玄語

玄音の弟玄です。日々感じている事、考えている事を語っていきます。そんな弟玄が語る”玄語”です。よろしく。

「タハーフト(崩落)」

2018-09-20 19:22:37 | Weblog


「タハーフト」。
この言葉はアラビア語で、英語で言うとdestructionが当てられる。いわゆる「破壊」の意味であるが、本来の意味はもっと深い。

「原来、アラビア語の「タハーフト」は、たんに何かを破壊する、あるいは何かが破壊されることではなくて、表面的には完璧な自己整合性をもって立っているかのごとく見えるシステム(物質的であれ、理念的であれ)が、己れの深部に秘めている矛盾、非整合性が暴露されることによって、内部から崩壊することを意味する。一つの構造体が、自分自身の内臓する自己矛盾の故に、自然に、必然的に、崩れ落ちていくことだ。現代的な言い方をすれば、自己解体というような表現に当る。」(『イスラーム思想2』岩波書店)

これは中世のイスラム思想家ガザーリーの著書である『哲学の崩落』におけるその題名の「崩落」について、井筒俊彦氏が解説している文である。「タハーフト」という語には「破壊」というよりも、自己が抱える矛盾により、自己解体せざるを得ない、もしくは自滅していくということが明らかにされている。

己れの秘めている矛盾、非整合性を解決することがなければ、カタチあるものであろうとなかろうと崩落していくことが語られているが、何か、今のこの国、社会、世界そのものの事を語っているかのようである。誰もがおかしいと気づいているのに、誰もがその矛盾や筋の通らない非整合性に気づいているのに、当事者達が解決する動きを見せない。いや解決する動きを表面上見せかけてるだけで、実際は何も取り組んでいないことが明かされ続けている昨今である。

こんな事をずっと続けていては必ず「タハーフト」していかざるをえない。おりしも、今日、ある方向性が確定した。本当にこれで良いのだろうか。仮に近い将来「タハーフト」したとしても、自分はその先を見据えて、今から新しい道を創っていくという道を選択する以外にない。今がどうであろうと、先を創っていく道を選択するという決意である。今までもやってきていることはあるけれど、より強固に、ハッキリさせていくよりなく。いよいよ大変な時に入った。「タハーフト」の時に入ったのかもしれない。

引用したイスラムの思想家達の強靭な精神力と探求力、思索力。その思想は中世キリスト教にも絶大な影響を与えたと言われ、その後の宗教、哲学、学問を変えたとも言われ、それはそのまま世界を変えたとも言える。世界を変えた始まりは一人の人間の深い思索であり、その生き方や行動であることを、このイスラムの思想家達から学びます。啓示と思索が入り混じるイスラム思想の在り方。その本質に実はこれからの事のヒントがある気がしています。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする