる先輩と当時よく2人で渓流釣りに出かけてたんです。
 渓流といってもかなり源流の奥深くまで釣り入るから、テントを持って山中で一泊することもあります。
ちょうど今くらい、梅雨が開けたくらいの季節のことです、
その時は北山の奥に入って、廃村八丁で釣った魚を焼いてプチ宴会をする予定でした。
 廃村八丁というのは北山の山奥、上弓削と佐々里の間くらいにある結構有名な廃村なんです。
明治時代には分教場まであって子供も10人くらい居たって記録も残ってます、
だけど昭和8年に3メートルを超すような大雪に見舞われて陸の孤島になってしまい、食料の欠乏、病人や死者が続出する悲惨な被害がでたそうです。
それで3年後には集団で離村され、以来何十年も人が住むこともなく今に至っています。
 ここ数年は家屋の荒廃も激しくて、住居が有ったとはわからないくらいの平地になってたり、唯一残ってる2つの廃屋が巡回員の詰め所になってたりしてるそうなんですけど、その頃はまだ、いくつかの建物は残っているけれども管理はされてないような状況でした。
 その日は早朝から一日釣りをして、2人で食べる分のサイズが良いイワナやアマゴをキープして、日が暮れる前には廃村八丁に入り野営の準備を始めました。
いつものように先輩が魚の処理や、米を炊く準備をしてる間にテントを貼ったり、一晩分の火種になる枯れ木を集めに行ったんですけど、その日に限ってなぜか手頃な枯れ木がみつからないんです。
 日が暮れないうちに焚き火を始めたかったので、しかたなく足りない分を、廃屋の中に積んであった板きれの山から少し頂戴しました。
焚き火にあたりながら、塩焼きにした魚をつまみに、お酒を呑みながら今日一日の釣りの話をしてると、あっという間に時間が過ぎて行きます。
 日付が変わりそうな時間になったので、そろそろ寝ようかということになりました、
そしてこれが燃えつきたら寝ようと、最後に焚き火にくべる木を選ぶのに薪のほうを見ると、集めた時はわからなかったんですが、枯れ木や板にまじって竹の棒が二本あったんです。
手にとってよく見ると先のほうに三角形の穴が開いてたりして、何かに使っていた物みたいなんです。

「 なんだろ、見覚えのある形の穴だな?」

と思いながら火の中に入れようとしたんですけど、突然何かに袖をひっぱられて竹を落としちゃったんです、

「 おいおい酔い過ぎじゃないか。」

と先輩は笑ってましたが、何か妙な気がして燃やすのを止めておきました。
 そしてそれぞれテントに入り眠りについたんですけど、しばらくしてふと目を覚がさめたんです。
すると、テントの入り口あたりで人の足音が聞こえるんです。
 先輩がおしっこにいくのかなとぼんやり思っていると、どうも何か違うんです。
大人のザッザッっていう重い音じゃなく、もっと小さな子供が歩くようなチャッチャッていう軽い音です。
それがテントの入り口を行ったり来たりしてるんです。
なぜか不思議と怖くなくって、

「 誰?
どうしたの?」

って聞いてみたんです。
そしたらテントの外から、確かに聞こえてきたんです。
 子供の声で、

「 返して・・・。」

って。
 その瞬間に、

「 あっ!」

と自分の中で理解できたんです。
そして、

「 大丈夫、ごめんね。」

って言うと、それっきり足音は聞こえなくなりました。
 翌日焚き火の所に行き、燃やそうとした竹をもう一度よく見ると、やっぱりそうでした。これ竹馬に使った竹だったんです。
見覚えのある開いていた穴は、足を乗せる部分をつけるとこなんです。
 朝食を食べながらその話を先輩にすると、

「 そっか悪いことしたな、じゃあ直して返そうか。」

といって、竹を探して切り出して、足を乗せをつけて乗れるようにしてくれたので、元あった場所に返し、2人で手を合わせて八丁を後にしました。
酔っぱらって見た夢かもしれませんが、少しもの悲しい思い出です。












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日々の恐怖 5月1日 箱

2014-05-01 18:38:13 | B,日々の恐怖



    日々の恐怖 5月1日 箱



 親父の三周忌も過ぎたんで、親父と山の話を書いてみる。
同居していた親父が精密機械の会社を退職して2年目のことだった。
けっこうな退職金が出て年金もあるし、これからは趣味の旅行三昧でもするのかと思っていた矢先に、高校時代の友人から投資詐欺にあって、退職金の三分の二くらいを失ってしまった。
 その友人は指名手配になったものの消息不明になった。
もともとタイ在住だったんで、もう日本にはいないだろうと警察では推測してるような口ぶりだった。
 俺にしてみれば、まあ借金をこさえたわけではなく、元々ある親父の金を失ったのだし、まったくあてにもしてなくて、親父が好きに使ってくれればいいと思っていたんで、それほどショックはなかったんだが、親父の落ち込みようはひどかった。
 金額よりも、古くからの友人に裏切られたことのほうがこたえたんだろうと思う。
それからは何も手につかない様子で、家でぼうっとしてることが多くなった。
 その親父が急に、

「 山に行く。」

と言い出したんで嫌な感じがした。
旅行はするものの、それはパックの海外旅行がほとんどで、山登りとかには縁がなかった。
 俺の女房も、

「 自殺でも考えてるんじゃないか。」

と言うし、それで親父の予定の日がちょうど休みだったんで、俺もついていくと言ったら、なんか複雑な顔をしたけれども、しばらく考えて、

「 いい。」

と答えたんで、俺の車で出かけることにした。
 親父から聞いた目的地は隣県で、かなり時間がかかるんだが、山へ入るのは4時過ぎじゃないとだめだと言うんで、昼過ぎに出発した。
 3時間ほどでその町に着いたが、一言でいえばものすごい田舎だ。
その町外れまで来て、森の前の小さな神社のわきの空き地に車を停めた。
ちょっと意外に思ったのは、そこには十数台車が駐車されてて、中には高級外車なんかもあったことだ。
それから森に入って小径を歩き始めた。
 この間中、親父は押し黙った気まずい雰囲気だったが、それまでも山に行く目的とかは一切話してはくれなかったんで、せめてと思って山の名前を聞いてみた。
すると親父は、

「 ○○山。」

とぽつりと答えた。
 小一時間ばかりで、細い山の登り口のようなところに出たが、そこは注連縄のようなものが張ってあるし、私有林につき入山を禁ずという木の立看板もあった。
看板の上のところに、鮮やかな赤字で梵字のようなものが書かれていた。
 そのときは6月で4時過ぎていたけどまだ明るく、山は森にさえぎられてわからなかったけど、そんなに高いところではないという感じがあった。
登山道には古い木の板が埋められていて、傾斜もきつくはなく、登りやすかった。
60過ぎの親父でもそれほど息は乱れてない。
 10分ほど登ってくと、前に人影が見えてきた。
どうやら女性の二人組で、しばらくして追いついたが、高校の制服を着た女の子とその母親らしい女性だった。
母親のほうは洋装の喪服のようなものを着て、ヒールの高い靴で歩きにくそうだった。
 親父が何も言わないままその二人を追い越したんで、俺も体を傾けて、

「 お先します。」

と小声で言って前に出た。
その二人もやはり押し黙ったまま後ろになってついてくる。
 それから20分ほど登ると、ヤブを切り払ったようなちょっと広いところに出た。
まだ山頂ではない。
そこの大きな木を回ると洞窟の入り口が見えた。
やはり御幣のついた注連縄が上から垂れ下がっている。
高さ3~4mくらいのくぼみで奥は相当深いようだ。
 おぼろげながら洞窟の数十m奥に人の姿が見える。
数人並んでいるみたいだった。
親父は、

「 ここで待っててくれ。」

と言って、洞窟の中に入っていった。
 俺が近くの朽ち木に腰掛けてタバコを吸ったりしていると、先ほどの母子が追いついてきて中に入っていった。
それから40分ほど待ったが、その間に出てきたのが8人、様々な年代の人たちで女性も2人いた。
 どの人も白い布で包んだ箱を大事そうに持っていた。
そして親父が出てきたが、やっぱり白い布の箱のようなものを持っている。
出てくるなり俺の顔を見て、

「 やっとひとつ済んだ。」

と言う。
 俺が、

「 その箱は何?」

と聞いても、答えてはくれなかった。
 もうだいぶ暗くなっていたんで、急いで空き地まで戻って車に乗った。
まだ車は数台残っていた。
親父は後部座席に乗って、大事そうに箱を抱えて黙っていた。
 家に帰ると、親父はそれから二階の隠居部屋にこもって、食事も部屋まで持ってこさせるようになった。
そのくせ夜はひんぱんに外出する。
しかも、それまでなかったんだが自分の部屋に鍵をかけるようになった。
 夜の9時頃に家を出て0時過ぎに戻ってくる。
何をやってるかわからないが、靴や手が泥だらけになっていて、いつも帰ってきては入念に手を洗っていた。
 めずらしく親父が夕方出かけたとき、部屋の鍵が開いていたんでちょっとのぞいてみた。
すると机の上がかたづけられていて、そこに仏教風でも神道風でもない祭壇がこさえられている。
 あえていえば古代風といった雰囲気で、埴輪のようなものがある。
それに囲まれてあの白包みの箱があり、その前には10cmくらいの細い骨が積み上げられていた。
 俺は近寄って、悪いとは思いながらも箱をそうっと取り上げてみると、箱は意外に重く、なんだか生暖かい。
振ってみるが音はしない。
粘土のようなものが詰まっている感触がある。
 耳をあててみると、かすかにだが、とき、とき、というような音が聞こえてくる。
そのとき下で親父が帰ってきた音がしたので、あわてて部屋を出た。
 その夜、俺は家の中でタバコを吸わないように家族に言われてるんで、外の通りでタバコを吸っていると、耳もとで、

「 お前、あの箱にさわっただろう。」

と、ぼそっとつぶやく声がして、驚いて振り向くと親父が立っていて、

「 いいよ、もう済んだから、これで全部終わったから。」

そう言って、まだ60代なのにひどくよぼよぼした感じで家に戻っていった。
 その2日後の新聞に、親父をだました友人が海外で惨殺されたという記事が出た。
詳しい記事ではなかったが、ナイフで刺されたというようなことが書いてあった。
その後警察も家に来たが、犯人はわからず金も戻ってはこなかった。

 それから6年後に親父は肺炎で死んだが、いよいよ危ないと医者に言われて病院についていたときに、ふと意識が戻ったように目を開けた。
そのとき俺は、

「 親父、あの○○山って何だったんだ?」

と、ずっと気になってたことを聞いた。
すると親父は、鼻に酸素の管を入れられた状態で少し笑い、

「 ○○山じゃない、順番が違う。
古い遺跡、あとのことは墓場に持って行く。」

途切れ途切れにそれだけ答えると、眠ったようになってしまった。
そして、それから4日して息を引き取った。












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