大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

☆奇妙な恐怖小説群
☆ghanayama童話
☆写真絵画鑑賞
☆日々の出来事
☆不条理日記

大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

☆分野を選択して、カテゴリーに入って下さい。

A,日々の出来事

☆( 1年間366日分の日々の出来事  )

B,日々の恐怖

☆( 日々の恐怖 )

C,奇妙小説

☆(  しづめばこ P574 )                          

しづめばこ 5月19日 P299

2014-05-19 20:15:14 | C,しづめばこ
しづめばこ 5月19日 P299  、大峰正楓の小説部屋で再開しました。


小説“しづめばこ”は読み易いようにbook形式になっています。
下記のリンクに入ってください。(FC2小説)

小説“しづめばこ”



童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
 大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日々の恐怖 5月19日 名士

2014-05-19 19:10:37 | B,日々の恐怖


     日々の恐怖 5月19日 名士


 彼女の実家がベッドタウンの住宅街にある。
1970年代後半くらいから人が集まり出した地域らしくて、彼女の実家も転入組だ。
だからPTAだとかパートだとか、習い事とかで知り合った人以外とはあまり面識がないってのが普通らしい。
 彼女の家のはす向かいの家から十字路をまたいだところに、すごく古い家があるらしい。
ベッドタウンになる前からそこに住んでいる人らしい。
 実際、表札にかかっている名字は、その隣町の地名にもなっている、
老舗の商店だとか、前の前の前の市長の名前とかに見られる、いわゆる地元の名士の一族らしい。
 でも、その地域のYさんの多くが、町の主要な施設や政治で華々しい活躍をされているのに対し、彼女の家の近所のYさんは何をしているのかも分からないし、記憶にある限りでは顔も見たことがない。
小学校入学前に転居してきて、もう今年で24年にもなるという。
 もしかしたら誰も住んでいないのかも、とも思ったが、夜になるとボンヤリと60ワットくらいの電球が灯っているのが見える。
それだけが、かろうじて在宅を知るてがかりだったわけだ。
 つか、24年間も近所の住人に顔も見られずに、食事だの銀行だの娯楽だのゴミ出しだのはどうしていたんだよ、と怪しい話だが、彼女の母親も地域の集まりや他の行事でも一切面識がないと言う。
家族構成がどうなっているのかも全く知らない。
 それが今年の6月、仕事が遅くなって夜の10:30を回った頃だ。
駅から家路を急いでいると、Yさんの家の前に人だかりができている。
野次馬が集まっているような感じではなくて、お客さんが大勢、もてなしてくれた家人に別れの挨拶をしているような様子だったらしい。
 十字路を照らす街灯の向こう側の暗がりに、礼服姿の男性、着物姿の女性が15、6人くらい玄関に向かって整列して、おじぎを繰り返していたらしい。
後姿だったんで顔は見えなかったらしいが、髪形からしてほとんどが中年かそれ以上の年齢に思えたとか。
 Yさんの家にお客さんか、珍しいな、と思いながら通り過ぎたが違和感がある。
玄関の戸はいつもどおり閉じられている。
つまりその集団は、誰に向かうでもなく挨拶を繰り返しているのだ。
 明かりは消えている。
Yさんの家の明かりは、9時を回ったあたりでいつも消えるのだ。
それに気づくと彼女は不気味に思って、見ないようにして足早に家に逃げ帰った。
 二階の自室の窓から恐る恐る十字路の方を覗き見ると、もうその人達はいなくなっていた。
思えば、あれだけの人数が揃って頭を下げていたのに、誰も一言も発していなかったように思えたとか。

 その一月後、金曜の夜に二階の自室の窓の外からヘッドライトの明かりが射した。
それがいつまでも消えないので窓の外を見ると、どうやら車がYさんの家の前で停まっている。
Yさんの家の明かりも点いていた。

“ またお客さんなのかな?”

と注意してみると、それは霊柩車だったらしい。
 急いで下の階に下りて、洋ドラを観ていた母親に、

「 お母さん、Yさんのとこ、霊柩車きてるよ。」

と伝えると、

「 あら、おかしいわね。」

と二人で二階の部屋に戻って窓の外を見ると、もう車は去っていたらしい。
そして、家の明かりも消えていたようだ。
 この話を聞いた時に彼女が聞いてきた。

「 でも変だよね。
霊柩車って、お葬式の後に家から火葬場に連れて行く時に使うんだよね?」
「 そうだよね、それに夜っておかしいよね。」

 夜中に霊柩車が家の前で数分だけ停車して、遺体を運ぶっていうのも妙な感じがする。
それに、今でもYさんのお宅には変わらず明かりが灯っているので、どうやら一人暮らしではなかったようだ。











童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
 大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

☆童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。

-------大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ-------