
映画「永遠の0」が話題になっていますね。
そこで、手塚治虫先生の大ファンの私は、先生にまつわる戦争もので、何かお話出来な
いかと考えていたら、戦時中に作られた国産長編アニメ「桃太郎 海の神兵」を思いつき
ました。
手塚先生は、この映画を昭和20年4月頃、勤労動員の休日に観て、涙があふれるほど
、感動されたらしいです。
この映画は、松竹動画研究所が、時の海軍省より依頼されて製作された戦意高揚映画で
、桃太郎が戦闘機のパイロットとして登場してきます。
なぜ、桃太郎を使ったのでしょうか?
その理由はおそらく、桃太郎が日本昔話史上最強のヒーローであるからに違いありませ
ん。
だから、テレビの時代劇「桃太郎侍」は、それにあやかったのであり、漫画家の横山光
輝先生はそれをヒントに「バビル2世」を描かれたのだと思います。
え?「バビル2世」は、「西遊記」からじゃないの?と思いました?
確かに、横山先生はインタビューでそう答えているそうですが、3つのしもべだけで考
えたら、「西遊記」の猿、河童、豚より、「桃太郎」の猿、雉、犬の方が、「バビル2世
」のロデム、ロプロス、ポセイドンにしっくりくるでしょう?
それに、「西遊記」の場合、三蔵法師より、家来である猿の孫悟空の方が、主人公です
から、それでいくと「バビル2世」はポセイドンが主人公にならなくてはおかしくなって
しまいます。
この間違いに気づいた私って、横山光輝先生のファンでもないのに、すごいと思いませ
ん?(笑)
ところで、私は桃太郎で、大変びっくりしちゃった事があるんです。
私の身内で、東海地方に住んでいる者がいるんですが、20年近く前に、子供と一緒に
撮った写真に、桃太郎神社というのが写ってたんです。
それは、愛知県犬山市にあるらしく、そこで桃太郎は誕生した事になっているのだとか
。
ええ!うっそー!!
そんな訳ないでしょう?
桃太郎が、岡山県で生まれたというのは、誰だって知ってる事ですもん。
それに昔、遊んだ「桃太郎電鉄」って、テレビゲームも、最終目的地の桃太郎ランドは
岡山県にあったもん!
だとしたら、桃太郎は双子ちゃんだったの?
でも、そんなの聞いた事ないし。
だったら、答えはひとつ。
愛知県犬山市の桃太郎はニセモノだ~!(笑)
ずいぶん、話が脱線しちゃいました。(苦笑)
この「桃太郎 海の神兵」はいわゆるおばあさんが川で洗濯をしていると、どんぶらこ
、どんぶらこと桃が流れているのを拾って、桃から、男の子が生まれ、三匹の家来ととも
に鬼退治をするストーリーとはまったく違っています。
ある動物だけが暮らす村に、戦闘機のパイロットをしている猿が帰って来て、村中、大
喜びする場面から始まります。
猿には、小さい弟がいて、お兄ちゃんの帽子をかぶって、いつか自分も戦闘機のパイロ
ットになりたいと思うのです。
そんなある日、弟はかぶっていたお兄ちゃんの帽子が風で飛ばされ、川に落ちてしまい
ます。
弟は、慌てて、川に入り、拾おうとするのですが、おぼれてしまいます。
それを知った動物達はなんとか助けようとするのですが、どんどん流されていくばかり
で、大きな滝の目前まで来た時に、間一髪で、お兄ちゃんに助けられるのです。
ここまでは、どこが戦意高揚映画なのかと疑いたくなるくらい、牧歌的で、叙情的な印
象を受けました。
だけど、いつ桃太郎が出てくるのかと期待していたのに、なかなか出てこないので、ち
ょっぴり待ちくたびれてしまいました。
川から流れてくるのも桃ではなく、帽子とお猿さんなんですもの。(苦笑)
しかし、そのあと、舞台は南方に移り、とある島のジャングルを動物たちが切り開いて
、海軍設営隊本部の建物を作り、そこを拠点に鬼ヶ島を攻めるストーリーへと変わってい
くのです。
ここで、初めて桃太郎が登場するのですが、日本昔話史上最強のヒーローらしく、動物
たちの尊敬を一身に集める隊長さんという設定です。
最初、桃太郎は鬼たちと、会談し、無条件降伏の要求を突きつけます。
ところが、鬼たちは全軍の指揮者は、今、ここにいないので、その要求を呑む権限は持
たないと、のらりくらりかわそうとし、いかにもずる賢い印象を受けます。
ここで、特筆すべきは、鬼が英語で喋っている事です。
これは明らかに鬼畜米英を意識していますよね?
結局、鬼たちは桃太郎に降参し、めでたしめでたしという訳です。
この映画を観終わって感じた事は、戦意高揚のために海軍省の依頼で作られたとは言え
、それほど戦争を賛美しているとは思えなくて、牧歌的な叙情性あふれるシーンやミュージカル仕立てのシーンが強く胸に残りました。
調べてみると、監督の瀬尾光世は、子供たちに夢と希望を与える作品にしたかった事と
、この映画に平和への願いを暗示させたかったのだそうです。
そのために、瀬尾監督は海軍省から、かなりクレームをつけられ叱られたとか。
しかし、このエピソードに私は、海軍省の意向を半ば無視して、戦時中に子供のためを
思って良質の作品を作った人がいた事に深く感動し、涙がこぼれてしまいました・・・
手塚先生も、そういうところに感動されたようで、自分でアニメーションを作る励みに
なったそうです。
手塚先生のテレビアニメ「ジャングル大帝」の中の動物たちが学校を作り、文字を勉強
する場面は、この「桃太郎 海の神兵」へのオマージュとして作られたとか。
ところで、私はこの映画を観るとき、「フィルムは生きている」という手塚先生が、ア
ニメのお話をされているDVDも参考にして、鑑賞に臨んだのです。
それには「桃太郎 海の神兵」への熱い思いも手塚先生は語ってらっしゃるのですが、
そのほかに、あっ!と思ったお話をされてたんです。
手塚先生といえば、才能のある人に嫉妬したと言われていますが、アニメは沢山の人の
手によって作られているのを例に、こんなお話をされてるんです。
ぼくの頭のなかに、こんな考えがあるんだな。
自分はこの人達を育ててるんであって、いずれ一人前の作家になってライバルになる。
あるいは、自分よりもっと上の作品を作ってくれるんじゃないか。
その基本を、ぼくはたまたま皆さんに伝えてる役目をぼくがしているんだという気持ち
が若干あるんですね。
だから、ぼくの漫画のアシスタントにしても、アニメのスタッフにしてもですね、でき
ればこれはお前に任せるから好きにやっていいよって、つい言っちゃうんです。
すると、彼らは自分の好きなように、個性を活かして作ってしまうんです。
・・・中略・・・
ぼくは、なんかの形で、ほかの人を育てて、ほかの人の作家精神を立ててる部分がある
。
そういう人達は、ぼくから独立していくと、みんな立派なもの作ってますよ。
決して、ぼくは他人の作家精神とかオリジナリティまで踏みつけにしてね、ぼくのもの
を作ろうという気持ちはないんだ。
私は、手塚先生のこの言葉は本当だなと思わずにはいられませんでした。
藤子不二雄さん、石ノ森章太郎さん、松本零士さん、横山光輝さんらが、まだ漫画家の
卵だった頃、アシスタントの制度が確立する前から、手塚先生はお手伝いを頼んでいらし
たんです。
それは、人を育てるという尊いお考えがあっての事で、たんに忙しかったためだけでは
なかったのです。
そして、彼らは手塚先生のお仕事をまじかで経験したから、才能をより開花させる事が
でき、傑作をいくつも世に送る事が出来た。
それは、彼らが終生、手塚先生を尊敬する気持ちに揺るがない事で実証されている訳で
、才能のある人に嫉妬したと、手塚先生をよく知らない人が、一面だけの見方をするのは
、はっきり言って間違っていると思います。
アニメ「桃太郎 海の神兵」と、手塚先生ご出演の「フィルムは生きている」を鑑賞し
て、あらためて手塚先生の偉大さにふれた思いでした♪
映画「永遠の0」が話題になっていますね。
そこで、手塚治虫先生の大ファンの私は、先生にまつわる戦争もので、何かお話出来な
いかと考えていたら、戦時中に作られた国産長編アニメ「桃太郎 海の神兵」を思いつき
ました。
手塚先生は、この映画を昭和20年4月頃、勤労動員の休日に観て、涙があふれるほど
、感動されたらしいです。
この映画は、松竹動画研究所が、時の海軍省より依頼されて製作された戦意高揚映画で
、桃太郎が戦闘機のパイロットとして登場してきます。
なぜ、桃太郎を使ったのでしょうか?
その理由はおそらく、桃太郎が日本昔話史上最強のヒーローであるからに違いありませ
ん。
だから、テレビの時代劇「桃太郎侍」は、それにあやかったのであり、漫画家の横山光
輝先生はそれをヒントに「バビル2世」を描かれたのだと思います。
え?「バビル2世」は、「西遊記」からじゃないの?と思いました?
確かに、横山先生はインタビューでそう答えているそうですが、3つのしもべだけで考
えたら、「西遊記」の猿、河童、豚より、「桃太郎」の猿、雉、犬の方が、「バビル2世
」のロデム、ロプロス、ポセイドンにしっくりくるでしょう?
それに、「西遊記」の場合、三蔵法師より、家来である猿の孫悟空の方が、主人公です
から、それでいくと「バビル2世」はポセイドンが主人公にならなくてはおかしくなって
しまいます。
この間違いに気づいた私って、横山光輝先生のファンでもないのに、すごいと思いませ
ん?(笑)
ところで、私は桃太郎で、大変びっくりしちゃった事があるんです。
私の身内で、東海地方に住んでいる者がいるんですが、20年近く前に、子供と一緒に
撮った写真に、桃太郎神社というのが写ってたんです。
それは、愛知県犬山市にあるらしく、そこで桃太郎は誕生した事になっているのだとか
。
ええ!うっそー!!
そんな訳ないでしょう?
桃太郎が、岡山県で生まれたというのは、誰だって知ってる事ですもん。
それに昔、遊んだ「桃太郎電鉄」って、テレビゲームも、最終目的地の桃太郎ランドは
岡山県にあったもん!
だとしたら、桃太郎は双子ちゃんだったの?
でも、そんなの聞いた事ないし。
だったら、答えはひとつ。
愛知県犬山市の桃太郎はニセモノだ~!(笑)
ずいぶん、話が脱線しちゃいました。(苦笑)
この「桃太郎 海の神兵」はいわゆるおばあさんが川で洗濯をしていると、どんぶらこ
、どんぶらこと桃が流れているのを拾って、桃から、男の子が生まれ、三匹の家来ととも
に鬼退治をするストーリーとはまったく違っています。
ある動物だけが暮らす村に、戦闘機のパイロットをしている猿が帰って来て、村中、大
喜びする場面から始まります。
猿には、小さい弟がいて、お兄ちゃんの帽子をかぶって、いつか自分も戦闘機のパイロ
ットになりたいと思うのです。
そんなある日、弟はかぶっていたお兄ちゃんの帽子が風で飛ばされ、川に落ちてしまい
ます。
弟は、慌てて、川に入り、拾おうとするのですが、おぼれてしまいます。
それを知った動物達はなんとか助けようとするのですが、どんどん流されていくばかり
で、大きな滝の目前まで来た時に、間一髪で、お兄ちゃんに助けられるのです。
ここまでは、どこが戦意高揚映画なのかと疑いたくなるくらい、牧歌的で、叙情的な印
象を受けました。
だけど、いつ桃太郎が出てくるのかと期待していたのに、なかなか出てこないので、ち
ょっぴり待ちくたびれてしまいました。
川から流れてくるのも桃ではなく、帽子とお猿さんなんですもの。(苦笑)
しかし、そのあと、舞台は南方に移り、とある島のジャングルを動物たちが切り開いて
、海軍設営隊本部の建物を作り、そこを拠点に鬼ヶ島を攻めるストーリーへと変わってい
くのです。
ここで、初めて桃太郎が登場するのですが、日本昔話史上最強のヒーローらしく、動物
たちの尊敬を一身に集める隊長さんという設定です。
最初、桃太郎は鬼たちと、会談し、無条件降伏の要求を突きつけます。
ところが、鬼たちは全軍の指揮者は、今、ここにいないので、その要求を呑む権限は持
たないと、のらりくらりかわそうとし、いかにもずる賢い印象を受けます。
ここで、特筆すべきは、鬼が英語で喋っている事です。
これは明らかに鬼畜米英を意識していますよね?
結局、鬼たちは桃太郎に降参し、めでたしめでたしという訳です。
この映画を観終わって感じた事は、戦意高揚のために海軍省の依頼で作られたとは言え
、それほど戦争を賛美しているとは思えなくて、牧歌的な叙情性あふれるシーンやミュー
ジック仕立てのシーンが強く胸に残りました。
調べてみると、監督の瀬尾光世は、子供たちに夢と希望を与える作品にしたかった事と
、この映画に平和への願いを暗示させたかったのだそうです。
そのために、瀬尾監督は海軍省から、かなりクレームをつけられ叱られたとか。
しかし、このエピソードに私は、海軍省の意向を半ば無視して、戦時中に子供のためを
思って良質の作品を作った人がいた事に深く感動し、涙がこぼれてしまいました・・・
手塚先生も、そういうところに感動されたようで、自分でアニメーションを作る励みに
なったそうです。
手塚先生のテレビアニメ「ジャングル大帝」の中の動物たちが学校を作り、文字を勉強
する場面は、この「桃太郎 海の神兵」へのオマージュとして作られたとか。
ところで、私はこの映画を観るとき、「フィルムは生きている」という手塚先生が、ア
ニメのお話をされているDVDも参考にして、鑑賞に臨んだのです。
それには「桃太郎 海の神兵」への熱い思いも手塚先生は語ってらっしゃるのですが、
そのほかに、あっ!と思ったお話をされてたんです。
手塚先生といえば、才能のある人に嫉妬したと言われていますが、アニメは沢山の人の
手によって作られているのを例に、こんなお話をされてるんです。
ぼくの頭のなかに、こんな考えがあるんだな。
自分はこの人達を育ててるんであって、いずれ一人前の作家になってライバルになる。
あるいは、自分よりもっと上の作品を作ってくれるんじゃないか。
その基本を、ぼくはたまたま皆さんに伝えてる役目をぼくがしているんだという気持ち
が若干あるんですね。
だから、ぼくの漫画のアシスタントにしても、アニメのスタッフにしてもですね、でき
ればこれはお前に任せるから好きにやっていいよって、つい言っちゃうんです。
すると、彼らは自分の好きなように、個性を活かして作ってしまうんです。
・・・中略・・・
ぼくは、なんかの形で、ほかの人を育てて、ほかの人の作家精神を立ててる部分がある
。
そういう人達は、ぼくから独立していくと、みんな立派なもの作ってますよ。
決して、ぼくは他人の作家精神とかオリジナリティまで踏みつけにしてね、ぼくのもの
を作ろうという気持ちはないんだ。
私は、手塚先生のこの言葉に思わず納得せずにはいられませんでした。
藤子不二雄さん、石ノ森章太郎さん、松本零士さん、横山光輝さんらが、まだ漫画家の
卵だった頃、アシスタントの制度が確立する前から、手塚先生はお手伝いを頼んでいらし
たんです。
それは、後進の育成という尊いお考えがあっての事で、たんに忙しかったためだけでは
なかったのです。
そして、彼らは手塚先生のお仕事をまじかで経験したから、才能をより開花させる事が
でき、傑作をいくつも世に送る事が出来た。
それは、彼らが終生、手塚先生を尊敬する気持ちに揺るがない事で実証されている訳で
、才能のある人に嫉妬したと、手塚先生をよく知らない人が、一面だけの見方をするのは
、はっきり言って間違っていると思います。
アニメ「桃太郎 海の神兵」と、手塚先生ご出演の「フィルムは生きている」を鑑賞し
て、あらためて手塚先生の偉大さにふれた思いでした♪