布団から眼だけを出している山本爺の声がした。
「 龍平・・・。」
山本爺が手招きをして子供を呼んでいる。
子供が山本爺に近付くと、山本爺はもっと近くに寄れと手で合図した。
子供は少し屈んでベッドの山本爺に顔を近付けた。
二人で、何かゴニョゴニョ話をしている。
何を言っているのか、ここまで聞こえて来ない。
話が終わると、子供がこちらにやって来た。
そして、横になっている俺に話し掛けてきた。
「 わい、龍平って言うねん。
昨日、入院したんか?」
「 そうだよ。」
「 ふ~ん・・。
で、怪我?」
「 そう、川に落ちた。」
「 どうして?」
「 鞠を避け損なって・・。」
「 鞠?」
「 うん、小さな女の子が持っていたんだ。」
「 その子、昨日の夜中、来たんやろ。」
「 来たような気もするけど、夢でも見ていたと思ってるけど・・・。」
「 山本さんが、今、来たって言ったよ。」
「 そう・・・。」
「 それに、そこのベッドの影を連れて行ったって言うてんにゃけど・・・。」
山本爺を見ると、布団で顔を隠して眼だけでこちらの様子を窺っている。
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