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読んだ本の感想と旅行の日記を書いていきます。
後、その他なんかあれば・・・

20冊目:「坂の上の雲(四)」

2010-10-08 01:56:35 | 
総評:★★★★★ 以下、一巻から変わらず
面白い度:★★★★★ 
読みやすい度:★★★★☆ 
ためになる度:★★★★☆ 
また読みたい度:★★★★★ 


四巻はまるまる日露戦争の話。
これでもまだ序盤。

日露戦争の黄海の海戦、遼陽会戦、旅順の戦いを書いている。


日露戦争は本当にすさまじい戦争だったんだと思った。
日本は日露戦争に勝った。という結果だけじゃ済まされない戦争だった。
人がどんどん死んでいき、生き残っている兵士も連戦の疲れだったり、戦闘が身近にあることで精神が休まらない。

見慣れない土地にいながらの厳しい行軍に、この先どうなっていくか分からない状況の中、いざ戦闘となると、ロシア側の兵士も悲痛な勢いで銃を撃ってきたり、突撃してきたりもするだろう。夜中の奇襲もありえるし、また大砲などの銃声だったり、増えていく死体だったり、人の叫び声だったり、まさに阿鼻叫喚の地獄絵図だったんだろうと思う。
自分だったら本当にいてもたってもいられないだろうと思う。

そういった兵士の命が亡くなったりする厳しさもあるが、上官の責任はそれ以上のものがあると思う。
司令や総帥、参謀などの上官は、自分の判断、決定、命令一つで何人かの兵士の命が亡くなったりするし、日本軍が壊滅するかもしれない。
自分の行動一つ一つが、日本軍、ひいては日本の明日を決定する。
そこにかかる重圧はとても言葉にできるものではないだろう。


日本、ロシアともうまく行った所もあるし、落ち度があった所もある。
日本がロシアと戦って勝ったとはいえ、それはうまく行った勝利ばかりではなかったことが分かった。


何よりも旅順の攻防戦が熾烈を極めていた。
旅順攻略を行った陸軍第三軍を率いる乃木希典(のぎまれすけ)がここでは重要な人物となっている。

乃木は結果的に旅順を落とした将軍ということとなっているが、司馬遼太郎はこの小説で、「無能な将軍」とこき下ろしている。
なぜならやり方によってはすぐに落とせるであろう旅順要塞を何日間も引き伸ばし、日本兵の死人を多く出していったからだ。

しかしWikipediaで見てみると、乃木は旅順を落とした英雄となっており、世の中からは「軍神」として崇め奉られているようだ。
この差はなんであろうか?とても気がかりである。


結果的に陸軍が旅順を落としたことによる功績から、海軍の旅順封鎖が解かれ、海軍につかの間の休息が訪れた。また海上輸送の不安がなくなった。また南にあった兵力を激戦区の北方に向けることが出来る。と多くの点で日本軍に良い流れを持っていくことが出来た。
しかし、そのためにはただならぬ死者を出すことになってしまった・・・


旅順攻略という結果から見れば、乃木は大きな成果を出した将軍になるのだろう。しかし、その内容としては、自分はこの小説を見る限り凄惨たるものだったので、よくやったとは言えない。
今までの過程をもちろん首脳部は知っている、しかし、乃木を卑下することはせず、逆に位を上げて奉っている。
こういった所に官僚主義というか、事なかれ主義というか、自分としてはとても疑問に思う。


まあ政治だったり人事だったり身分や出自だったり色々なものがあるのだろうが・・・
そこは明治維新という「革命」を行ったとしても変わらないところなのだろうなぁと思う。
そんな一つ腑に落ちないものを感じた四巻だった。
まあ今の日本社会にも全然蔓延しているものだとは思うけど・・・
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