主治医の狸小路は、妙にニコニコして俺の顔を見た。
“ タヌキだ、こいつは絶対タヌキに違いない!”
俺は確信した。
“ この場を何とか脱出しなければ・・・・。”
俺は慌てて言った。
「 えっと、あの、手術は怖いですからダメです。
僕は生命力が強い方ですから、サロンパスを貼って置けば治ると思います、ハ
ハ・・・。
それに、ホント貧乏で、手術するお金が無いんです。
毎日、タマゴ掛けご飯とパンの耳で飢えを凌いでいます。
もう、ホント、入院するだけで精一杯です。」
タヌキは上目遣いで俺を見た。
タヌキの眼の端が笑っている。
“ ヤバイなァ・・・。”
どうも、まだ、手術を諦めていないようだ。
タヌキは身を乗り出して笑い顔で俺を脅迫する。
「 そうですかァ、却って治るのに時間が掛かりますよォ~。」
タヌキのドアップになった笑い顔を見て俺はたじろいだ。
眼だけが笑っていないところがとても恐ろしい。
俺は仰け反りながらも何とか防戦した。
「 死んだ爺さんに、手術だけは避けろと言われていますから・・。
これ遺言みたいなもんでして・・・・。」
「 う~ん、そうですかァ・・・・。
ま、ご両親の意見も聞いて見ましょうか・・・。」
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