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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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霧の狐道191

2009-02-17 18:49:37 | E,霧の狐道
 俺はチラッと井上さんを見た。
井上さんは俺がベッドを見ているのが分かっている。
でも、それについての話は出て来ない。

“ 当然だよな・・。”

俺たちはエレベーターに一直線に進む。
エレベーターの前で井上さんは言った。

「 2階まで行くわ。」

 俺は扉の上にある階の表示を見る。
エレベーターは1階に止まっていた。
井上さんがエレベーターのボタンを押す。
扉の上にある階の表示がゆっくり上がり始める。

“ 1,2,3・・・・。”

俺は振り返ってナースステーションの横の奥まった所にあるベッドを見た。
ベッドは一つだけ切り離され、別のものとしてポツンとそこにあった。
 後ろでエレベーターの扉が開く音がする。

「 乗るわよ。」

井上さんが後ろを見ている俺に言った。
 俺は正面を見た。
エレベーターの扉が開いている。
エレベーターの正面奥の壁には大きな鏡がついていた。
そこには車椅子に乗った俺と井上さんが映っている。
 俺は井上さんに押されてエレベーターに乗り込んだ。
鏡に映った俺の顔が大きく見える。

“ 俺、ちょっと表情暗いな・・・・。”

 井上さんが車椅子の向きをクルッと扉の方に変えた。
また、ベッドが見える。
扉が閉まり始め、ベッドが視界から消えて行く。

“ こんな風に、人も消えて行くのだろうな・・・。”

俺は沈んだ気分で、目の前のピッタリ閉じた扉を眺めていた。
そして、エレベーターは低く音をたてながら下がり始めた。



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