俺はひとまず昨日のことは伏せて、しらばっくれて訊いてみた。
「 どう、変なん?」
「 そやな・・・。
まあ、同じ部屋になったのも何かの縁かも知れへんな・・・。」
「 だから、どう、変なん?」
「 うん、よっしゃ。
ちょっと、待ちや・・・・。」
田中爺は通路の方に行って外をキョロキョロ見てから、人がいないことを確かめて戻って来た。
「 看護婦、おらんし言うたるわ。
あのな、このベッドな、使ったヤツ、生きては退院できひんで・・。」
「 えっ、ホント?」
「 ホンマやで。
わしも山本さんもホンマにこの病院長いんや。
そやから、知ってるねん。
知ってるヤツだけで、四人はおるんやで。
これ、ホンマのこっちゃがな。」
俺はシゲシゲと曰く付きのベッドを眺めた。
その隣のベッドでは、相変わらず山本爺が布団から眼だけ出して、こちらの様子を窺っている。
田中爺はアゴでそのベッドを指して話を続けた。
「 で、そのベッドなんやけどな。
来たヤツ、始めは結構元気なんやけどな、そのうち段々弱って来て個室行き
なんや。
そんで、個室行ったらもう帰って来んわな。
ホンマ、お陀仏さんやがな。」
「 それって・・・・。」
「 ああ、始めは分からんかったんやけどな、最近、何か変やなって、山本さん
と話してたら、うわ~って気が付いたんや。
そんなら、案の定、そうなんやわ。」
☆HOMEページに戻る。
HOMEページ