大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 5月31日 海女

2014-05-31 20:36:58 | B,日々の恐怖



    日々の恐怖 5月31日 海女



 私は23歳で、海女(海女歴2年)をしています。
泳ぐのが好き、結構儲かる、という理由でこの仕事をしてますが、不思議な体験をした事があります。

 海女になりたての頃、付いてた人に「絶対行ってはいけない」と言われてる場所がありました。
その場所は離れ小島のような所で、岸から距離にして300m位だと思います。
他の海女も絶対そこの小島には行きません。
私は勝手な思い込みで、そこの小島に行く途中で結構潮の流れの速い所があり、海女って結構年寄りが多いので、危ないから行ってはいけない、と言う事だと思ってました。

 仕事は潮の満ち引きにもよりますが、ほとんど午前中で終わります。
しかしこの日は、体調もよくまだまだ潜れそうだったので、午後も1人で潜ってました。
そして波も穏やかだった為、ふとあの小島にいってみようかなーと思いました。

 潮が速いと思い込んでいたのですが、そんな事もなく、あっさりその小島に到着しました。

「 な~んだ、楽勝じゃん。」

などと独り言をいいながら潜ってみると、普段人が来ない為か、もう大きなアワビ、サザエがゴロゴロしてます。
アワビなんて30センチ位、サザエもほとんど20センチ。
もう夢のような光景です。

“ なに~ここ宝島じゃん!”

などと思いながら取りまくっていると、小島の海底のほうに、ぐるりと綱が巻いてありました。
 ちょっと気味が悪くなり小島に上がると、小島の側面には数体のお地蔵様が彫ってありました。

“ 何~ここ、なんかヤバイ所~?”

なんて思ってると、声がしました。

「・・・・・ちゃ・」

“ えっ?何っ?ちゃって・・・。”

その声はだんだんハッキリと聞こえて来ました。

「お・・ぇちゃん」
「おねぇちゃん」

後ろを見ると、10歳位の男の子が立たっています。

“ えっ何処から来たの・・・?”

と思いつつ、かなりビビッた顔してたと思います。

“ しかし、何かが変だ・・・”

話しかけようにも怖くて声が出ませんし、海に囲まれた小島なのに洋服着てるし、しかも濡れてないし。
 ヤバイと思った時、男の子は言いました。

「 おねぇちゃん、何処から来たの?」

私は怖くて叫びたいんだけど、声が出ないで口をパクパクするだけ。
男の子はどんどん話を進めます。

「 僕さぁーお家帰りたいんだけど、どう帰ればいいか分かんないし、足も痛いし、頭も痛い、お腹もすいたし喉も渇いたし・・・、助けてよ、おねぇちゃん。」
 
いままで普通の姿だった男の子が、しゃべった内容に変化していきます。
足が痛いと言うと足が血まみれに、
頭が痛いと言うと顔が血まみれに、
お腹がすいたと言うと痩せて体が崩れ始め、
喉が渇いたと言うと老人のように顔が変化しました。

“ ヤバイ、絶対ヤバイ、神様ー、ナンマイダー。”

などと唱えると、ブチッと音がして自由になりました。
 転げるように海に入ると、普段とは違いどんどんどんどん海底に沈んで行きます。
と言うより、引き込まれる感じです。

“ 何よこれーっ。”

海って言うのは、黙ってても浮くんですよ、普段は。
実際、浮くよりは潜る方が大変なのに。
 結局、海底まで引き込まれました。
すると、そこには小さな洞穴みたいなものがあり、そこに水中眼鏡と骨がありました。
恐らくさっき見た少年だなと、直感で分かりました。
そして少し悲しい気持ちになったとたん、ふぅーと吸い込まれる力が弱まり、浮き始めました。
水面まで出ると冷静さを取り戻し、岸まで泳いで帰りました。
 岸に着いてからは、あの小島で採ったアワビとサザエを買い取り業者に置いて、すぐ警察に骨を発見した事を届け出ました。
そしてまた業者に戻ると人が集まってきて、

「 凄いね~、今日は大漁じゃん。」

などと、はやされました。
 そして受け取った金額は、自分でもビックリするほどの額でした。
なんか嬉しいやら悲しいやら、複雑な気持ちで帰路につきました。
 そしてその夜、『あの小島に行ってはいけないよ』と教えてくれたおばさんが来ました。
あがってもらいお茶を出すと、おばさんはこう言いました。

「 あんた、あの小島にいったんだって。まったく、あんなに行っちゃいけないって言ったのに、まぁ無事に帰ってきたからいいけどさ・・・。
ところで、骨を発見したのは聞いたけど、他に何か見なかったかい?」

私は経験した事を全て話しました。
すると、

「 やっぱりかい・・・。」

と言いました。
 そして、おばさんが話してくれた話はこうです。
終戦後のある夏、男の子3人が海水浴をしていました。
波が高かったせいか男の子達は流されて、あの小島に辿り着いたのです。
しかし、波が高いせいで、なかなか救助の船を出せません。
そして、小島を飲み込む程の波が来て、男の子3人はまた海に・・・。
 それを見かねた1人の漁師が船を出しました。
漁師は男の子を1人助け2人助け、3人目を助けようとした時、船が小島に激突して沈没。
結局、男の子3人と漁師は行方不明になったそうです。
海底に巻いてある綱と小島の側面のお地蔵様は、その時のものらしいです。
そしておばさんも昔、その小島の上で遊んでる男の子を見たことがあるそうです。

 次の日、警察は捜索したけども、骨は発見できなかったそうです。
その年のお盆の波の静かな日に、少し怖かったけど、おばさんと2人で船を出し、その小島に線香とお供え物をあげに行きました。
帰りの船でふと、

「 ありがとう、おねぇちゃん。」

と言う声が聞こえたような気がしました。











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